その日の夜、デッドマンズベースの幹部室ではアギレラとオルテカが話をしていた。ちなみにフリオはリバイスのもう一つのアキレス腱、五十嵐さくらに近づくために潜入捜査をした帰り道の途中なのでまだここにはいない。
「……ねぇ、あのカマキリ君役に立たないんですけど」
「リバイスから上手く逃げ切ったという点では評価するべきかと」
「ふぅーん」
「それに我々は既に“カゲロウ”という切り札を持っているではありませんか」
「……でも私、アイツ嫌い。何だか偉そうだし……ここの優先順位には従ってもらいたいんですけど」
アギレラが不満を漏らし続ける中、オルテカは仕方ないと言わんばかりにため息を吐く。
その頃、街中では大二がバットバイスタンプを片手にフラフラと歩いていた。
「(バイスタンプを盗んだのは……俺なのか?)」
大二が歩いていると人にぶつかり、脇道に倒れ込む。勿論ぶつかった相手からは怒られるわけだが大二にはそんなのどうでも良いと言わんばかりに完全に憔悴し切った様子だった。
「俺……どうしてこんな事に……」
すると大二の目の前にガラスの破片が目に映るとそこには黒い服を着た自らと同じ姿をした大二の悪魔、カゲロウが映った。
「よう、大二」
「お前は……誰だ?」
「冷たいなぁ、知らないはずないだろ」
カゲロウが余裕そうに大二へと話す中、大二は完全に狼狽えてしまっている。
「誰だって聞いてるんだよ!答えろ!」
「……お前の体内で生まれた悪魔だよ」
カゲロウからの答えに大二は困惑し、体の震えが止まらなかった。そしてそんな大二へとつけ込むようにカゲロウが話す。
「他ならないお前自身が望んだんだよ」
「……望んだ?俺が……」
「そうだ。……願ってるんだろ?兄貴がいない世界。俺がそれを叶えてやるよ」
カゲロウが言い放ったその言葉に大二はそれをしてはならないと考えてカゲロウへと叫ばずにはいられなかった。
「やめろ……やめろぉおお!!」
その瞬間、ガラスは粉砕されると同時に大二の意識はカゲロウの中へと沈んでいく。そして入れ替わるようにカゲロウが主導権を握るとその場に立ち上がりニヤリと笑みを浮かべる事になる。
翌日の朝、一輝は昨日のカマキリデッドマンとの戦闘の際にあった少年の反応に違和感を残していた。
「何故あの子はデッドマンを庇ったんだ?窃盗を行ったのにももしかして何かしらの理由があるんじゃ……」
「そんな事どうでも良いからよ、さっさとデッドマンをやっつければそれで終わりなんじゃねーのか?」
バイスはそう呑気に言うが、それでも一輝はバイスと同じようにデッドマンを倒せば終わりだとは思えない。
「一輝兄、パパがママの退院祝いに温泉旅行するって言ってるけど……」
「ごめん、さくら。今はその話は後にしてくれ……」
「またいつものおせっかい?」
「ああ……昨日の事件には何かまだあるんじゃないのかなって」
一輝がそう言うとぶーさんがやってきて手にしたタブレットを見せてくる。
「一輝ちゃん、どうやら一輝ちゃんの予想……あながち間違ってないかもしれない」
ぶーさんのその言葉に二人は目を見開いてから頷き、ぶーさんと向き合う。ぶーさんがタブレットを操作するとそこには前園仁志という生徒が拡大されていた。
「前園仁志。彼の父親は医者をやっているが父親がつい先日、重い病を患ってしまい入院費や学校への費用などお金がとにかく必要な状況になっているんだ。そして、この父親が入院した日とデッドマンと四人の学生による窃盗事件が多発するようになった日は見事に一致する」
「……って事は、お金を稼ぐために窃盗をしていたって事?」
「理由はともかくやってる事は人として最低だけどね」
さくらがそう言う中、一輝はひとまず大白水学園に行き、何故このような事態になったのかを聞く事になる。そして理事長室で一輝は理事長と話をする事に。
「……うーん、確かに体操部の生徒が四人停学になりましたね」
「どうしてそうなったのかを教えていただけませんか?」
「喧嘩ですよ。前園仁志って生徒が他の体操部の部員の財布を盗んだと疑われたのがキッカケで口論になり、他の三人が彼を庇う形で大喧嘩になって」
「濡れ衣かもしれませんよ」
「いや、それはありません。彼の家は少しでもお金が欲しい状況になっていましたから。盗むのも十分あり得るんです」
そう言った直後、一輝は理事長へと詰め寄った。流石に今の物言いだとまるで前園が盗んだと決めつけたような物言いだからである。
「……本当に盗んだっていう証拠は出たんですか?」
「しつこいですね。証拠はありませんけど、彼の事情を考えれば……」
「それだけの理由で生徒を疑って良いんですか!」
一輝がそう言ったところで理事長に対して失礼な態度を取っていると我に返り、一輝はそれで終わりにする事にした。
「すみません……」
それから一輝は学園を出ると理事長の許可の元、四人の学生へと順に聞き込みをしようと考えた。学校は事件を有耶無耶にしたため、もっとちゃんとした動機を知るべきだと考えているからである。そんな時、一輝へと一本の電話が入ると一輝はその足を早めるのであった。
一輝が移動する間、フェニックスのスカイベースではヒロミと光の二人が若林、天魔、狩崎の前に呼び出されており、狩崎がライオンバイスタンプの調整を終えたためにそれをケースに入れて光へと渡す。
「ライオンバイスタンプの調整が完了。五十嵐一輝に渡してくれる?ヒロミ、光」
「大二の役目じゃないんですか?まさか、まだ極秘のミッションの最中ですか?」
「……以前のバイスタンプが盗まれた事件の犯人が五十嵐大二の可能性が高い」
「今彼にスタンプを渡しても持ち去られる可能性が高いからねぇ。ま、こんなのは情報を知っていれば子供でもわかるけど」
天魔からの挑発に対して光は何も言わなかった。以前は馬鹿にされたら怒っていたのだが、今はもうそんな事も無く冷静でいる辺り彼の成長が読み取れるだろう。
「それで、本当に五十嵐大二が裏切り者なんですか?」
「……確証は無い。だが、最近の五十嵐大二の情緒が不安定なのは間違いない」
若林の言葉にヒロミは考え込む。そしてある考えに至るとそれを三人へと話した。
「分隊長の就任式で変身できなかったのが原因なんじゃない?」
「まぁ、お前が変に悪魔を暴走させたせいでビビったんだろ。本当に情けない奴だよ」
天魔がそう言ったところで光が前に出ると冷静に天魔へと意見を言い放つ。
「あれはヒロミさんだけのせいでは無いですし、大二も情けない奴じゃありません。俺は大二を信じています。そして、ヒロミさんはあの場で自分にできる事をやろうとした結果ああなったんです。だから、これ以上俺の先輩と同僚を悪くいうのはやめてもらえませんか」
光の物言いに天魔は楯突かれたと考えると苛立ちを露わにする。
「お前、見習い分隊長の分際でこの俺を……」
「天魔、今のはお前が悪い」
若林にそう言われては天魔も何も言い返すことができず、大人しくせざるを得なかった。
「……もし俺が原因で大二があんな風になってしまったのだとしたら……俺が責任を持って大二を止めます」
ヒロミの目は本気であり、それを見た若林は狩崎へと目配せをする。すると狩崎はテーブルの上に置いてあったスーツケースを開けた。そこには以前大二が使いたいと言っていた液晶付きのベルトがある。
「じゃあこれ、使ってみる?」
狩崎の言葉にヒロミは頷くと迷う事なくそのドライバーと二つのバイスタンプを手にするのであった。
そして一輝が前園仁志の家の前に到着すると彼を呼び出そうとする。そんな時、四人の学生が現れると一輝へと声をかけた。
「仁志に何か用ですか?」
「え……」
一輝が振り向くとそこには前園仁志含めた窃盗団の学生四人が立っていたのだ。
「仁志君、俺は君に聞きたいことが……」
その瞬間、一輝の後ろからいきなり何かが飛びかかってくると一輝はそれを躱す。そこにいたのはカマキリデッドマンだった。
「……あんたと話す事は何も無いよ」
そうやって一輝へと冷たく言い放つ前園。しかし、一輝の目が向けられた先にいたのは、他の三人の学生である。
「デッドマンを生み出した犯人……それは、君だ!後藤太一君」
一輝の言葉に後藤と呼ばれた男子生徒は訳の分からない顔つきとなった。
「……はぁ?何で俺なんだよ。俺がやったなんて証拠はあるのかよ」
「さっき学園を調べた時、どうにも理事長先生の反応が不自然だったんだ。だから俺の仲間に調べてもらった。本当に仁志君が他人の生徒の財布を盗んだのかって」
一輝の仲間こと、ぶーさんが調べた情報によると前園が財布を盗んだ疑惑が持たれた事件はそもそも最初から仕組まれた事件であるという事。前園の父親が病を患ったとなればお金が必要になる前園は盗みを働いてもおかしく無いという構図。そもそも、他人の財布の中にある金額なんてそうそう大金では無い。普通は手術に必要となるような大金を財布で持ち歩く事などほぼほぼあり得ない。そんな金を盗んだ所で手術代が払えるわけもないだろう。
「確かにそうだけど、なら俺がデッドマンの宿主だって保証は?」
「君は仁志君が盗んだ疑惑を持たせる事で自分がそれを庇い喧嘩を引き起こすように仕向けた。つまり、自分から停学になりに行ったんだ。こうすれば自由時間ができた君は自分の好きな事をできるようになる」
後は自分の快楽を満たすためにデッドマンズの幹部に選ばれて好き放題するだけだ。強力なフェーズ2にならなかったのも自分が犯人だと特定されないようにするためだと言えば筋も通る。
「くくく……あはは!ちぇっ、バレちゃったのならしょうがない。お前を殺せばまた前園を身代わりにして遊べるしな」
「何でこんな事するんだよ……君達は友達なんじゃ……」
「友達?何言ってるんだお前はこの三人は皆俺の言うことを聞いて俺の思い通りに動く駒なんだよ。それにお前は俺達とは何の関係も無い部外者だろうが。邪魔するなよ」
「……それは無理だな。俺は日本一のお節介をする男……五十嵐一輝だ!」
そう言って一輝はリバイスドライバーを出すと腰に装着してレックスバイスタンプを出す。
《レックス!》
「はぁ……」
一輝はスタンプに息を吹きかけてからそれを押印。するといつものように待機音が鳴り響く。
《Come on!レ・レ・レ・レックス!》
「変身!」
《バディアップ!》
《オーイング!ショーニング!ローリング!ゴーイング!仮面ライダー!リバイ!バイス!リバイス!》
すると一輝がバイスからスタンプを下ろされて液体が纏わり付くことで生成された鎧を装着し、変身する。
「湧いてきたぜ!」
「おい、この邪魔者を倒せ」
後藤はそう言ってカマキリデッドマンへと指示を出すとカマキリデッドマンはリバイとバイスに突撃。そのまま戦闘開始するのであった。
また次回もお楽しみに。