新たなる事件 行方不明の一輝
五十嵐一輝が並行世界での戦いを終えてから数週間後。幸せ湯では重い雰囲気が漂っていた。
「ただいま……」
「大ちゃん!一輝兄は!?」
さくらの問いに大二は首を横に振る。そして、そんな大二の様子に元太や幸実も不安な気持ちに駆られた。
「一輝ならきっと大丈夫よ……」
「ああ。一輝がそう簡単にいなくなる訳が無い」
「大ちゃん。ブルーバードの方でも一輝兄を探してくれてるんでしょ?」
「それでも、ここ数日音沙汰すら無い。一体……どこに行ったんだ」
事の発端は一輝が並行世界から帰ってきた数日後。彼がブルーバードの本拠地。スカイベースに並行世界であった事の報告書を持ってきた時の事だった。
「狩崎さん、報告書。書き終わりましたよ」
「サンキュー、一輝。それにしても君達五十嵐家の悪魔達と戦った上にデッドマンズの三人が味方になってるなんて、なかなか面白い展開だったね」
「……こっちのデッドマンズの三人も救いたかったのですが……」
「過ぎた事だ。仕方ないよ」
すると狩崎のいる部屋の扉が開くと一人の白衣に身を包んだ科学者らしき中年ぐらいの男が姿を現す。
「狩崎。君が纏めて欲しいと言っていたデータ。揃ったぞ」
「お、流石。こっちも仕事が早いね。高田さん」
「えっと……」
「君は初めて会うね。紹介しよう。この方は高田唱。フェニックスの前身であるノアが存在した時代から研究員としてダディの助手を務めていた方だ。ただ、ダディに助手を離れるように言われてからは表舞台から退いたものの。その才能を武器に生き残り続けた。そして、ブルーバードへと組織が一新したのを機にその有能さを買われて戻ってきた形だ」
「初めましてだね。五十嵐一輝。紹介された通り、高田唱だ。よろしく」
そう言って高田は一輝へと手を差し伸べる。一輝はその手を取ると挨拶をした。
「こちらこそよろしくお願いします。高田さん。ブルーバードの仮面ライダー……五十嵐一輝です。……えっと、高田さんは何の資料を?」
「狩崎君に頼まれてね。新たなるシステムとしてクローンライダーの実用化についての資料を作っていた」
それを聞いて一輝はある事を思い出す。クローンライダーと言えばかつてディアブロとの戦いがあった際に未来の狩崎が戦力補強のためにレジスタンスのメンバーに提供していたあのシステムだ。
「あれを作るんですか!?」
「そういう事。とは言ってもまだ作り始めた段階だ。実用化までは長い年月がかかるだろうね。それこそ未来の私が完成させていた五十年後とかになるのかな?」
とは言っても、未来の狩崎がそのシステムを完成。実用化させるまでに五十年の年月が掛かったのはディアブロや悪魔達に地上を完全に支配されていたという背景もあった。そのため、実際はそこまでの年月はかからない可能性が高いだろう。
「頑張ってください。狩崎さん!」
「ああ。いつまでかかるかはわからないけど、絶対に実用化してみせるよ」
高田は一応報告事項は終えたとばかりに部屋から出て行くと一輝も狩崎への用事は終わったために部屋を出ようとする。すると部屋の一箇所に目が行った。
「……あれ?そのベルト……この前のキメラドライバーですか?その隣のは……見たことの無いスタンプですね」
一輝の目線の先にあったのは少し前の旅行の一件でアヅマや希望が使っていたベルト、キメラドライバーである。更に隣にあるのはまだ未完成のバイスタンプだった。パソコンにはスタンプのデータとして十種の最強生物のバイスタンプのレリーフが入っているような形だった。
すると狩崎はその画面をすぐに消すと一輝へとこの件について釘を刺す事になる。
「おっと。このスタンプやベルトに関してはまだ私だけの秘密でね。ブルーバードの総司令官のヒロミにも話していない事だ。ま、新たな戦力の一つだと思えば良いさ」
「わかりました。じゃあ内緒にしておきます」
「それが助かるよ」
そんなやり取りを終えた二人は別れると一輝はスカイベースを出て幸せ湯への道を進む。その後、一輝は行方不明になった。当時、防犯カメラの機能が一時停止。痕跡は何一つ無く居なくなったという。
「まだ見つからないのか……光、もっと捜索隊を増やすぞ」
「はい!」
ブルーバードのスカイベースではヒロミの指示の元、すぐに捜索隊が出された。だが、それから暫く経っても全く手掛かりすら見つからない。
「一体どこに消えたんだ……」
自身の家族を大事にする一輝が勝手に行方不明になった説はあまり信じられない。そのため、これは誰かに拉致監禁された可能性が高いだろう。
「何としてでも探し出してくれ」
するとヒロミの元に狩崎、高田が顔を揃えると悪い話を持ってきたと言わんばかりの顔つきだった。
「狩崎……どうしたんだ?」
「ちょっと良くないニュースがあってね……。研究室の中の一つから色々と物が消えた」
「なっ!?一体誰が……」
「厄介な事に誰かはわからないんだよね。入室のための鍵は五十嵐一輝の物を使っている。恐らくは連れ去った際に一輝から奪ったのだと考えるのが一番だろう」
ヒロミがどうするべきかと思案する中、光は狩崎へと何が無くなったのかを聞く。
「狩崎さん。研究室からは何が盗られたんですか?」
「完成していた新しいバイスタンプが幾つか。加えて使用者の危険防止のためにキメラドライバーから分離しておいたギフの瞳。更にはクローンライダーシステムの理論が奪われた」
「ッ……まさか、敵はテロリストとでも言うのか?」
しかし、それだけの物が盗られたとなると否が応でも対応しないといけない。また、すぐには実用化されないだろうが、クローンライダーシステムが勝手に使われるとなると大量の殺戮兵器がテロリストのような者達の手によって世に解き放たれるような事になりかねない。早急に取り返す必要がある。
「ひとまずは一輝君の捜索だ。クローンライダーシステムも同時並行で取り返すが、優先度で言えば五十嵐一輝の方」
「何としてでも探し出す」
それから狩崎は高田と共に部屋を後にする事になる。それらの話があった数日後。冒頭の場面に戻った。大二、光を中心とした捜索隊は昼も夜も聞き込みを続けて囚われた場所を炙り出そうとするが、未だに犯人の尻尾になりそうな物も無い。
幸せ湯でも一輝が帰ってこない事による不安は日に日に高まっているようで、特にさくらはそれが顕著になってきていた。
「どうしよう……一輝兄が帰って来なかったら……」
「大丈夫ださくら。兄ちゃんならきっと……」
「おいおい。あんまり一輝の心配ばかりしてられないようだぞ?」
「カゲロウ、急に出てくるなよ」
大二は急に意識を無理矢理交代したカゲロウへと文句を言うが、そこに光がある知らせを持ってやってきた。
「大二!これを見てくれ」
光が手にタブレットを持ってやってくるとそこにはニュースとしてここ最近、ブルーバード所属であるはずの仮面ライダーが悪事を働いているという物だった。写真として写っていたその後ろ姿は仮面ライダーリバイその物である。
「なっ!?これは……」
「嘘、一輝兄なの!?」
「いや、わからない。でも、仮面ライダーリバイが昼夜問わず騒ぎを起こしているニュースが出回ってしまっている。……こうなるとブルーバードも本格的に一輝さんを疑わないといけなくなる」
光はそう言うが、さくらはやはり納得がいかない様子だ。光へと声を荒げ始めた。
「あの一輝兄が犯罪なんてするはずが無いよ!」
「落ち着いてください。さくらさん。……僕もそれに関しては信じていませんし」
「俺もだ」
五十嵐家の面々や光は一輝がこんな事をするはずが無いとわかっていた。だが、そうなると誰がこのような騒ぎを起こしているかの話になる。
「ひとまずこの状況は不味いことに変わりは無い。一刻も早く真犯人を捕縛して一輝さんの濡れ衣を晴らしましょう」
一同は頷くとそれ以降さくらも捜索に加わるようになった。相手が仮面ライダーとなるとこちらもそれなりの戦力を用意しないといけない。捜索はヒロミが指揮しつつ、大二、さくら、光の三人がブルーバードの部隊を引き連れて三つの主な小隊を形成。迅速に悪事を働く仮面ライダーとの接触を図るが、その仮面ライダーはなかなか三人の前に姿を現さない。
その間も犯罪行為は続くのでブルーバード側は焦れ始めていた。ニュースもリバイそっくりの仮面ライダーが悪事を働くということで責任を五十嵐一輝へと向け始めて行く。
「クソッ……何でここまで見つからないんだ」
「どうにかしないといけないのに……」
それからまた一週間の時が経った。ブルーバードの面々はどれだけ探しても全く尻尾を掴めない現状に疲労感が溜まり始めてきた。犯人は防犯カメラ等のブルーバード側の監視の目を上手く誤魔化しては潜り抜けているらしい。
スカイベースでは一度捜索が終わって一同が戻ってくると会議の場で今後について話し合う事になった。
そこではヒロミ、さくら、光、狩崎、高田が顔を揃えた。高田に関しては今後の彼の活躍も期待されて狩崎の隣でこの場を経験させるために付けられている。
「後は大ちゃんだけですね」
「……妙だな。アイツにしてはやけに遅くないか?」
既に捜索に区切りを付けて招集をかけてから小一時間が経っている。それなのにも関わらず、大二が来る様子が無い。光が連絡をしてもまるで返事が無いのだ。
「おかしい。大二に何かがあったんじゃ……」
するとその瞬間、突如として通信機に連絡が入る。その言葉は衝撃的な物だった。
『こちら五十嵐大二……ニュースの仮面ライダーと交戦中!その全容は……ぐああっ!?』
その言葉を最後に大二が気を失ったかのように通信は途絶えた。それを聞いてさくらは慌てて飛び出す。
「さくらさん!」
光もさくらの後を追って行こうとするが、狩崎がそれを留めた。まだ相手の情報が分かってないのに無理に戦力を全て動かせないと踏んだのだろう。
「待つんだ光。今行くのは危険だ」
「でもさくらさんが……」
「空手ガールなら平気だ。彼女の強さは君も知ってるだろう。恐らく、敵はかなりの強者。だからこそ今は様子を見る。ひとまずは空手ガールの発信機を元に敵の手を見る」
狩崎にそう言われては光はどうする事もできない。ヒロミも狩崎に異を唱えないので光は命令無しでは動けないと踏み止まった。
そして、さくらが走って現場に向かうとそこにあった光景は凄惨な物だった。倒されて気絶したブルーバードの隊員達が地面に転がり、その近くには変身解除して倒れて同じく気絶した大二。そんな彼を見下ろした二つの影。そこにあったのは二人の仮面ライダーだった。
「嘘でしょ?これって……」
さくらはそれを見て目を疑う。そこにいたのは紛れも無い仮面ライダーリバイ、仮面ライダーバイスだった。ただし、その色合いは二人とはあまりにもかけ離れていた。リバイはジャックリバイスのような漆黒のボディに加えて紫の差し色。複眼は水色で仮面ライダーリバイのリカラーバージョンと言うべき姿だった。もう一人は仮面ライダーバイスの黒い部分を紫に。ピンクの部分を黒に塗り替えたようで複眼は赤と。こちらも仮面ライダーバイスのリカラーバージョンである。
《バディアップ!》
《オーイング!ショーニング!ローリング!ゴーイング!仮面ライダー!リバイ!バイス!リバイス!ダーク!》
「俺の名は仮面ライダーダークリバイ」
「そして俺っちは仮面ライダーダークバイスってな」
さくらの前に姿を現したのは仮面ライダーダークリバイ、仮面ライダーダークバイスである。漆黒のリバイ、バイスはさくらへと敵意を向けるとさくらも身構えるのであった。
タイトルの所にもある通り、今回からスピンオフ。ゲットオーバーズ編が始まります。タイトルの時点でメインとなる人物はお察しかもですが、どのような展開になるか楽しみにしてもらえたらと思います。また次回もお楽しみに。