光がギラファバイスタンプを出したその頃。奴隷として囚われていた人々を解放する部隊としてやってきたヒロミは手分けして人々を解放。人々の多くは外国人であったり、奴隷として売られたような貧しい人々ばかりだった。ひとまずヒロミは人々をブルーバードに保護するように指示した。
「奴等め、彼等から悪魔を分離したのは良いが、その悪魔を制御させてどこに連れて行くつもりなんだ」
ヒロミ達ブルーバードの部隊が突入するとその時には施設の中はもぬけの殻とでも言える状態であった。つまり、分離させた悪魔達は全くいなかったのだ。その部屋の中に転送装置と思われる光を失った装置があったので恐らくそこに移動させて別の地点に移動させたのだろう。
「隊の一部は奥の部屋に進むぞ。光がいる部屋の辺りに五十嵐一輝や五十嵐さくらがいる。そこに行って彼等を救う!」
ヒロミは隊を分けると人命救助と護衛を務める隊員は施設を守るメタルロイドを退けつつ撤退。そして、ヒロミが指揮する精鋭部隊は更に奥へと突入していく事に。その瞬間、突如として奥の部屋からとてつもないプレッシャーを感じた。そのプレッシャーの正体にヒロミは何となく察する。
「この気迫……光が放っているとでも言うのか……」
ヒロミはその時、突入前に狩崎から聞いた情報を思い出す。それは今の光の状態だった。
〜回想〜
「ヒロミ。ちょっと今の光について言いたい事がある」
「何だ?狩崎」
「今の彼は元々眠っていた勝から受け継いだ改造人間としての遺伝子が目覚めている状態だ。そして、大二に今回の事件の黒幕と並行して調べさせたデータによるとその力は感情の起伏によって大きく左右される。勝がかつて自身の女を殺された事によって高い戦闘力を発揮したのはその遺伝子に依存する所が大きい」
つまり、勝は女を殺された事によって怒りの感情が高まった事で自身の中に組み込まれた遺伝子の力が解放されたのだ。そのため、普段以上の能力が発揮されてはぐれ悪魔を蹂躙する事にも繋がったのである。
「それはつまり、今の光も感情が高ぶれば同じ事になる可能性があるのか」
「ああ。だが、同じ感情の高ぶりでもそれが誰かを守りたいという正の感情か誰かへと向けた恨みという負の感情かでは危険度が天と地ほどに差がある」
狩崎の説明によると負の感情による強化の方が圧倒的に危険だということだ。
「もし光の暴走が手に負えないと感じたら君が彼を止めるんだ」
「だが、俺はベルトを光に預けて……まさか」
「ああ。君の使っているデモンズドライバーには光の使うデモンズドライバーとは違って危険を自動で検知してこちらに知らせる機能、そして信号を入れる事でドライバーとしての機能を強制停止させる機能がある」
これは元々ヒロミが戦場に戻る際に命懸けの戦いをするリスクを鑑みて狩崎が予め仕込んだ物だ。
「なるほど、俺を止めるために作った機能を光のために使うのか」
狩崎は頷くとヒロミへと装置を止めるためのスイッチを手渡す。そこには点灯していないランプとガラスのカバーに覆われた赤い緊急停止用スイッチがあった。
〜現在〜
「狩崎は光の感情が暴走して危険な状態になったらこの装置が使えるようになると言った。もしもの時は俺が止める」
ヒロミがその事を考えながら奥の部屋に進む中、時間は少し遡って光がギラファバイスタンプを構えた場面に戻る。
「そのスタンプは」
「ああ。切り札があるのはお前だけじゃない」
「そうか。ならそれを使え。お前の信念を通したければ俺を止めるしか無いぞ」
「……僕のプライド……いや、信念を懸けて……父さん。あなたを止める」
《ギラファ!》
《Deal……》
光が優しくそう言うとスタンプをベルトの朱肉部分に押印。オーバーデモンズの時のように自身の周囲に鼓動のような物が出てくる。ただし、その色はいつもとは違って外側がターコイズ、内側がブロンズとなっている。
「変身!」
光がそう言った直後に液晶部へとスタンプを押印。その瞬間、ベルトに悪魔の目が浮かび上がるとそれが普段の赤い色では無く青い色へと変化。それと同時に機械仕掛けのギラファノコギリクワガタが液晶部から飛び出す。
《Delete up!》
すると光の体の周囲がオーバーデモンズ同様に球状のエネルギードームに包まれるとその中で装甲が構築されていく。
《Unknown.(未知なる)Unlest.(混乱が)Unlimited…(越える)仮面ライダーゲットオーバーデモンズ!》
最後に機械仕掛けのギラファが光の右側から突撃して彼の右肩の装甲として追加。最後にクワガタの大顎で光の頭部の左側を挟むと変身を完了する。
その姿はシルエットこそオーバーデモンズと似ている。だが、最大の相違点として右肩から合体したクワガタと上半身のカラーリングだ。そのカラーリングはオーバーデモンズの時は茶色メインだったのに対してこちらはシルバーをメインにしている。更に胸部装甲もシルバーだったのが、ブロンズのカラーへと変化。左肩もそれに応じてブロンズと青のカラーになった。下半身及びアンダースーツはデモンズ、オーバーデモンズから変化は無し。頭部は従来のシルバー及び水色からブロンズ及び白になっていた。複眼は黄色から水色へ。
そして、ここまでは従来のオーバーデモンズのシルエットと大差無い。だがオーバーデモンズの頭部の左側に合体したクワガタの大顎。これは従来よりも大きくなっている。恐らく、ギラファノコギリクワガタ由来の装甲のため、ギラファの特徴である長い大顎をわかりやすくしたのだろう。因みに色はシルバーメインにブロンズのラインだ。
光が変身したこの姿の名前は仮面ライダーゲットオーバーデモンズ。仮面ライダーオーバーデモンズの強化フォームとも言うべき姿である。すると光の体に僅かに電流が走り、彼は顔を歪めた。だが、光はそのパワーを完全に制御してコントロールしたのである。
「なるほど、それがお前の真の力か」
オーバーデモンズは更なるフェーズへと進化するとダークリバイ、ダークバイスへととてつもない気迫を放つ。
「この俺がこんなにも気迫で押されるとはな……これは期待できそうだ」
「御託は良い。やるぞ」
ダークリバイは頷くとダークバイスへと合図。二人揃ってオーバーデモンズへと向かっていく。オーバーデモンズは同時に繰り出された二人の拳を真正面から手で受け止めた。その瞬間、衝撃波が駆け巡る。だが、それを喰らったオーバーデモンズはまるで平然としていた。
「……そんな物か」
「何!?」
するとダークリバイとダークバイスの拳を受け止めたせいか、オーバーデモンズの手から装甲が熱せられたような音が鳴ると煙が上がる。しかし、それでもオーバーデモンズは動じない。そして、オーバーデモンズはその拳を受け流すべく左右へと逃がすように引っ張ると隙だらけとなった二人へと掌底を叩き込む。
「「ぐはあっ!?」」
その出力は二人の防御力を上回ると一気に後ろへと吹き飛ばす。ダークリバイ、ダークバイスはオーバーデモンズからの攻撃の威力に驚いていた。
「馬鹿な……このパワーに防御力。……さっきまでのオーバーデモンズを遥かに凌ぐだと!?」
更にオーバーデモンズは先程以上のスピードで二人の背後へと回り込むと回し蹴りで纏めて二人を吹き飛ばす。
「のわあっ!?」
「ぐうっ!?」
ダークリバイはそれならばと物量で押し切るためにスタンプをスキャンさせていく。
《スピスピ!ヒグヒグ!ハヤハヤ!トリトリ!サベサベ!ギンギン!》
《リボーン!セクスタプル!コロコロスタンプフィーバー!》
ダークリバイはスピノ、ヒグマ、ハヤブサ、トリロバイト、サーベルタイガー、ペンギンと六つのバイスタンプを連続使用。炎を纏った生物達が次々とオーバーデモンズへと襲いかかる。
それを見たオーバーデモンズはスタンプをベルトに押印。必殺技を発動させた。
《ギラファ!》
《Overcharge!》
《オーバーデモンズフィニッシュ!》
するとオーバーデモンズが背中から巨大なギラファの大顎を展開。それで向かってくる生物達を全て挟むと粉砕してしまう。
「馬鹿な……何故こんな事が……」
ダークリバイが驚く中、オーバーデモンズの方も平然とはしていられなかった。実はこの姿には大きな欠点がある。それは常時オーバーデモンズでフルゲノミクスを発動している時と同等の負荷がかかっているのだ。
かつてオーバーデモンズとしてフルゲノミクスを使った時はベイルのアシストが無いとできなかった上に維持も僅かな時間しか保たなかった。今の光は改造人間の遺伝子を受け継いだ頑丈な体に加えて感情の効果によるブーストもかかっているという前と比べると超が付く程に強化された状態。それでも完全には制御し切れない。そのため、短期決戦で決める必要があった。
「こうなれば、バイス」
「おう、何だ?」
「俺達で技を合わせる。二人同時のライダーキックで光を倒すぞ」
「おうよ」
だが、ダークリバイの方はオーバーデモンズの強化を見て危険を感じたのか短期決戦に乗るとベルトのスタンプを一度倒す。
「一気に……滅ぼそうか!」
《コ・コ・コロッ!コ・コロッ!コローナレックス!》
二人が構えを取るとマグマのエネルギーを脚へと集約。それを見たオーバーデモンズも必殺技を使うためにベルトを二回押し込む。
《Overmore!》
するとオーバーデモンズの脚にもブロンズのエネルギーが高まると同時に複眼が光る。それと同時に三人は跳び上がった。そのままダークリバイがスタンプをもう一度倒し、オーバーデモンズもベルトを押し込んだ。
《コローナレックス!フィニフィニフィニッシュ!》
《オーバーデモンズレクイエム!》
三人のライダーキックは空中で激突。そのパワーは拮抗すると押し合う。そのために三人共全力をぶつけた。
「「「ぐううぅ……」」」
オーバーデモンズの体にはまた火花が散る。光への負担が大きくなっていたのだ。ダークリバイはそれを見てトドメを刺すためにスタンプによる生物召喚でパワーを上げて決めようとする。しかし、その瞬間。
「うぐうっ!?……うああっ!」
突如としてダークバイスが苦しみ始めるとその体が薄く点滅してしまう。その異変にダークリバイは驚く。
「どういう事だ!?」
ダークリバイはふと気配を感じてその方を向くとそこには装置に囚われていたはずの一輝が装置から解放されてしまっていた。その理由は簡単。この部屋に向かっていたヒロミ達が一輝を装置から救い出していたのだ。
「しまったぁああっ!」
元々このベルトにバイスの力をコピーできていたのはあの装置に一輝が捕えられている状態で抽出されたデータが投影されていたからだ。つまり、投影元である装置から一輝が離れれば当然それもできなくなってしまう。
「父さん……これで……決める!」
《ギラファ!》
《Overcharge!》
オーバーデモンズはスタンプをベルトに押印。その瞬間、ベルトが予想以上のオーバーパワーに危険を感知するとヒロミのための制御装置へと異常を知らせる。しかし、もうオーバーデモンズは止まらない。続けてオーバーデモンズはベルトを二回押し込む。
《Overmore!》
必殺技二つを重ねがけした影響でベルトから火花が散り始めるがオーバーデモンズはそれさえも乗り越えるようにもう一度ベルトを押し込むと最大にまで高まった究極必殺技を使う。
《ゲットオーバー!デモンズレクイエム!》
その一撃は消えかかったダークバイスを一瞬で粉砕するとダークリバイへと直撃。その余波で大爆発が起きるとオーバーデモンズとダークリバイ共に吹き飛ばす。オーバーデモンズの方は何とか立ったまま踏みとどまるが、ベルト及びスタンプが負荷に耐え切れずにそのまま粉々に粉砕。強制的に変身解除して傷だらけの光が現れる。
「うぐうっ……」
そして、ダークリバイの方は倒れ込むと何とか立ち上がるが、オーバーダメージを受けたために大爆発が起きた。
「ぐあああっ!」
そして、こちらもベルト及びスタンプがダメージに耐え切れずに損傷して砕け散ってしまうと勝もボロボロで倒れかけた。しかし、そこに光が駆け寄ると勝を支える事になる。
恐らく次回でゲットオーバーズ編が完結となります。また次回も楽しみにしてください。