真と対面した狩崎。狩崎は前日に真の手によって連れ去られた上で捕まった。なのに何故この場所に来れたのか。真が捕まっていた場所から連れ出したというのであれば説明は付くかもしれない。だが、実際の所は違う。
実は狩崎は捕まっていなかった。つまり、あの場面で真が上手く高田を騙したのだ。そのため、ここにいる狩崎は一輝達と一緒に突入した事になる。
「驚いたでしょう?あなたと至近距離に近づいたあの時。あなたへとカメレオンバイスタンプを使って透明化させた。それと同時にこちらで予めあなたの姿に書き換えた状態で気絶させた悪魔を呼び出した。そのままその悪魔をあなたの代わりに連れ帰る事で欺いたんですよ」
要するに真は狩崎を捕らえたように見せかけて逃したのだ。そのため、狩崎は無事であったのだ。
「どうですか?この私に助けられた気分は」
「オルテカ。……何のつもりだ?」
「ふふっ。……つまらないと思ったんですよ。昨日見たあなたの覚悟を決めた顔が」
それを聞いて狩崎は目を見開く。彼は父親の犯した罪のせいで起きた今回の事件を覚悟を持って解決するつもりだった。だからこそ彼は自分の手で解決するために変身しようとし、失敗したのだ。
「あなたは過去との決着を自分一人で付けるために周りにはおかしくなったような態度を見せる事で注意をそっちに誘導させ、自らの覚悟を隠した。違いますか?」
「……それの何が悪い……これは私のダディがやらかした失敗だ。その家族である私の手で決着を付けようとするのは間違った考えなのか!?」
そう言って狩崎が詰め寄ると真は薄らと笑みを浮かべる。そして、狩崎へと平然と言ってのけた。
「実につまらないですねぇ。あなたらしくない」
「ワッツ?」
「門田ヒロミをデモンズドライバーの実験台として嵌めた時、あなたはもっと活き活きとしていたはず。いつの間にあなたはこんなにも丸くなってしまったのでしょうか」
真としてはこちらの世界の狩崎が父親である真澄と向き合う事での変化を知らないため、こう言うのも半ば仕方なかった。彼のいた世界での真澄はウィークエンドにはいたものの、息子であるジョージとは対面する事なく邪魔者としてギフに始末されてしまったからだ。
「親子の再会をするかしないかだけでここまで大きく変化するとは……驚きですよ」
「……ダディは私に沢山のプレゼントをくれた」
「ほう?」
「彼から私はギフを打倒するための手段だけではなく、短かったが親子としてのかけがえの無い時間を貰えた。これらは君の世界の私は持っていない物だ。……だが、一番の思い出だけはどちらの世界の私にも共通して持っているとわかっている」
狩崎はそう言ってある事を思い出す。それは、前日の夜の事だ。狩崎は会議をしていた一輝達の元に現れて自分が健在であると伝えた。その際にヒロミから一度自らの家に戻るように言われたのだ。
ここ最近ブルーバードのスカイベースにずっといたために実家へと帰っていなかった狩崎。スカイベースが第二の家となっていた彼にとって実家の戸は懐かしかった。
「ただいま帰った……マミー……」
狩崎はそう呟くが、返事は無い。狩崎の母親は真澄がいなくなってから女手一つで狩崎を育て、数年前に病気で亡くなっていた。そのため、彼女の面影はもう写真でしか見られない。それはギフとの戦いの中で亡くなった真澄も同様だ。
狩崎は家の電気を付けて歩いていると母親の寝ていた部屋を見つけた。狩崎がその中に入ると綺麗に部屋が片付けられていたものの、彼の目はその中でも部屋の奥にあった母の机へと向かう。
「……これは」
そこにあったのは幼い子供が描いたような絵であった。その絵にはリバイスが最初に手に入れた十種類のバイスタンプのモチーフとなった生物が描かれている。
「マミー……まさか、ずっとこれを持っていてくれたのか……。幼い頃に離れてしまったダディとの思い出が消えてしまわないように……」
そんな中、狩崎は幼かった自分を思い出す。父親である真澄の上に座って自分が描いた絵を褒めてくれた優しい父親としての彼を浮かべたのだ。
「これが世界を救う事になるんだぞ」
幼い狩崎は自分を優しく見下ろしてくれた真澄を純粋な目で見上げると彼へと問いかける。
「ダディ……僕が救うの?」
「ああ……。グッジョブだ……ジョージ」
そう言ってサムズアップする真澄。そんな真澄を見た狩崎は笑顔を浮かべる。
その言葉を最後に幼い頃の幻影は消えたが狩崎の目には涙が浮かんで止まらなかった。狩崎はその場に座ると一枚一枚自分の描いた絵を見ながら思い出に浸る。
幼い頃の思い出はずっとここに存在し続けた。狩崎はもう感じる事ができないと思っていたかつての親子としての温もりや時間をまた思い出せたのだ。
「……ダディ……。私はあなたと過ごせなかった時間を取り戻したかった」
そう言う狩崎の脳裏には大人になってからようやく再会できた父親との僅かな思い出が瞬くように流れていく。
場面は戻り、真と対面する狩崎の元へ。そして、彼は真へと自らの思いを話す事になる。
「私はあの時、過去を乗り越える覚悟を決めた。過去と決着を付けて決別しようと思っていたんだ。……だから変身できなかった」
「なるほど。つまり昨日のあなたに足りなかったのは……」
「ああ。ダディとの思い出が紡ぐこの力を使いこなすために必要だったのはダディと過ごした過去を大事にする気持ちだ」
「お見事ですよ……ジョージ・狩崎……。ならば、私がやるべき事は既に決まっている」
それから真はゆっくりと狩崎へと近づいていくと彼へと不意打ち気味に拳を繰り出そうとする。
同時刻、さくらと光が変身したハシビロコウゲノムを武装したジャンヌとオーバーデモンズが仮面ライダーシルフィー、仮面ライダー雷の二人が立ちはだかる。
「はあっ!」
ジャンヌが大鎌を振るう中、シルフィーは槍で応戦する。しかし未完成なクローンライダーのスペックでは全力を出せないせいか、彼女が元々持っているはずのヘルヘイムの植物を操る力やクラックの生成が使えず。純粋なスペックではジャンヌに圧倒されるオチで一方的にやられていた。
「こんなの?クローンライダーってさ!」
ジャンヌが大鎌でシルフィーを切り裂くとかなりのダメージなのか、倒れて地面を転がる。
「だあっ!」
そんな中、オーバーデモンズも雷を圧倒。雷もパワーと格闘戦が強みなのだが、全力が出せない雷のスペックを遥かに上回るオーバーデモンズの力の前ではまるで相手にすらならない。
「がああっ!」
《ゼツメツディストピア!》
雷が電撃を纏わせた拳を放つが、その瞬間、オーバーデモンズがしゃがむとそのタイミングでシルフィーを吹き飛ばしたジャンヌがタートルゲノムへと変化したラブコフを構えていた。
《必殺承認!タートル!リベラルスマッシュ!》
そのまま放たれた亀の甲羅を模した砲弾を喰うと爆散。更に体勢を立て直したシルフィーがジャンヌへと不意打ちをしようとするが、すかさずオーバーデモンズがジャンヌと入れ替わるように前に出ると突き出された槍の柄を掴んで引っ張るといきなり前に引っ張られた事でシルフィーはバランスを崩してしまう。
「だあっ!」
そのままオーバーデモンズからの拳がシルフィーへと突き刺さるとシルフィーは耐えきれずに倒された。
「ナイスです、光さん!」
「このまま進みましょう」
別場所では元太の変身したデストリームとヒロミの変身したデモンズが昨日対峙した仮面ライダーエボル及び仮面ライダーダークキバを相手にしていた。
「またコイツか……」
エボルがスピードで二人を撹乱する中、ダークキバの方も固い装甲を持つために一筋縄ではいかない相手になる。
「元太さん、ここはこれでどうにかしましょう」
デモンズがデストリームへとスタンプを渡すとデストリームも頷いてそれを手に取る。
《Add……!》
《ブラキオ!》
《Dominate up!》
《ブラキオ! ゲノミクス!》
《Next!》
《サーベルタイガー!》
《Dominate up!》
《サーベルタイガー!ネオバースト!》
するとデモンズは両脚が、デストリームは両腕が前にダークリバイが使っていたような毛皮の装甲に爪が展開。尚、色はモチーフの仮面ライダーシンのような黄緑だ。デモンズの方はバイスのブラキオゲノムのような強靭な脚へとパワーアップ。するとエボルが高速で動くのに対してデストリームもサーベルタイガーの能力で高速化。全力を使えないエボルのスピードを上回るとエボルを爪によるパンチで壁へと叩きつけさせる。
「決める!」
《サーベルタイガー!》
《Charge!》
《デストリームフィニッシュ!》
デストリームが再度高速で動く中、エボルは何とか壁から出てくるもののスピードに完璧に翻弄されてしまう。そして、デストリームからの爪がエボルへと命中して爆散させた。
そして、デモンズとダークキバの方はダークキバの固い装甲を相手にブラキオの能力が上乗せされた強烈な蹴りでダメージを与えていく。
「ッ……」
「やはり固いな。だが!」
しかもブラキオバイスタンプの力の中には空間を揺るがす程の打撃を与えられるだけの力がある。そのために能力ダウンしているとはいえ、ダークキバ相手にもダメージが通っていた。
「これで終わりだ!」
《More!》
《ブラキオ!デモンズレクイエム!》
デモンズが技を使うと右脚に必殺のエネルギーが高まる。ダークキバも対抗するように手にフエッスルと呼ばれる物を持つとそれをベルトの黒い蝙蝠の部分に噛ませて技を使う。
《ウェイクアップ・2!》
ダークキバがそれに合わせて彼も右脚に蝙蝠の翼のようなパーツを生成すると二人は距離を縮めていき、上段蹴りの形でライダーキックを放つ。
そのキックの打ち合いは振り抜くスピードが先だったデモンズの方がダークキバへと命中するとダークキバは押し切られて爆散。撃退される事になる。
「行こう!」
「ああ。我が全身全霊で、ここを制圧する!」
そして、二人が奥に進んでいくと途中で先に別れたジャンヌやオーバーデモンズと合流。まだリバイ、エビルは来てないが、必ずここまで来れると信じて先へと進む。そのまま最奥部へと到達したジャンヌ達を出迎えたのは高田であった。
「くっ……狩崎の作ったクローンシステム。もう少し粘ってくれると思っていたが、役立たずだったか」
「ここまでだ。高田。大人しく投降しろ」
そう言ってデモンズが高田へと投降を呼びかける。だが、そんな彼の目は狂気に染まったために全員が気を引き締めるのであった。
また次回もお楽しみに。