リリスが赤い仮面の男に連れ去られた少し後。地球上のどこでも無い宇宙空間を模したような不思議な場所。その上に浮遊する足場。周囲にはこれまた宙に浮かぶオブジェが取り囲み、その場所に白い服を着た男と白黒の衣装を着てサイドテールにした女性が一輝達の街に現れている空間の裂け目を見ていた。
「これは何でしょうか?」
「ジャマトとは関係ないようだが……」
白黒の女の名はツムリ。白い服を着た男の方はギロリという。ここはデザイア神殿。デザイアグランプリと呼ばれる自らの願いを叶えるために仮面ライダーとして人類の脅威であるジャマトとの戦いを繰り広げるゲームが行われる場所。そんな場所にリリスの入ったリュックサックを手にした赤い仮面の男が現れた。
「……懐かしいな。この場所も」
「……あなたは!?」
赤い仮面の男はそんな風に懐かしむ中、これまた別の場所へと場面は移る。そこはジムのようで、サンドバッグに向けて拳をぶつける一人の男がいた。
「しっ!しっ!ふっ!」
「もうすぐ世界が作り変わる。お前が頂点を掴む時だ」
ボクシングをする男を見つめるようにスーツを着て眼鏡をかけた初老の男が笑みを浮かべている。
そして、その直後。世界に紫のモヤがかかると同時に世界その物が強制的に作り変えられた。
世界が作り変えられた後。とあるカフェでは三人の若い男女が話をしていた。
「ツムリとギロリが消えた!?」
そう言うのは王様のような仮装をした青年。桜井景和である。そして、そんな彼に答えを返すのは盗賊のような仮装をした青年でスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズ……浮世英寿。更に魔女のような仮装をした女性で世間で人気のインフルエンサー、鞍馬袮音もいた。
「ああ。二人の荷物が無くなっていた」
「おかしいね。いたはずの人がいなくなるなんて」
「そう……アイツらもな」
英寿が指差す先にいたのはウエイターの格好をした青年とお姫様のようなドレスを着た少女である。
「ふん」
「英寿さん!?」
「「ええっ!?」」
「道長……っと、ごめん誰?」
「は、初めまして。小林紬です……」
青年の名前は吾妻道長。少女の方は小林紬。道長は少し前に、紬は景和や袮音、道長よりも前にデザイアグランプリの最終戦で退場して世界から消えたはずである。
「何で?退場したんじゃ……」
「ハームもな。お前、あの時確かに俺に看取られて消えたはずだ」
「むしろ俺がそれを聞きたいんだ。それに、どこかで見た事あると思ったらお前も確か俺達の工事現場に入ろうとした奴だったな?」
「あっ!あの時の……あの時はすみませんでした……」
「ふん」
紬は道長がデザグラに参加する前、一度だけ彼と顔を合わせていたのだ。そんなことはさておき。
「何者かによって世界が作り変えられた可能性があるな」
「じゃあ、誰かがデザ神になったって事?」
「お前らの格好も世界改変の影響か?」
「これはこのお店のサービス。てゆうか、自分も着てるしね。あ、それと紬ちゃんも可愛いよ〜!」
「あ、ありがとうございます。えっと、スーパーセレブ袮音TVの鞍馬袮音さんですよね?」
「そうだよ〜!」
そんなふうに話をしているとスパイダーフォンと呼ばれるスマホ型通信機から着信音が鳴った。
「デザイアグランプリからのお呼び出しだ」
それから五人はデザイア神殿へと移動するとそこには先程までの整えられた衣装からゴスロリのような衣装へと変わった小悪魔ツムリが出迎える。
「あれ?ツムリちゃん、イメチェン?その服」
「何だか前に参加した時と感じが違う……」
「ようこそ!皆〜!」
「なんか、洋服変えたらキャラも変わりましたね」
景和が動揺しつつもそう言う中、そんな事お構い無しとばかりにツムリがゲームの説明を始める。
「これより、悪魔マラソンゲームを始めるね!」
「悪魔……マラソン?」
ツムリがリリスの顔がガラス越しに浮かぶリュックサックを手にするとそれを見せた。
「これから皆にはこの強大な力を持つ悪魔をゴール地点まで運んでもらうわ。距離にして42.195キロ。手段は何を使っても結構よ」
要するにリュックサックに入ったリリスをゴールまで運べば良いというわけだ。
「ふーん。それにしても何だか優しそうな雰囲気の悪魔だね」
するとリリスはそう言われて僅かに反応を見せるが、かなり大人しくしている様子だ。
「悪魔という名前の割に随分と静かですね……」
「悪魔と言っても色々いるからな。そういう奴もいるんだろう。それで、運ぶのはコイツだけか?」
「ええ。今回はチーム戦。ゴールまで悪魔ちゃんを運べた全員が勝ち抜けよ」
「随分と親切設計だな」
道長が珍しいと言わんばかりにそう言う。今までのデザイアグランプリが他人の蹴落とし合いが強かったために拍子抜けした感じである。
「あ、そうそう。行く手には悪魔ライダーと我々運営が用意した戦士が待ち受けるから悪魔を奪われないようにね?」
それを最後にツムリからの説明は終了。スタート地点へと全員が移動する。
「ここがスタートか」
そこにはトラック、車、バイクだけでなく、自転車やスケボー、スクーターとかもある。
「これで運べって事?」
「色々あるねー」
「え、えと……皆さんで乗れるものにした方が……」
「ああ。だったら……」
五人の目線がトラックへと集まる。これなら五人全員が移動する事が可能だ。
「それで、誰が運転する?」
「……さっさと乗れ」
そう言って道長がトラックの運転席に乗る。それを見て四人も運転は道長に任せて外部からの目を欺くためにトラックの荷台へと入った。それから早速トラックは出発する事になる。その様子を一つの影が見ていた。それは赤い仮面の男が再起動させた兵器の中の一体である。
それからある程度進んだ所でトラックは橋の上に差し掛かった。するとそこに空中に一台のエアバイク……いや、バイス・プテラゲノムに乗ったリバイ・レックスゲノムが追尾する。
「ひやっふう!待ちやがれ!」
リバイの手には狩崎お手製の悪魔レーダーを仕込んだ装置が握られていた。
「あのトラックか……」
そして、空中から接近しているとは言ってもトラックのサイドミラーに映る位置にいたので道長もリバイの存在に気がついた。
「あれが悪魔ライダーか」
「バイス、追うぞ!」
「おいお前、待ちやがれ!」
道長が追跡から逃れるためにアクセルを踏む中、バイスは問答無用とばかりに空中からエネルギー弾を撃つ。
「母ちゃんの悪魔を返せ!」
道長は何とか攻撃を回避しつつ逃げるが、やはり追撃は凄まじい。勿論荷台の中では四人が右に左に揺れるトラックに振り回されていた。
「何!?」
「わわっ!?」
「っと、危ないからハームはこれに掴まってろ」
英寿は一人だけ学生で子供の紬が怪我をしないように天井から下がったロープに掴まらせる。
更に橋を越える辺りから攻撃は激しさを増していく。すると道長は慌ててブレーキを踏んだ。そこに一人の影が現れたからだ。
「止まれ!」
その影は光が変身したオーバーデモンズ。彼はトラックを正面から受け止めるとトラックの動きを完全に止めてしまった。
「嘘だろ!?」
「光さん!」
「僕は大丈夫。それよりも悪魔を早く助けましょう」
更にそこにジャンヌや空中から降り立ったリバイとレックスゲノムに変わったバイス。デストリームも駆けつける。
「ママさんの悪魔……返せ!」
更にトラックの後ろからはバットゲノムとなったライブも到着。ライブガンを構えつつ声をかけた。
「それをどこに持っていくつもりだ?出てこい!」
内部ではようやく止まって揺れが収まったものの、リバイスライダー達に囲まれた四人は窮地に立たされた。
「早速ピンチ!?」
「はわわっ……どうしてこんな事に……」
「ここは俺に任せて。あ、あとそれと……」
景和が紬の方を向いて何かをするとすぐに扉の方へと向き直す。そして、腰に予め装着していた両側にバックルをセットする部分と中心部に動物の顔のようなライダーズクレストが描かれたコアが入ったベルト。デザイアドライバーの右側に手裏剣のようなパーツが付いたバックルを装填。そのままクナイの持ち手のようなパーツを引いた。
《SET!》
「変身!」
《NINJA!READY FIGHT!》
すると機械的な音声と共に景和の右側にNINJAの文字が出現。荷台の扉を開け放つと同時に右側の文字が装甲へと変化。体は黒い素体へと変わると上から狸の頭のようなマスク、更に右側からニンジャや甲冑をモチーフとしたような黄緑に赤の差し色の入ったの装甲を纏う。
仮面ライダータイクーン・ニンジャフォームの登場だ。その瞬間、タイクーンが煙玉を使ったのか周囲に煙が発生。混乱するリバイ達を横目に英寿達三人と道長は脱出。ライブはタイクーンへの対応で手一杯となる。
「ッ!?コイツ!」
「はあっ!」
タイクーンは両手に分割し、逆手持ちにした武器、ニンジャデュアラーを振るった。
「だあっ!」
《ROUND 1!TACTICAL SLASH!》
タイクーンは一気に決めるために緑のエネルギーが纏われたニンジャデュアラーから斬撃波を飛ばす。だが、爆炎の中に緑の複眼が発光すると大二と主導権を変えた仮面ライダーエビルが出てくる。
《仮面ライダーエビル!》
「不意打ちは得意みたいだが……まだ甘いな!」
「別のライダーになった!?」
そのままエビルは接近するとエビルブレードを振るう。流石に近接戦となると経験値の問題でエビルが上。タイクーンは足払いをかけられると首元にエビルブレードを突きつけられた。
「強い……」
「さてと。悪魔の居場所を知りたい所だが、お前。悪魔の匂いが感じられないな」
「え……?お前……人間じゃないのか?」
「ああ。俺は悪魔だ。……人の心には悪魔が宿る。だからお前の悪魔……見せてみろ」
その瞬間、エビルはタイクーンの額へと手を置くと彼の悪魔を探し始めた。すると景和の背後に黒い服を着つつもどこか雰囲気が違う彼がいた。
「お前、コイツと同じ顔をしてるが……雰囲気が違うな。何者だ?」
「別に……。世界平和を願うただの一般人だよ」
そう言ってタイクーンの心にいたもう一人の景和は消え、タイクーンは首を退かす。
「誰と話してるんだよ、お前」
すると周囲に異変が起きた。赤黒い壁のような物がこちらへと迫ってきたのだ。
「何だ……あれは?」
「ジャマーエリアが縮んでる?」
「ジャマーエリア?何だそれは……」
「一旦逃げた方が良い!」
タイクーンが逃げるままにエビルもその後を追う。するとそんな二人の前にイザンギの残した兵器が歩いてくる。
「ッ!?何だコイツ!」
「あの野郎が残した奴か……。コイツは単体ならそこまで強くない。無理矢理突破を……」
すると兵器は腰にデザイアドライバーを巻いていた。そして、小さなベルトが描かれたバックルをセットする。
《WIZARDRIVER!》
そのまま兵器が横からそのバックルを押し込むと横に炎の魔法陣が出現。それを通過するとその姿が変化していく。
《プリーズ!ヒー!ヒー!ヒーヒーヒィー!READY FIGHT!》
「何!?」
エビル、タイクーンが動揺する中。炎の魔法使い、ウィザードへと変身した兵器は手をベルトに翳すと炎を放ってくる。
二人はそれを躱すがその先に鎖が出てくると体を拘束。そのままウィザードが前に出現した魔法陣へと手を突っ込むと手が巨大化。そのまま二人は纏めて弾き飛ばされてしまう。
「「ぐあああっ!」」
そのまま二人が倒れ込むと立ち向かおうとするが、すぐ近くに迫っていたジャマーエリアに飲まれてそのまま赤黒い粒子となって消滅してしまう。
《RETIRE!》
「えっ!?景和さん!」
「消えた……」
「いっけなーい!あの壁に飲み込まれたら消えちゃうの。言い忘れちゃった!」
そう言ってデザイア神殿で割と軽いノリでそういうツムリ。普段の彼女ならこんな事は絶対言わないが、イメチェンと同時に彼女の性格も変わってしまっていたのだ。するとそこに黒い衣装に身を包み、アフロヘアに変わった狩崎ことブラック狩崎が声を上げる。
「さぁ、現れた仮面ライダーウィザード!その身に宿したファントムの力を借りて戦う指輪の魔法使い!」
「あなた誰?」
「コラスとか言うゲームマスターから実況を頼まれた通りすがりの仮面ライダーファンさ。よろしくね」
そう言う狩崎にツムリはめんどくさそうにしつつも狩崎と共にこの状況を楽しそうにしていた。
「大ちゃん!」
「行ったらダメです」
「でも……」
「あの壁、ヤバい匂いがプンプンするんだよ」
「ああ。今は黙って見てるしかできない……」
リバイスライダー達もいきなり消えてしまった大二に心配の気持ちが湧くが、それを何とか押し殺す。
「いつもの脱落とは違う」
「ああ。妙だな……」
普段なら余裕そうな英寿も僅かに焦りが見えている。四人は一旦どうするか話す事にした。
「急がないと不味いよこれ!」
「この悪魔は誰が運ぶんだ」
「えっと……あ!あれはどうですか?」
紬がそう言って指差す先には四つの同じくらいのサイズをした迷彩柄のリュックであった。
「ふっ……流石、初参加で最終戦まで残っただけの事はある。アレを使うぞ」
英寿はそう言って一つのバッグにリリスが入ったリュックを入れると袮音や道長、紬へと別のリュックを渡す。
「ここからは別行動だ。ゴール前で落ち合うぞ。あとハーム。お前はこれを持っておけ」
そう言って英寿は黄色と青のカラーでモンスターが眠ったようなバックルを渡す。
「えっ!?これ、初めて見るバックル……でも、英寿さんも……どうして」
「タイクーンも言ってただろう。こういう時は助け合いって。お前、見た感じタイクーンから貰った奴以外だとバックルを全く持ってなさそうだからな」
そう言う英寿に紬は無言になる。それは少し前の事。景和が飛び出す前に紬は彼から金色でスロットマシーンのようなバックルを受け取っていたのだ。
「これを預けてくれた景和さんのためにも、私の力で助けられる人達のためにも……私は絶対にゴールに辿り着きます」
「ああ。行くぞ」
《SET!FEVER!》
《SET!》
《SET!》
《SET!SET!FEVER!》
四人がそれぞれバックルを装填。英寿は右側にスロットの、袮音は右側に鍵盤のバックル、道長は右側に人間の肋骨のような形の蓋をしたバックル、そして紬は右側にスロット、左側にモンスターのバックルをセットした。
「「「「
すると英寿の方の右側のスロットは???の後にBOOSTの、紬の方のスロットは???の後にPROPELLERの文字が浮かぶ。
《GOLDEN FEVER!JACK POT HIT!GOLDEN FEVER!》
《BEAT!》
《ZOMBIE!》
《MONSTER!》
《READY FIGHT!》
そして、四人の体に装甲が合体すると英寿は白いキツネのライダー、仮面ライダーギーツに。袮音は金色の猫のライダー、仮面ライダーナーゴに。道長は紫の牛のライダー、仮面ライダーバッファに。紬はオレンジのハムスターのライダー、仮面ライダーハームに変身した。
ちなみに、ギーツは上半身に赤い装甲に両腕にバイクのマフラーが付いたブーストフォーム。ナーゴは上半身の両肩にスピーカーが付き、胸にはメーター。クラッシャーにはインカムが付いたビートフォーム。バッファは上半身に肋骨のような胸部装甲。棘が突き出た両肩。左腕にオレンジの爪が生えたゾンビフォーム。ハームは上半身に簡易的な胸と右肩のアーマー。腕には持ち手付きのプロペラ、下半身には両膝に黄色い大きな星。脚には一回り大きくなった青と黄色の靴を履いたアームドプロペラモンスターフォームとなる。
「うえっ!?靴がいつもより大きいっ!?スロットの方もハズレのバックル……」
「いや、今の状況なら寧ろ当たりだろ。空を飛んで移動できるというだけでメリットだ」
ギーツの言葉にハームは納得。それから早速四人は外に出るとギーツは赤いバイク。ブーストライカーに乗って颯爽と走り去る。それを見たリバイ達。
「あ、バイバーイ!」
「あれ!リュック!」
リバイの呼びかけにバイスは状況を理解して慌てる。それと同時に横からナーゴも声をかけた。
「悪魔は誰が持ってるでしょーか?」
「あっ!ちょっと!」
「よっしゃ。ここで狩ちゃん特製のレーダーの出番だ!」
「おう。ってあれ?何で……」
リバイが狩崎が作ったレーダーを見ると画面にノイズがかかって消えてしまった。
「ええっ!?」
「何でこうなるのよ!」
「あっ、そういえば狩崎さんが渡す時に言ってました。“これはかなりの高性能レーダーだが使える時間が限られてるって”」
「つまり電池切れって事!?」
これによりリバイは持っていたレーダーが使えなくなってしまった。そのためにギーツ達を追わざるを得ない。
「あれ?そういえばさっきトラックから出てきた影って運転手を入れて四人分。でも僕達の前に出てきたの三人。あと1人……あっ!上です!」
オーバーデモンズは空を飛んで移動するハームを見つけると指を指す。それを見たデストリームは声を上げた。
「あの子は俺が追う。皆は手分けして追ってくれ!」
「わかった!」
「行くぞバイス!」
「え?あ、ちょっとぉお!」
《バイスアップ!仮面ライダーリバイス!バイス!バイス!バイス!》
リバイはテンパるバイスをジャックリバイスへの変身で無理矢理取り込むとジャッカルバイスタンプを読み込ませる。
《ジャッカル!》
《エナジー!ペインティングフィニッシュ!》
リバイスはジャッカルの能力を自身に上塗りすると高速でギーツを追う。ジャンヌはそれを見てナーゴを、オーバーデモンズはバッファを追いかけた。デストリームはすかさずゲノミクスを使う。
《Next!》
《メガネウラ!》
《Dominate up!》
《メガネウラ!ネオバースト!》
デストリームが使ったのはメガネウラと仮面ライダーBLACK RXのレリーフが入ったメガネウラバイスタンプ。それによるゲノミクスで背中に黒と緑の胴体に透明な巨大な羽をしたメガネウラのボディを武装。そのまま空へと飛び上がる。
これにより、リバイスライダーにとっては悪魔を取り返すための追跡戦。ギーツライダーにとっては悪魔をゴールに届けるための逃亡戦が始まるのであった。
また次回もお楽しみに。