テロ組織アリコーン 謎の少女達
とある森の中。そこにひっそりと存在するそこそこ大きめな建物。ここはここ最近世間で多発する事件を主導するテロ組織。アリコーンのアジトであった。
「ぐはあっ!?」
その一室に囚われていたのはブルーバードの総司令官門田ヒロミ。彼は建物の内部のとある部屋に捕まっていると一方的な攻撃を受けていた。
「はあっ!」
「ごはっ!!」
ヒロミの意識は朦朧としており、かなりの深い傷を負っている。そんな中、アリコーンのリーダー的存在。染井俊一郎が完全にグロッキー状態のヒロミへと掴み掛かると彼へと話しかける。
「お前達のような古い存在が人類の未来の背負うべきではない。……アリコーンこそがギフ亡き跡を継ぐ者として相応しい」
「ぐっ……」
「我々ヒューマンミュータントが世界のガーディアンとして君臨する」
染井は高圧的な言葉で身動きができないヒロミへと語るように話しかける。そんな彼を睨むヒロミ。すると突如として外が騒がしくなる。
「……何だ?」
『外に敵影あり……ブルーバードの……があっ!?』
そのタイミングで通信の相手は倒されてしまう。報告を受けた染井は一度溜め息を吐く。
「……なるほど。コイツは我々のアジトを特定するための餌というわけか」
そんな中、染井の部下達は今なら離脱できるという言葉を投げかける。しかし、彼は少し考えるとその手にプロトバイスタンプを取り出す。
「……ブルーバードの襲撃など恐れるに足りない。捩じ伏せてやる」
染井はそう言うと手を上げつつ部下に指示を出すと徹底抗戦を選んだ。その頃、施設の外では二つのブルーバードの部隊が存在しており、その先頭にいるのは二人の指揮官だ。
「ヒロミさんが捕まっているのはここですね」
「ああ。ヒロミさんが命懸けでやっと掴んだ敵のアジト。逃すわけにはいかない」
それはブルーバードに所属する二人の戦士だ。仮面ライダーに変身できる彼等こそブルーバードの対アリコーンに於ける強力な戦力と言えるだろう。
「行くぞ」
「ああ」
二人が拳を合わせるとそのまま施設の周囲に存在する敵兵を音もなく蹴散らす。この時点ではまだ染井の指示が外にまで行き渡っていないらしく、楽に施設に迫っていくと二人に率いられたブルーバードの部隊は入り口にまで到達。
「このまま突入します」
そして部隊が内部へと侵入すると中にいる警備達は流石に状況を知っているのか迎撃態勢を整えていた。
「撃て!」
だが、連携の練度に於いてブルーバードに勝てる敵はいない。加えて今回も御用達のデモンズトルーパーが数名存在するのだ。並大抵の銃火器では彼等には勝てない。更に大二達は防弾チョッキ等で完全武装。生身の戦力の差も大きかった。
『大二君、光君、そのまま地下に向かってくれ。そこにヒロミはいる』
通信機から聞こえるのは狩崎の声だ。同時刻。ブルーバードの地上にある本部では狩崎が細かく戦況の指示を出していた。今はヒロミがいないので空のスカイベースを一度この拠点の超巨大地下倉庫に格納している。
「ここ最近のヒロミは危なっかしい真似ばかりするねぇ。でもまさか、自分を捕まらせる事でアジトの場所を暴くとは」
それから場面は戻り、アリコーンのアジトの地下の一室。ブルーバードの部隊が突入するとそこには数人のアリコーンの構成員が揃っていた。
「動くな!」
彼等は最初、両手を上げると抵抗の意思は無いような素振りを見せる。しかし、不意打ちで隠していた銃を連射するとブルーバードの部隊は咄嗟に伏せて回避。そのまま乱戦となるが、やはり初めから武装しているブルーバード部隊と手を上げるために武器を一度手放さなければならなかったアリコーンの構成員とでは戦力差が大きすぎた。
次々とアリコーンの構成員が倒れる中、別の部屋に隊員が入るとそこから何かが飛び出すと同時に隊員やデモンズトルーパーは吹き飛ばされてしまう。そこにいたのは下半身を毛むくじゃらの姿にしつつ体にはオレンジの折り紙のような物で包まれており、両腕は太く体からは下半身と同じく多数の毛が生えたオラウータンデッドマンが登場する。
「デッドマン……やっぱりここにもバイスタンプがあったか」
「ここは僕に任せてください。変身!」
《Delete up!》
《仮面ライダーオーバーデモンズ!》
光はオーバーデモンズとなるとオラウータンデッドマンを背中から展開したアームで拘束。そのままパワーで無理矢理抑え込んだ。
「がああっ!」
デッドマンは暴れるものの、やはりオーバーデモンズのパワーはフェーズ1程度では振り解けない。
その間に他の隊員が次々と構成員を電流を流す銃で気絶させ、大二が奥に囚われていた子供達がいる檻に到着する。
「皆怪我は無い?危ないから下がってて」
それから大二が銃で檻の南京錠を撃つとそれは壊れて檻の扉が開放される。この子供達は全員アリコーンがテロ活動をする中で拉致された人々であった。
大二が子供達に避難するように誘導する中、檻の奥の方にはセミロングの中学生ぐらいの少女が一人とその隣でその子を守るように手を広げるいたさくらと同い年ぐらいで髪は少女より長めのロングヘアをした若い女性がいた。
「……来ないで」
「……え?」
他の人質達が助け出されていく中、その二人だけは何故か檻から出ようとしない。
「ここは危ないんだ。だから……」
その瞬間、大二の頬を女性は引っ叩いた。大二がその様子に唖然とする中、女性は大二をキッと睨む。
「……ふざけないで。あなた達も私達を利用する口でしょう?留美は絶対に私が守る!」
「ッ……」
「大二、まだかかるか!」
そんな中でオーバーデモンズが声を上げる。避難が完了するまではここで下手に敵を爆散させるわけにはいかないので抑え込めはするが、長々とこうするのもリスクが高いために手短に済ませてほしかったのだ。
「わかった……」
大二は首から下げていた銃を置くと両手を上げる。自分達は攻撃の意思がないことを示したのだ。だが、女性の警戒心は下がらないのかまだ大二を睨んだままである。
「……お姉ちゃん、この人達は多分大丈夫だよ」
「でも、今来た奴らもアイツらときっと同じで……」
しかし、女性は留美と言われていた少女からの言葉に困惑。それでも彼女の目は変わらない。そのため女性は仕方なく折れた。
「……わかった。言っておくけど、アンタ達なんて信じない。これは留美のためだから」
女性は留美を連れると大二を一度鋭く睨んでからさっさと出て行ってしまう。
「ここから先の誘導は任せてください」
「はい、お願いします」
それから人質の解放を他の隊員に任せると大二は建物の奥へと進む。するとそこには先行して向かっていた隊員が何人か倒れており、大二が部屋に入ると同時にデモンズトルーパーの中の一人が吹き飛ばされて変身解除していた。
「ッ!?」
そこには首をコキリと鳴らす男。染井の姿があった。どうやら彼がこれをやったらしい。
「お前が……ここの組織のリーダー、染井か」
「……だったらどうする?」
「ヒロミさんはどこだ!」
「はっ、ヒロミって奴ならそこにしっかりといる」
染井が指を指すとそこにはしっかりと拘束されて意識が朦朧としかけていたヒロミがいた。
「ヒロミさん!」
大二が走ろうとするとその瞬間に染井はそんな大二を邪魔するように前に立つ。
「アイツを助けたいなら俺を倒せ。まぁ、お前達も悪魔の力を頼ってる時点で結果は見えてるがな」
「……その割にデッドマンは使うんだな」
「ふん、アレはただの捨て石だ。利用できるからしているだけの事」
大二はこの男の戦闘力は人間を遥かに凌ぐと考えるとツーサイドライバーを手にする。
「それならお前達と白黒付けてやる」
だが、その瞬間男は首の辺りに付けたチョーカーを押すと超人的な身体能力で大二へと接近。ツーサイドライバーを手にした腕を掴むと締め上げる。
「があっ!?」
「……我々は神より授かりしこの力を使い、未来のあらゆる脅威に対抗する。そのためにあの子供達は実験の道具として必要だったんだがなぁ」
「そんな事……」
大二が痛みに耐えつつ抵抗するも、染井は更に締め上げを強くすると大二の腕からツーサイドライバーが落下。それを染井は拾う。
「こんな物に頼らなければ俺達に対抗すらできないくせに……笑わせるな」
染井がそのベルトを手放すと落下するベルトへと拳を叩きつけ、そのまま地面にめり込ませるとたったそれだけでベルトを粉砕してしまう。
「ッ!?ベルトをたった一撃で……」
大二は敵のあまりのパワーに目を見開く。そのまま染井は大二の胸ぐらに掴みかかると持ち上げる。
「さて、力無き者よ。人類を守る組織は一つで十分だ。お前達には消えてもらおう」
すると染井は大二を投げ飛ばすと近くの壁に叩きつけさせる。幾ら鍛えている大二もこれだけ生身でダメージを負うのは厳しいものがあった。
「く……そっ」
「大二代われ!俺に考えがある!」
その瞬間、大二の意識の奥にいるカゲロウが声を上げると大二は彼と交代。それに伴って服装も黒い物へと変わった。
「……悪魔か。既に時代が終わったことを証明する良い機会だ」
「はっ、じゃあこれでどうかな?」
《ジャッカル!》
カゲロウがバイスタンプを押印すると自身の身体能力を強化。そしてそれと同時にカゲロウは超高速で動き始める。
「おらよ!」
そのまま染井に掴み掛かると彼もそれに対抗。二人は高速の世界で戦闘を繰り広げると最終的には元の場所に戻ってきてカゲロウが競り勝ち、染井を殴り飛ばす。
「ぐっ……」
すると彼が倒れた瞬間に先程のデッドマンを呼び出すために使ったオラウータンプロトバイスタンプが落下。しかもカゲロウとの戦闘で疲弊したのか動きが鈍った所にカゲロウが二つ目のライブガンの銃口を向けた。
「チッ……」
「悪魔舐めんじゃねーぞ?それとこのベルトはさっき破壊したのともう一個あるからな」
ツーサイドライバーは大二用とカゲロウ用で二つが存在していたために片方を壊されてももう一つを使うことができる。その間に他を制圧した隊員達が上がってくると染井を拘束し、銃口を向けていた。
《デモンズフィニッシュ!》
「はあっ!」
それと同時に避難中は拘束に徹していたオーバーデモンズが避難を完了して子供を巻き込むリスクが格段に下がったタイミングでオラウータンデッドマンを一撃で粉砕。撃破した。
これにより、アリコーンのアジトは完全に制圧。カゲロウはもう自分が銃を向ける必要が無いと大二と交代して引っ込んだ。尚、ライブガンは人格が変わっても大二が持ちっぱなしである。
「バイスタンプ……か」
するとそこにヒロミの元に救出に行った隊員達がヒロミに肩を貸すと大二の前に現れた。
「ヒロミさん!無事でしたか」
「ああ……何とかな」
それからヒロミは隊員から出された通信機を受け取るとブルーバード本部へと報告の連絡を送る。助けられたヒロミがそれをする事で作戦が成功したとわかりやすくするためだ。
「作戦終了。染井俊一郎の拘束に成功」
『コングラチュレーション!ヒロミ。君と大二、光の十八番。全身全霊囮り大作戦のおかげで誘拐された子供達を救出する事ができた』
「……何だそのダサい作戦名は」
ヒロミがそうやって抑揚のあまり無い声で狩崎の言葉を一蹴すると通信を切る。それと同時に変身解除した光も姿を現した。
「いや、その名前を決めたのヒロミさんですよ?」
「それに、奴をやれたのは俺のお陰じゃねーか」
光の冷静な指摘にカゲロウも自分の手柄を主張。ヒロミはそんな二人を尻目に自分がやると言わんばかりに先程までのフラフラとは打って変わって割とすぐに体力が戻ったのか自分で染井を拘束すると連れて行った。
「……?」
大二はこの異常な回復速度に僅かながら違和感を覚える。するとそこに先程助けた留美がフラっとやってくると女性が慌てた様子で声をかけていた。
「ちょっと留美!そんな奴等、危ないって!」
「君達はさっきの……すぐにご両親の元に帰れるから」
そんな風に言う大二。だが、そんな少女の返した答えは意外な物であった。
「お父さんとお母さんはいないの。……私は留美。おじちゃんはどこ?」
「……おじちゃん?」
留美は幼い純粋な話し方で大二へと問いかける。そんな彼女の手を女性は掴むと後ろに引っ張って引き戻す。
「だからダメだって言ってるでしょ。私から離れたら何されるかわからないんだから!」
ただ、留美はそんな風に言われても相変わらず純粋な目を向ける。大二は留美の言ったおじちゃんという単語が気になるのだった。
その頃、とある河原では疲労困憊の様子のヒロミが川から這い上がるようにして出てくる所だった。
「あ……ぐうっ……」
彼はかなりダメージを負っているのか息も上がっており、割と限界に近い様子である。……そしてこの状況は河原にいるヒロミと今助けられたヒロミ。この二人のヒロミが同時に存在する状態だった。果たしてこれが意味する事とは……。
また次回もお楽しみに。