仮面ライダーリバイスIF   作:BURNING

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市村の研究 女性の過去

アリコーンのアジトでの戦闘を終え、ヒロミを救出してから約一日が過ぎた。今現在、ヒロミは傷ついた体を治すために遺伝子工学研究所にいる。本来なら地上のブルーバード本部にある医療機関で受診するはずなのだが、ヒロミの受けていたダメージが大きく回復に時間がかかると判断されたためにこちらに回されたのだ。

 

「ありがとうございました」

 

ヒロミがこの研究所の所長である市村影考に会釈すると彼は笑みを浮かべる。そしてヒロミが出て行こうとしたタイミングで大二、光、狩崎の三人が入ってきた。

 

「全く、最近の君達は見ていて心配だよ」

 

「あれ?ヒロミさん……。もう傷の治療は終わったんですか?」

 

「ああ。おかげさまでな」

 

ヒロミの体へのダメージは大きかったはず。ただ、僅か半日で彼は回復していた。この凄まじい回復速度に大二はまた違和感を感じたが、光も狩崎もあまり気にしていない様子だった。

 

「どちらに?」

 

「助けた少女を迎えに行く」

 

「相変わらず仕事人間だね。ヒロミは」

 

そう言って素っ気なくヒロミは部屋を後にする。相変わらず真面目な一面が大きいヒロミ。そんな彼を三人は見送ると部屋に残っていた市村の元へと移動する。

 

「……それにしても即座に傷を完治できるほどに遺伝子研究が進んでいるとは。感服するよ」

 

「狩崎博士にそう言われると恐縮するなぁ」

 

市村は謙遜の言葉を言う。彼は元々朱美の部下としてフェニックスが活動していた時から遺伝子工学を医療に役立てていた。ブルーバードへと体勢が移行して高田の起こした事件以降、彼の研究成果が認められて朱美の元から離れると彼はここの所長として勤務するようになったのである。

 

「市村博士、あなたの遺伝子修復プログラム。トランザムザは医療の世界で革命を起こす可能性を秘めている」

 

「トランザムザ……」

 

トランザムザとは、市村が考案した遺伝子の高速治療法という物だ。発端はヒロミがデッドマンズベースで一時行方不明になった際にまで遡る。彼は当時、肉体年齢が老人にまで衰弱しており変身その物にリスクが出る状態となっていた。

 

「当時、朱美さんの部下として働いていた時はビックリしたよ。彼の肉体はそれ程までに衰えていたからね」

 

「あの時のヒロミさんは死ぬんじゃ無いかってぐらい無茶してましたしね」

 

それ以降、市村は上司である朱美へと遺伝子の高速治療法による肉体年齢の回復をできないかと提案。彼女にも採用されて研究が始まった。研究は困難を極めたものの、ヒロミが一度デッドマンになる際にギフによって体を修復されてから救われた事でその細胞データを研究に活かせると判断。

 

「おかげで彼の戦線復帰は遅れたけど、研究は更に捗ったよ」

 

ヒロミは光によって救われて以降、フェーズ5のフリオ戦まで復帰できなかったのはこちらの研究を優先されたかららしい。

 

「全く。君の頑固さは当時、朱美君も困ってたけどね」

 

「それでも凄いですよ。遺伝子を修復する事で肉体年齢をある程度戻せるなんて」

 

「とは言え、まだまだ改良の余地はある。それに、私の研究はヒロミ君の体ありきだ。彼にはまだまだ死んでもらっては困るからね」

 

市村は自信のある顔でそう言う。彼はまだまだこの研究を発展させられると話している辺り、本当に改良の余地があるという事だろう。

 

「ヒロミさんは俺達二人が守ります」

 

「ヒロミさんには僕も何度も助けてもらいましたからね」

 

「それは頼もしいね。……では、雑談はさておき。本題に入ろう。君らが戦ったヒューマンミュータントについて、詳しく話してもらおうか」

 

それから市村は再び真剣な顔つきとなると三人がここへとやってきた本来の目的。それはアリコーンで染井が発動していた力。ヒューマンミュータントについてを市村に話すためであった。

 

同時刻。幸せ湯では前日に助けられた留美をさくらが追いかけ回している状態である。

 

「ちょっ!待ちなさいよ!」

 

「嫌だね〜!ほら、こっちだよ〜!」

 

さくらは完全に留美に振り回されており、そのまま一輝が掃除中の男湯の方にまで来てしまっていた。

 

「ここ男湯だから!もう!」

 

「元気な子だなぁ……」

 

「ふへへっ。あんな元気な子を見てたらよ、俺っちも混ざりたくなってきたぜ」

 

幸いだったのが今はお店自体が準備中で誰も客が存在しなかった点だろう。そうでなければとんでも無い事態になっていたに違い無い。

 

「バイスは出てくるな。余計に状況がこんがらがるぞ」

 

「えぇーっ!俺っちも混ざりたい!混ざりたい!混ざりたいよ!!」

 

「煩いぞバイス」

 

「……そういえばお兄ちゃん、誰と喋ってるの?」

 

留美が首を傾げる中、一輝はそんな彼女へと一人で話していた理由を説明をする事に。

 

「ああ、これは俺にしか見えない俺の悪魔と喋ってるんだ」

 

「ふぅ〜ん。変な人〜」

 

「って、あれ?」

 

「もうそろそろ良いでしょ!ちゃんと髪を乾かさないと風邪をひくからね!」

 

「ラブ〜!乾かさないとダメコブよ!」

 

ラブコフもさくらの中から留美へと注意するが、勿論ラブコフの方の声は届かない。

 

「そういや、その服。似合ってるぞ」

 

「えぇ……。ダサいってこれ……」

 

留美はそう言って服のセンスの無さにドン引きする。ちなみにそれは白い布地に大きなハートが描かれており、英語の文が印刷された物であった。その反応を聞いたさくらは苛立つ。何しろそれは……。

 

「ちょっと、私のなんだけど!」

 

「あははははーっ!さくらの美的センスダサいって言われてやんのー!」

 

「コブ!バイス!少しはデリカシーを考えるコブ〜!」

 

「だってよ。俺っち嘘吐かないし、思った事を素直に言える良い悪魔だし……痛ってぇっ!?」

 

その瞬間、ラブコフが流石に苛立ったのかいつの間にか手にしたハリセンでバイスの尻の辺りを引っ叩いていた。どうやらお互いに人間の内部に潜んでいる状態の悪魔同士であるなら物理的な干渉が可能らしい。前にバイスが脳内のラブコフと触れ合えた事もそれに由来するだろう。

 

「さくらもいつまでもその子の相手をしてて良いのか?勉強とかあるだろ?」

 

「一輝兄は引っ込んでて。この子はちゃんと私が面倒を見るってあの人にも約束したしー!」

 

さくらは勉強を頑張りまくったおかげで無事に医療の専門学校には進む事ができた。ただし医療系の勉強の難易度はこれまでの比では無く、勉強前の元々の真ん中より少し下だった事もあって着いていくのも大変な状態ではあったが。

 

「さくらとしては勉強の息抜きみたいな感じで受け持ってるみたいだけど、なかなか大変な事になってるな……」

 

ちなみに当初、留美を五十嵐家に一時的に預けるのには留美と一緒にいた若い女性が猛反対していた。だが、本人の行ってみたいという意向もあって一度二人はバラバラで保護する事になったのだ。

 

それはさておき、そんな彼等の前にブルーバードの方での体の治療を終えたヒロミが幸せ湯へと姿を現した。

 

「あれ?ヒロミさん」

 

「……預かってもらって悪かったな」

 

「あ、いえ。さくらも遊び相手ができて息抜きによかっ……ごはっ!?」

 

「一輝兄?余計な事言わないの」

 

さくらから見舞われた強烈な拳によって一輝はノックアウト。痛みに顔を歪める事になる。そんな一輝を見てバイスは同情の目線を向けているとまたラブコフからのハリセンを喰らった。ただし、今回は冤罪だったが。

 

「さくら、ごめん」

 

「わかれば良し」

 

「ラブラブ〜。わかればええんやで〜」

 

「おー、痛てて……俺っちの方は完全に冤罪じゃねーかよ」

 

「おじちゃん。遅いよ!……約束、守ってくれるんだよね?」

 

「……行くぞ」

 

留美からの問いにヒロミは特に多くは語る事無く彼女と共に移動を開始。そんな様子を二人は見送るのだった。

 

それから数時間ブルーバードの牢屋から事情聴取のために呼ばれた染井は同じ建物内にある取り調べ室で大二、光の二人と相対していた。

 

「子供達を誘拐して何をしようとしていた?」

 

「さぁな。今にそんな事どうでも良くなるさ」

 

「……何だと?」

 

染井はあくまで余裕な態度を崩さない。そんな彼に冷静な顔のまま光は問いかける。

 

「まだアリコーンは壊滅してない。お前はそう言いたいのか?」

 

「ああ、そうさ。近日中に我々の同志が市街地に無差別攻撃を仕掛ける」

 

「チッ……デッドマンズベースの時と同じか。本拠地を潰したせいでそこ以外に散っていた構成員の居場所を特定しづらくしたと」

 

「はっ……。アリコーンの実力を世界に知らしめる時が来た!」

 

染井がそうやって大二を挑発するように話す。光は冷静さを失ってないために挑発は効かないと判断した彼は大二の方から切り崩すつもりで彼を煽る。

 

「貴様!世界を守るんじゃなかったのか!」

 

大二が怒りのまま彼の胸ぐらを掴むとそれを見て流石に光も大二を宥める事に。

 

「落ち着け、大二。冷静さを失えば彼の思う壺だ」

 

「ッ……」

 

大二がそれを聞いて染井から手を離す。そんな中、彼の目はまるで希望に満ちているようであった。

 

「計画を阻止したいなら私を解放して同志の元に戻せ。多くの人間が死ぬ事になるぞ?ふっ……はははは!あははははっ!」

 

染井が高笑いして己の優位を誇示する中、尋問の時間が終わって彼は牢屋へと戻される。ただ、そんな彼に光は懸念を示していた。

 

「アイツを確保した時からどうにかして首のチョーカーを外そうとしたが……やっぱり外れない。アレがそのままなのは厄介だな」

 

「でも、無理に外して大きなリスクを背負うよりは彼を拘束して触らせないようにすればいい」

 

前の戦いで彼が力を解放したのは一度首のチョーカーに触った後。そのため彼にチョーカーを触らせないようにすれば理論上は封殺可能というわけだ。

 

それからブルーバードの本部へと戻った大二と光。そんな彼等の進む先に前日助けた女性が立ちはだかる。

 

「……アンタ達、どういうつもり?」

 

「どういう、というのは?」

 

「留美の事を誘惑してあの子一人にさせて……」

 

「別に一人ってわけじゃない。俺の家族が保護してる」

 

その言葉を聞いて苛立つのか女性は歯軋りする。大二は彼女の隣を通り抜けようとすると彼女は大二の肩に手を置いて引き戻した。

 

「ふざけないで……家族って言葉……。私は大嫌いよ」

 

「……俺を信じろとはもう言わない。でも、あなたの周りの人は悪い人ばかりじゃ無い」

 

「それが綺麗事だって言ってるのがわからないの?」

 

女性は大二へと敵視の声を上げると大二は内心で彼女を説得するにはどうすれば良いのかを悩む。

 

「おい、大二。代われ。こんな女さっさと振り切ってやる。狩崎との約束の時間もあるだろう」

 

「いや、やめろ。余計な手を出してこれ以上状況を悪化させたく無い」

 

大二はそう言ってカゲロウが出るのを静止すると彼女と正面から向き合った。

 

「……どうしてそこまであなたは俺達周りの人間を毛嫌いにするんですか?」

 

「……私は幼い頃にアイツらに攫われたのよ。自分達は私の家族の親戚だと嘘を吐いてね」

 

女性はそれから思い出したく無い事を思い出すようにして大二へと自分の事を話し始める。

 

「アリコーンって組織は元々はデッドマンズの影に隠れてコソコソと動いてたの。ただ、彼等が壊滅して日の目を浴びたらしいんだけどね。私は約十年前に彼等に拉致された。彼等は当時犯罪なんて深く知らなかった純粋無垢な私を利用したの」

 

彼女はアリコーンに拉致されてからというもの、彼等の玩具として扱われたらしい。時には酷い労働をさせられ、時には実験台として扱われる。彼女は運良く生き残ったものの、その過程の中で死んだ同年代の子も少なくなかったらしい。

 

「……私達拉致された子はアイツらにとってはただの替えの利く都合の良い実験台なの。ただ、その死亡率はある日を境に急激に減ったわ。……留美が囚われたあの日からよ」

 

その言葉を聞いて大二は考え込む。恐らく被験体が死ななくなったのは留美に関係する事であると。

 

「あの子は最初から死んだような光の無い目をしていた。他の子と違って最初から心を折られたようだったの。……だから私は助けたい。あの子だけ特別なのはそういう事」

 

「……そうか。話してくれてありがとう」

 

「ふん。別に……」

 

「えっと……」

 

「千春。……結城千春よ」

 

千春はようやく大二へと自分の名前を名乗るとさっさと踵を返して行ってしまう。すると大二の元にガンデフォンが鳴ると連絡が入った。

 

『いつまで油を売ってるつもりだい?大二、光。少し不味いことになった。街中でヒロミが誘拐犯扱いされている』

 

「「……え!?」」

 

二人は狩崎から伝えられたその言葉に耳を疑う。あのヒロミがそんな事をするはずが無い。二人は頷くと急いで狩崎のいる司令室へと向かうことになるのであった。




また次回もお楽しみに。
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