ヒロミが誘拐犯扱いされてしまう少し前の事。留美と共に出かけたヒロミは二人で商店街を歩いていた。
「ねぇ、おじちゃん。私遊園地行ってみたいな!」
「……」
しかし、留美から言われてもヒロミは無反応である。まるでそんな事無関心だと言わんばかりだ。留美も流石に違和感を感じたのか歩きを止めてヒロミの手を引っ張る。
「……?」
「おじちゃん……誰?」
ヒロミはまるで表情を変えずに真顔で留美を睨み付けると留美の心は恐怖に支配されていく。目の前にいるのはヒロミの姿をした別の何かだと薄々感じ始めていたのだ。するとヒロミは周りを見渡すと少しずつ自分に疑いの目を向けられるようになったのを感じていた。
「俺か?決まってるだろう。門田ヒロミだ!……一緒に来い!」
ヒロミはそう言って無理矢理にでも留美を連れ去ろうとする。留美は大慌てでヒロミの手を振り払うと一目散に逃げ出していく。それを見てヒロミもまるで留美の誘拐犯のように後を走って追いかけた。
その様子を多数の人間が目撃。中には写真や動画を撮る人もおり、撮られた写真や動画はネットにアップされるとその影響でヒロミは不審者だというイメージが世間の人々の中に根付いてしまう。
そして、とうとうメディアにまで話が到達すると速報が報道されて少女誘拐事件の犯人としてヒロミが持ち上がってしまった。
「ワッツ!?ヒロミ、そればどういう意味だ?」
それと同時刻。司令室の狩崎はヒロミからかけられた電話に出ていた。その際に発したヒロミの一言が狩崎を混乱させる。
『どういう意味って、作戦は成功したのかって事だ。少し前まで河原で気絶していて状況が把握できていない。だから情報共有を頼む』
「ヒロミ、何を言って……む?」
するとヒロミのいるすぐ近くでテレビ局によるヒロミの誘拐事件についての報道がされ、それは狩崎の方にもリアルタイムでの配信がされた。
『ここで速報です。ただいま、ネットで話題になっている少女誘拐事件の現場に来ています。およそ二十分前、丁度この辺りで男が少女を連れ去ろうとした模様です。少女と男は未だ行方不明。尚、誘拐犯と思われるこの男はブルーバードの総司令官。門田ヒロミ氏だという事実が判明しました』
そんな風な報道を受けてヒロミは慌てて片手で顔を隠すと狩崎へと自身の容疑を否定する。
『俺じゃない、狩崎。一体何が起きてるんだ……』
「……仕方ない。今そっちに迎えを送る。そこを動かないように……」
『いや、俺は少女を……留美を探す。まだ遠くには行ってないはずだ』
「待てヒロミ。今君が街中を歩くのは危険……」
しかし、ヒロミからの電話はこのタイミングで切れてしまう。狩崎はその現状に頭を悩ませ、こうなったら仕方ないと言わんばかりにいつまでも来ない大二達へと連絡した。
そして、二人が司令室に到着すると何故か二人と一緒にいた千春も顔を揃えていた。
「大二、何故助け出した彼女もここにいる?彼女は部外者だろう」
「……話は聞いたわ。留美が行方不明ですって?」
千春の顔は今までになく険しく、大二達を睨みつけていた。手は強く拳を作って握りしめている。
「……どれだけ私達を騙せば気が済むの?あなた達は……」
「落ち着け。連れ去ったのはヒロミじゃない」
「ふざけないで!だったらアレは何なの?……私達を助けるために来たって言ったアイツの言葉は……嘘なんでしょ!!本当は私達を利用するだけ利用して捨てるくせに……」
千春は怒りのままにそう言うとその背中に黒い何かの影が出てきた。それを見て三人は目を見開く。彼女はギフ関連の事件には巻き込まれていないはずだ。それなのに千春の背中に出てきた黒い影は彼女の負の感情と共に増幅されている。
「……まさか、この女も相当デカい悪魔を飼ってるとはなぁ」
大二の中にいるカゲロウがそう呟くものの、大二は呑気にしているカゲロウを叱りつけた。
「カゲロウ、今はそんな事言ってる場合じゃないだろ」
「……もう我慢ならないわ。留美は私が助け出す!」
「待ってください!」
そう言ってさっさと千春はその場から出て行くと街中へと向けて走り出す。大二がそれを追いかけて出て行くとそれを受けて狩崎は溜め息を吐く。
「……仕方ないなぁ。光、一輝達に連絡してくれ。こちらはこちらでヒロミと少女を探す」
光は頷くと本物のヒロミと留美をいち早く助けて保護するために行動を開始。
「やれやれ。どうりで捕まる前に私に預けていたデモンズドライバーを回収しなかったわけだよ」
実は今回の作戦のためにヒロミはデモンズドライバーとバイスタンプを全てブルーバードに返却しており、それを偽ヒロミの方は知らなかった。そのためにデモンズドライバーを狩崎から返却するという頭が無かったのである。
こうして大二は留美を探しに勝手に出て行った千春を追いかけ、ブルーバードの方は総力を上げて本物のヒロミ探しをする事になるのであった。
その少し後。一人偽ヒロミから逃げていた留美は人気の無い森の中にある公園へと到着していた。
「はぁ……はぁ……」
留美は何とか茂みの裏に隠れると周りに人がいない事を確認。一先ずは偽ヒロミからは逃れられたと安堵の顔つきを浮かべる。するとそんな彼女の後ろから迫る影が一人。そしてその影は二度と留美の肩を優しく叩くと声をかけた。
「……もう大丈夫だ」
留美は慌てて振り返るとそこには先程自分を怖い目で追いかけて来た人物と瓜二つの顔。そのため彼女は警戒した顔つきになる。しかし、その顔つきは次の言葉をかけられて消えた。
「……どうしたんだ?」
留美はその言葉と共に男から優しく頭を撫でられると目を見開く。それと同時に少し前に彼が、ヒロミがアリコーンのアジトに初めて来た時を思い出した。
〜回想〜
「皆大丈夫か!?」
ヒロミは丸腰でアジトに潜入した際に一度囚われていた子供達の檻の前へとやってきていた。そして彼の元に行こうとする留美を見て千春は彼女を引き留めようとする。
「留美、ダメよ。こんな奴をそう簡単に信じたら……」
「……ううん。大丈夫だよ。お姉ちゃん」
留美はヒロミの前に立つと自分を信じてくれた彼女へのお礼とばかりにヒロミは留美の頭を撫でる。
「ッ……アンタ、留美に何を……」
千春が苛立ちと共に詰め寄ろうとするが、留美がそれを手で止めた。そんな中、ヒロミは囚われた子供達へと話しかける。
「……必ず助け出すから待っていてくれ」
「……おじちゃんは悪い人じゃないね」
留美がそんなヒロミへと純粋な目を向ける。その瞳を見て千春は目を見開く。いつも死んだような雰囲気を出していた彼女の瞳の奥に初めて光が見えたからだ。
「ッ……留美、まさかこんな奴を信じるの?」
「うん。私はおじちゃんを信じたい」
「おじちゃんって……俺はまだ……」
「私、留美。ここから出られる?」
ヒロミが訂正しようとする中、留美はここから出たいと言わんばかりの声をかける。それを聞いたヒロミは彼女の言葉を肯定した。
「ああ」
「そしたら遊園地連れて行って!」
留美がそう言うと同時にアジトの中にいる敵が歩いてくる音が聞こえた。そのためヒロミは手短に彼女へと答えを返す。
「……わかった。必ず戻るから俺を信じて待っていてくれ」
「約束だよ!」
そして、その直後にヒロミはアリコーンの構成員に見つかって捕まった。そして場面は現在に戻る。
〜現在〜
留美が男から受けた言葉と手つきはあの時、自分を本心から助けてくれようとしていたヒロミと同じ感覚だった。今、彼女の前に現れたのは本物の門田ヒロミであったのだ。そして留美は先程のヒロミの仕草から彼が本物だと見抜いたらしい。
「おじちゃんだ!」
留美はヒロミへと抱きつくとその純粋な瞳と言葉をヒロミへと向ける。それは、千春の前でも殆ど見せなかった彼女の本性だ。
「もう、おじちゃん来るの遅いよ……」
「ごめんな。だけどそのおじちゃんって言うのは……」
「遊園地、行こ!」
ヒロミはどうにかしておじちゃん呼びを訂正してもらおうと思ったが、留美はそれを遮るように遊園地に行きたいとせがむ。
「あー、でもその前に何か食べたいな。お腹ペコペコ!」
留美がそう言うとヒロミの方のお腹も鳴り響く。そのため、二人は笑い合った。
「……そうだな。俺もだ。良し、行こう」
それから二人が茂みから出て移動しようとする。だが、次の瞬間。いきなり二人の足元に緑の弾丸が命中した。
「ッ!?」
そして、二人の前にリーダー格と思われる男と女の二人を先頭に後ろに数人の集団が立ちはだかる。
「……何面倒かけてんだよ?ガキ!」
「さぁ、お兄ちゃん達と一緒に帰ろう」
二人のリーダー格がそう言って明らかに留美を連れ去ろうという魂胆が見える中、留美はそんな二人から感じる感覚に恐怖する。
「……あの人達、怖い」
「心配するな、留美。君は俺が守る」
それと同時に二人のリーダー格の後ろに控えていた集団が一斉にヒロミへと襲いかかった。そのためにヒロミは彼等へと応戦。
「はあっ!」
相手は武器持ちで自分は丸腰だったものの、捕まる目的だった潜入時とは違って今は留美を守りながらというハンデがあっても彼にはここまでの死戦を潜り抜けた経験がある。
対して向こうは寄せ集めでまともに訓練していないのか連携もバラバラだったため、多少ハンデ有りでも生身のヒロミの力で圧倒できた。
ヒロミは迫り来る敵を殴り、蹴り、どうにか倒していく。中には留美を直接狙う者もいたが、敵から奪った棒状の武器で応戦。
「だあっ!」
「ごはあっ!?」
最後の一人も倒し終えるとヒロミは未だに向かってこなかった二人のリーダー格の前へと出て話しかけた。
「……この子をどうするつもりだ?」
「お前には関係無いから引っ込んでな」
「大人しく俺達に従った方が良いけどな」
そんな風に高圧的な態度を取る二人。そんな二人組は染井同様に首に付いたチョーカーを押す。すると二人の体にそれぞれ青と緑のオーラが浮かぶとそのオーラが武器として集約された。
「それは……」
男の方の名前はユキオ。彼は青いオーラから約二メートルに達する黒を基調としつつも棒青いラインや紋章の入った武器を作り出す。
女の方の名前はマリコ。彼女は緑のオーラからクロスボウのような形状をしたボウガンを生成。ただ、色は黒を基調に緑のラインや紋章が入り、更に一般的なボウガンとは違って弓の部分が縦に展開し、持ち手の方に弓の引き金が存在する。
「さぁ、やろうか」
そのままユキオが走ってくると手にした棒を振り回してヒロミへと叩きつけるとそれだけで衝撃波が発生して吹き飛ばされる。
「があっ!?」
「ほら、どうした?そんな物かよ!」
更にユキオが棒を突き出して先端をぶつけるとそのままヒロミを投げ飛ばす。
「ぐあああっ!」
ヒロミは何とか立ち上がると反撃しようとするが、その瞬間いきなり緑の空気弾が腹に命中。それと同時にヒロミへと電撃が走ると痛みが全身へと響く。
「あぐうっ!?」
「困るのよね。アンタがいるとさ!」
そのまま弾丸を放った主であるマリコがゆっくりと近づきつつ弓の引き金を引いてから銃のトリガーを引いて弾丸を連射。
「ッ!」
ヒロミは何とか横に転がって回避するも、ユキオがその先に立っており、彼がヒロミの首を掴んで持ち上げる。
「あ……ぐうっ!!」
「ユキオ、そのまま押さえてなさい」
「おう」
その間にマリコが留美へと手にしたボウガンを構える。それを見てヒロミは目を見開く。
「な、何をする?」
「……簡単な話よ。彼女が着いていくのを拒否したのだから気絶させて連れて帰る」
「止めろ……お前ら……」
ヒロミがそう言うものの、マリコが止めるはずもない。そのため留美はこのまま撃たれてしまうかに思えた。
「ッ……」
留美はその場から逃げ出そうにもマリコから向けられる殺気に当てられて脚がすくんでしまう。するとそこにいきなり何かが飛んでくるとマリコへと体当たりする。
《仮面ライダーオーバーデモンズ!》
そこに現れたのは光が変身したオーバーデモンズであった。彼は空中からヒロミを探していた所、ヒロミと留美が二人でいるのを発見。ヒロミと相対する相手がアリコーンの構成員と判断して彼が本物と断定し、加勢しに来たのだ。
「大丈夫ですか?ヒロミさん、留美ちゃん」
「光か……すまん」
「チッ……余計な真似すんなよ!」
ユキオがヒロミから手を離すとオーバーデモンズへと突進。棒を振り抜くも、オーバーデモンズの防御力の前に通用しない。そのため、オーバーデモンズが棒を掴むとユキオを引き寄せて片腕で彼の腕を掴んで拘束。
「一先ずここは僕が足止めします!お二人は早くブルーバード本部に逃げてください!」
「ッ……」
だがそれは留美の意思に背く。ヒロミはそう思考するも、今はそんな事を言ってられない。ヒロミもドライバーを手にしていれば戦えたが、今現在の彼の手元には無いのだ。
ヒロミは留美の元に向かうと二人でその場から逃げ出す事に。マリコがそれを追いかけようとするが、その瞬間オーバーデモンズから伸びたアームが彼女のボウガンを持つ手を拘束。
「ッ!?」
「させませんよ!」
そのままマリコをアームで投げ飛ばし、それと同時にユキオもマリコの近くに叩き伏せた。
「マジ?超ダルいんだけど」
「……ここは退くしか無いわね……覚えておきなさい!」
マリコがオーバーデモンズの足元にエネルギー弾を連射して爆発させると煙幕を張って撤退。それと同時にヒロミにやられて倒れていた構成員も含めていなくなった事ために変身解除した。
「……逃げられたか」
光は正直敵がここまですんなり諦めるなら二人をその場に残すべきだったと思ったが、もう遅い。二人が逃げてどこに行ったのかもわからないために再度二人を追う形で探しに行くのだった。
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