ムラマサが先制で一輝達に本物のヒロミを偽物として仕立て上げると敵として認識させる。
「ヒロミさんの……悪魔?」
「って事はこっちのヒロミさんが敵って事ですよね?」
そんな風に光は本物のヒロミに対して構えを取る。留美はそんな光へと首を横に振り、否定するが光の目線は完全に敵を見ている時のそれだった。
「ヒロミさんの悪魔だからって、容赦はしませんよ!」
光が飛び出す中、さくらもそれに合わせて参戦しようとする。するとさくらの脳内にいるラブコフが声を上げた。
「コブ!?さくら、待ってコブ!」
「ラブちゃん!?待ってってどういう事?」
そんな中、光はヒロミの胸ぐらを掴むとそのまま壁へと押し込む。光からの突然の攻撃に慌てるヒロミ。
「待て光、俺は本物の門田ヒロミだ!信じてくれ!」
「……カゲロウの時がありますしね、ヒロミさんと同じ姿をしていてもおかしく無いんですよ!」
ヒロミは何とか光を蹴り飛ばして距離を取る。だが、光は尚も攻撃を止める様子を見せない。光が接近しつつボクシングのようにストレートからのジャブを放つ中、ヒロミは光からの攻撃を何とか捌く。しかし、ムラマサとの戦闘でのダメージが大きいせいで上手く捌ききれずに何発か攻撃を貰ってしまった。
「ッ……光、一度落ち着け!」
ヒロミが必死の説得を試みるが、光はまだ止まってくれない。すると留美が悲痛な声を上げる。
「やめて!おじちゃんを虐めないで!」
「えっ……」
さくらは留美が悪魔と言われた本物のヒロミに懐いている様子の留美を見て困惑。するとラブコフが更に声を上げた。
「さくら、偽物はあっちコブ!光の攻撃相手、本物のヒロミ!」
「一輝兄、ラブちゃんが偽物はあっちって言ってるけど!?」
「なっ!?」
「ああ。一輝。俺っち達悪魔の目は騙せないぜ。あの剣を持ってる方が偽物だ!」
バイスもラブコフの意見を肯定するようにムラマサを敵と断定する。そのため、一輝とさくらは光へと攻撃を止めるように言った。
「待って!光さん!攻撃をやめて!」
「えっ!?」
光が護身用の光弾の銃を構えた瞬間にその言葉が聞こえ、ヒロミは急いでそれを奪うと光へと向ける。
「……信じてくれ。俺が本物の門田ヒロミだ」
それからヒロミは一輝達三人に順番に威嚇として銃を向けると留美と共にその場から逃げ出した。
「ヒロミさん!」
「その前に、アイツを……」
「ってアレ!?居ねぇし!?マジかよ、アイツ、俺っち達を騙せないと知って逃げやがった!」
一輝達はターゲットをムラマサに変えようとしたその時に彼の姿はおらず。見事にしてやられたと光は悔しさを滲ませた。
「……すみません。僕の判断ミスです。奴の言葉を信じてしまって……」
「ひとまず、反省は後にしましょう。大二にこの事はちゃんと伝えます」
それから一輝からの連絡が大二へと飛び、ガンデフォン越しでヒロミの悪魔の存在が大二へと伝達された。
「でもまさか、ヒロミさんに悪魔がいるなんて」
「……なぁ一輝」
「何だよ、バイス」
「俺っちはさ、アイツの事。悪魔とは違う存在だと思うんだよな」
「……は!?」
一輝がその言葉を聞いて目を見開く。そんなバイスへと一輝は更に問いかけた。
「おい、バイス。どういう事だよ」
「だから、あのヒロミっち似の男は悪魔じゃないかもしれないって事だよ。纏ってる空気は悪魔に少し似てたけどよ。どちらかと言えばヒロミっち本人に近いと言うか……。前にヒロミっちの悪魔と直接対決したからわかるんだが、悪魔に似た別の何かって感じがするんだよなぁ」
その言葉を聞いて一輝達は考える。だが、一番有り得そうな回答がムラマサはヒロミの悪魔だという仮説だ。そのために一同は悪魔という選択肢を有力としつつも、それ以外の選択肢が無いので一応ヒロミの悪魔(仮)という話となった。大二にそれを言うという行為を取ろうとするが、今はヒロミが二人いる事だけで混乱しているのに更に不確定な情報を入れるのは不味いという判断で一度それは見送られる事になる。
同時刻。大二はアリコーンのアジトでその話を聞き、パソコンのデータを復元する傍らでカゲロウと話をしていた。ちなみに千春は同じ部屋の中で待機している。
「やっぱりヒロミさんの悪魔の仕業か」
「……やれやれ、どいつもこいつも短絡的な奴等だなぁ。その情報だけで悪魔と断定するとは」
「兄ちゃんやさくら達が直接見たんだぞ。間違いは無いだろ」
そんな風に大二が言う中、カゲロウは呆れたような笑いを浮かべてその仮説を一蹴する。
「おいおい。バイスやラブコフの二人も悪魔って断定したのか?悪魔には悪魔特有の匂いがあるだろ」
「……いや、流石にそこまでは聞いてないし。それにお前が俺と初めて入れ替わったあの時はバイスが匂いでお前の事を感知してなかっただろ」
「それはあくまで当時はまだアイツが再度覚醒したてで未熟だったからだろ?今は俺がお前の姿に変装しても匂いを使って見分けてるじゃねーか。アイツのあの馬鹿みたいな鼻が嗅ぎ分けをミスするとしたら……相当頭がイカれるような事があったんだろうなぁ」
カゲロウがバイスへの悪口をさりげなく言うと大二はある事も思い出してカゲロウへと問う。
「でも、確かヒロミさんって悪魔を倒された後にカブトデッドマンになってただろ?」
「……あれは多分イレギュラーな存在だ。ヒロミが一度記憶を失ってしまった影響で一時的に捻くれた奴に変わったから生まれただけ。元の人格に戻った今はもう出ないだろ」
先程から意見を否定してくるカゲロウへと大二は訝しげな様子で彼の意見を聞く。
「……だったら、お前はどう思ってるんだよ」
「俺はもっと他の可能性を考えてみろって言ってるんだよ。例えばそこの女の中から感じられる気配とかが顕著だぜ?」
カゲロウがそう言ったタイミングでパソコンに接続していたタブレットにデータの復元完了の音が鳴る。そのため、一度話は打ち切りとなるとタブレットの中身を見ることになった。
「……その話は後だ。データの復元が終わった」
大二が持ってきたタブレットの画面にとある人物が表示される。それはブルーバードの誇る遺伝子工学技術の第一人者……市村であった。
「敵の真の狙いは……無差別テロじゃ無い」
それから大二は手に入れたいデータを持って千春と共にブルーバード本部へと戻る。そして、千春を安全な本部に預けると狩崎と共に遺伝子工学研究所へと向かった。
「市村博士。アリコーンの真の狙いはあなたの可能性が高いです!」
「……理由は一つ。遺伝子修復プログラムであるトランザムザを利用するつもりだろう」
「まさか、人工的にヒューマンミュータントを生み出すつもりなのか?」
市村の持つ遺伝子修復プログラムを使えば人間をヒューマンミュータントへと変えられる。それだけの技術が敵に存在するという事だろう。
「……一体アイツらは何者なんですか」
「君達の情報から分析したが恐らく彼等は突然変異で生まれ、肉体を細胞レベルで操る事で人間が無意識に抑制している潜在能力を瞬間的に引き出す事ができるのだろう」
だが、それだと僅かに疑問点が浮かぶ。それは、光のオーバデモンズがユキオ、マリコと交戦した際に彼等が人間では到底扱えないような武器を手にしていた事だ。
「……だが、アリコーンの幹部の二人が使っていたあの武器は何だ?それに、私はどこかであの力を見た気がする」
狩崎が考える中、もしそんな力を敵が手にすれば当然世界にとって危険な存在となる。それは避けなければならない。
「それに、そうだとしたら恐らくドライバーもバイスタンプも必要無いのか」
「ああ。その通りだ。それに、悪魔と契約するリスクも無い」
悪魔の力を借りる必要が無ければヒューマンミュータントは人間の姿のまま凄まじい力を発揮できる事になる。それは悪魔との契約による大きなリスクを回避できる事に繋がるのだ。
「……だったら尚更時間が無い。待ってないでこっちから仕掛けるべきです!」
大二は早期に決着を付けるべくある策を講じる。それは捕虜にした染井を囮として使ってアリコーンの幹部達を誘い出すのだ。
「でも、それは我々にとっても大きなリスクとなるぞ」
「だとしても、俺と光なら勝てます」
大二の言葉に狩崎は承諾。ひとまずヒロミ捜索に出ていた光を呼び戻すと彼が戻ってくるまでの間に大二は囚われていた染井を取り調べ室に呼んで連絡用のスマホを出した。
「……染井俊一郎。お前を解放する。仲間に連絡を取って受け渡し先を告げろ」
それを聞いた染井は邪悪な笑みを浮かべる。彼は待っていたとばかりに連絡を取ると受け渡し先を大二達に聞こえるように堂々と話す。
「……これで良いんだろう?ただ、どういう風の吹き回しだ?」
「お前に話す必要は無い」
染井の問いを大二は一蹴。いずれにせよ、数時間後には染井の引き渡しが行われる事になった。
そんなブルーバードの動きを他所に再び場面は逃げ出したヒロミ、留美の元に移る。二人はとある建物の中にいた。
「……大丈夫だな」
外からはパトカーのサイレンやヘリの音も聞こえる。恐らく、誘拐犯である自分を見つけ出すためだろう。そんな中、ヒロミは先程現れたムラマサという男に頭を悩ませていた。
「まさか俺の悪魔が蘇っていたとはな」
「……私、おじちゃん困らせちゃった」
「そんな事は無い」
ヒロミが自分を責めようとする留美を慰めようとする中、留美は首を振ると自分が悪いと告げる。
「ううん。だって私のせいで誘拐犯になったんでしょ?」
「心配しないで大丈夫だ。それに、謝るのは俺の方だ。俺から生まれた悪魔が君を狙ってるんだからな」
ヒロミもヒロミで自分の悪魔のせいで留美が追われる結果となっている事に後ろめたさを覚えていた。
「……おじちゃん。痛そう」
「これぐらい大した事は無い」
だがヒロミは体への疲労感が溜まっており、加えて頬にはムラマサからの太刀を避けた際に掠ってしまった傷もあった。
「……私が治してあげる」
すると留美はヒロミが疑問符を浮かべる前に彼へと両手を翳すと手に光を宿らせる。そして、次の瞬間にはヒロミの傷は治された。
「ッ……。傷が無くなっただと……」
加えて先程から感じていた体への疲労感も改善しており、留美が隠し持っていた回復能力を見てヒロミは驚きの顔を浮かべる。
「留美、お前は一体……」
「私ね、あの施設で沢山の人を治した。死にかけている皆を治療して……。それが施設での私の役割だったの」
留美の中には普通の人間とは違う力があるらしい。そんな彼女のお陰でここまで疲労困憊だったヒロミの体は回復された。
「向こうの人達は実験の度に私の事をあそこから連れ出したの。お姉ちゃんの事も治療したよ。でも、お姉ちゃんの事を沢山虐めてた」
お姉ちゃんというのは千春の事だろう。留美はそんな千春の事を何度も治療した。千春はそれ程までに数多く痛めつけられたらしい。
「……千春。俺の事を毛嫌いしていたあの子か」
「うん。……施設の人に私はお姉ちゃんの妹だって刷り込まれた。最初はお姉ちゃんは私の事も信じてなかった。でも、ずっと過ごす中でお姉ちゃんは私の事を庇ってくれるようになったの。だから……私はお姉ちゃんの事を沢山治したいって思えた」
ヒロミは留美の言葉に考え込む。留美の能力、そして千春の事を姉として刷り込まれた理由。その理由にあと少しで辿り着けそうな気がした。
それから時間が経ち、染井が指定した場所へとブルーバードの部隊と染井が乗った護送者が移動。隊長として指揮を任された大二は何としてでもここでアリコーンを潰すべきと昂っていた。
「……絶対に奴等を倒す」
そんな中、目的地が近づくと彼等の前にアリコーンの幹部であるユキオ、マリコの二人が姿を現す。そして、その隣にはヒロミとそっくりな姿をした悪魔。ムラマサも立ちはだかるのであった。
また次回もお楽しみに。