仮面ライダーリバイスIF   作:BURNING

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カゲロウの離反 信頼による関係

失意のままブルーバード本部に戻ってきた大二。あの後光も千春も無事であり、ブルーバードの隊員達もそれぞれが傷こそ負っていたが強化装甲若しくは変身による耐久上昇のお陰で生き残ってはいた。

 

「……クソッ。何でだよ……あの野郎」

 

大二がブルーバードの更衣室に一人で座っているとそこに光がやってくるとある事実を伝える。

 

「……大二、またあの少女の目撃情報があったそうだ。一緒にいる男はヒロミさんそっくりの顔をしているんだと」

 

それを聞いて大二はすぐに向かおうとする中、光はその肩を掴む。光は大二が精神的にやられていると考えて、彼へと出撃は控えるように首を振る。

 

「……大二、お前はもう無理するな。……ここからは僕達でどうにかする」

 

「光にどうにかできるのかよ」

 

「……」

 

「お前、話を聞くと一度ヒロミさんを見間違えて本物を攻撃したんだろ。休まないとダメなのは光の方だろ」

 

大二は気が立っており、苛立ちを光にぶつけてしまう。光はそんな大二を見て一度深呼吸するとその言葉を受け止めた。

 

「……ああ。お前の言う通り、僕は一度ヒロミさん見間違えて攻撃した。だからこそ、僕が行く。自分でやらかした失敗はちゃんと自分で尻拭いさせてくれ」

 

光がそう言ってから部屋を出て行く。外に出た光が見たのはこちらもまた傷の治療が済んだ千春だった。彼女の目は大二を問い詰めようと言わんばかりである。

 

「……千春さん。大二に色々言いたい気分はわかります。でも、まずは冷静になってください」

 

「でも、留美が……。もう一日ずっと離れっぱなしなのよ。それに、留美と一緒にいる門田ヒロミはもう信用に値しないわ」

 

「……あなたの過去、ちゃんと調べました。他人を易々と信用できないのも分かります。でも、ヒロミさんも大二も……絶対にあなた達を見捨てません。だから、少しだけ彼等に時間を下さい。お願いします」

 

そう言って光は去って行く。その言葉を聞いて千春も深呼吸すると大二をそっとしておく事にした。彼女もここまでの間に我慢を覚えたらしい。それは、ヒロミが無理でも大二の事だけは信用できるようになった証拠だろう。

 

「……私が完璧な存在だったら……。留美は傷つかずに済んでるのに」

 

千春は悔しさのあまりその場で壁に寄りかかると己の弱さに涙を流してうずくまった。

 

場面は戻り、更衣室へ。大二が頭を抑える中、カゲロウは内部から声をかけた。

 

「おいおい。結局敵の良いように振り回されてんじゃねーか」

 

「……そんな事ぐらいわかってる。……一々言うな」

 

「お前とヒロミの信頼関係ってこんなにも薄いんだな。ま、光の野郎はそれがわかってるからちゃんと自分で自分の失敗を取り戻そうとしてるんだろうけどな?」

 

カゲロウが大二を煽るように言うと大二は余計な水を差されたせいか更に苛立つ。

 

「黙れって言ってるだろ」

 

「あーあ……。だらしねぇ……。もう面倒見切れねぇな」

 

《バット!》

 

するとカゲロウは一時的に主導権を奪うと手にしたバットバイスタンプを自らに押印。それによって大二を召喚する形で分離すると彼へ話しかけた。

 

「お前には呆れた。アリコーンの奴等の方が面白そうだ」

 

そんな風に話すカゲロウを見て大二は困惑。何しろ彼の言ってる事は明らかなブルーバードへの裏切りである。それを大二は受け止められなかった。

 

「おい、自分が何を言ってるのかわかってんのか?」

 

「……ああ。俺とお前の信頼関係も……これで終わりだ」

 

そう言ってカゲロウは一人更衣室から去って行く。そんな彼を大二は呼び止めるが、こうなった彼が聞く耳を持つはずがない。

 

「じゃあな」

 

《イーヴィルウィング!》

 

「ッ!カゲロウ!」

 

カゲロウがスタンプを地面に押すと近くに存在する影の中へと入り込む形で彼は姿を消してしまった。そんな彼を見送った大二は己の弱さを痛感してしまう。それから彼は移動すると壊れてしまったツーサイドライバーを狩崎へと渡した。

 

「……随分派手にやられたね。これでツーサイドライバーは二機共に破損……か」

 

狩崎は先に壊れた方の修復を行なっており、あと数日あれば復活できるものの、今はカゲロウがいないせいで最高戦力はホーリーライブ止まりとなっている。更に出力が上のエビリティライブで負けたのだ。そんな大二単独で勝てる見込みはほぼ無いだろう。

 

「……すみません。染井俊一郎を奪われてしまいました。あと、カゲロウが」

 

そんな中、狩崎は立ち上がると大二の胸を軽く押す。

 

「そんなに自分を責めるなよ大二」

 

「でも、俺とカゲロウ、光の三人がかりでも勝てなかったんです。もう俺達でどうにかは……」

 

「じゃあ、一輝やさくら、元太さんに頼むかい?」

 

狩崎はそう問いかける。一輝達にも頼んで今持てる全戦力を使えば確かに勝ち目はあるだろう。だが、大二の中でそれをする気にはなれなかった。

 

「……いえ。今の俺が兄ちゃん達にそんな事を頼む資格なんてありません」

 

「ほう?」

 

「俺はカゲロウという唯一無二の相棒に捨てられたんです。そんな俺が、家族に泣きつくなんて……そんなの許される事ではありませんから」

 

大二は覚悟があった。一輝達にまでこの事件を任せていたら今までと何も変わらない。これまでずっと事あるごとに一輝達を巻き込んできたのだ。せめて今回だけでも自分達だけでどうにかするべきと考えている。

 

「そうか。だったら、せめて助力は頼めなくても……実家のお風呂ぐらいには浸かってきたまえ」

 

「でも……休んでなんかいられません。それに、ヒロミさんだって一度光に助けられてからずっと戻ってきてませんし」

 

そんな大二の言葉に狩崎は強い眼差しを大二へと向けて彼へと話しかけた。

 

「……ヒロミにはヒロミの考えがあると私は見ている」

 

「信じているんですね、ヒロミさんを」

 

「これまでデッドマンズを倒し、ウィークエンドを倒し、ギフを倒し、高田達を倒し、デザロワを生き延び、別世界の敵も倒した。ずっと一緒に戦ってきた仲間だろう?そう簡単に疑うなんてできないさ」

 

狩崎も実際の所はヒロミを信じきれているかと言われたら素直に頷くのは難しい所がある。だが、それでも彼はヒロミを信じると言い切った。それが、自分にとってできる最善の事なのだと信じているのだ。

 

「狩崎さん……」

 

「それに、彼とは腐れ縁もある。君とカゲロウも同じ事さ」

 

狩崎はかつてヒロミに悪魔が眠っている事を知りながらデモンズドライバーを使わせてしまった過去がある。そのせいでヒロミは一度いなくなり、敵として帰ってきた。その時は光が助けたものの、恨まれてないかと言えばそう言い切れない所もある。

 

そして、それはカゲロウも同じだ。最初は敵として現れた彼は一度大二に命を助けられた。そしてその借りを返すかのように彼は正義の心が暴走する大二のストッパーとして度々機能。最終的に朱美を救い出し、赤石と決着を付けられるまでに二人は絆を深めた。

 

「はい。すみません、狩崎さん……頭を冷やしてきます」

 

それから大二が一人幸せ湯に帰るために歩いて行くとその途中で蹲った千春を見つける。

 

「……千春さん」

 

「何よ……」

 

「一度、俺の実家に来ませんか?」

 

「どうしてよ……」

 

「俺のお節介です。せめて、今の俺にできる事は千春さんの気持ちを温めるだけなので」

 

彼女は顔を上げると涙によって目が充血しており、そんな彼女は大二をジッと見てからゆっくり立ち上がった。

 

「……わかったわ。アンタのお節介にやかれてあげる」

 

千春は大二の言葉を受け入れた。彼女も変わり始めているのだ。大二との出会いのお陰で、信じられなかった他人を少しずつ信じるようになっているのだ。

 

それから二人で幸せ湯に行く中、太陽は半分近くが沈むと辺りは夕焼けの色に染まる。そんな中、ヒロミと留美は割と近くに遊園地のジェットコースターが見える地点にまで来ていた。

 

「……はぁ」

 

「留美。奴等の狙いはやはり君だったのか」

 

「うん」

 

留美が近くに来ても遊園地に入れない現実を薄々感じており、溜め息を吐くとそこにヒロミが優しく話しかける。

 

「……私はいつの間にか生まれていた」

 

「幼い頃の記憶が無いのか?」

 

「わからない。両親の顔は覚えてなくて……周りに家族なんていなくて。でも、千春お姉ちゃんが私の姉だと教えられて……。私は嬉しかった。お姉ちゃんが、家族がちゃんといてくれて」

 

だが最初、千春は留美を拒絶した。その時の記憶はもうボヤけている状態だが、留美は覚えている。

 

「千春お姉ちゃんはアンタなんか私の家族じゃ無いって、アンタなんかと一緒にするなと言われて……。私、悲しかった。でも、一緒に過ごす内にお姉ちゃんは私に愛情をくれるようになったの」

 

それは両親のいない留美にとってはかけがえの無い大切な時間だった。だから、彼女は血が繋がってないと周りから言われても千春を姉として慕ったのだ。

 

「そうか。優しい姉に恵まれたんだな」

 

「うん。……でも、あそこの人達は私達を道具としてしか見てなかった。私は生まれつき持っていた回復能力?を使って死にそうになった子達を沢山助けた。中にはもう半分死んでるくらいの子もいたのに、私が治療したら完全に治って……。でも……」

 

留美はそれから自分が治した子供達から恨まれるようになった。最初こそ死の淵から救ってくれた留美に感謝こそしたのだが、それが続く内にその治療を望まない声が高まっていったのだ。

 

「何で死なせてくれないのか、何で頼んでも無いのに助けたのか……。そんな事ばかり言われるようになったの」

 

その言葉を聞いてヒロミは納得の顔になった。助けの来る見込みが無い中で痛めつけられては全回復し、また痛めつけられるなんて繰り返される。そうなれば当然回復された相手は囚われの間、永遠に痛ぶられる現実から逃げたくなるだろう。子供なら尚更だ。

 

「……実際、救われた子達の殆どは生きる希望を失っていた。それこそ、死ぬ事を望むぐらいに」

 

ヒロミも一応通信機能で狩崎から状況報告は貰ったらしい。それはもう酷い物だったが。

 

「私の中にある誰かを元気にする力って……誰かを苦しめる物なのかな?私の生きてる意味って……何?教えてよ、おじちゃん」

 

留美はヒロミの方を向くと涙ぐんだような目であった。そんな彼女を見たヒロミは彼女を抱きしめるとそんな彼女の耳元で囁くように彼女を慰める。

 

「……大丈夫だ。少なくとも俺は助けてもらって良かったと思えてる。……それに、留美の生きてる意味は必ず見つかる。生きていれば必ずな」

 

自分でそう言った直後、ヒロミは目を見開いた。その言葉はかつてヒーローになるためにデモンズドライバーに命を喰われながらも、戦い続けた自分への強力な問いかけになっていたのだ。

 

「おじちゃん。……ありがと。……やっぱり、私はおじちゃんみたいな人が家族にいてくれた方が嬉しかったな」

 

留美がそう言うとそんな二人の足元に存在する影から何かが飛び出すと降り立った。それは大二から抜け出した彼の悪魔、カゲロウである。

 

「逃亡中の誘拐犯が何こんな所で油を売ってるんだ。……目撃情報が多すぎなんだよ」

 

カゲロウはイーヴィルウィングバイスタンプの力で影という影を渡りながら街中で人々から情報を聞きつつ集めていた。そして、二人の影に辿り着いたのである。

 

「……あのアホのお陰でこの力が手に入ったかと思うと複雑だが、今回ばかりは感謝だな。これで用事が手短に済む」

 

イーヴィルウィングの力は本来ならカゲロウがかつて決闘で大二に負けて消滅の道を歩んだ時点で手に入るはずがなかった代物。つまり大二のお陰で得られた力だ。

 

「カゲロウ……どうした?」

 

「おい誘拐犯よ。お前の悪魔はいつ生まれた?」

 

カゲロウからの問いにヒロミは記憶を辿る。その際に思い浮かんだのは自分が囚われてから敵の構成員にサンドバッグ化されていた事だ。

 

「あの時俺は……染井俊一郎にスタンプを……いや、大二達が来たという連絡を受けて……」

 

だが、その先がわからない。スタンプを出された所までは覚えてるが、あくまで彼の記憶はそこ止まり。そこから先は記憶が曖昧なのだ。

 

「そうかよ。お前のような善良な奴に悪魔がいるなんて俺は思ってなかったんだけどなぁ……」

 

するとカゲロウが留美を見ると笑みを浮かべる。まるでヒロミの話とここまでの感じ方から何かの確信が得られたようだ。

 

「はっ……。ヒロミ、ありがとうよ。お前のその回答とこの少女のお陰で大体の事はわかった」

 

「何?そう……なのか?」

 

ヒロミは多くを語らないカゲロウに困惑しつつもそう言葉を返す。するとカゲロウはゆっくりと近寄るとヒロミの前に立って話しかける。

 

「ああ、礼なら要らねーよ。何しろ……」

 

次の瞬間、ヒロミはカゲロウから思い切り腹を殴られた。その痛みで彼の意識が遠のき始める。

 

「俺の目的はこれで達成できるからな?」

 

カゲロウの手にはクイーンビーバイスタンプが握られており、そのスタンプの力でヒロミに僅かだが神経の麻痺の毒を入れたのだ。

 

「その毒は五分後には自動で消える。だが、俺はこの辺でお暇するぜ。……悔しかったら追ってこいよ」

 

その言葉を最後にヒロミは麻痺毒のせいで気絶。そこに留美が駆け寄ると声をかける。

 

「おじちゃん!?おじちゃん、大丈夫!?」

 

「さーて。この子に回復されるのも面倒だしお嬢ちゃんは俺と一緒にさっさと行こうか」

 

そう言ってカゲロウは留美の手を捕まえるとそのまま引っ張る。勿論彼女がそれを受け入れるはずがない。その場で抵抗を始めた。

 

「嫌っ!お兄ちゃん、悪い人なの?」

 

「……俺は悪魔だぞ?悪い奴に決まってるだろ」

 

そう言ってカゲロウは留美を更に引っ張るが、留美はやはりカゲロウとは行かないと言わんばかりに抵抗。

 

「はぁ……。ここで俺まで誘拐犯みたいにされんのは面倒だ」

 

《バット!》

 

カゲロウはバットバイスタンプを自らに使うと手から超音波を発生。留美の耳へと特殊な超音波を当てると彼女は眠るように気絶した。

 

「超音波にはこういう使い方もあるんだよ。じゃあ、さっさと行くか」

 

そのままカゲロウは倒れた留美を抱えると再びイーヴィルウィングの力で二人揃って影へと消える。これは彼が監視カメラ等で自分を補足できないようにするためだろう。

 

それから少し時間が経ち、日は完全に落ちた。そんな中、大二と千春は幸せ湯のロビーへと入って行く。

 

「ただいま」

 

「……お邪魔します」

 

「大ちゃん!?お帰り……」

 

「……と、そちらは?」

 

「……結城千春。今朝は留美がお世話になったわね」

 

彼女の名前を聞いて留美が言っていた血の繋がってない姉だと二人は確認すると大二、千春の二人は一輝達に迎えられる事になるのだった。




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