実家に帰った大二、そして初めてやってきた千春。そこに元太と幸実も出てくると元太は早速驚きの声を上げた。
「なぁっ!?だ、大二が……女を連れてきた」
「父ちゃん、その言い方は失礼だろ」
「ふへへへっ!ま、大二につい最近まで女っ気なんて無かったからな。そう考えると確かに驚きだよな!」
バイスが霊体のまま笑いつつ拍手をすると幸実は二人へと優しく話しかける。
「……大二、久々に帰ってきたんだからゆっくりしていきなさい。それと……千春さんで大丈夫ですよね?」
「はい……」
「あなたも歓迎するわ」
「……ありがとうございます」
それから一輝は落ち込んだ様子の大二を見て肩を優しく叩くとある提案をした。
「大二、こういう時は風呂に入るぞ」
「……ああ」
それから先に行く中、千春は早速困惑したような顔つきとなる。彼女は自分が多少は不満の受け皿になろうと考えており、大二と話そうとして秒で彼を取られてしまった。
「千春さん。私達もお話ししませんか?」
さくらは千春の背中を押すとこちらの二人も実家の温泉に入る事に。元太と幸実はそんな四人を見届けた。
「……こうしてみると、どんどん俺達の子供は育っていくな」
「ええ……多分もう私達が今いなくなったとしても、一輝達は自分たちでどうにかできる力があるもの。さ、私達は夕飯の支度をして待っておきましょう」
それから元太達もそれぞれ戻っていき、一輝と大二は風呂の中で話を始める。
「……そっか。ヒロミさんの悪魔が誘拐犯の正体で、カゲロウはアリコーンへの寝返りか」
「……ああ。もうこうなってくるとわけわからねぇよ」
大二は完全に滅入った様子だった。そんな彼を心配して一輝はあることを大二へと問いかける。
「なぁ。カゲロウは自分から離れたのか?」
「……ああ。俺がだらしないからアリコーンに行くとさ」
「裏切られた……そう思ってるのか?」
大二はその問いかけに頷く。やはり彼はカゲロウに裏切られたと思っているらしい。
「俺は……アイツと何度もぶつかり合ってるから、アイツの考えはある程度はわかってるつもりだったんだけどな。……どうして裏切ったのか」
大二とカゲロウ。顔も姿も同じ二人は表裏一体。今まで何度もぶつかったからこそ、今更何故彼が裏切る真似をするのかが分からなかった。
「……なぁ、大二。それって俺っち達と何も変わらなくね?」
「……え?」
するとお風呂の中に持ち込んでいたガンデフォンから声が鳴るとバイスが映り込む。
「そういや、お前も俺とくっついた時に裏切ったフリして好き放題してた時があったよな」
それはかつてジャックリバイスに変身したての頃にバイスは策としてわざと嫌われ役を買って出た。その時と状況がよく似ている。苦境に立たされて、それを打開するために悪魔が嫌われ役をした点に置いて、一致するのだ。
「ふへへ。アレはアレで楽しかったなぁ!」
「どこがだよ……。でもさ、大二はもう既にちゃんと自分の答えが出てるな」
「……え?」
「大二はカゲロウが裏切ったなんて信じられないと思うのなら……それで俺は十分だと思う。それに、アイツら悪魔は素直じゃ無いんだ。それにきっと、悪魔でも無いんだよ」
「おおっと、俺っちが悪魔じゃないってどゆこと!?」
バイスが悪魔という言葉を否定されて声を上げると一輝はバイスの事を踏まえて答えを返す。
「バイスも、カゲロウも、ラブコフも。俺達三人の分身……そしてそれは自分自身なんだよ。大二もずっとカゲロウと一緒にいたんだからわかるんだろ?二人共、目的は一緒って事だ」
その言葉を聞いて考え込む大二。するとバイスが手を叩くとある事を言い始めた。
「あっ、そういやよ。ヒロミっちの悪魔?みたいな奴を見たんだけどよ。俺っちもラブコフもどうにもそいつが悪魔って感じがしなくてよ」
「……へ?」
「ああ、そういえば言えてなかったんだけどさ。ヒロミさんとその悪魔を見た時に……バイスは二人が殆ど同一人物に見えてたみたいでよ」
「まさか……そういう事か!?」
大二は声を上げるとようやく彼はヒロミの悪魔と名乗ったムラマサの正体について何か気づいたようだ。
その頃、女湯の方ではさくら、千春が湯船に浸かっており、その隣にはラブコフが珍しくお風呂の中にいた。
「……何、この子?」
「んー?ああ、この子は私の悪魔のラブコフよ」
「悪魔……こんな可愛い子が?」
千春がそう言った瞬間、慌てて口に手を当てた。思わず思った事を言ってしまったのだ。
「ふふっ……。留美ちゃんから聞いてた話と随分違うね。……大ちゃんと一緒にいて何か心の変化があったのかな?」
「ラブラブ〜!千春、よしよし〜!」
するとラブコフは千春の元にのそのそと歩くと手を上げて千春の頭を撫でる。それを彼女は振り払おうとしなかった。それどころか、その手を受け入れるぐらいである。
「……ッ。何で、私……」
千春は自分でも困惑していた様子だ。あれだけ散々嫌っていた他人を信じられるようになってるという事に。
「それは、千春さんがこの場所を居心地良い所って思てるからですよ」
「……!!」
千春は長らく忘れていた。幼い頃、あの施設へと連れ去られるまでに感じていた家族の温かい温もりを……やっと彼女は思い出せたのだ。それと同時に千春は呟く。
「……そっか。私……いつの間にかアイツに……大二に救われていたのね」
その声色は相手を敵視するような厳しい口調では無く、相手を信じて受け入れようとする柔らかい物になっていた。
同時刻。とある施設内部ではカゲロウが留美と共にムラマサの前に姿を現していた。
「……君は五十嵐大二の悪魔、カゲロウか。……その子を連れてどういう風の吹き回しだい?」
「お前らの手間を省いてやったんだよ。……この女を渡す事を条件に俺を仲間に入れろ」
「……ふむ。悪いが僕の一存で決める事はできない。その女を連れたままこっちに来い。あの方に合わせてやる」
それからムラマサに連れられてカゲロウは留美を拘束したまま更に奥へと移動することになる。するとカゲロウの前に一人の男が現れると彼へと留美を差し出した。
「ほう。君がわざわざ我々の目的の少女を連れてきてくれるとはね」
「御託は良い。俺と悪魔の取引だ。ムラマサの奴には言ってあるが、改めて言わせてもらう。この女を差し出す代わりに俺を同志に加えろ」
カゲロウからの言葉に男は笑みを浮かべるとカゲロウからの提案を受け入れる。それと同時に早速彼への最初の指示を出した。
「明日、君とムラマサの二人でブルーバードを潰しに行ってもらう。勿論君が先陣だ」
「……信用して欲しければ結果で示せ。そういう事か?」
「ああ、何しろ君は宿主を一度裏切った蝙蝠のような悪魔だからね」
カゲロウは男からの指示を受けると頷く。彼もその辺りはちゃんとわかっているらしい。
それから数時間後。夜も深くなってくる中、ヒロミは一人人目につかないような廃墟と化した建物の内部で悔しそうに壁を殴っていた。
「……俺は留美を守れなかった」
思い出されるのは留美のあの純粋な笑顔である。彼女はヒロミへと遊園地に行きたいと頼んでいた。それを果たせずにこうしてここで黙っているしか無い自分の無力さを呪う。
「約束したのに……俺にできる事は例えこの身がどうなろうとも……」
「……そうやってお前はまた同じ事を繰り返すのか」
ヒロミはベルトも無しに命懸けの特攻をしようとする。するとそんなヒロミへと声をかける男がいた。そこにあったのはフェニックス時代に総司令官をしていた男でヒロミの憧れだった存在。若林優次郎だった。
「若林総司令官……」
「相変わらずだな。門田」
若林とヒロミは向き合うと若林は一度溜め息を吐く。これまでフェニックス時代の頃からヒロミの事を見てきた彼だが、ヒロミがこの期に及んで命を懸けようとしているのを見過ごせないようだ。
〜挿入歌 Without you DEAR GAGA Ver.〜
「お前は戦いの中で学んだはずだ」
かつてヒロミはデモンズドライバー内部にいた悪魔、ベイルに文字通り命を吸われ、体内年齢が六十代を超えるぐらいにボロボロになるまで戦い続けた。そして、最後には自分が身代わりとして偽天魔が変身したカメレオンデッドマンと相打ちとなる形で行方不明になってしまう。
この時、本来なら彼の命は終わっていた。だが、赤石に拾われてギフの力によって体内年齢は年齢相応にリセットされ、彼は息を吹き返す事になる。ただ、その代償として彼は記憶を失って一輝達と敵対する事になってしまった。
「命を無駄にすれば、結局何も守れない事をな」
すると若林は服の胸ポケットに入っていた封筒を出すとそれをヒロミへと渡した。
「これは……」
「お前の母親からの手紙だ」
「……ッ!?でも、ガガは……もう」
ヒロミの言うガガというのは彼の生まれ故郷に残してきた母親の事だ。だが、彼女は数ヶ月前に亡くなっている。
「……お前の母親が亡くなる際に遺言として俺が預かっていた。当時はブルーバードが立ち上がったばかりで忙しかったからな」
それからヒロミが手紙を広げるとそこには確かに彼の母親の字で、大切なヒロミへの想いの言葉が綴られていた。そして、最後に書かれていた一文を見てヒロミの目に涙が浮かぶ。
“あんたは私の自慢の息子。だからもうこの世にはいない私の事は良いからあんたは世界を守ってきなさい。だから、私の所にすぐ来たら許さないから。精一杯、頑張っておいで”
「ガガ……俺は、俺は……」
ヒロミはその文を見て自分がまた命を無駄に散らそうとした事を恥じる。そして、若林はそんなヒロミへと再度声をかけた。
「お前がこうなってしまった原因の一端は私にもある。……デモンズドライバーの件、改めて済まなかった」
「……顔を上げてください、総司令官。俺はもう気にしていませんよ」
「そうか……。お前はデッドマンズベースで一度死んだ身。そしてそこから生きて帰ってきた。……お前はもう立派な真のヒーローだ。……それを証明してみせろ。門田ヒロミ」
その言葉を最後に若林はヒロミの前から去っていく。ヒロミはそんな若林へと頭を下げて礼を言った。
「……総司令官、ありがとうございました!俺にとってあなたはいつまでも憧れの上司で……俺のヒーローだ」
ヒロミからの答えに若林は一度足を止めてヒロミの方を僅かに向いてからまた去っていく。そんな彼がいなくなるまでヒロミは頭を下げ続けるのだった。
翌日の朝。幸せ湯で一晩を過ごした大二は誰よりも早く起きると千春を起こそうとする。しかし、その手前で彼は踏みとどまった。
「……千春さん。あなたの大切な妹は俺が助けます」
そう言って大二は千春を置いて一人で行ってしまう。それからブルーバード本部に到着すると狩崎が待っていた。
「ヘェイ、大二。おはよう」
「おはようございます、狩崎さん。……敵の正体に辿り着けました」
「ふっ……。やっぱり無駄じゃ無かっただろう?家族と過ごす時間は」
「……はい」
「なら、君にこの二つのスタンプとこれもプレゼントだ」
狩崎が見せたのは同じ造形の大きめな蝙蝠が描かれたバイスタンプである。ただし、二つのスタンプのカラーリングは違った。片方はピンクの素体に白の蝙蝠。レリーフはライブの正面の顔で蝙蝠の複眼や翼の差し色は黄色だった。
もう片方はピンクの素体に黒い蝙蝠。レリーフはエビルの正面の顔で蝙蝠の複眼や翼の差し色は緑である。
「これは……」
「光と闇。二つの力を合わせる事で真価を発揮する仮面ライダーライブ、仮面ライダーエビルにおける最強の力だ」
そのスタンプの名前はメガバットバイスタンプである。白い方はTYPE–LIVE、黒い方はTYPE–EVILといった所だ。
そして、狩崎はもう片方の手にスーツケースを持っており、大二にスタンプを渡してから中身を見せる。
「……!」
「ああ。昨日ヒロミから連絡があってね。カゲロウが少女を攫ってアリコーンへと向かったらしいから、君も行ってくれば?」
「……狩崎さん。ありがとうございます!」
「ヒロミにも精々頑張るように伝えてくれ」
大二が狩崎へと笑みを見せる中、狩崎もそんな大二へとサムズアップで返した。
「あの、狩崎さん」
「ワッツ?何かな」
「……千春さんの事、もしここに来たら俺の所に行かないように伝えてください。……あの人には幸せになって欲しいんです。だから……」
すると狩崎は大二の肩を叩きながらすれ違い様にそんな大二の考えを否定する。
「そんな風に彼女の事を想ってるのなら他人任せにするな。……生きて戻って、君が幸せにしたまえ」
狩崎はそのまま仕事のために本部へと戻っていく。それから大二は一人バイクに乗り込むととある場所に向けて走らせる。そして、そこに目当ての人物、門田ヒロミがいた。そして大二はバイクから降りるとヘルメットを取り、装備していた銃を構えるとヒロミもそれに合わせて光から奪っていた銃を向ける。
「……ヒロミさんですよね?」
「お互いに証明のしようが無いな」
今は大二、カゲロウとヒロミ、ムラマサを見分けるための手段が無い。そのため、どうする事もできない状態だ。
「……そこを通してくれ」
「あの少女を助けに行くんですか?」
「そうだ。遊園地に連れていくと約束したからな」
ヒロミがそう言うと大二は構えていた銃を下ろした。そして、そんな二人の元にもう一台バイクが到着。降りてきたのは光である。
「僕を除け者にしないでください」
「光……」
ヒロミが光へと銃を構える中、彼はヘルメットを取るとヒロミの構えた銃を見てある事を伝えた。
「その銃はあの時僕から奪った物。……僕があの時所持していた銃の種類と一致します。本物のヒロミさんです。あの時は申し訳ありませんでした」
光は銃を向けられながらもヒロミへと頭を下げた。もしこのヒロミがムラマサなら確実に撃たれている場面だ。それでも光は目の前にいるヒロミを信じていた。光が頭を上げると入れ替わるように大二はバイクに積んでいたスーツケースをヒロミへと渡す。
「彼女はカゲロウが攫ったんですから、俺にも責任はあります」
「僕もあの時ヒロミさんを信じていれば、このような事態になりませんでした。だから……」
「「俺達も行きます」」
その言葉を聞いてヒロミは二人へと向けていた銃を下ろす。そして、ヒロミは二人へと問いかけた。
「お前達は俺を本物だと信じてくれるのか?」
「……今の俺達にできるのは信じる事だけですから」
ヒロミはようやく大二から渡されたケースを受け取ると中にはヒロミ用のデモンズドライバー、そしてその隣には狩崎がメガバットバイスタンプと同じく新制作した紺とグレーのタランチュラのレリーフが本体をはみ出すほど巨大な点が特徴的な新たなバイスタンプ……ジャイアントスパイダーバイスタンプであった。
〜挿入歌 Mirage Mirror〜
「……狩崎め。憎らしいが頼もしい奴だ」
「行きましょう」
「敵の居場所は……」
「ブルーバードの遺伝子工学研究所……だろ?」
その言葉に二人は頷く。その時ヒロミが思い出したのはカブトデッドマンから戻された際に初めて出会った市村だった。
そして彼はギフの細胞復活の力が残滓として残っている可能性を考慮してリハビリも兼ねて長期の間、市村の元で過ごす事に。そしてその間彼はヒロミの体からデータを取り続けた。
極め付けはあの二人のアリコーンの幹部、そしてムラマサの能力。……それは少し前にこの世界にやってきたユウスケの使っていたアークルと似た能力であると三人は確信していたのだ。
「我が全身全霊を懸けて、絶対に留美を救う」
「僕の誇りに懸けて、アリコーンを殲滅する」
「俺達の未来を大事に……決めようか」
三人は誓いの拳を合わせると研究所へと移動を開始。それから少しして、そこに到着すると彼らの前に現れたのは前にヒロミが生身で対峙したアリコーンの構成員達が武装して構えていた。こうして、留美を奪還するための最後の戦いが幕を開ける。
また次回もお楽しみに。