仮面ライダーリバイスIF   作:BURNING

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ノアの闇 二人が紡ぐ温かい時間

後の五十嵐元太……白波純平は仮面ライダーベイルとして必殺技を発動した際の衝撃で崩れてしまった瓦礫の下に上半身を出した状態で埋もれていた。そんな彼を見たのは後に純平の妻として五十嵐三兄妹を産む事になる五十嵐幸実である。彼女は純平を救うために落ちていた鉄パイプを使って瓦礫から純平を救出しようとする。

 

「……俺のような化け物なんて放っておけ」

 

「そんな事……私にはできない!」

 

幸実が非力ながらも必死に瓦礫を持ち上げようと奮起していた。そんな彼女を見て純平は唖然とする。何しろ自分は先程まで人々に悪魔と呼ばれていた男なのだ。それを助けようとする幸実が信じられないのであった。

 

「俺が怖く無いのか?」

 

「怖い……そんなわけ無いでしょ。だってあなたは……怪物を倒してくれたじゃない!ううっ!」

 

それから何とか幸実は必死に力を込めると純平の上に乗っていた瓦礫を持ち上げ、彼自身も変身の負荷によるダメージもそこそこに動くと外に出てきた。

 

「「はぁ……はぁ……」」

 

これにより、純平はノアに見つかるよりも先に幸実の手によって助けられると立ち上がる。

 

二人が荒い息を整える中、純平の方は腕に怪我を負っているのを幸実が見つけた。

 

「ッ!?怪我してる……」

 

「どうでも良いだろ?」

 

「どうでも良く無いよ!……血が出てるし!来て!」

 

それから純平は幸実に手を引かれるままにその場から立ち去ってしまう。少しして、道路封鎖などのその場の安全性を担保したノアの構成員達は純平を捜索しにかかるがもう既に二人は立ち去った後。ほぼ同時刻にノアの本部にある司令室と言える場所にいた東山と真澄の二人が部下からの純平が行方不明になった報告を受けていた。

 

『申し訳ありません。被験体071号を見失いました』

 

「見失いましたで済むか!」

 

「不味いですね……。もし情報が漏洩する事にでもなれば……」

 

東山が怒鳴り声を上げる中、真澄もそれに続く形で東山へと言葉をかける。

 

ノアのやっている事は人道的に褒められたものでは無い。むしろ、自分達の利益のために証拠隠滅や情報封鎖とかも平気でやってるような組織だ。そんな組織の実態を公にされればノアは確実に取り潰されてしまう。

 

「一刻も早く見つけ出して拘束しろ!」

 

東山からの命令が飛ぶと現場で指揮を取っていた男。正造は少しの迷いがありつつも、その言葉に頷く事になる。

 

『……承知しました』

 

それから現場から離れたとある場所。それは幸実の実家である銭湯……幸せ湯であった。どうやらこの頃からこの銭湯は存在していたらしい。幸実は純平を家の中に入れると救急箱を出してきて彼の手当てを始める。

 

「……ここは?」

 

「銭湯に決まってるでしょ。私の実家。ほら、傷口見せて!」

 

「俺に関わるな!」

 

「良いから見せなさい!」

 

そんな風に言われて幸実が純平の袖を捲ると確かに血が出ている状態で怪我をしていた。……だが、次の瞬間にはその傷はスッと赤い霧と共に消えてしまう。

 

「あれ?何で……」

 

これはギフの遺伝子を植え付けられた影響による人間離れした超再生能力だろう。そして、それを見られた純平は幸実にも完全に化け物と認識されたと判断して素っ気ない態度を見せる。

 

「……放っておいてくれ」

 

「ダメ!お風呂入っていきなさい!」

 

だが、幸実はそんな純平を見ても化け物とは一言も言わずに同じ人間として接していた。更に風呂に入ってとまで言うぐらいである。

 

「何故だ?見ての通り俺はお前らにとってはただの化け物だ。化け物と人間が一緒に過ごせるわけ無いだろ」

 

「……そうかもね。でも、私に見えているのはあなたが人間だって事実だけ。それと、あなたここ最近風呂に入ってないでしょ?臭うのよ。それに、顔が疲れてる」

 

幸実はそんな風に純平へと平然とした顔つきのまま話を進めていく。純平はそんな風に話す幸実にキョトンとしていた。

 

「……良い?人間、どんな事があったとしても熱いお風呂に入れば復活できるのよ!」

 

それから純平は幸実に促されるままに銭湯のお風呂に入る事になる。幸いな事にここの銭湯は休みの時間であるために純平は人目を気にする事なくゆっくりとお風呂に入っていた。

 

「はぁ……」

 

純平は小さなヒヨコの玩具が周囲に浮かぶ銭湯のお風呂に入ると先程まで変身の負担に苦しんでいた体が徐々に癒やされていく感覚に包まれていく。

 

「まさか、俺のような化け物に手を差し伸べる変わった奴がいるなんてな」

 

純平の脳は仮面ライダーとして戦う度におかしくなってしまっていた。本当であれば彼は普通の人間であった所、ノアに連れ去られたせいで全てを壊されてしまったのである。普通の人間としての日常も、自分自身の心や体も。だが、幸実はそんな自分を受け入れてくれた。彼にとってこれほど無い癒しとなったに違いない。

 

風呂から上がった純平は出された牛乳を飲み干してからテーブルの上にコトリと置く。

 

「はぁ……」

 

「お腹減ってるでしょ?食べていきなさいよ」

 

すると幸実はトレーに持ってきた二人分のカレーの内の片方を差し出す。純平はそれを見てまた見栄を張った。

 

「……別に要らねぇよ」

 

ただ、お腹は正直なのか大きな音を鳴らして空腹を訴える。そんな自分のお腹にタイミングの悪さを感じた純平。だが、こうなると出された物を食べないわけにはいかないと食し始めた。

 

「はい、どうぞ」

 

「……貰うぞ」

 

それから純平がカレーを掬って食べると口の中にその味が広がる。それによって得た一言目は……。

 

「辛っ……」

 

「ふふっ。……うちのカレーはちょっと辛め。でも、美味しいでしょ?」

 

「……ああ、悪くない」

 

純平は小さくそう返してからそのまま幸実の使った食べ続ける。そんな彼を見て幸実が問いかけた。

 

「……ねぇ、私も一緒に食べて良い?誰かとご飯食べるのが久しぶりだからさ」

 

その口振りを見ると幸実の両親は既にこの世にはいないという事だろう。純平は幸実からの言葉に否定の意思を示す事は無く、そのままカレーを食べ続けたために幸実は安心して食べ始めた。

 

「……家族はいないのか?」

 

「うん……。随分前に事故で行方不明になっちゃって。その時遺体は見つからなかったんだけど、警察からは生存の見込み無しって言われちゃって」

 

要するに死んだ認定をされてしまったのだ。そのため、彼女は今は一人でここに住んでいる事になる。

 

「ここ暫く私はずっと一人で過ごしてる。それと、私の名前は……幸実。あなたの名前は?」

 

「……名前は覚えてない。記憶が無いんだ」

 

純平は悪魔に殺される両親は思い出せたものの、まだ記憶の大部分は戻っておらず。本当の名前さえも思い出せていなかった。

 

「……そうなんだ。……じゃあ、元太って呼んで良い?」

 

「元太?何でだよ」

 

「……秘密」

 

純平は自分が何故元太という名前にされたのかがわからずに混乱。幸実へと聞き返すが、彼女には秘密と隠されてしまう。

 

「ふふっ……」

 

「変わった奴だな」

 

それから二人は食事を通して特別な時間を過ごしていく事になっていく。そんな中、ノアの司令室では東山と真澄が目の前のモニターに表示されているバイスタンプの映像を見ながら話していた。

 

「……バイスタンプ。人間の体内に眠る生物種の遺伝子を活性化させ、ギフスタンプによって生み出される悪魔に掛け合わせた究極の兵器。……更にバイスタンプと悪魔の力を制御して武装化するシステムを考案。その要となるのが……ベイルドライバーだ」

 

東山はここまでに真澄の手によって開発されてきたバイスタンプ及び、ベイルドライバーの解説を行うと真澄はそんな彼へとある事実を口にする。

 

「しかし、その過程で多くの若者が犠牲となり……不完全な悪魔達が生み出されました」

 

どうやら純平が仮面ライダーベイルとして討伐し続けてきた悪魔達というのは元々ノアが実験によって生み出してきた失敗品達だったのだ。要するに純平はノアの研究の尻拭いをさせられてきたわけである。

 

「被験体071に感謝しろ。……見事に君の失態の証拠を隠滅してるじゃないか。我々ノアは悪魔との取引に成功したのだ」

 

東山はここまでの実験の失敗の責任は全て真澄のせいと断言しており、自分では責任を取るつもりが一切無さそうであった。更に、実験の成功物である071号こと純平がやってきた事による手柄は全て自分の功績だと言い張る始末である。

 

「非人道的な実験の結果と引き換えに……」

 

「ふん。あんな奴らの代わりなんて探せば幾らでもいる。君はそうやって否定的な意見を述べてはいるが……実験を主導した時点でお前も同罪である事は変わらない。……恨むのなら私では無く自分の実力の無さを恨むんだな」

 

そんな中、東山の元に二つの報告が上がった。すると彼は笑みを浮かべる。

 

「ほう。……牛島の件、成功したか」

 

「……先程話されていた事ですか」

 

「ああ。一度では無く数度に分ける事で段階的に改造。体を慣らさせる事で上手く生身のままあの不完全な悪魔に勝てるだけの戦闘力を手にしたらしい」

 

「ッ!?牛島はここまでノアの傭兵としてよく組織に尽くしてくれました。そんな彼を……実験道具にしたんですか?」

 

その言葉に真澄は息を呑む。彼としては牛島ほどこの組織内部において信頼をおけるような能力のある人間はいなかった。目の前にいる東山と比べて他人に優しく、暴力的であったもののあくまでそれは被験体の暴走を止めるためのみに発揮する力。むしろ、仕事を抜きにして言えば彼の性格は穏やかそのものなのだ。

 

「言っただろう?失敗すればそれまでの事だと。そしてもう一つ果報だ。……リリスが封印されたスタンプ。ギフスタンプに合わせるならリリススタンプと言った所か。それもある筋からこちらに来たらしい」

 

「……まさか」

 

「よくわかったなぁ。これから我々は同時並行してリリスの器を探す。ギフとリリス。太古に生まれた二大悪魔を擁する我々の敵は……最早いない」

 

真澄は東山の言葉は狂っていると。そんな気持ちが脳裏を駆け抜けていく。……最初は彼自身、自分達がギフの力を使う事に何の躊躇も無かった。だからこそ何度実験に失敗しても何も思わなくなっていた。しかし70人の被験体という犠牲を得て、更にその犠牲を増やそうとする東山の思想に着いていけなくなっていたのだ。

 

「……報告します。被験体071号の居場所がわかりました。どうやら、一般人と接触している模様です」

 

そこにいたのは一人の若い男性隊員であった。そんな彼の報告を聞いて真澄は息を呑む。それはまるで、あまり来てほしく無いタイミングで上がってきた報告のようだった。

 

「そうかそうかぁ……。どうやら全てが私の思い通りに動き出したようだなぁ。……その一般人と共に被験体071号を捕えろ。秘密の漏洩防止だ」

 

その言葉を聞いて彼は頭を下げると真澄の言葉を待たずにさっさとその場から現場へと戻っていく事になる。そして、部屋から出た若い男は拳を強く握りしめた。

 

「何が秘密の漏洩防止だ……。やって良い事と悪い事があるだろ」

 

その若い男、実は牛島勝の件やリリスの件も扉の向こうからコッソリと聞いていた。そんな彼の名は後のフェニックスの総司令官となる男……若林優次郎である。

 

それはさておき。幸せ湯から離れた商店街。あの後一夜を過ごした二人は揃ってこの場所に出かけていた。だからこそノアの監視の目に見つかったわけであるが。そんな事を知らない二人は普通に商店街を歩いていた。

 

「あ、そうだ!その服ボロボロだし新しいの買ってあげる!」

 

「……何故そんなに俺の世話を焼く?それに、化け物が着る服はこれで十分だろ」

 

「それはダメでーす。……私、世界一のお節介だからさ。こういう時に放っておけないんだよね」

 

幸実にそう言われると純平はそんな彼女を見て思わず口元に笑みが浮かぶ。そんな彼を見て幸実は微笑む。

 

「あ、やっと笑ってくれた。……てっきり化け物化け物言うから笑い方も忘れたのかなと思ってたけど……ちゃんと笑えるじゃん」

 

「それは……」

 

その瞬間だった。突如としてバタバタと大人数の足音が鳴り響くと同時に大勢のノアの構成員達が走ってくる。それを指揮するのは指揮官の伊良部正造だ。

 

「居たぞ!確保しろ!」

 

「ッ!?追っ手か!?」

 

純平は咄嗟に幸実を連れて逃げようとするが、一般人の彼女を連れて逃げられるはずもなく、純平へと一人が組み付く。

 

「ッ、捕まってたまるか!」

 

純平はそれを振り解くと一人ノアの構成員へと立ち向かう。そんな彼は多対一という圧倒的不利な条件下でも必死に交戦。しかし、数の不利は覆せない。更に純平が抑え込まれている間に幸実の方も構成員の一人が捕まえてしまう。

 

「離して!元太!……うっ!?」

 

そのままスタンガンを当てられた幸実は気絶すると倒れてしまう。更にそれを見た純平は目を見開くと同時に背中にもう一人が組み付いてしまった。

 

「邪魔だ!退けぇえ!クソが……このぉおっ!」

 

純平は二人の構成員を投げ飛ばすと幸実の元に行こうとするが、そこに正造が立ち塞がり、そのまま二人は交戦。途中までは互角だったものの、幸実がやられて気持ちが乱れた純平と冷静に確保する事だけを考えていた正造では純平に勝ち目は無く。そのまま彼もスタンガンの餌食となってしまう。

 

「が……ああっ!?」

 

「……被験体071号を確保。共に行動していた一般人も拘束し、連行します」

 

『……ご苦労』

 

それからノアの構成員達が純平達を拘束する中、そこに若き日の若林が正造へと疑問を問いかける。

 

「組織のためとはいえ、こんな事が許されるんですか?」

 

「……俺達にできる事はただ命令に従うのみ。……それ以外に言う事はない」

 

「ふざけんな……。こんな非人道的な行いばかりして……。俺はこんな事をするためにここにいるわけじゃ」

 

その瞬間、若林は正造によって組み伏せられると耳元で囁くように鋭い言葉を告げた。

 

「ああそうだ。……この組織は腐ってる。だが、今のままの俺達がどうこうできる話じゃない。……今のままではな」

 

その言葉を聞いた若林は目を見開くと同時に正造の方を一瞬見る。その言葉は彼を後に大きく動かす事にかるのだが、それはまた別の話だ。

 

それから数時間後。純平は再び手錠をかけられると牢屋の中に拘束されてしまった。

 

「ぐううっ……このっ!離せよ!離せぇえっ!」

 

「煩いぞ、被験体071。お前の居場所なんてもうここ以外のどこにも無い」

 

そう言って入ってきたのは東山である。彼の後ろには正造や真澄が控えており、この場にはいない若林は正造から真澄、更にそこから東山へと伝わる形で別の部署へと異動させられていた。

 

「ふざけんな……お前らがやってる事の何が正しいんだ!」

 

「ふん。あくまでお前らは外の世界では死んだ身だ。もう戸籍も残ってないだろうよ」

 

東山はその言葉を最後にさっさと彼を一瞥して去っていく。そして部屋に乱雑に転がされた純平はその身に怒りを宿す。するとそこに純平の中にいるベイルは声をかけた。

 

『随分とあの女性が気に入ったようですね』

 

「黙れ……ベイル」

 

それから彼は囚人室の中のベッドの上に手錠をを付けられたまま座ると壁にもたれかかる。

 

「畜生……」

 

同時刻。純平と一緒に連れて行かれた幸実は実験のための拘束台の上に乗せられていた。そして、その様子を司令室からモニターで見ているのは東山と真澄である。

 

「……本当にやるのですか?」

 

「当たり前だろう?むしろ、何の犠牲も無く成功が得られるとはハナから思っていない。なぁ?」

 

その瞬間、画面が切り替わるとそこに映っていたのは体がボロボロになって気絶した一人の女性であった。

 

「まさか、もう……」

 

「ああ。一人犠牲になった。……まぁ、あの女はしぶとく生きてるみたいだし。あの女が子供だった頃からここで面倒を見てやってるんだ。再利用の価値があると見て残しているがな」

 

モニターに映る気絶している女。彼女こそが牛島勝を救い、彼と結ばれて牛島光を産む予定となる女性であった。どうやら、彼女も彼女でリリス降臨のための一番目の犠牲者として利用されたらしい。そして、幸実にもその魔の手が迫るのであった。




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