ギフジュニアを蹴散らしたリバイとバイスがマモと交戦している際に新たなる敵。アスが姿を現すと彼女は多数の一般市民を従えていた。
「これは……」
「俺っち達、市民から敵対されてるの!?」
「その通り。……これが私の力。人々を意のままに操る能力。とは言っても、私の能力だけなら操れる数に限界がある……でも、叔父さんのおかげで人々は更に操りやすくなったわ」
その言葉の意味が分からずにリバイは困惑。するとアスが手を振った瞬間に市民は武器を向けて一斉にリバイ達へと向かってくる。
「なっ!?街を襲ってるのはそいつらです!正気に戻ってください!」
だが、市民は容赦無くリバイとバイスに襲いかかる。攻撃でのダメージはほぼゼロに等しいが、人々に囲まれたせいでまともな戦闘すらできなくなってしまう。
「さっすがお姉ちゃん!人々をこんなに連れて来るなんて。アイツら、絶対困惑してるよ」
リバイは市民を攻撃するわけにはいかないと迂闊に手が出せなかった。しかも操りの大元であるアスを攻撃しようにも、ボルケーノの火力では確実に周囲にいる一般市民も巻き込んでしまう。そのような事、リバイやバイスにはできなかった。
「さて、あなた達に教えて差し上げましょう。こうなった訳をね」
それからアスは市民が操られてしまった理由を語り始める。時は約八年前。バイスタンプを使った全人類悪魔撤廃計画が始まった頃に遡る。
「八年前。アリコーンのアジトが壊滅した後かしらね?その辺りから私達は既に計画を始めていた。まずは手始めに密かに集めていた悪魔を使ってこの私の悪魔を覚醒させたの」
そして、アスは自身の能力で次々に人を堕とすと各国の政府内部へと侵入。それからその重役から悪魔を抜き取るとを次々に洗脳していった。また、アスの能力には厄介な点が存在する。それは、洗脳した人を経由する事で洗脳した人と接触した人も洗脳……操る事ができるのだ。
「私の操り人形になった政府の高官達は次第に勢力を拡大。そして各国で全人類悪魔撤廃計画を推し進めたの」
そうして人々の体内に宿る悪魔を回収。そうして大量の悪魔が敵の組織に集められる事になる。その話が進む間にリバイの方は揉みくちゃにされた影響でベルトのバイスタンプを外されてしまうとバイスと二人揃って変身解除。一輝とバイスはそれぞれ多数の人によって体を拘束されてしまった。
「ッ……」
「ふふっ。ご苦労様」
マモが手に黄金のエネルギー弾を作るとそれを飛ばして一輝のリバイスドライバーを破壊。使用不能にしてしまう。
「悪魔をそんなに集めて……何をするつもりなんだよ!」
「簡単な事ですわ。……我々の悪魔を深い眠りから覚まさせるためよ」
「まさか、ギフやリリスの時と同じ」
「そうだよー!アタシ達のアジトにある悪魔達が誕生するための卵。オブリビアンバイスタンプにぃ、大量の悪魔の生け贄を捧げる事でアタシ達の悪魔の上からこの力を持つ悪魔を降臨させた訳」
「これによって目覚めた悪魔をそのまま総称して七大罪悪魔と私達は呼んでいますわ」
要するに、ギフやリリスに次ぐ力を持つ悪魔が全部で七体もこの世界に降臨してしまったという事になる。その力はリバイスライダーを圧倒し、ベルトを次々に使用不可にしている所からも折り紙付きと言えた。
「それにしても、本当に人類は悪魔無しじゃ生きられない弱い種族ですわね。悪魔が抜かれた瞬間、精神が不安定になって簡単に操る事ができるのですから」
人間は本来、悪魔が体内に住み着く事によって精神の中にある正義と悪のバランスを保っている。その際に悪魔だけを抜く事で人間の中には正義しか残らない。勿論殆どの人間はそれでもある程度は良いのだが、その状態が継続されると自分の思う正義が強くなり過ぎてしまう。
その結果、精神が不安定となり自分の正義に反する人間や組織、制度に触れるとそれらに反発。そのまま己の目的を果たすために何かに対して悪意を抱き、付け込まれて操られるのだ。
「これが人間の浅ましさって所ね」
「こんな事をして……お前達は何が目的なんだ!」
「目的ね……それは私達の父様や叔父様に聞くのが良いんじゃない?まぁもっとも。私達に関して言えば世界を意のままに操れれば何も文句は無いのだけれどね?」
「えー!アタシは欲しい物を全て手に入れられる世界がいーな!」
「……こうして聞いてわかるでしょう?私達は世界を統べた後の目的がそもそも違うのですわ。だから難しい話はさっき言った二人に聞くのですね」
「まぁ、あなた達が生き延びられれば……の話だけどねぇ」
そう言ってウッキウキの顔つきでマモは一輝へと歩いていく。彼女の目は完全に一輝を殺す目であった。
「確かあなただよね?ギフを倒したの。……だったら最優先はあなたからよ」
このまま彼女が一輝を殺せば、一心同体であるバイスも死に至る。そのため、一輝はこのまま易々と殺されるつもりは無かった。
「そんな事……させるか。彩夏が、幸四郎が……家族が待ってるんだ。ここでやられるわけには」
「あはっ、家族ぅ?そんなのに頼ってるから色んな意味で弱いのよ」
「何だと?」
「私達にとって家族はあくまで目的を果たすために一緒にいるだけの存在。即ち、利用するための物」
一輝はその言葉を聞いて苛立ちを覚える。彼女達にとって家族というのはそのくらい軽薄な物という言葉が出て来るのが信じられなかった。
「ふざけんな……家族を何だと思ってるんだ!」
「だぁかぁら、何度も言わないとわかんない?そんなお馬鹿さんは……さっさと消えな?」
そう言ってマモがトドメを刺そうとしたその瞬間。そんな彼女を遮るように声が響く。
「待て!」
その言葉を聞いた途端、一輝は目を見開く。その声色を発するのはただ一人しかいない。そして、普段は頼りない彼の言葉はこういう時一番頼りになるのだ。
「……父ちゃん」
「俺の家族に手は出させない」
そこに現れたのは五十嵐家の大黒柱にして精神的な支柱。五十嵐元太であった。彼は一輝の窮地を聞き、ここにやって来たのである。
「あはっ、誰かと思ったら還暦を迎えたボケ老人?」
「……俺の事は何とでも好きに呼べば良いさ。ただ、家族を傷つけるような奴等を俺は許すつもりは無い」
《デストリームドライバー!》
「そう。なら私が相手になりますわ。マモ、この男は私が仕留めましょう」
そう言うとアスは他の面々と造形が同じの青いスタンプを取り出す。そして、彼女はスタンプを自らに押印した。
《色欲・アスモデウス!》
するとアスは地面から漏れ出した冷気によってその体を一度凍結。それによって発生した冷気で彼女の姿が見えなくなるとその姿の影の方で一度着ていた服が全て消し飛ぶ。その直後に氷が砕かれるとその姿が露わになった。
それは下半身は青を基調としたガチョウのような両脚。尻からは蛇の尾が垂れ下がる。膝から腿にかけて凍りついたような造形もある。上半身は胸元が露出したような造形の薄い羽織りを着込んだような物であるが、体つきは悪魔のように禍々しい。頭部は水色を基調として女の悪魔のような物だが、両側には牛や羊のような顔も出ている。手には氷の大鎌を持っており、彼女に誑かされたら最期には首を刈り取られてしまいそうだった。
「これが私の本来の姿よ。まぁ、見ての通り悪魔としての姿だから滅多に見せないけどね?」
「……誰が相手だろうと俺は負けるつもりは無い」
《ヘラクレス!》
《Contract!》
その瞬間、元太の前にウィンドウが出現すると彼はポーズを取り、切腹するような構えとなる。
「変身!」
《Spirit up!》
《Slash!Sting!Spiral!Strong!仮面ライダーデストリーム!》
元太がスタンプを液晶部に押印するとその姿がヘラクレスオオカブトの蛹と化す。その直後に背中を突き破った脚がその殻を粉砕していくと彼は仮面ライダーデストリームとなるのだった。
「行くぞ」
そのままデストリームはアスと交戦。そんな中でマモはその間の暇な時間をどうすべきか悩んできた。
「あーあ、アタシ暇なのはあんまり好きじゃないのよね。……なら、やっぱりコイツを痛ぶろうかしら?」
彼女の目が一輝へと向いたそんな中。突如として彼女の脳内に声が響き渡る。
「……マモ、今の状況ではそれは許せない」
「えー?今ならコイツを痛ぶり放題なんだけど?」
「ダメだ。今俺もそちらに行く。もう少し待ってろ」
「ちぇっ。パパの言う事なら我慢してあげるわ」
そう言ってマモは大人しくなる。そんな中でアスとデストリームは交戦する。アスは氷の斬撃を大鎌から放つ中でデストリームはどうにか彼女に接近するべく駆け回る。
「ふふっ。逃げてばかりじゃ勝てませんわよ?」
「そうだな。そろそろ反撃しよう」
《Next!》
《コモドドラゴン!》
《Dominate up!》
《コモドドラゴン!ネオバースト!》
するとデストリームの左腕にガントレットが生成。そのまま左腕に火炎を纏わせるとそれで氷の斬撃に対抗。
「はあっ!」
デストリームは接近すると炎を纏わせたガントレットで殴り飛ばす。だが、アスも黙ってはいない。接近されながらも、大鎌を振るって反撃する。しかし、流石に大鎌では小回りは効かない。そのために彼女は押され始めた。
「だあっ!」
「甘い!」
デストリームがアスを殴ったその直後、彼女の体は一度砕けるとデストリームの背後に出現。彼を斬りつけるとデストリームは衝撃で後ろに後退する。
「ッ……」
「やっぱりタフね」
「お前もな」
その後、デストリームは時間超過からか、ゲノミクスが解除。それをチャンスと見た彼女は突撃する。
「はあっ!」
しかし、デストリームへと大鎌を振るったその瞬間。デストリームの体に命中した大鎌はいきなり固い装甲に弾かれた。
「なっ!?」
《Dominate up!》
《アルマジロ !ネオバースト!》
デストリームはわざと隙を見せてアスへと攻撃を誘ったのだ。アルマジロの力なら攻撃を受けられると判断してである。
「ッ!」
アスはどうにか退こうとするが、デストリームはすかさず背中の脚を展開すると彼女を拘束して逃げられなくした。
《ホワイトレオ!》
《Charge!》
デストリームは空いた両手でバイスタンプを使うと必殺技を発動。白い炎を纏わせた状態で彼女へとドロップキックを撃ち込むために跳び上がる。
「だあっ!」
《デストリームフィニッシュ!》
しかし、その瞬間。アスとデストリームの間に何者かが真上から落下してくると爆発が生じ、デストリームは攻撃を弾かれて押し戻されてしまう。
「何だ……」
「……何だ、だと?白波純平……いや、被験体071号。この俺を忘れた……なんて言わせない」
そこにいたのは35年の時を経ても昔と変わらない姿にスーツを着こなした男である。そして彼はこのリバイスIFの物語の全ての元凶としてノアの所長を務め、ベイルによって非業の死を遂げたはずの男、東山であった。
「東山……何で。お前はあの時、ベイルに」
「ああ。しっかり一度殺されたさ。だが、忘れてないか?アリコーンの連中が留美とか言う女にやった事を」
その言葉を聞いてデストリームも、一輝やバイスも目を見開く。つまり、彼は一度死んでから人体実験によって別の人格として蘇った事になる……が、それだと一個矛盾が発生する。
「待てよ、確か留美ちゃんは生前の記憶を失ってたんだぜ?それじゃあ辻褄が合わないだろ」
「ああそうさ。……そしてそれが俺と彼女の大きな違いだ」
そう言って彼が取り出したのはジャックリバイスに変身するためのローリングバイスタンプやクリムゾンベイルに変身するためのクリムゾンベイルバイスタンプに似ているものの、色合いはオレンジ色でクリムゾンベイルバイスタンプのように悪魔の目の模様が入っていた。
「それは……」
《レッドアウト!》
東山がスタンプのトリガーを引くと地面から血のような赤い液体が噴き出していく。その柱が次々に周囲に立ち上る中で彼はスタンプのローラーを左手の掌で押さえ込むように掴んでから前に左手をスライドさせる形でローラー部を回転させ、すかさず東山はスタンプを自らの左胸に押印。
《ブラッドアップ!》
その瞬間、スタンプの押印面が胸に浮かぶと体内に失われた心臓が再生して鼓動を発する。それと同時に周囲に噴き出していた血の柱が東山を押し潰すように集約されると血のスタンプの形状に変化。それを打ち破る形で新たなる姿が表面化した。
《ブラッドベイド!》
その姿はジャックリバイスやクリムゾンベイルと同じシルエットであったものの、前者二つとは大きく異なる点としてカラーリングのメインは黒では無く、灰色である。加えて、全身に入るラインはオレンジのラインであった。
それはかつて東山が一度死んだ後に燃え盛ったノアの施設が灰になってしまった事を連想させ、体に走るラインはその残り火のようだった。
東山は変身後、最後に炎のように複眼がオレンジに強く発光するとそれが消える。ただ、やはり自ら一度が殺された元凶であるベイルが変身したクリムゾンベイルに似たシルエットになっているというのは自分が殺された力によって進化するという痛烈な皮肉と言えるだろう。
だが、それによって東山は不死鳥のように蘇った。彼は新たなる力……ブラッドベイドへと変身する事になる。
また次回もお楽しみに。