交換当日の昼近く。ブルーバード陣営は敵に対する備えを固めつつも、交換に応じる動きを見せている。
そのため、ブルーバード側からは一輝、大二、さくらの五十嵐三兄妹が交渉の場に出向いていた。狩崎は修復に改良作業で忙しく手が離せないため、司令室でその様子を見守るのはヒロミただ一人。また、光とその孫輝樹の二人は三人の窮地にいつでもセンチュリーとして加勢できるように近くの物陰に隠れて待機していた。
「……指定された場所に到着しました」
「それにしてもわざわざこんなわかりやすい場所に呼び出してどうするのよ」
その場所は思いっきり街中にある施設の敷地内。それなりに開けた空間だった。
「ヒロミさん、敵の様子は?」
「……時間としてはあと十分ある。まだ近くに来たような感じでは無いが、相手が約束を守る気があるならじきに来るだろう」
そんなやり取りがあった数分後。ヒロミが見ているモニターにデビルワールドの面々が姿を現す。
『一輝、大二、さくら。敵が現れた。……しっかりと元太さんも連れてきている』
モニターには敵の男に拘束された元太が後方からゆっくりと歩いてくるのが見えていた。それを聞き、一輝達が警戒していると堂々と歩いてきた東山率いる代表達が声をかける。
「ほう。五十嵐三兄妹が勢揃い……この感じだと君達三人が代表者か?」
「ああ。父ちゃんを返せ」
「まぁ待て。その前に持ってきた物を見せろ。要求を聞くつもりが無いのならすぐにでもコイツを攻撃しなければならないからな」
「……これでどうだ?」
そう言って一輝はしっかりと東山の方へとギフスタンプを見せる。すると東山が目を赤く光らせるとジッとそれを見つめた。
「……何よ、ちゃんと持ってきたでしょ!」
「ああ、済まない。本物かどうかベイドに聞いて確かめてたんだ。同じ悪魔なら本物のギフスタンプかどうかぐらいは一目瞭然だからな」
すると東山が確認を終えたのか、手を振ると元太が拘束されたまま少し前に出される。
「そのスタンプをこっちに投げろ。スタンプが手元に来たらコイツは返してやる」
「……直接手渡しで無くて良いんだな?」
「ああ。むしろ直接の方がこちらとしては君達が何かを仕掛けてきそうで怖いからな」
大二からの問いに東山は割と平然とした顔つきで彼の疑問に答えを返す。それを聞いて大二はヒロミへと内線で聞く。
「向こうは直接取りに来るつもりじゃ無いみたいですね」
『構わない。俺達のやる事は同じだ』
一輝達の作戦としては元太とギフスタンプとの交換の際にギフスタンプに発信機を付けた状態で渡す事で敵のアジトの中枢の位置を探ろうとしているのである。
「……わかった。お前の望み通り投げ渡す」
東山はそう聞いてスタンプを受け取るためか、彼が少し前に出た。それに合わせるように一輝がスタンプを投げるために構える。
「投げるぞ」
「ああ」
「……いち……にの……さん!」
一輝がスタンプを下手投げで投げると東山が指を鳴らし、部下に元太を解放させる。それと同時に元太は一輝達の元にヨロヨロと歩き出し、直後に東山の手にスタンプが握られた。
「……ご苦労」
その直後、スタンプから何かが取り外されると空中に投げられてポンと爆発。それは粉々に砕けると落下した。
「ッ!!」
「やはり発信機を付けていたようだな。狩崎の入れ知恵か?……その辺は流石に抜け目の無い事だ」
どうやら発信機の設置に関しては先程の確認の際に異物としてみなされていたらしい。だが、元太の方は解放されてから何か不意打ちを受ける事なく、一輝達の元に辿り着いた。
「父ちゃん!」
「パパ……良かった」
そんな中で一輝は僅かに違和感を抱く。彼が近くに来て感じたが、予想していたよりも体へのダメージが軽そうであった。昨日はあれだけの重傷を負ったのにである。
「(おかしい。昨日は立つことさえままならないくらいの怪我だったのにこんな簡単に……再生能力でも無ければ……ッ!?)」
一輝は父親から感じる違和感の正体に辿り着くと咄嗟に大二、さくらを両腕で押し戻す形で後ろに倒れ込む。それと同時に三人のいた場所に元太がそれぞれ赤黒いエネルギー斬を放ったのだ。
「「えっ!?」」
「何するのパパ!」
「父ちゃん……何で……」
「……」
すると元太は無機質な反応のまま、その手にベルトを出す。それはデストリームドライバーへと改良されたはずのベイルドライバーであった。そして、彼は腰にそれを装着。スタンプを起動する。
《ベイルドライバー!》
《カブト!》
《Deal……》
元太がスタンプを朱肉部分に押印すると待機音が鳴ると同時に自身から赤い鼓動のような線が二本出てくると元太は何者かに操られているかのように片手でスタンプを液晶部に押印する。
《Bane Up!》
そして、彼は片手を胸の前に持ってくると無機質に掛け声を言い放つ。それは、元太の意識が無いようであった。
「……変身」
すると元太の心臓が赤黒く発光し、ベルトから金色のカブトが飛び出すと彼周りを旋回。そのままカブトが飛ぶ際に撒き散らした黒い霧が元太の中に取り込まれると彼の目が悪魔のように赤く発光する。
《破壊!(Break)世界!(Broke)奇々怪々!(Broken)仮面ライダーベイル!》
元太は闇に包まれる形で素体の装甲が生成されると最後に彼の右側からカブトが取り付き、角の部分が顔の左側に合体して変身を完了。その姿は仮面ライダーベイルへと変身するのだった。
その様子をモニターで見ていたヒロミは驚きを口にする。本来なら悪魔の力を借りないと完全な状態では変身できず。体に多大な負担がかかるはずなのだ。それなのに、彼は特に苦しむ事なく変身した事になる。
「仮面ライダーベイルだと!?」
そして、場面が戻る中。元太が仮面ライダーベイルに変身したために一輝達三人は後ろに下がりつつ構える。
「どういう事!?ベイルがいないと変身できないはずなのに」
「ああ。ベイルはあの時確かにこのスタンプの中に……」
一輝がギファードレックスバイスタンプを見る中、東山の後ろから一人の白衣の男が現れると声を上げた。
「驚いたでしょう?これが僕ちゃんの研究の成果!……ま、実際の所は実の父さんと僕ちゃんの……だけどね?」
「……どういう事?」
「というか、お前は?」
「おっと、僕ちゃんの名前はルシファ。デビルワールド一家の叔父ですよ」
「デビルワールド一家?」
「お前達は話して無かったな。察しているかもしれないが、この俺と七大罪悪魔の力の持ち主は家族の契りを交わしている。とは言っても、お前達は認めないらしいが」
どうやらあの悪魔の戦士達は全員が義理の家族らしい。そのため、こうして家族のような立場を名乗っているのだ。
「話を戻すけど僕ちゃんはね、家族に降臨させた悪魔達を生み出す役割を担っているんだよね。コイツらの大元のスタンプであるオブリビアンバイスタンプを作ったのはこの僕ちゃんというわけさ」
彼は狩崎に匹敵する才能の持ち主であり、その力を持ってして七大罪悪魔を生み出すためのデバイスを開発。そして、これまでブルーバードに挑んでは散って行った敵達のデータを結集して作り出したオブリビアンバイスタンプを制作して実用化したのだ。
「それで、お前の話が父ちゃんがこうなった理由とどう結び付くんだよ!」
「まぁまぁ、慌てない。……最初ね、この男を東山に連れ帰ってもらったらさ。何とまだこの男の中にギフの遺伝子が残ってたんだよねー!」
その言葉を聞いて全員が目を見開く。ギファードレックスバイスタンプを制作した際にギフの遺伝子を全てバイスタンプ内部に移行するという話を聞いていたのでまさかまだ残っているとは思っていなかったのだ。
「そこでだ!確か外海?とかいう名前の科学者がギフの遺伝子をクローニングする装置を作っていたのに着目した僕ちゃんはその技術を応用して体内で遺伝子を製造、浸透させる装置を作ったんだよね」
これによって元太の中にほんの僅かに残されていたギフの遺伝子を活性化する事に成功するとそれを体内で増殖させて体全体にまでギフの遺伝子を広げたのだ。
「あははっ!その装置を起動するついでに遺伝子を少しだけ弄って僕ちゃん達の命令を聞くような意思のないロボット状態にしちゃったんだー!僕って本当に天才だよね!ま、父さんの血を継いでるし当然かな?」
「……さて、ようやく説明が終わったという所で補足で説明しよう。ルシファの父親についてだ。彼の実の父親はね、ノアに所属する狩崎真澄に次ぐ優秀な人材だった。何しろ、若き日の五十嵐幸実の体内にリリスを宿すための手術を成功させたのも牛島勝を改造して人外の戦闘力を持たせたのは他ならない彼の父親だ」
要するに彼はブルーバードに例えると優秀だが、危険な研究をしていた父を持つ二代目という事でジョージ狩崎に当たるような男なのだろう。ただ性格やこの時点で全く己の所業を悪びれてないため、狩崎親子とは比較にならないほどの悪だが。
「ふざけんな……父ちゃんを、返せよ!」
「いやいや、返してるじゃん。君達、言いがかりはよしたまえよ。約束はちゃんと果たしてるじゃないか」
一輝の猛抗議にルシファは悪びれもしない様子でしらばっくれる。そんな中、大二の中にいるカゲロウは出てくると腕を鳴らす。
「要するに洗脳の元を潰さないと父ちゃんを救えないって事だろ?だったらここからは力ずくで元にしてやる」
「ああ。大二、さくら。一気に行くぞ!」
一輝達がベルトを装着するとそれぞれが最強の姿になるためのバイスタンプを構える。
《サンダーゲイル!》
《パーフェクトウィング!》
《キングコブラ!》
《Confirmed!》
一輝がベルトにスタンプを押印して装填すると霊体のバイスが一瞬出てから地面へと飛び込むとそこから漆黒の液体が広がり、その内部から発生するように凄まじい雷と嵐が飛び出す。
大二の方は背後にカゲロウの幻影が出ると背中に白い翼が広がる。それと同時にカゲロウはその中に漆黒の翼へと分解してから取り込まれ、片翼が黒く変わった。
さくらは彼女の隣に体から飛び出した幻影のラブコフが現れるとさくらとシンクロするようにポーズを取る。
《Come on!サンダーゲイル GO! Come on!サンダーゲイル GO!》
《Wings for the Future!Wings for the Future!》
《Come with me!Go with me!》
「「「「「「変身!」」」」」」
《FlyHigh!パーフェクトアップ!》
《ハイパーリベラルアップ!》
六人が声を上げると同時にその姿が変化。仮面ライダーとして装甲を纏っていく。
《一心同体!居心地どうだい?超ヤバいっす!豪雷と嵐でニュースタイル!仮面ライダーリバイス!》
《仮面ライダーエビリティライブ!アイムパーフェクト!》
《We are!We are!仮面ライダー!インビンシブル!蛇!蛇!蛇!蛇!蛇!蛇!ジャンヌ!ハァー!ハーッ!》
一輝は地面から飛び出した液体がその体を包み込むとジャックリバイスへと変化。しかし、体に雷と嵐のエネルギーが取り込まれていくとその装甲を打ち破るようにして新たなる強化装甲が露出夥しい量の雷を周囲に発生させながら仮面ライダーリバイスとなる。
大二は白と黒の翼が自身へと被さるとその姿が白と黒の竜巻を纏って変化。その後被さった翼が再度広がると背中の装飾として畳まれ、同時に白いマントが飛び出し、白一色の複眼にカゲロウの黒いラインが後から追加される形で走ると仮面ライダーエビリティライブとなる。
さくらはラブコフが脱皮して黄金のキングコブラとなると同時に飛び出した五本の蛇のような刃が飛び回り、キングコブラがさくらを覆うようにとぐろを巻くとラブコフの目が入ったパーツを含む強化装甲が飛び出し、ジャンヌとなったさくらの上から装着。黄金のキングコブラが消えて背中に五本の刃が装着されると仮面ライダーインビンシブルジャンヌとなる。
「ほーう。久しぶりに五十嵐三兄妹の最高戦力の集結か」
今現在、バイスや大二、カゲロウの分のリバイスドライバーが使用不可のためにこの布陣が現時点で出せる三人の最高戦力である。それでも並の敵ならこれでも十分だが、今回の敵はそうはいかないだろう。
「……さて。ルシファ」
「ええ。わかってますよ。向こうは三人で来るんです。こちらも……ですよね?」
そう言ってルシファがスタンプを出すと前に出る。更にベイドも行こうとした瞬間。いきなり彼らの後ろから大音声が響く。
「ふざけんな、この俺様をいつまで待たせるつもりなんだ!……良い加減やらせろよ。ストレス溜まって仕方ないんだ!」
そこにいたのは先程まで元太を拘束していた筋肉がムキムキなマッチョマンである。顔も厳つい顔つきであり、彼の中の不満が今にも暴発しそうであった。
「……サターンか」
「こんな奴ら、この俺が捩じ伏せてやる!」
「まぁまぁ焦らないことですよ。三人でやります」
《傲慢・ルシファー!》
《憤怒・サタン!》
それからルシファが紫のスタンプを、サターンが黒のスタンプを出すとそれぞれを自らへと押印。するとルシファが紫の閃光に包まれると同時に一瞬にしてその姿が変化していく。サターンの方は地面から噴き出した黒い見るからに危険な電撃を纏うとこちらも同じく変身する。
ルシファの方の姿は下半身は紫を基調としており、造形は割と人間のそれに近かった。ただし、色合いも相まって禍々しさはどうしても抜けないが。上半身はこちらも下半身と同じく人間の男性に近い造形をしており、胸筋や腕の筋肉、頭部も髪の生えた普通の男性のような物だった。ただ一点……漆黒の翼を広げている事を除けば。どうやら彼は堕天使のような姿をイメージしているらしい。
サターンの方は下半身が黒で筋肉に覆われたような物であり、足先はドラゴンに似た形となっている。また上半身は下半身同様に筋肉質だが、体つきは人間からかけ離れていた。例えるなら地獄の番人である鬼に似ているイメージが強いだろう。右腕には巨大な棍棒が握られており、それが彼の得物と思われる。頭部は恐ろしい二本の黒い角もあり、鋭い眼光や起こったような恐ろしい顔つきが他人を圧倒するための威圧感を与えた。
「さぁ、さっさとやっちゃいましょうかぁ!」
「ふん、全員ぶっ潰す!」
ルシファの言葉と共に悪魔の二人が走り出し、それに続く形でベイルもゆっくりと歩を進める。東山は己が出るまでも無いと腕を組んでその場で仁王立ち。余裕の顔つきだ。
「皆、来るぞ!」
リバイスからの言葉にライブもジャンヌも戦闘に備えて身構える。そのまま三対三の戦いが開幕するのだった。
今回はここまでです。このタイミングでお知らせですが、この回の終了を持ってして、リバイスIFの物語はラスト10話としようと予定しています。そのため、この章は今までのどの章よりも長くなる事が想定されますので最後までお付き合いのほど、よろしくお願いします。
それではまた次回もお楽しみに。