一輝達が一同に会すると一輝は幸せ湯であった火事の事について話す事になった。
「十八年前、この銭湯が火事になった。……その原因になったのは、あの悪魔だったんだ」
十八年前、幸せ湯を火事にしたのはベイルだったのだ。そして、その宿主こそが一輝達の父親、五十嵐元太だったのである。幸せ湯が火事になったあの日。幼かった一輝はベイルに操られて暴れる父親に怯えていた。
(回想)
「ふはははは!お前の幸せを全部奪ってやるぞ!……全ては私を裏切った代償だ」
「やめろ……ベイル!俺の家族に手を出すな!」
元太が何としてでもベイルが暴れるのを止めようとするが、主導権をベイルに奪われてしまったがためにどうすることもできない。
「まさかこんな所でぬるま湯に浸かっていたとはなぁ。相棒の俺を裏切って幸せになった最低な男、それがお前の父親だ。坊主!」
そう言ってベイルが幼い一輝へと言い放つ。一輝は恐怖のあまり動けなかった。このままでは本当に全てが壊されてしまう。そんな時だった。一輝の中にバイスが誕生したのは。
「ふははははは!いやっほーう!」
そして、バイスは気持ち良さそうに周囲を飛び回ってから一輝の元に近寄る。
「……誰?」
「お前さ、一番上のお兄ちゃんなんだからしっかりしないとダメだろ。家族を守らなきゃ」
そう言うバイスに一輝は未だに踏み出せずにいた。それでもまだ子供の一輝には荷が重すぎるのである。そんな中、ベイルに乗っ取られた元太はゆっくりと倒れている幸実を殺そうと歩き始めた。それを一輝はただ見ているだけしかできない。
「怖ぇえのか」
バイスの言葉に一輝は小さく頷く。するとバイスはそんな一輝へとある提案をする事にした。
「俺っちと契約するんだ、一輝」
「……契約?」
「ああ。そうすればアイツを俺っちが代わりに止めてやる。ただ、その代わりこの事件のことは記憶から無くなっちゃうけど俺っちも誰にも言わないから良いよな?」
バイスからの提案に一輝は頷いてみせる。そして、これにより一輝とバイスによる初めての契約が成立。バイスは一輝の顔の前に手を翳すと一輝はその拍子に眠りについた。
「またいつか会おうぜ。お休み、一輝」
「……僕が家族を守る……」
そして、一輝は火事の記憶を忘れると同時にバイスはその力を持ってして元太に取り憑いたベイルを止めてみせたのだ。これにより、火事を起こした元凶のベイルは元太から逃げ去って一輝達は無事に生還する事になる。
(現在)
その話を聞いた大二達は実体化しているバイスを問い詰める。バイスは一部始終を知っていたにも関わらず黙っていたからだ。
「バイス!どうして言わなかったんだ!」
「そんな事言ってもよ、俺っちは誰にも言わないって約束だし。あ、それと今回の場合はベイルの野郎が勝手に思い出させたから契約違反にはなりませーん!」
そう言うバイスにさくらも信じられない顔つきをしていた。それは元太にも悪魔がいたという事実である。
「パパの悪魔がアイツだったなんて……」
すると今まで黙っていた狩崎が口を開くと同時に火事の件とは別のもう一つの真実を口にする。
「……真実はもう一つある」
「「「……え?」」」
狩崎は幼い頃に自分の父親である狩崎真澄から話された事と調べた事実を繋ぎ合わせた過去の事を話した。
「五十年前、中南米の遺跡でギフスタンプとギフの棺が発見された」
狩崎の話はそれから始まる事になる。ギフスタンプは発掘された当時、地球の科学では発明できない代物だという事から世界平和を理由に解析が進められた。
しかし、そんな最中で人間を悪魔に変えるギフスタンプを軍事目的で利用しようとする人物も出てきたのだ。
現在から約三十年前に狩崎真澄は研究の責任者として任命される事になる。真澄はそれからギフスタンプを応用して悪魔を戦力化するバイスタンプ。及びその悪魔を制御するためのドライバーを開発。
ただし、そのベルトのデメリットとして変身する度に寿命を悪魔に吸われてしまうというデメリットが存在した。そう、デモンズドライバーと同じ機構である。
そして、それを回避するためにはギフの遺伝子を取り込む必要があったのだ。
「……そんな中、一人の青年が瀕死の状態でダディの元に送られた。……ダディはその時、悪魔に魂を売ってしまったんだ」
ギフの棺の修復能力を利用して青年の心臓にギフの遺伝子を移植してしまった。そのせいで青年は唯一無二の存在として真澄博士の実験の玩具と化してしまったのだ。
「……その青年こそが五十嵐元太だ。そして、ここまで言えばわかるよね?」
そう、一輝達が変身する事が可能な理由。それは、一輝達が偶発的に起こした奇跡ではない。全ては必然と言える事だった。一輝達が変身できたのは父親である元太からギフの遺伝子を引き継いでいるからである。
「……俺達はギフの末裔……」
「なるほどなぁ。それで俺達の姿にも影響を与えたってわけか」
「ラブラブゥ!」
「それにしてもなかなか面白え。俺達がラスボスの親戚だったとはよ」
カゲロウが興奮気味にそう言う中、大二は一旦カゲロウに引っ込むように言うと光は悔しそうにしていた。
「結局、僕達にはどうする事もできないのかよ……」
「光さん……」
光のその言葉にさくらも俯いたまま小さく声を出す。光はそもそも本来ならライダーになる資格が無いという事を知り、変身していたヒロミもベイルの復活の養分として利用されてしまったのだという事を痛感した。
「僕はいつも大事な時に役に立てないな……」
光は自分に力が無いことを悔やむ。するとそこに元太の事を聞いたぶーさんが入ってくる。
「ぶーさん」
「……君達のパパ、五十嵐元太がベイルにまた乗っ取られたって?」
「はい……」
「そのままベイルもパパも行方不明で……」
「一応若林総司令官の指示の元、フェニックスの隊員達が捜索していますがまだ行き先は掴めてないです」
その話を聞いたぶーさんに一輝はある事を聞く事に。それは、元太の過去についてだ。
「ぶーさん、もう俺達は父ちゃんの過去に触れないといけないんです」
「知っている事を教えてください」
「お願いします」
一輝、大二、さくらが頭を下げる中、ぶーさんも観念したかのように元太の過去について話す事になる。
「……わかった」
「ぶーさんは、父ちゃんの協力者と見て良いんですか?」
「……いや、協力者と言うよりは同志と言った方が良い。元ちゃんこと五十嵐元太……白波純平のな」
それを聞いた三人と光は驚きの目を向ける。元太が本名ではないと言う事だ。そしてその五十嵐元太という名前は組織から身を隠すための偽名という事になる。
「……俺と純平の出会いは政府軍の科学研究組織、ノアという場所だ。そこでは悪魔を軍事利用しようと躍起になっていたんだ」
元太……もとい、純平は仮面ライダーベイルとして実験で生まれた不完全な悪魔達の処分を任されていたのだ。
「父ちゃんがそんな仕事を……」
「酷い」
「来る日も来る日も悪魔を処分するだけの毎日に純平の心は壊れてしまった。だが、それを救ってくれた女性がいたんだ」
それを聞いた三人はそれが誰なのかを察する。その女性は他ならない五十嵐幸実なのだ。
「純平は幸実さんとの未来のためにノアから脱走。その過程の中での激闘で彼は記憶を失ったんだ」
そして、純平は顔も名前も変えて五十嵐元太として再出発する事になった。
「その後、純平を失ったノアは腐敗し、一部の人間がギフの棺を奪うとギフを神格化。悪魔崇拝組織として形成された」
「それが、デッドマンズ」
ノアという一つの組織が枝分かれした結果が今のこの現状だ。デッドマンズを野放しにすればまたノアの時と同じような事態になるかもしれない。
「……狩崎さん」
「何だ?」
「狩崎さんのお父さんの行方、やっぱり心当たりは無いんですか?」
「……無いね。前に任命式で言ったと思うけどあくまでダディは行方不明。死んだかの確認も取れてないんだ」
実際の所はデッドマンズの支援組織、ウィークエンドの博士として活動している。だが、その事実を息子の狩崎は知らないのだ。また、ウィークエンドの総帥はあくまで赤石であり狩崎真澄は博士としてさまざまな開発を行ってきた。リベラドライバーを作ったのも真澄博士の手腕である。
「話が逸れたけど、俺の、俺達の話せることはここまでだ」
一輝達はそれを聞いて自分達がギフの遺伝子を継ぐもの達だという事、元太がかつて所属していた組織で起きた事などを踏まえて考え込むのであった。
その頃、ウィークエンドの拠点ではライヤとカウンの二人はアギレラから冷めた目で見られている。
「ねーえ、本当にあなた達やる気あるの?さっさとリバイス達を倒して」
二人は苛立ちを募らせる。流石にここまでボロボロにされてしまえばプライドもズタズタになってきていた。
「少し良いかな?」
そこに赤石がやってくるとアギレラを宥めるようにある提案をする事になる。
「アギレラ、このまま二人を切ればまた幹部を選び直す必要が出る。ここは踏みとどまるべきなのではないか?」
「くっ……わかったわ。今回は許してあげるからさっさと潰してきなさい」
そう言われて二人のうち、工藤は一輝への憎悪の気持ちを募らせていく。
「アイツのせいで……アイツのせいで俺は……許さないぞ、五十嵐一輝」
するとその瞬間、プロトバイスタンプに新たな光がチカチカと宿る。その変化に気がついた者はいなかった。
「邪魔するぞ」
そこにベイルこと元太が登場。流石にそれにはデッドマンズの面々は驚いていた。
「次の襲撃は俺に任せろ。ついでに五十嵐家を殲滅してやる」
元太は笑みを浮かべており、それは元太に憑依するベイルが笑みを浮かべている事になる。元太はアギレラへある提案をする事に。
「……アギレラ、このまま俺をデッドマンズとして雇え」
ベイルからの提案にアギレラは驚きの顔を浮かべると少し考え込むとベイルへと返事を返した。
「じゃああなたがそれ相応に使える人材だという事を示しなさなさい」
アギレラとしては戦力が増えるのは良い事だが、同時にちゃんとしない戦力ならいらないと考えてもいたのだ。
「……まぁ、君の力には期待しているよ。ベイル君」
赤石の言葉にベイルはコクリと頷く。するとギフの棺が鼓動を小さく放つとデッドマンズの面々にある指示を出した。それは……。
「ギフ様、早い所生贄を寄越せと仰られているわ」
「これは、猶予もあまり無さそうですね」
「とは言っても相応の大きさの汚れなき悪の器というのはそうそう見つかりませんよ」
しかし、それでもやるしか無いとデッドマンズの一同は自分たちの役割を果たすべく行動を始めるのだった。
バイスタンプラリー
二十三話目……カブトバイスタンプ
また次回もお楽しみに。