さて、帳をおろし、雑に結界を壊して突撃です。特級呪霊の結界ですよ?
力があるってとっても羨ましいことだとつくづく思います。
そうして、現れたるバケモノは、黒き虫人間。
「げっ!!」
「きっしょ!!!」
「美々子、あれ吊るして! 早く吊るして!」
「来るっ 玉犬! わっ」
「封っ ゲフッ」
大変です。いきなり阿鼻叫喚です。琢真は思わず後退り、美々子菜々子は半ばパニック。恵の玉犬は餌となり、利久の術式は早々に跳ね返されました。
「はいはい、デバフかけるって言ったでしょ? 慌てず逃げる!」
「二舌」
耳元で夏油先輩が囁きます。腰砕けそうです。砕けました。どのみちしばられ担がれてて足の意味ないから大丈夫ですね。俺は早口で術式を使います。あまり口上に時間をかけると生徒と子供達が全滅しかねません。
「術式、他人語り! 汝が名前は黒沐死! 蜚蠊の呪霊です! 無限の食欲を持ち! 食べれば食べるほど増えます! 蜚蠊を強化し操る能力持ち! 術式は土虫蠕定! まあわかりやすく式神を呼ぶ能力ですが、蜚蠊の操作の方がきついです! ええっとこれ、どの程度デバフ掛ければ?」
「適当にいいように調節して」
「うわあ無茶振り!」
子供達はキャアキャア言って逃げています。それを追う呪霊は目に見えてスピードダウンしていきますが、まだ弱体化に気づく余裕はないようです。んー、どうしましょうか。もう一段デバフします?
そこで、琢真が距離を十分取ったと判断して、反転しました。
「来訪瑞獣! 1番 獬豸!」
ドンっと黒沐死の腕を琢真の攻撃が貫きました。
「よ、よしっ このまま遠距離から……!」
「やるじゃん、琢真!」
「よ、呼び捨て……! せめてお兄ちゃん呼び!」
「戦闘時にそんな時間かけてられるか!」
みなさん、余裕ありますね。呪霊を前に、そこ拘ってる場合ですか? その時、夏油先輩が口を開きました。
「二舌。デバフ効きすぎ。三級レベルに落ちてない? もうちょっと手綱を緩めて」
「えええええ!? そんな細かい調整を!?」
そんな事言われても困ってしまいます。これでもだいぶ手加減してデバフしていたのですが。
「げ、夏油様! 手加減を! 手加減をお願いします!」
「悟パパ、お願い!」
「こいつきしょいの、まじ無理なの!」
「硝子ママに言いつけてやる!」
生徒や子供たちが口々に命乞いをします。
「せっかく特級と戦わせてもらうんだから、存分に胸を貸してもらいなさい」
「二舌のちょっといいとこ見てみたい♪ あ、硝子ママには許可とってるから、ごめんね♪」
お二人とも、容赦ないですね!?
「ええっと、黒沐死は空を飛べます! あと、一人称が私です!」
バフ!
蜚蠊を呼び出した黒沐死の猛攻が始まります。上がる悲鳴。
「おー。やればできるじゃん。こんなもんでしょ」
ハラハラしながら、その後も微調整を続け、最後に夏油先輩が取り込みます。
「うっえ〜。いつにもまして不味い気がする。じゃあ、感覚忘れない内に、次行くよ、次」
「きゅ、休憩……」
「がんばれ、若人!」
容赦ねーですね、夏油先輩。菜々子の治療の後、次の呪霊スポットです。
ところで、俺はいつ、担ぎ上げた体制から下ろしてもらえるのでしょうか……?
そんなこんなで、六日間を五条先輩や夏油先輩の肩の上で過ごし、生徒達もぐったりですが、俺だってぐったりです。いい加減解いてください! 解いたら逃げますけど!!
そして、7月7日、七夕の日。
呪専に帰って(お持ち帰りされました。なんで!?)、シャワーをなんとか浴びて、死んだように眠り、起きたら暗くなっていて、七夕の飾り付けがばっちりしてありました。
子供達もびっくりしています。
「おかえり。頑張ったな」
「硝子ママー!」
「硝子ママー!!」
硝子先輩が子供達を雑に労わります。とっても雑な撫で方ですが、子供達は嬉しそうです。夜蛾学長もいるようですね。料理を自ら運んでくれてます。
「あ、起きた? 花火も用意してるんだよ。でもその前に、短冊書いてね」
ようやく解放され、五条先輩に渡された短冊を書きます。願い事、願い事かぁ……。
意外に悩みますね。なんとか書き上げて吊るして、伸びをすると、冷たいお茶を頬に押し付けられました。ひんやりして気持ちがいいです。
「お疲れ様です」
「七海!? なんでいるの!?」
「そろそろ戻ろうかと。五条さんの足場固めも進んできたようですし」
「僕、頑張ってんの。見直した? 二舌」
「俺はいつだって先輩方を尊敬してますよ」
軽くゴマを擦って、お茶をぐいっと飲み干します。
ふぅ。お腹が空きましたね。ちょっと豪華なお粥が嬉しいですよ!
食事をしながら、情報収集タイムです。
近況を話すていで、虚実入り乱れた情報が乱舞し、駆け引きが行われます。
こちらも有益な封印の情報をいただけました。正直、とても助かります。
「ところで二舌。そっちの手駒に、呪霊操術もどきいんの?」
「呪霊の情報を集めるってことは、そういう事だよね」
鋭いツッコミにドキッとしてしまいます。
「げ、夏油先輩を洗脳してからって考えもありますよ」
「その可能性もあるか」
あからさまなごまかしの言葉に、五条先輩達は苦い顔。
さてさて、まだまだ情報収集を頑張りますよ。
子供達は楽しそうに花火をしています。
ほどほどに情報を得ると、俺もそれに混じりました。
「いつごろ復帰するんですか?」
「罠依頼でも仕掛けますか?」
「そうなるでしょうね。割となりふり構ってませんから」
「食い破りますが。五条さんが」
話していると、五条先輩が七海の肩に腕を回して、任せろって言いました。
俺もそっちの側が……いやいや、五条さんの元にいると状況コントロールできない上にフルボッコされるのを待つしかないですね。
受け身にしかなれないのはそれはそれで大変です。夏油先輩の援護もできなかったでしょうし。
……こんな時ぐらい、難しいことを考えるのはやめましょう。
お仕事タイム終わり。こっから先は息抜きタイムです。
俺は花火で目に楽しいマジックを行いながら、子供達と楽しい時間を過ごしたのでした。
ふははははは、潜入捜査のために学んだこの素晴らしい手品を見よー!
イッツ!! ショータイム!
さて、天国から地獄へとレッツダイブです。
「た、ただいま戻りましたぁ〜」
ボソボソっと呟いて屋敷に戻ります。
「ご当主様がお待ちです」
ヒィィ!
すっと背後から家の者に囁かれ、戦々恐々、謁見室へと行きます。
「よく戻ったね、誠司。1週間の旅行は楽しかったかい?」
「こちら、お土産になります!!」
まずはお土産を差し出します。
各地の銘菓です。ヒィィ怒ってらっしゃるぅぅぅ!!
「あ、あと、情報収集して参りました!! いくつかは他人語りに使うので、開示できませんが……! 対五条派閥で役立つはずです!!」
差し出したレポート用紙に、とうさまは考える様子を見せます。
「そうだねぇ」
そうして、とうさまは見覚えのありまくる短冊を取り出します。
「五条派閥の短冊の願い事はなかなか面白かった」
そうして、とうさまは俺の書いた短冊を俺に返します。
ヒィィ。相変わらず、手が長くていらっしゃる。
まあ、だと思ってたいした願いは書いてませんがね!
「中でも君の短冊は興味深かったよ。だから、折檻は一回で終わらせてあげよう」
そうして、俺はズルズルと引きずられていきました。
あ、あううう!!!
ひらひらと空をまった短冊には、こう書かれていました。
「一日中〇〇(某有名アクションゲーム)をしたい」
折檻は、モンスター役として一日中、ひたすら重たい呪霊に上で跳ねられるというものでした。
内臓が! 内臓が出るぅ!
「さて、ゲームなんて一度もさせてないし、本体はもちろん、そんな予算も時間も与えてのに、どこから知識を仕入れてきたんだろうね?」
利久の願い「夏油さまとずっと一緒にいれますように」
美々子「菜々子とずっと一緒」
菜々子「美々子とずっと一緒」
恵「もう何も失いたくない」
琢真「筋を通せる男になりたい」
七海「灰原の呪いを解きたい」
硝子「寝たい」
夏油「ずっと悟の隣で最強でいられますように」
五条「傑と10年後も隣でいられるよう頑張る」
次回、更新未定
「ミッション16:夏油を誘拐せよ/夏油先輩を守れ①(仮題)」
本日20時過ぎ、かりん2022活動報告にて裏話公開。
ネタバレにお気をつけください。
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