「悠仁ー! 姉妹校交流戦について面白い事が決まったよー!」
俺の修行場所になっている地下室に、突然、五条先生がノリノリで駆け込んできた。
「面白い事? 何なん、先生?」
そんな風に聞き返す俺に、先生は浮かれた声で教えてくれる。
「例年の姉妹校交流戦は、京都校と僕ら東京校の2校の、2・3年生の戦いなんだ。でも、今年は特別に、盤星教の元呪詛師達も交えた全学年混合3チームの団体戦になりましたー!」
――!! 『盤星教の元呪詛師達』。夏油さんの教団に預けられたアイツらだ!!
「そんなん有りなん!? 順平達がここに来るんだ……!!」
「うん!! 有りになったから来るよ! 今は特に高専で把握している10代の術師が多いからね。盤星教の術師8人、京都校7人、そして東京校は12人、計27人!! 実力が同じ位の9人ずつ3チームにバラバラに分けて、団体戦するよ!! 今から教師だけでチーム分けの話し合いなんだ!」
「そうなんだ……!!」
どんな分け方になるんだろうか。
同級の伏黒・釘崎・美々子・菜々子、それから教団に預けられた順平、俺と面識ができた5人がみんな同じチームになるのは、人数的に絶対ない。誰かとの共闘なら俺は燃えるし、違うチームで競い合うのもそれはそれで燃える。
「それでねー。悠仁ってまだ表向き『死んだ』ままになってるでしょ。このままだと試合に出せないんだよね」
「あ……!!」
「予定より早くなるけれど、今から生きてたことを公表しようと思いまーす。もう悠仁も簡単に殺せないくらいには強くなってるからね! ……それじゃあ僕に掴まってね。話し合いの場所にワープするよー」
「はーい!」
先生に掴まった瞬間、俺は知らない和室に転移した。
――知っている人も知らない人もいる、正座している大人達だけの部屋。
「こんにちはー!! 故人の虎杖悠仁君でーす」
「……虎杖悠仁です! 好みのタイプはジェニファー・ローレンス! よろしくおなしゃす!!」
知らないお爺さんと巫女さんが、単純に俺の姿に驚いている。
夜蛾学長は、怒って五条先生にプロレス技を掛け始めた。
その様子を夏油さんが笑いながら眺めている、……座布団を黙って俺に差し出しながら。俺は会釈しながら受け取って、夏油さんの目の前で正座した。
「久しぶりだね。虎杖くん」
「夏油さん、お久しぶりっす!!」
「……ちょっと待て、面識あるのか!? お前達!!」
五条先生に締め技を掛けていた夜蛾学長が、面食らった様子で俺達を見下ろした。
「ええ。うちの教団で保護した子達の件、高専側の第一発見者は七海と虎杖君のコンビだったと聞いてますが?」
「……儂は聞いとらんぞ?」
お爺さんのツッコミに、学長から解放された五条先生が座りながら答えた。
「そりゃー、悠仁の存在は極秘、っていう条件で七海の任務についてもらってたからねぇ。たった今、極秘じゃなくなったけど。……悠仁、僕の真横においで」
「……クソ餓鬼が」
お爺さんは本当に忌々しそうに悪態をついた。五条先生は受け流すように笑って腰を下ろす。
俺は先生に示された場所に座布団を敷いて座る。そうすると、先生は指差しながら教えてくれた。
「紹介しておくよ、そこのお爺ちゃんは京都校の学長、楽厳寺嘉伸って名前だよ。宿儺の器を殺したがってる派閥の筆頭だね」
「え、そうなん?」
「そうだよ。それから隣の巫女姿は庵歌姫、京都校の先生。どっちも、僕や傑より弱い」
「悟、その紹介の仕方は角が立つよ。事実だけど」
夏油さんが呆れたように苦笑しながら言った。
――そっか。そういえば、五条先生と夏油さんは下の名前で呼び合う大親友だった。
「虎杖君、君は今までほとんど他の学生達と交流を持ててないんだろう? 今からのチーム分け協議をここで聞くだけ聞いて、学生のみんなの名前だけ先に覚えたらどうかな? ……良いですよね皆さん方?」
五条先生はナイスアイディアだと言いたそうな感じで指を鳴らし、夜蛾学長も少し考えて頷き、庵先生は、青筋を立てた隣の楽厳寺学長を見てちょっと困った顔をしている。
「チッ、……聞く『だけ』じゃぞ。協議を邪魔するガキなら叩き出す」
「……うす」
壁際の黒板に、参加者の名前を1人ずつ書いた紙が26枚、所属別に貼り出されている。
『虎杖悠仁』の紙を五条先生が追加して、それで27人。改めて見てみると『東京校だけ多い』って思う。
庵先生が黒板の前に立って、話し合いが始まった。
――「夏油。以前提示した条件は飲むということで良いんじゃな?」
「ええ。『盤星教の術師は単独行動禁止』、『術式は大まかに事前開示すること』、どちらも問題ありません。彼らの前歴が前歴である以上、高専側に深く信頼はされていないのは理解しています。……8人分全員の資料はお持ちしました」
「なら良い」
――「3チームに分けるなら、まず秤と乙骨と東堂を別々に分けるのは絶対条件だと思うんだよね、僕。今のところ学生陣の中で実力トップ3だもん。それぞれバラしとかないと実力が偏るよ」
「そうなのかい悟。では、その3人を各チームのリーダーにするというのは……」
「それは無理じゃよ! 夏油、お主は知らんじゃろうが、東堂に統率は無理じゃ。秤と乙骨はともかく」
――「実力を拮抗させるという意味で、索敵・移動要員を任せられる奴も各チームにバラした方がいいでしょう。うちのパンダと伏黒と、……京都校は西宮か。他にそういう術式を持つ子は、夏油のところには……」
「お読み頂くと分かる通り、ワープ能力持ちは1人。索敵できる術式を持つ子はいません」
――「索敵と移動の人員だけではなく、攻撃範囲もある程度は揃えた方がいいじゃろうな。遠距離に対応できる者、近距離に対応できる者」
「まぁそれもそうだろうねぇ。おじいちゃん」
――「虎杖君、きみは術師としては無等級だったよね? 今の戦闘スタイルを聞いていいかな? 殴る蹴るタイプだったと聞いているけど、変わりは無いかい? 実力はどの程度になるのかな?」
「はい、変わりないっす! 実力は、……先生、どう言えばいいの?」
「今はまだ二級呪霊を難なく祓えるくらいかな。黒閃出せたらもう少し強くなるだろうけど」
同じ日。先生達に続いて、東京校の学生のみんなにも俺が生きている事が発表された。
伏黒・釘崎・美々子・菜々子の全員から散々怒られて説教されて、更に安心されて泣かれたりした日の、その夜。男子寮の談話室で、俺は先輩方に引き合わされていた。
3年は秤先輩、祢木先輩、星先輩の3人で、この学年は『
俺は、いつの間にか『死んでいた』間のことを話す役目になっていた。
どんな経緯で二舌さんや真人と関わってアイツ等と戦うことになったのか(二舌さんが真面目な姿だった時の話は伏せたけど)、誰がどんな風な実力だったか、俺の説明にはみんながツッコミながら聞き入ってくれた。
もうすぐ行われる交流戦では、みんな盤星教の術師達とどれかのチームで共闘することになる。
ナナミンとの任務でアイツらと戦った人間は、この場では俺だけ。誰だって、関わることが確定している術師の情報は少しでも欲しいらしかった。
「……っていう感じで、先生方は一生懸命チーム分けを考えてたっす。『いい勝負になると思うよー』って、五条先生も夏油さんも笑ってました」
「あの2人が言うんなら、本当に実力が拮抗するんだろうなぁ」
と、パンダ先輩が言う。
「盤星教の術師って、一番上が高2で大体は中学生なんだろ? 術師に年齢は関係ないとはいえ、俺は中学生とは共闘したことねーよ。今回が初になるな」
「それは僕も同じですね。そもそもこんな大人数でのチーム戦が初かなあ」
「……ああ。秤先輩はスカウトでの入学ですし、乙骨先輩も同じようなもんですからね」
そういえば『恵は小さい頃からこの学校に住んでいるし、呪霊も小さい頃から祓ってた』って、五条先生が言ってたな。
呪霊の祓い方が人によってバラバラなのと同じで、入学の経緯もバラバラってことなんだろう。俺の場合だって、俺と全く同じ理由で入学する奴なんていないだろうし。
――そうだ。一個気になることがあったんだった。
「あの、俺から質問良いすか?」
「なんだ?」
「俺と同じチームになった東堂って京都校の人。『もの凄く癖が強い性格だ』って京都校の学長が言い切ってて、誰と組ませるか先生達が結構悩んでたっぽいっす。どんな人なんすか?」
結局、東堂先輩の他は、俺・祢木先輩・パンダ先輩・釘崎・京都校の新田という1年・順平・丸薬作りの子・新田と方向性の違う(?)固定化術式の子、っていう9人チームになったんだけど。
みんな黙って顔を見合わせてから、祢木先輩が静かに言った。
「……前日の顔合わせの時に会えば分かる。とにかく癖が強い奴だ。あととんでもなく強い」
「え?」
次回、明日19時01分更新
「ミッション19:新米呪詛師を使い潰せ/俺から逃げてよ②」
本日20時過ぎ、かりん2022活動報告にて裏話公開。
ネタバレにお気をつけください。
ここ好き、匿名感想等もお待ちしてます!
※補足事項
当作中では原作のような百鬼夜行が行われなかったため、京都で秤と保守派が揉める事件も起きませんでした。このため秤は停学処分を受けていません。星と共に男子寮の在寮生として日々を送っています。
作中での『東京校の学生が12名』の内訳と入学理由は以下の通りです。
3年(3名)-秤金次(スカウト)・星綺羅羅(スカウト)・祢木利久(夏油の推薦)
2年(4名)-狗巻棘(家系)・パンダ(夜蛾学長が手続き)・禪院真希(家系)・乙骨憂太(スカウト、ただし里香が解呪できないため死刑執行猶予中)
1年(5名) -伏黒恵(五条の推薦+幼少期から高専預かり扱いだったため)・枷場美々子(家入の推薦+幼少期から高専預かり扱いだったため)・枷場菜々子(家入の推薦+幼少期から高専預かり扱いだったため)・釘崎野薔薇(家系)・虎杖悠仁(スカウト、ただし宿儺の器のため死刑執行猶予中)