腐った蜜柑の二枚舌   作:かりん2022

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ミッション19:新米呪詛師を使い潰せ/俺から逃げてよ②

 

 

 きっかけは、ちょっとした雑談だった。盤星教に引き取られた僕達8人と、二舌さんの。

 その時の話題は『二舌さんの高専時代』。二舌さんが特に楽しかったと感じた事を、とっても懐かしそうに、面白そうに、僕達に話してくれた。

 二舌さんの高専生活は短期間で終わってしまったそうだし、経験した出来事は楽しい事一辺倒というわけでもなかったそうだけれど。全部ひっくるめて、とても貴重で大切な思い出になっているそう。

 

 二舌さんのその話の中で、『姉妹校交流会』というイベントが登場した。毎年恒例だという、高専2~3年生の呪術合戦のこと。

 僕は「悠仁君は高専の1年生だから、きっと今年は先輩を応援する側に回るんでしょうね」って言った。二舌さんは頷いて、言葉を付け加えたんだ。

 

「はっはっは! 案外、夏油先輩に頼んだら、君たちだってこの交流会に出させてもらえる『やも』しれないね! 10代の術師がこんなにも多いのは異例だし、元から術師というものは無限の好奇心を持ち合わせているからね!  『手の内を見せてやる』と言えば喜んで喜んで乗ってくるさ!」

 

 そもそも僕達は、悠仁くん達に捕捉される前まで、お互いに呪い合って術式を鍛えていた。呪い合いを嫌うような性格とは程遠い8人の集団だ。

 みんな前向きに話し合い、最年長の僕、吉野順平が、夏油さんにおねだりしてみることにした。

 ……夏油さんは、僕達の要望をナイスアイディアだと感じたようだった。東京高専の五条さんも同調、そこから夜蛾さんという学長の承諾を得たという。京都側の高専の先生達とも、まず電話で色々と話し合いをする流れになったそう。

 最終的に、夏油さん自身が東京の高専に赴いて、先生達との話し合いの結果、……僕達8人全員の交流会参加が最終決定、という流れらしかった。

 去年までの交流会は高専2校の2~3年生参加だったけど、今年は1年生から3年生まで全員が参加するらしい。僕達盤星教の術師に中学生がいるから、バランスを取るためにそうなったという。

 

 27人を9人3チームに分けたチーム表を受け取って、しばらくしてから。

 二舌さんから、秘密の話が僕達にあると言われた。とても大事な策謀の話だ。

 ほとんど同時に、二舌さんの上司からも連絡を受けている。

 夏油さんには絶対秘密の、――僕達が、この『生命』を役立てるべき時期が来た、という話のこと。

 

 二舌さんがくれたものを、今度は僕達が二舌さんにあげる。

 ごく短期間の短い間でも、甘い夢を。それだけのこと。それに命をかける価値は、ある。誰に理解されずとも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ああ、忌々しい。

 五条 悟と夏油 傑、彼らの擁する胡散臭い宿儺の器に、盤星教の術師達!!!

 信用なんぞ欠片も出来ない。だが、排除するには数が多すぎる。

 東京へ出発する直前の時間帯ゆえ、京都校の全学生がこの教室に集合している。儂は教壇から学生達を見回し、命じた。

 

「盤星教の術師達と宿儺の器の実力を測れ、目を離すな」

 

 学生達は頷くが、真っ向から反抗する者もいた。

 ……東堂である。こやつも九十九の弟子だけあって、一筋縄では行かない。特級術師はこんなのばかりか。全く忌々しい。

 

「俺をくだらん陰謀に巻き込むな。11時からの散歩番組に高田ちゃんがゲスト出演するのだ」

「録画しろ」

「録画とリアタイ両方で見るに決まってんだろ。くだらん奴ならぶっ飛ばす。俺は貴様らにも失望しきっているのだ」

 

 加茂の説得も虚しく、そうして東堂は出て行く。

 

「どうする? あれ」

「とりあえず、情報収集に専念しよう。下手な怪我でもしたらつまらん」

「混合チームだもんね」

「胡散臭い人たちとチームかぁ」

「三輪。何かあったらすぐ電話しロ」

「ありがと、メカ丸」

 

 東堂以外の学生達は真面目に仕事をしそうである。 

 ……やれやれ。冥冥にも話をつけておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教団で、出発前に集まる子供達に声掛けをする一瞬。

 情けないことに、俺は声が出なかった。そんな自分を律して、にこりと笑顔を作る。

 

「レディースアンドジェントルメェン! 私の可愛い術師達よ、元気だったかなぁ!? 今 日 と 明 日 の ! 君たちへの指令を再確認するよ! 我が主人は『君達を使い潰せ』と仰せだ! 覚悟はいいかな!? イェア!」

「おー!!!」

「……はっはっは。待て待てガールズアンドボーイズ、偉いいいお返事じゃないか、私の言いたいことわかってる?」 

 

 その言葉に、順平は笑う。

 

「僕らはみんな同じ意見です。僕はあなたのためにいつだって生命を掛けていいんですよ」

「……」

 

 絶句。だって。確かにそうするように誘導したけど。かかってんのは命だぞ!?

 

「残る3人と死ぬ5人はもう僕等の間で決めているんです。後は、明日、例のモノを貴方が渡してくれればそれでいい」

 

 何も言えないでいるうちに、夏油先輩が現れる。この人は、策謀について何も知らない。本当に何も知らされていない。

 

「……みんな、準備はいいかな? おや、二舌。どうしたんだい?」

「応援に来てくれたんですよ、二舌さん」

「そうなのかい?」

「あ、ああ」

「呪術師の学校、楽しみですー!」

 

 子供達は取り繕えない俺を隠すように夏油さんに話かけていく。

 ああ、だめだ。俺。だめだ。最低だ……。ふざけんな、ふざけんなよ、俺。

 

 ――それでも俺は、止まれない。

 本当に犠牲を少なく出来てんのか。俺にはもうわからなかった。

 ああ、俺、最低だ……。

 

 

 そうして、俺は今から、罪を重ねに行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空を飛ぶ呪霊に乗って、盤星教の奴らがやって来た。

 おお、すげー派手な登場。久しぶりだな、夏油さん。

 それと……おお!

 

「久しぶり! 順平!!」

 

 順平に声をかけて走り寄る。順平も俺に気づいて笑顔になった。 

 

「久しぶりだね、悠仁くん!!」

 

 学生が一堂に介して、和気藹々となる。

 俺と順平も近況を話しているとき、大柄で筋肉質の男が大股で近づいてきた。

 順平が怯えて下がったので俺が前に出る。

 

「お前達! 俺は東堂 葵! 好きなタイプは!?」

「へ?」

「性癖には人間性が現れる! 好みのタイプを言え!」

 

 東堂という3年! 癖が強いって聞いてた、この男か!

 ……な、なんかよくわかんねーけど、好みのタイプを言えばいいのか?

 

「ケツとタッパがでかい女。ジェニファー・ローレンスとか」

「そっけなく見えて、大きな愛を持ってる人かな」

 

 その時、東堂がフリーズした。

 

「ブラザー!」

 

 いきなり東堂は泣き出した。い、意味がわかんねぇ!

 

「そうだ、お前達の好きなタイプは!」

 

 盤星教の中学生の術師達が絡まれて、慌てて順平が前に出た。

 

「この2人はまだ中学生なんだから、辱めるような質問は駄目だよ……!!」

「なんだとぅ!?」

「わー! 落ち着けよ、東堂! ほら、作戦会議の時間決まってるしさ、急ごうぜ!」

 

 そうして、どうにか作戦会議をする事になった。

 東堂・俺・順平・祢木先輩・パンダ先輩・釘崎・新田・丸薬作りの子・固定化術式の子で話し合いをすることになったのだが。

 

「俺は乙骨と秤を強襲する。あとは各々好きにやれ! それよりも、お前達を全員高田ちゃんのコンサートに連れて行く! リーダーとして東京観光を楽しませてやるのも務めだからな!」

 

 東堂の宣言に、祢木先輩とパンダ先輩は頭を抱える。

 リーダーって東堂先輩だよな? 大丈夫なのかこれ。癖が強いにも程があるだろ。

 

「はあ!? そんなこと許されるわけないだろう!? コンサートはお前の好みだろうが!? 百歩譲って今から行くんだとしても、勝手に一人で行きやがれ! 俺達をお前の好みに巻き込むな!」

 

 そんなこんなで、コンサートに連れて行きたがる東堂先輩と、それを阻止したい祢木先輩のやり取りが言い争いになるまで時間はかからなかった。

 滅茶苦茶な言い争いが段々と激化してくる。

 

「待ってこれ、俺が頑張らないといけない流れ? パンダなんだが」

 

 パンダ先輩が頭が痛そうに説明を続けてくれる。

 

「加茂も伏黒も棘も強い。作戦なしでは絶対に勝てないぞ……」

「東堂、コンサートに行く前に作戦を大まかにでも決めてくれ!!」

「俺に指図するな!」

 

 結局、話し合いは纏まるどころか、言い争いながら進むこととなった。

 大丈夫なのかこれ。今日、何度も思ったことを繰り返す。

 

 ああ、とうとう先輩達の間で乱戦が始まった……。

 順平は中学生2人を庇いながらドン引きしているし、新田と釘崎は呆れている。

 団体戦の本番は明日だっていうのに、味方同士で今争っても意味ねぇよな?




次回、明日19時01分更新
「ミッション20:新米呪詛師を使い潰せ/俺から逃げてよ③」

本日20時過ぎ、かりん2022活動報告にて裏話公開。
ネタバレにお気をつけください。

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