腐った蜜柑の二枚舌   作:かりん2022

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ミッション2:六眼の評価を貶めろ/六眼の死亡を防げ

 どーも、俺、二舌誠司!

 ネット小説のテンプレみたいな転生をしたものはいいものの、転生先の環境が詰んでます。

 

 詰んでるポイントその1。

 転生先の家が、呪術廻戦の世界の術師家系! それも後ろ暗い仕事に従事してる家だった!

 詰んでるポイントその2。

 転生先のパパンの取引相手、額にグルっと縫い目がある男! ひょっとして:メロンパン。

 

 ――拝啓

 神様、俺って前世で何か罰当たりやらかしたんでしょーか? こんなに詰んだ転生なんて前世のネット小説でも読んだことありませーん。

 この詰みっぷりに、いつもいつも心の中で号泣しながら過ごす日々です。この地獄っぷりどうにかしてください。……ああ、いくら祈ってもしてくれないですよねゴメンナサイゴメンナサイ。

 何も知らんぷりして過ごすことはできるだろうけど、そうすると2018年にはメロンパンによる一億人同化実行→日本の国家滅亡が発生しかねません。コンチクショウ!

 

 そんなこんなで絶望しながら、ない頭をフル回転させながら、生き延びて、生き延びて、やーっと迎えた15歳の春! 祝、呪術高専東京校入学! 2年の先輩方は女性1名に男性2名、男性陣の方は原作過去編主役のあのお二方!

 

「二舌って、腐った蜜柑の子飼いの家だよなー。何しにここに入学してきたんだよ気持ち悪ぃ。俺の監視か? 呪力の流れも見たことねえし。変な洗脳術式でも持ってるんじゃねえだろうな」

「悟」

 

 この時期のこのおふたりなら、こんな喋り方になりますよねぇ。

 

「はーい。先輩のおっしゃる通りの家の生まれ! 二舌誠司っす。自分の家が嫌になって飛び出してきました! 術式は洗脳じゃなくて『自分語り』! 自分の情報を語れば語るほど自分にバフが掛かる系なのです!」

「……面白れぇな、今ここで俺に掛かって来いよ。無下限を体験させてやる」

「いいんですか? 胸お借りしますね!! よろしくお願いしやっす!! 俺、戦闘スタイルはベラベラ喋りながら殴る蹴る! ということでバフ効かせてドーン!!」

 

 俺は拳を握って五条先輩に飛び掛かりました。予想通り無下限であっけなく弾かれて組み敷かれ、一瞬で俺の方がギブアップ! うん、順当な結果です。

 

「嘘は吐いてねえみたいだな。バフが掛かったタイミングもお前の言う通り。面白れー術式だな。術式開示の底上げ効果が他の術師よりも高く出てるな? お前」

「さすが六眼。お分かりになりましたか」

「そうか、……『自分語り』の術式効果と、通常の術式開示の効果が一緒に掛かるんだね?」

「その通りです。先輩方」

 

 五条先輩の腕を抜けて、きちんと90度頭を下げます。

 

「無下限の体験、ありがとうございました!」

「大した事じゃねえから気にすんな」

「悟が変なこと言ってすまなかったね」

「いえいえ、俺の家が家なんで仕方ないっすー!!」

 

 先輩方にはこれで認められたようですね。

 家入先輩と、一般家庭出身の同期、灰原と七海はずっと無言で俺達に引いてます。ですが、2人が原作通りの性格なら、そのうち俺とは同期3人組として普通に仲良くなれるでしょう。……俺の大きな嘘は全くバレないまま。

 五条先輩の六眼は呪力の流れを見通せますが、他人の嘘を見抜けるわけではありません。術式の名前を精緻に見抜けるというわけでもありません。

 

 ――俺が実家が嫌になって飛び出してきたというのは嘘。パパン経由のメロンパンの指示でした。俺は、五条さん達の監視のためにここに派遣されたのです。

 ――俺の表向きの術式は『自分語り』だけど、正しい術式の名前は『秘密の暴露』。こちらの方は誰にも打ち明けてはいない、今のところ俺がたったひとりで抱え込んでいる秘密。

 

 この俺、転生者の二舌誠司は媚を売るべき相手を心得ています。

 メロンパンは敵といえど上司、すなわち媚を売るべき相手! 呪専の中でのキーパーソンは、五条悟ではなく夏油傑! ここにガンガン媚びていく!

 前世と今世で培ったエアーリードスキルと口車と媚びスキルとこの口車に最適な術式で、俺は日本人一億人同化を防ぐ。その為には、どんな犠牲も厭わない。

 こうして、大事な大事な『秘密』を抱えた道化師:俺。演出:メロンパン。主役:五条悟。悪役:宿儺の楽しい楽しい劇の幕があがったのです。

 

 喜劇になるか悲劇になるかは、俺次第。俺次第、ですよね?

 

 

 

 さてさて、予想通り灰原や七海とも仲良くなって順調に学生生活を楽しんでいた頃。夏を目前にした季節に、実家のパパンに呼び出されました。

 

「誠司。五条悟達の様子はどうだい? 君みたいに青春を楽しんでいるのかな?」

 

 ――拝啓

 神様。俺の人生に詰んでるポイントその3ができました。

 パパン、額を一周するような縫い目ができてます! ひょっとしなくても:メロンパン……!!

 

「はい! 五条悟は夏油傑と一緒に青春を満喫しているようです! しょっちゅう喧嘩するし校舎を滅茶苦茶にする問題児ペアですけど! ところで、とうさまは頭をお怪我されたんですか?」

「ああ、ちょっと任務先で負傷してね。心配はいらないよ。……誠司。君には、二舌家の当主として任務を命じる」

「はい!」

「来たる満月の夜、天元の老化対策として星漿体との同化が行われる。500年に一度の重要な儀式だ。同化の2日前から、五条悟はその星漿体の護衛を任されるそうだ。……君は、その同化を阻止することで五条悟の評判を貶めてほしい」

 

 来た! 天内理子の護衛任務です。

 

「とうさま。でしたら私からお願いがございます! ……同化の2日前と前日に、私に連続で日帰りの単独任務命令が来るように! そうなるように、手を回して頂きたいのです!」

「構わないが、その意図は?」

「五条が、無茶振りで私達後輩に変な行動を強いてくる恐れがありますから! 任務を言い訳に回避できる余地を頂ければ……! 私は同化の当日に動きます!!」

 

 

 

 ――同化当日 15:00 都立呪術高専 筵山(むしろやま)(ふもと)

 

「皆さま、お疲れ様です……! ちょっと不穏な情報が入りまして、共有よろしいでしょうか」

 

 五条悟が高専の敷地内に入るなり、後輩が鳥居を潜り抜けて悟達の方へ駆け寄って来た。どうしてだか、拡声器を片手に持っている。

 

「誰?」

「二舌誠司、私達の後輩です。敵ではないですよ。……二舌、情報の内容は?」

 

 二舌誠司、呪術高専1年。きのうまで単独任務を受けていたせいで、沖縄には行こうにも行けなかった『自分語り』使い。入学早々に夏油に心酔したそうで、夏油がいるときだけは控えめで常識的になるが、そうでない時は道化師のようにはっちゃける、という、……悟からしたら何とも言えない気質の男だ。

 

「俺の実家からの情報ですが、……盤星教が天内さんを殺すために暗殺者を雇ったらしいんです。教義的に闇サイトの懸賞金に関わらず、同化の直前までしつこく生命を狙ってくるのでは、と注意喚起を」

「ええっ? この場所が安全でない、ということですか?」

「はい。……雇われた暗殺者は『術師殺し』という禪院家出身の男で、呪力完全0のフィジカルギフテッド、術式を無効化する特級呪具の凶器を持っているらしくて。……もしかしたら、ここの結界をすり抜けられる体質ではないか、と――」

 

 トスッ

 

「なんだ知ってたのか。俺だよその『術師殺し』は」

 

 完全に不覚を取られた。呪力の無い日本刀が、悟を後ろから貫いた――!

 傑が呪霊を出して男を飲み込む、が、この程度で死ぬような男がわざわざ襲ってくるだろうか。

 

「悟!」

 

 心配そうな傑を、悟は片手で制した。

 

「問題ない。術式は間に合わなかったけど内臓は避けたし、その後呪力で強化して刃をどこにも引かせなかった。天内優先でお前は先に行け」

「先輩。逃げるときは空を飛んで! アイツ、犬みたいに地面の臭いを嗅いで追ってきます!」

「……分かった! 悟、二舌、死ぬなよ!」

 

 心配そうな天内と黒井を呪霊に載せて、傑は天元様の方へ向かっていく。

 

「二舌。男の情報は他にあるか」

 

 背中合わせに悟の背後に立った後輩は、拡声器を使って叫び始めた。さも面白そうな声色で。

 

「今回初の実戦使用! 俺の術式反転は『他人語り』! 先んじて相手の情報を話すことで、相手の術式開示効果を潰せます!! ――あらよっと!!」

 

 何とか男の攻撃を避けたらしい二舌はベラベラと続ける。

 

「コイツは五感が異様に発達してます! 天与呪縛のフィジカルギフテッド! 名前は伏黒甚爾! 旧姓は禪院です! 息子の恵が3歳! ヒモしてる女のところで任せっきりです! 何年かしたら息子を禪院に売るらしいですね、っ!!」

「……うわ、すげぇクズ男!」

「ええ、クズです! 競馬が大好きなくせに全く当たらない男です! 物を格納できる呪霊を胃袋の中に飼ってます! 呪具を呪霊の中に仕込んだまま色んな結界をすり抜けられる、――ゲフッ!!」

「これ以上喋らせる訳にはいかねぇ。術式開示を潰すどころか弱体化効果もあるだろ? テメェ」

 

 ――二舌!

 天与呪縛の襲撃を避け切れなかったらしい後輩が倒れた。やむなく悟は彼から離れる形で森の方へ飛ぶ。喋っていた情報が正しければ相手は術式を無効化する特級呪具持ち。悟との相性は大変悪いが、確かに二舌の喋りは効いていた。あの話が続くにつれて、男の動きが急に鈍くなっていた。だから視界の広い場所で六眼には頼らない対応を――

 

「……!!」

 

 悟の視野が蝿頭の群れで埋まった。

 チャフのように使うつもりらしいその中から、伏黒甚爾が特徴的な形の呪具を片手にすり抜けて現れる。術式を無効化した刃先が悟の喉を貫き、胴、足、次いで日本刀で額。――視界がスローモーションになって、暗転する。

 

 

 

「……せんぱい。ごじょう、せんぱい」

 

 意識を無くしてどのくらい経っただろうか。後輩の声だけが耳を打った。悟の方に這いながら近寄って来ているらしい。声との距離は異様に近く、悟の頬を撫でる指先は、優しいようにも弱いようにも思えた。

 

「おれの術式反転、さっき話したの、必ずしも、正しく、ないんです。……『他人語り』は、相手への、バフとデバフの、増強、なんですよね。あなたが、今し方、増やした手数、例えば、……反転術式で自分を癒せることとか、たぶん俺が言い当てることで増強されてる、ほら、今みたいに」

「……二舌!!」

 

 二舌の声で増強された反転術式は、悟の全身を瞬く間に癒した。人生初の快感。衝動的に上半身をガバリと持ち上げた悟は、真横にうつ伏せる二舌の右手首を強く掴む。この後輩は血だらけで、這えるが歩けない程度の怪我。死にはしないが即座の戦闘は無理だろう。

 あの襲撃犯の姿はない。天内目当てなら、天元様の方へ行ったのか。

 

「俺、推理したことがありました。五条の家が隠すような、そんな奥の手が、あるとしたら、どんな色の名前だろう、って。……仮に、蒼と赫が、合体するとしたら、きっとその名前は、むらさき色の名前をしてる。俺の推理が、正しければ、正しいことを言い当てたことになるから、……上手くいきましたね。反転術式のバフ。今、ピンピンしてませんか? 先輩!」

 

 ――ああ、その通り! 正解だ! 今この世界が盛大に気持ち良い!!

 

「最っ高の後輩だよ! オマエ!!」

「俺、呪力を使い果たしてここから動けないんです。どうか、俺を置いてあの男を倒しに行ってきてください。……相手は弱体化しているはずですが、それでも、薨星宮を丸ごと吹っ飛ばすつもりで戦わないと倒せない強敵です。どうか、……長髪ロングの長身の女の子相手のAV持ってる、五条先輩!」

「一言余計だ! まかせとけ!」

 

 暴露される内容がパワーアップに繋がると捉えれば、腹も立たない。悟は、言われた通り薨星宮を吹っ飛ばすつもりのハイテンションでその場を飛び去った。




次回、明日19時更新
「ミッション3:六眼の信頼を得よ/パパンの信頼を得よ」

本日20時過ぎ、かりん2022活動報告にて裏話公開。
ネタバレにお気をつけください。

感想、ここ好き、お気に入り、評価、ありがとうございます。
匿名感想やさらなるここ好きお待ちしてます。

https://live-novel.com/
こちらで本日21:00〜21:30まで、八話の相談してます。
ネタバレ上等の方は覗きに来てください。
今日のお部屋の主催者はニレさんです。
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