呪専最下層まで2人を連れてきた時だった。
黒井さんが、深々と頭を下げる。
「理子様。私はここまでです」
「黒井。大好きだよっ」
理子ちゃんは、きつくきつく黒井さんを抱きしめて涙を流す。
ここが二人の今生の別れとなるのだ。
そんな感動的な別れを見守っている時だった。
カッと辺りが光り、私は慌てて2人を全力で守った。
この呪力は、悟……!?
「悟っ!!!」
地下の建物は吹っ飛ばされ、酷いあり様だった。
な、何が起こったんだ!?
「悟……!」
「あっははは! 全部吹き飛ばしてやった!!!」
「悟! 一体何を……!」
理子ちゃんも黒井さんも完全に気を失っているし、天元様の結界はなんとヒビが入っている。
「アハハハハハハハ! 傑ぅ! 甚爾の奴、探すの手伝ってくれよ」
「悟! ……君、酔ってる? 甚爾って、さっきの襲撃犯かい?」
完全に目が逝ってるし、動きも口調も完全に酔ってハイになった人間のそれだ。
よく見れば、急所に血の跡が凄いし、ひどい傷を負ったことがわかった。反転術式を会得して治したとかだろうか? 血の跡は頭にもある。それで、おかしくなっていっているのかもしれない。
そこで瓦礫の一部が盛り上がる。
荷物を収納していた呪霊が祓われて、中の呪具が大量に吐きだされたのだ。
そこを探すと、甚爾が虫の息の状態で、まだ生きていた。
「さい、あく、だな……。ま、いい、や。トロフィ、やるよ。息子、の恵、を、たの……」
そこで、甚爾は事切れた。悟はそれを確認すると、グリンっと首を回し、私を見てきた。
「傑ぅ! やろうぜ♡」
「悟っ!」
「収まんねーんだよ。相手しろよ」
冗談じゃない! 呪専地下を丸ごと吹っ飛ばしたんだぞ!? 今もいつ崩れるかわからない。黒井さんと理子ちゃんも避難させないと!
「悟。落ち着け。落ち着け!!!」
それから、悟を正気に戻すためにとっておきの呪霊を何体も失ってしまった上、追い詰められて会得したうずまきで一体を除いて全ての手持ち呪霊を失ってしまった。当然、同化は失敗。理子ちゃんを逃す逃さないの問題である。
私達は、めちゃくちゃ叱責された。特に悟は飲酒や薬まで疑われて、それはもう叱責されると同時に精密検査を受ける事となった。幸い、薬とかは異常とかは発見されなかったが、元の悟に戻るまで3日掛かった。
それと、助けてくれた二舌は、悟を助けたのが原因で凄く不機嫌な家の人たちに意識が戻らぬうちに連れられて行った。なんとか頼み込んで、硝子の治療だけは受けさせてからとなったが、それが私にできた精一杯。
私は謹慎させられてて、動きようがない。一ヶ月である。一ヶ月。
お叱りは甘んじて受ける。だって、その。私。甚爾が落とした呪具の山、取り込んじゃったんだよね。悟に唆されて。迷惑料って奴である。悟と一緒に子育てするんだから、これは養育費である。そのために、呪霊を一体だけ残したのだ。
一時期、悟が裏切ったのではって話まで出たけど、悟が正常な状態ではなかったのは一目瞭然だったし、呪専の医師も呪力の乱れを見つけてくれて、結果、呪具に思考力を剥奪するものがあったんじゃないかってことで、夜蛾先生が収めてくれた。
この件で、悟は力を認められると同時に、怖がられてしまった。制御できないんじゃないかって。
そのおかげで、悟はしばらく親しい人と組まされる事になった。被害を出さない為に、監視役兼障害物役である。同期や後輩なら一緒くたに吹き飛ばさないんじゃないかと。私も、悟に呪霊をほぼ全て祓われてしまい、等級が下がってしまったので、悟と二人でコツコツ依頼をする事になってしまった。力の調整の練習にはもってこいだろう。呪霊を祓わず弱らせなければならないのだから。
「ごめん。ほんっとごめん。最低だよな、俺……」
任務で捕獲予定の呪霊を吹き飛ばしてしまい、悟は落ち込んで告げた。また叱責は確定である。
「わかった。一つだけ願いを聞いてくれたら、許すよ」
「う、わかったよ。なんでも言えよ」
悟は、覚悟を決めたようにして言う。きっと、今、いえばなんでも叶ってしまうんだろうな。
私の願いはもう決めてある。
「僕か私に一人称を改めな。君、凄く怖がられてんだから、せめて口調はもうちょっと柔らかくしようよ」
私の願いは、悟が、恐れられないこと。
本人がここまで反省しているのに、私が今更何を言えるというのだろう。それに、悟がああなったのは、私や理子ちゃん、黒井さんを守る為だったのだから。そりゃ当時はすごく焦ったけど、それでも悟が殺すつもりがないのはちゃんと理解してたし、今の私には、悟への心配しかない。そうだ、そういえば甚爾が死ぬ間際、息子のことを託してたんだった。子供に罪はないし、養育費は貰ってるし、悟はあんな状態で記憶なんかないだろうし、私がしっかりしないとな。養育費の分は仕事しないと。
「そんなんで、いいのか?」
「大事なことでしょ」
「だって、傑、俺のせいで等級が下がって……!」
私は悟の顔を両手で包み、額を合わせた。大丈夫だよ。悟。呪霊はまた集めればいいんだから。
「すぐに前より強くなってみせるよ。君も手伝ってくれるだろ?」
「当たり前だろ! 俺が祓った分! それ以上! ちゃんと呪霊集め手伝うから!」
「祓っちゃったくせに」
「う……わりぃ」
「次は頑張ろう?」
そう慰めつつも、私の胸に暖かなものが宿る。呪霊を飲むのは、ゲロ雑巾を飲むような、ものすごい苦行だ。けれど、悟と一緒に、悟の為に飲むのだと言うのなら、全然苦にはならない。
むしろ、悟が一緒にいてくれるなら、呪霊を集めるのがなかなか終わらなくても、全然構わない。
「悟。私達、ずっと友達だよね」
「お、おう! 俺たち最強で、親友だろ!」
「ふふ。そうだね。親友だ」
地獄の底も、君と一緒ならば、私にとっては……。
「……ということになってるそうだよ。困る。これは困るなぁ」
俺、二舌 誠司。ピッチピチの学生です。うん、縛られててピッチピチに跳ねてます! 今、盗撮映像を見せていただき、パパンいやメロンパンに詰め寄られてます。
いや俺、起きたばかりなんですけど!? 美しい友情ですね、五条先生と教祖様! 雨降って地固まる!!
さて、ここから俺のハイパー命乞いタイムが始まりますよ!
「とうさまは五条悟の評判を貶めて同化を阻止せよと仰いました!」
まずはここ。ここ大事! お前のオーダー同化阻止だから! 成功してるから!! 失敗したのはテメーの指示だしだから!
「言ったね」
「ですから、五条悟からの信頼を得つつ、五条悟の評判だけ落ちるように立ち回ったのですが、何か間違っていたのでしょうか!? オーダー通りですよね! 五条は凶暴な獣とのもっぱらの噂です! 死なせないように五条だけ評判落とすように立ち回るのどれだけ大変だったかと!」
我は求め訴えます! 本当に命懸けだったんですよ、あれ! ピッチピチと跳ねまくりますよ!
「……うん? それは言い訳かい。五条悟の抹殺ができたとでも?」
「何故天内護衛前に言ってくださらなかったのですか!? もっかい言いますが、めちゃくちゃ大変だったんですよ、誰も死なせないようにするの! 抹殺だけなら甚爾もいましたし、ずっと簡単だったのに! 死んじゃいましたよ、甚爾!」
言ってくれればできたと、俺は猛アピールして跳ねまくります。ピチピチピッチ!
「殺すなとは言ってないが」
「そんなのアリですか!? お、横暴だ! 五条悟を操れるほどの情報をもう1回探れと言うんですか!?」
「うん?」
ここでマックスピチピチ。
更なる情報を投下して食いつき掛けたところで、一気に引きます!
逆らってばかりでは殺されてしまいますからね。この辺で媚び売りタイムです。
きちんと命令されればします、とね。
「ひっ い、一応がんばりますが、じ、時間はくださいよぅ。年単位で。その言いようだと、犠牲者は気にしなくてもいいですか? 夏油とか灰原とか七海とか天内とか黒井とか、殺したり行方不明になったりその他いろいろ。それでもなんとかなるか、わからないですけど」
「いいのかい? 友達だろう?」
小首を傾げて、問うてくるメロンパン。
どの口でそれを言うんだか。侮蔑はしない。そう言う感情は表に出てしまうものだ。それより、メロンパンは推しだと思い込む。実際、転生前は好きなキャラでもあった。あの突き抜けた感じがいいんだよな。
「そしてあなたはとうさまです。第一、本当に五条悟の味方をするんだったら、もっと前に襲撃犯の情報流しましたよ。襲撃時にわざわざ話に集中させるって、逆に命取りでしょう? 味方する振りで、隙を作ったんですよ?」
「……それもそうだね。いい子だ」
少し考えて、理解してくれたようです。利用価値を見出してくれたのか、メロンパンはにこりと笑います。
頭を撫でられて、ゾワゾワッとするのを必死で堪えます。複雑な感情が、俺の中でぐるぐると渦巻きました。いろいろあるんですよ、腐った家には。
「五条悟を操ると言ったね?」
「いくら頭パッパラパーになったって、あの五条悟が、というか誰だって重要な建築物を破壊とかしないですよ。操られでもしない限り。幸い、見破られてないようですが」
どうして誰も疑問に思わないのか、と呆れを全身で表現する。
「……ふむ。いや、すまない。誠司の事をみくびっていたよ。そうだね。夏油は殺してはいけない。五条と夏油、2人の仲が悪くなるような事もしてはいけない。むしろ、応援してやりなさい。そして、いいタイミングで、夏油には遺体をほとんど無事な状態で死んでもらわなくてはいけない」
「やれと言われればやりますが。難易度エクセレントですね」
「出来るかい? ああ、五条と夏油以外は誰がどうなろうと構わない」
「やります! お任せください、とうさま! 仲はそのままに離反させるとかどうですか? 七夕みたいにたまの逢瀬とかで、想いを募らせるとか。あとは五条悟に処刑せざるを得ない方向に持っていけば完璧かと!」
唸るのです! 俺の原作知識と二次創作知識!
「いいね。とてもいいね。どうにかなるかな?」
「どうにかします!」
「君は本当にいい子だ。期待しているよ」
「そうでしょう? 縄を解いていただけると嬉しいです!」
そして縄が解かれる。ふぅ、助かった。俺はその場で土下座する。
「お家の為、とうさまの為、精一杯微力を尽くさせていただきます」
「うん。頑張ってね」
そうして、とうさま、メロンパンは去っていった。
俺はゴロリと転がる。
「離反させるのどうしようかなー。ごめん、灰原。死んでもらうわ」
そうして、俺は布団をバフっと被り、身を震わせる。
……。
…………。
…………ククククク。あーっはっはっはっはっは!!!
俺は体を震わせて、必死に笑い声を抑えます。泣いているように見えるようにです。
基本、監視は外れないものと思ってますから。
勝ちました! 賭けに勝ちましたよ!!!
本当の俺の目的は、両方の信頼を得る事です!
甚爾さんに殺される可能性もありましたが……なんとか生き延びました!
そう、あの時。
俺は五条にバフを掛けるフリをして、思考能力にデバフを、反転術式や術式にバフを掛けていたのです!! ダメージを負っている最中の事ですから、六眼を誤魔化すのは簡単でした。ハイになっているのもあり、頭パッパラパーになって攻撃力が超強化された五条悟が煽られたままに大破壊を起こすのは必然でした。
五条悟の手で同化を台無しにするように仕向けて、なおかつ命の恩人となる。
ハイリスクでしたが、なんとかなりました!!
原作はすでにブレイクされてますが、教祖様が精神的に弱って付け込めるタイミングは必ず来る。誰をどれだけ犠牲にしても、そう、日本の人口の半分までは許容してみせましょう。まあ、そこまで大掛かりなことを仕組んでるって誰も信じないでしょうから、建前は1000人程度で留めておきますが。いえ、むしろ1000人までは犠牲にするノルマと考えた方がいいですね。そこまでしないと信用は得られない。
つまり、手段は全く選ばないって事です。
何故同化をさせなかったか、ですか?
あまぁい! それを許すメロンパンじゃないし、その後俺の命運は間違い無く尽きます。あとが続かないのですよ!!
互いに希望が叶ったように思わせておく、でも決定的な勝利は掴ませない。
あー! 頑張った甲斐がありました! 叫びたい! 叫んでる!
あ、枕を押し付けてるから声は漏れてないから!
あっはははははははは!
……はぁ。この調子で後10年以上ですか。
とてもしんどい。この世はほーんと地獄です。
後日、学校に復帰した俺は、若き五条先生に先日のお礼を言われると共に、AVの事を誰にも言わないよう釘刺されました。あと、夏油先輩のAVの趣味も聞かれました。
人が命懸けで駆け引きしてる時に君さぁ……。
とりあえず教師に興味を持たせる為に、夏油先輩の持ってるAVから教師ものをピックアップして答えておきますか。
次回、明日19時更新
「ミッション4:夏油離反の下準備/先輩を教祖様に祭り上げろ ①」
本日20時過ぎ、かりん2022活動報告にて裏話公開。
ネタバレにお気をつけください。
感想、お気に入り、ありがとうございます。
匿名感想やさらなるここ好きお待ちしてます。
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こちらで本日21:00〜21:30まで、9話の相談してます。
ネタバレ上等の方は覗きに来てください。
今日のお部屋の主催者はかりんです。
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