ここから、そして永遠に   作:ネマ

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禁断の連続投稿“三度打ち”
時間は俺に微笑んだ


便利屋68

 

 

「…それではアビドス対策委員会の定例会議を始めます」

 

翌日。みんなが集まった時点でアヤネが声を上げる。

今日は私が居るからかもう少しマトモな議論ができる筈と“マトモ”を強調してくるところを見ると普段はどんな会議なんだろうか。非常に興味が湧く。

 

「は〜い☆」

 

「ん。もちろん」

 

元気よく挨拶するノノミとシロコ。色々と言いながらもお行儀よく座って話を聞くセリカの姿は根は優しいんだなとここ数日でセリカのツンデレを理解し始めた。ホシノ?机に伏せながらも話は聞いている様だ。

 

「それでは予ねてより進んでなかった“アビドスの借金をどう返すか”についてです。」

 

「うーん。それなんだけどねぇ……」

 

ここ数ヶ月だけで4億を返済した実績と、アビドス廃校対策委員会が正式にアビドス生徒会として認められた事で更なる返済が出来るという事で、ぶっちゃけ現状維持で十分だという結論が出てしまった。

 

「ん。指名手配犯を捕まえたり、苦情の解決。物資の回収……」

 

「結構色々としてきましたからね〜☆」

 

大きな纏りになったとあるスケバンのグループを一網打尽にしたり、アビドス中の苦情の解決の報酬。危険地帯からの貴重な物資の回収などなど。色々とこなして来た今のアビドス廃校対策委員会は火の車でありながら余裕がある。

 

「けどそうも言ってられないのよ……」

 

「そうも言ってられない?」

 

対策委員会の会計担当であるセリカがボヤく。

どうやら攻め込んでくるヘルメット団に対して、こっちが使う物資や壊された/壊した所の修復料金なんかを考えたらやっぱり赤字が続いているとセリカは言う。

 

「別に今更赤字に関しては何も言わないわ。でも何処かで大きく収入を増やさないと、あくまで現状維持が続くだけよ」

 

「………………?」

 

何かが引っ掛かった気がした。

気のせいだろうか。私は熱弁を振るうセリカを見て不思議と何かが喉につっかえたような気がした。

 

「というわけでこれ!幸運の首飾り!!」

 

気のせいだったのだろうか。収入を増やしたいと言うセリカが取り出したそれは、いかにも屋台で売ってそうなチープなネックレスだった。セリカが言うには、この身につけるだけで運気が上がるネックレスを周りの三人に売れば…と誰がどう聞いても詐欺な文面にセリカ以外の全員が黙り込んだ。

 

「え……?みんなどうしたの?」

 

「うーん。どうしてこうも綺麗に騙されるんでしょうかね?☆」

 

「ん。もはやそういう星の巡り合わせ」

 

沈黙してもはやなんて声をかけたら良いか分からなくなった所でようやくセリカ自身が異変に気づく。ノノミの“騙される”とそれに同意するシロコの声にようやくセリカも騙された事に気がついた。

 

「どう考えてもマルチですね……」

 

アヤネの致命的な一言でセリカは崩れ落ちる。どうやら数個買ってしまった&お昼ご飯を抜いて貯めたお金だったらしい。哀れ、合掌

 

「大丈夫ですよ、私がご馳走しますから。一緒に食べましょう?ね?」

 

「びぇ……ノノミせんぱーい……」

 

とりあえずセリカが詐欺に遭っていた事はひとまず置いといて、セリカが最初に言っていた赤字を覆す大きな一手とは何になるかに重きを置いて会議は続いていく。

 

途中ホシノが他校のスクールバスを襲うだとか、シロコが銀行を襲うだとか血の気の多さ(どちらも結構緻密に作戦が立てられていたのはここだけの話)をまじまじと見せつけられた後でノノミの案は……

 

「スクールアイドルをしましょう!!」

 

と、まあ間違いなく時間的な問題と金額的な問題が降りかかるがホシノのハイジャックやシロコの銀行強盗と比べればまだ、比較的マシな案である。…そして何より私自身もプロデューサーというのは興味があるとスクールアイドルの案に賛成したらアヤネが遂にキレて、会議は終わったのだった……

 

 

 

 

「いやー悪かったてば、アヤネちゃーん」

 

放課後。めちゃくちゃにキレていたアヤネのご機嫌取りではないがいつものラーメン柴関で奢ってあげるとホシノ主導でアヤネのご機嫌取りに来ていた。食べさせてあげたり、自分のチャーシューをあげたりとまるでお姫様のようにアヤネを取り囲むその姿は微笑ましいと思う。……ちなみに私は胃の負担の関係上、小さいラーメンを啄く事にした。

 

「あ、あの……やってますか?」

 

「……!は、はい!」

 

そうしている事少し時間が経った頃。帽子を被った小柄な生徒らしき人がおずおずと入ってきた。この辺りで生徒はアビドスの生徒かスケバンぐらいしか見た事がない。初めて見る顔をチラリと確認する。

 

(………?こちらを見た?)

 

そうしていると向こうもこちらを見て笑った様な気がした。

それも間違いなく私を見て、だ。まるで探していた人を見つけたかの様な目を見開く笑みを浮かべて一度立ち去っていく。

 

その直後だった。

 

「大将ー!やってるー?」

 

「……お邪魔します」

 

その生徒の後ろから三人の生徒、計四名の生徒が柴関に入って来た。

赤い髪にツノの少女、白色に黒色が混じった髪をした少女、白色の髪に大きなリボンを付けた少女。どうやら話に聞き耳を立てていると社長と呼ばれた赤い髪にツノの少女…名前を“アル”だろうか。その子の金遣いが荒いせいでラーメン一杯を4人で分けて食べるらしい。

 

「ま、私たちの最低限の生活費さえ惜しまずに使うほど今回の依頼は危険なのは同意する」

 

続けて会話に聞き耳を立てていると白色に黒色が混じった髪をした少女…名前を“カヨコ”という少女が机に肘を付けて手を顔に押さえるケンドウポーズで語る。どうやらこの少女たちは傭兵で、何か危険な依頼をこなす為に金銭を叩いたと言う事までは理解できた。

 

「腐っても“釘”の正当適応者が相手になるからね〜♪」

 

「それを差し引いたとしても実力がある」

 

(…………“釘”?)

 

白色の髪に大きなリボンを付けた少女…名前を“ムツキ”と呼ばれていただろうか。まるで何かを楽しみだと言う様な口調と揺らす足に無邪気さの中の幼さがあった。だがそんなムツキの言っていた言葉の中に聞き覚えのある単語が聞こえたと私は密かに眉を顰める。それはセリカが言っていた様な……

 

「ま、良いわ。今回の目的はそっちじゃ無いし」

 

「あれれ〜?そうだったけ?」

 

「そ・う・よ!!私たちはあのシャーレの先生に会いに……会いに……」

 

あ。もしかして私の話されてる?これ聞かなかった事にした方が良いやつ?とアビドスの面々を見てみると、知らぬ存ぜぬみたいな顔で別の話を始めたところを聞いていると私も何も知らないふりをするべきだろうか。…いや、間違いなくアルと呼ばれた少女はこちらに気がついてチラチラ見ている。それに釣られて残りのメンバーもこっちをガン見しているし、ムツキはこっちに手まで振っている。

 

「と・に・か・く!!私たちは私たちのやる事をするわよ!!」

 

「柴関ラーメン並お待ちー!」

 

「あっ……ありがとうございます……」

 

やっちまった〜みたいな顔で白目を向いていたアルはどうにか持ち直し話を元筋に戻そうと頑張るが、その瞬間セリカに運ばれて来たラーメンに出鼻を挫かれ素直に感謝を述べている辺り本当は悪い子では無いのかな?と思ってしまう。

 

明らかに1人分のラーメンの量では無いのがあの少女たちの机に運ばれて、どうやら柴大将が一杯しか金がない少女たちの境遇を憐れんで何も言わずに一杯に四杯分積んで一杯分にするという男前な姿を見たのはここだけの話。

 

「……!美味しい!!」

 

「でしょう?☆……それで話をちょっと聞かせてもらって良いですか?」

 

ここのラーメンの旨さに舌鼓を打っている少女たちに合わせるかの様にノノミがヌルッと少女たちの食卓に姿を現す。どうやら向こうではこのラーメンの旨さと、少女たちの仕事の話でノノミの話術が炸裂していたのはここだけの話。

 

 

 

 

「それじゃあそっちも頑張ってね!!」

 

「ええ!そっちも上手く行く事を祈ってるわ!!」

 

どうやらこの少女たち…便利屋68は“とある依頼”をこなしにアビドスに来たのは良いものの砂漠ばかりで楽しめる事は無さそうだから、面白そうな事を探していると最近密かに有名になって来たシャーレの先生がアビドスに出張して来ていると聞き、もし会えたら一目見てみたいなという話だったらしい。

 

話は終始和やかに終わりアルたちはその依頼をこなしに、私たちはアビドスに帰って行ったのだった。

 

 


 

 

「ふう……これぐらいでいいかしらね」

 

「騙してる事には気が引けるけど……ナイス演技だった」

 

「アルちゃんは大根役者だからね〜バイトちゃんとかが上手く話に乗ってくれて助かったよ」

 

「……で、で、でも先生元気そう…でしたね……」

 

「そうね……それで傭兵たちは?」

 

「勿論。この夕方“まで”の料金で雇ってる」

 

「武器や物資の準備は?」

 

「万端〜♪」

 

「も、問題ないです……」

 

「そう。なら……私たちの新たな〈依頼〉を始めましょうか」

 

 


 

 

アビドスに帰り少しした後、何かが爆発する音と発砲する音が鳴り響く。

アビドスに来てからの日常風景。もはや毎日イベントで発生する襲撃だ。

 

「!?校舎より数km圏内にて兵力を確認!!……これは傭兵です!!」

 

「傭兵……傭兵ねぇ……けっこう高かった気がするけど……」

 

どうやら今回の襲撃者はヘルメット団ではなく傭兵らしい。

ホシノのぼやきでは傭兵を雇うには相当のお金が掛かるらしいが果たして……

 

「これ以上接近されるのは危険……先生!出撃命令を!!」

 

「うん。出撃!!」

 

アヤネの要請を受けて、とりあえず私からも命令を下す。

その瞬間を待っていたとばかりに少女たちはまるで一陣の風となって傭兵がいる場所に飛び出して行ったのだった。

 

「あれは……」

 

「っ!アイツら、ラーメン屋の!」

 

ノノミの訝しげる声にセリカのキレる寸前をどうにか堪えている声。

間違いない。アビドスを襲撃した傭兵たちのまとめ役は便利屋68で、彼女たちが言っていた“とある依頼”とはこうしてアビドスを襲撃する事だったのだ。

 

「あはは、やっ。先生…こっちも依頼でね」

 

「悪いけど公私はしっかりと分けないとね。」

 

あの時みたく手を振るムツキに、冷静に告げるカヨコ。

敵対は避けられない。いつでも指揮ができるようにとシッテムの箱の待機状態から動かす。

 

「それに個人的にアビドスに対して思う事があるし……持って来た?社長」

 

「え?……え、ええ!勿論、“あれ”の事よね!!」

 

カヨコの何かを確認する言葉にアルは慌てながら、返事をする。

反射的な反応がどうやら非常に怪しい気がするがどうなんだろうかとカヨコを見ると、こちらも“まさか……”みたいな顔してアルを見ている。

 

「あれー?アルちゃん今回は使わないって言って置いて来てなかった?」

 

「……………あ゛」

 

「アル様……必要ないって……」

 

そしてムツキの持って来てないに、遂に白目を向いたアル。どうやらこっちが素な気がするがそれはそれ。どうやら大切な“何か”を置き忘れて来たらしいとアルはやらかしたとばかりに頭を抱える。

 

「はぁぁぁぁ……仕方ない。殺るか」

 

「あはははは!……なーんかいつも通りになったねぇ♪」

 

カヨコは深いため息を吐いた後、ムツキは一笑いした後に持っていた銃をリロードして構える。もはやぶつかり合うのは時間の問題だとこちらも武器を構えて、ぶつかる瞬間を待っている。

 

「そうね……これこそ便利屋68よ。総員……」

 

「!みんな準備して」

 

アルの声に合わせて、便利屋68と傭兵たちが構える。

先生の指揮に合わせて、アビドスが構える。

 

「「攻撃開始!!」」

 

鏡合わせの様に、互いの手刀で戦いの幕は切って下された。

 

 

 


 

 

 

戦いは殆どアビドスvs便利屋68の戦いになっていた。

傭兵が弱いと言うわけではない。単純にアビドスの面々が強すぎるということである。傭兵たちを一方的にぶちのめした後、待ち構えていた便利屋68の面々とぶつかり合う。

 

カヨコの威圧。ムツキの銃撃。ハルカの乱射。アルの銃撃。

正直に言うとその連携は見事なモノだがこちらも盾役のホシノと言い、広域殲滅のノノミと言い連携も実力も揃っているアビドスにとっては敵ではなかったのだろう。……だけどそれを差し引いても

 

「こりゃヤバいね!」

 

「くっ……」

 

むしろ停滞戦に持ち込もうとしていたのかと言わんばかりに消極的な戦い方だったと先生はキヴォトスに来てからの生徒の戦い方を見てから思った。カヨコはもっと嫌らしい(いい意味で)戦い方をするだろうし、ムツキは広範囲を撹乱する戦い方。そしてハルカだってもっと距離を詰める戦い方をしただろうし、アルに至ってはまるで無理してその戦い方を選んでいる様だ。

 

どうやら戦いは数時間にも及び、傭兵たちは時間が来たとばかりに帰ってしまう。こうなってしまえば数の利もアビドスに傾いてしまったのを便利屋68も分かったのだろう。

 

「くっ……覚えていなさいね!アビドス…と先生!!」

 

「あはは。アルちゃん中ボスみたいな捨て台詞ー!」

 

「うるさい!とりあえず、逃げ……じゃなくて、退却するわよ!」

 

形勢不利と分かれば、逃げ足は早い。

颯爽と逃げて行ってしまう便利屋68に流石のアビドスも追撃できずにその姿が消えていくのを眺めるしか無かった。

 

『えーっと……敵勢力の退却を確認。』

 

「逃げ足だけは早いねー……本当に変わらない……」

 

『ヘルメット団だけではなく、便利屋まで一体これからどうなっていくのでしょう……』

 

とりあえずは戦いは終わった。

だけどそこには到底納得できる様な戦後とは言い難い暗雲が立ち込めているのだった。

 

 







便利屋68。ギャグも出来てシリアスな場面でも出て来れる優秀な人たちですよね。ちなみに文中の〈依頼〉にデートのルビ振ったやつ。見てるからな。
今回は色々とあるせいでEXスキル縛りで戦ってましたがそれでもアビドス相手に数時間持ち堪えられるその実力。実に誉高い。

きっと前の世界でもそうやって先生の助けになった事でしょう。救いになった訳じゃ無いんだけどね。先生を手助けすると思ったその依頼が実は先生の死出の旅路の助けになっていたなんてとても刺激的でファンタスティックですね!ああ。便利屋?向こうで心折れてる。

ムツキはその依頼の裏が序盤に分かるだろうし、カヨコは途中で勘づいて欲しい。ハルカは、まあ最期に見た先生の安らかな笑みで大体察するんじゃ無い?アルには最後まで気がつかないで欲しいなぁ〜!先生の21g欠けた肉袋を見てようやくその依頼がどう言う意味か分かって、肉袋の前で膝をついているアルちゃんが見えるでしょう。その時のアルちゃんの顔とか芸術品だね!アルバムに飾っとく?(笑)

その時きっとアルちゃんはアウトローとして“完成”するでしょう。やったね!アルちゃん。憧れの血も涙もない悪鬼アウトローになったよ!
本当は昔みたいにひとつの依頼に一喜一憂してたまに会いに来る先生に奢ってもらったラーメンの味に思いを馳せる夢を見るんでしょうね。

ま、今のアルちゃんにはそんなはした金に思いを馳せる必要なんてないし、ひとつの依頼にそんな想いを向ける必要なんて無くなってるけどね!幸せな未来なのにどうして笑えないのかな??幸せなキヴォトスの未来にみんなハッピーハッピーだっピよ?

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