ここから、そして永遠に   作:ネマ

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先生最高!先生最高!お前も先生最高と言いなさい!




シッテムの箱

 

 

自分の意識が落ちていく様にも登っていく様にも感じた。

ただ1つ分かることは、この感覚はどうにも慣れている様に思う。

 

私がシッテムの箱のパスワードを入力した直後。

淡く輝くタブレットの光に一瞬目を眩ませた瞬間、自分は落ちているのか上がっているのか分からない謎の浮遊感の後に。

 

私は一つの部屋に立っていた。

 

「……ここは」

 

数回手を握ってみる。間違いない。さっきまでシャーレの地下室に居たというのに一瞬目を眩ませている間に私は瞬間移動でもしてしまったのか半壊した教室に立っていた。足元には青く透き通る水が満ちているというのに、私はまるでその水の上を歩いているかのようだった。

何処にでもあるような教室の並びに真っ直ぐ目の前では乱雑に積み上がった机と椅子、更には青空と海が見えるようにぶち壊された教室の壁。────ここは、一体何処なんだろうか?

 

「…………?」

 

ふと周囲を見渡すとある1つの席に少女が眠っていた。学生がよく授業中に居眠りするような体勢で寝入っているその少女は、ここキヴォトスで今まで会った中で誰よりも幼い様な印象を受けた。

 

足元の透き通る水をそのまま宿したかの様なセーラー服。更には本当に天使の輪の様な青単色の頭上に浮かぶ輪っか。……結局最後までこれのについての説明を聞いていなかったなと残念に思いながらその少女に近づく。

 

「zzzzz…………zzzz」

 

「……………ぇ」

 

机に伏して寝るその少女の姿に私は金縛りを受けたかの様に何も出来なくなってしまう。その姿は知らないのに、初対面だというのに。何故か凄く懐かしい。

何処かで会ったのだろうかと考えるも何も思い浮かばない。けどどうしてかこの少女にまるで親しい友人にあった様な──常に一緒に居た相棒の様な。背中を預けた盟友だった様な。深い親しみが、深い親愛が湧き上がってきた。

 

「むへへへ……パフェはやっぱり季節のモノの方が美味しいですよぉ……」

 

「……んふふ……」

 

食い意地のはった寝言に私はつい微笑ましく笑みを溢す。

寝ている子を起こさない様にとしのび足で近づくとそこには幸せそうな微笑みで寝ていた。寝息と寝言が繰り返し呟かれるその子に私はどうしようもなく頬を綻ばせた。

 

「にゅへへ…こっちもおいしそうですよぉ……」

 

食べ物の夢を見ているのだろうか。夢の中では食い意地のはっているらしい少女に私は何故かついその頬を突いてみたくなってきた。

 

ふに。と音がつきそうなぐらい弾力のあるモチモチした弾力のあるその少女の頬は何回も突きたくなる様な魅力に溢れかえっている。

 

「うにゅ…まぜてたべるのも……おいしいですよ……。」

 

中々起きないこの寝坊助に次は2回、次は3回と頬を何度も突く。

突けば突くほど次々に出てくる寝言に癒されているとついにその少女は頭をあげた。寝起きの時間の様だ。

 

「ううん……むぅ……あれ?」

 

「おはよう。寝坊助さん」

 

寝ぼけ眼のまま周囲を見渡す寝坊助に目の前で手を振りながらおはようと声をかける。すると寝坊助はすぐさま目を見開き、何度も現状を確かめる様にあれ…?と口に出しながら私の顔をマジマジと見る…少し気恥ずかしいモノがあるとは思っているが。

 

「しぇ、先生!?」

 

「一応道中までで【先生】とは呼ばれてきたね」

 

シャーレの役割を【先生】と呼ぶと言うことなんだろうけど。

と私はそれを口の中で噛み砕く。ここまで先生と呼ばれてきたけれど実際に何をすればいいかとか何も聞いてない。他に大人のような人にも会ったことはなく、会ったのは生徒であろう少女(何故か会った全員に懐かれたが)たちと銃火器と戦場の音。

 

誰も特に説明のないまま。私はここまで来てしまった。

懐かしさと、身体を無意識に動かすこの“何か”に導かれて。

 

「この空間に入ってきたと言うことは……先生ですよね!!」

 

「この空間?」

 

どういうことだろうか。ここはキヴォトスとまた別世界という事だろうか。

つまりあのタブレット…シッテムの箱が鍵なんだろう。そしてこの空間に居た子…つまりこの寝坊助が大まかな説明をしてくれると言うことなのだろうか。

 

「そ、そ、そうですよね!…もうこんな時間だし……」

 

テンパっている様に急足に言葉を重ねるこの寝坊助はどうやら本当に驚いている様だ。その証拠にこの少女の頭上の輪っかは驚きを表わすように揺れ動いている。こんな感情に動く輪っかなんて初めて見る…もしかしたら探せば他にも居るのだろうか?

落ち着いてと声を掛けると寝坊助は一回深呼吸をした後、私に向き合いこう自己紹介をした。

 

「私の名前はアロナ」

 

このシッテムの箱に存在しているシステム管理者でありメインOSであり────

 

「そして秘書さん、である。と」

 

「は、はい!」

 

寝坊助……アロナはどうやら先ほど開いたシッテムの箱の中に住む少女らしい。

そして、どうやら私がこうしてシッテムの箱を起動するのを待っていた、と言う。

 

「やっと会えました!私はここでずっと先生の事を待ってたんですよ!」

 

褒めて褒めて。と頭を差し出してくるアロナに私は1回軽く頭を撫でるとアロナの頭上の輪っかがピンク色でハートを模ったを見て、どうやらこの輪っかはアロナの感情に基づいて動いているのか。と考える。

 

「ありがとう。アロナ」

 

「……っ!はい!これからずっとよろしくお願いしますね!」

 

膝を折りアロナと同じ視線に立って、感謝を伝える。

“何か”に導かれた私だけど。それでもこの感謝だけはウソじゃない。

感極まったのか抱きついてくるアロナを受け止めて私たちは互いに笑う。

 

 

「……そうです!まずは生体認証をしますね!」

 

そこから数十秒経った頃だろうか。アロナは思い出したかのように一度手を叩いて、フリフリ…と手を揺らしながら手を繋ぐ様に無言で言ってくる。指と指を合わせてそのまま両手を合わせる。……どうやらこれで指紋を取るらしいが

 

「(うーん……よく見えない、かも?)」

 

アロナが首を傾げてなんとかなるやろ…的に微笑む辺り大丈夫なのかとも思わなくないがきっとなんとかなってるだろう。そう思いたい。そうして両手を合わせていると、ついにアロナの認証が終わった。

 

「はい!これで大丈夫です!」

 

ここからどうしますか?というアロナの視線に私は言葉を詰まらせた。

……何も、知らないからだ。【先生】として連邦捜査部シャーレの顧問として呼び出された事以外何も知らない。私の恥を晒すことになってしまうがそれでもアロナには全部言ってる方が良いだろう。

 

「ふむふむ……ぶっちゃけ何も聞いてない、ですか…」

 

コクリと頷く。紛れもなく私のミスだがそれであの子たちの期待を裏切ることは出来ない。で、どうしようにも私はキヴォトスに来て数時間も経っていないし、アロナも外のことはよく分からないから半分行き詰まったようなモノで…2人して頭を抱える他なかった。

 

「……あれ?そういえば先生。」

 

このシッテムの箱ってどうやって先生の手元に渡ったんですか?

頭を抱えること数分、何かを思い出したかのようにアロナは先生に問いかける。

 

「ああ。それは…“失踪した”連邦生徒会長がの、こした……もの、で」

 

明確にリンが言った言葉が蘇る。その“連邦生徒会長”がどういうヒトか生憎知らないが読んで字の如くだと言うのなら連邦生徒会のトップ。そんな人間が失踪するなど……

 

普通じゃあり得ない事態ということになる。

 

「……連邦生徒会長の失踪、ですか?」

 

「うん……何か知っている?アロナ」

 

いえ。まるで不自然なぐらい連邦生徒会長についての情報は残されていないんです。アロナ自身も知っているのは連邦生徒会長という役職があり、それが連邦生徒会…ひいてはキヴォトスのトップに立つ存在であると……そして

 

「おそらく、連邦生徒会長が管理していた〈サンクトゥムタワー〉の制御のためでしょうか……?」

 

「その〈サンクトゥムタワー〉というのは??」

 

「そうですね…説明しますね!」

 

〈サンクトゥムタワー〉それは学園都市【キヴォトス】を管理する中枢部。

その〈サンクトゥムタワー〉は連邦生徒会の行政制御権を有し、そしてこれを使うことが出来るのは失踪した連邦生徒会長のみ……

 

「じゃあ今はキヴォトスは行政が出来ていないって事になるのかな?」

 

「大まかにはそうです……ですが私の力を使えばアクセス権を復活出来ますよ!」

 

私の脳内では無政府国家という単語が浮かんでしまったがそれを振り切り、現状のキヴォトスの混乱に思いを馳せる。……もしこれが行政権が維持されていれば連邦生徒会の施設が襲撃されることなどは無かったのだろうか。

 

アロナの褒めて褒めてーと動く頭の白いリボンに私は褒めるように小さく手を叩く。わーい!撫でてくださーい!とまた飛び込んでくるアロナにまるで妹が出来たような気がして撫でていると、アロナは次第にやる事を思い出したのか赤面しながら一度咳を吐いて目の前に立った。

 

「〈サンクトゥムタワー〉のadmin権限の取得を開始……完了!!」

 

〈サンクトゥムタワー〉の制御権を回収。

これで今、〈サンクトゥムタワー〉は私の制御下にあります!

 

「……おお……うん……すごいね、アロナ」

 

でしょ!と目を輝かせるアロナに私は密かに危機感を抱いた。

連邦生徒会長しか動かせないはずの如何にも重要そうなモノにアロナは体感数十秒であたかも簡単に干渉して制御した。この時点でアロナがキヴォトス全土よりも上にあるのだと分かる。……だからこそ危険なのだ。

 

「それで……この制御権は先生に付与で良いですか!?」

 

「うーーん……」

 

キヴォトスを管理する〈サンクトゥムタワー〉の制御権。それだけでどれほどヤバいのかここに来て一日も経っていない私でさえもヤバいと理解できる。この世界…世界?について詳しくない自分が権利だけを持っているのは些か不味いし、生徒も納得できるはずがない。

 

ならばどうするか。手段はひとつしかない。

 

「それを連邦生徒会に譲渡できる?」

 

「え!?……連邦生徒会、ですか??」

 

何も分からないことだらけだけど。どうして私を慕ってくれるのかさえも分からないけど。それと信用・信頼しないのはまた別の話だと私は考える。短い間に感じたリンの私を心配してくれるその姿は、嘘じゃないと信じてるから。

 

「本気ですか…?先生。今の生徒会には……」

 

そんな内心を知ってか知らずかアロナは苦言を口にする。

それでも私が持っているよりかは良いだろうと首を横に一度振るとアロナは凄い長考した後に渋々納得したのか連邦生徒会に権限を譲渡します…と口にした。

 

「ありがとう。アロナ」

 

 

 

〔同時刻〕

 

「はい、はい。」

 

先生がシッテムの箱を起動し姿を消した後、数分も経たぬ内にリンの携帯に“〈サンクトゥムタワー〉の制御権の確保に成功した”と連絡が入った。これはつまり行き詰まっていた行政の管理を進めることが出来る。

 

「………シッテムの箱、ですか」

 

ふと呟くその声は硬く冷ややかに、その視線は冷たく“シッテムの箱”を睨んでいる。

“シッテムの箱”…前も連邦生徒会長が残した【先生】しか扱えぬオーパーツ擬き。だけど前の“大戦”を超えて、ようやくその箱が何なのか推測が立つようになってきた。

 

おそらく…あれは“器”だろう。誰の何のとまで言わないが。

“私たちの罪禍の始まり”の時点で祭壇からアレは消えていた。逃げたのか、それとも“維持”出来なくなったのかは知らないが。ああなった時点で嫉妬さえせども私からの尊敬は無いものと言えるだろう。

 

となると今回のアレに“記憶”があるのかどうかで話が変わってくる。

運命の天秤は常に揺らされ続けているのだから──────────

 

「おはようございます。先生」

 

 

 

 

 

「おはようございます。先生」

 

アロナの空間を出た直後。後ろからリンの声が掛かる。

どうやら〈サンクトゥムタワー〉の制御権が連邦生徒会に渡ったのを確認したらしい。

 

「“キヴォトス”を管理する連邦生徒会を一任しまして【先生】に大きな感謝を」

 

「買い被りすぎだよ」

 

深々と頭を下げるリンに私は頭を上げるように言う。

事実、私は特に何かしたと言うことはない。全部、アロナがやってくれていたし私がしたことと言えばただ付いてきただけだと言う。

 

「いえ。【先生】は先生自身が考えている以上の価値があります」

 

「………価値?」

 

照明が着いて先ほどより明るくなったシャーレの施設をリンの案内の下に歩いているとリンは横で気になる事を口にする。……。ここキヴォトスでは【先生】がそれほど……

 

「はい。……それこそ【先生】の身柄に億が端金になる程の金額を積む学校や、【先生】を手に入れるためなら全学校を敵に回す価値があると考える学校も少なくありません」

 

「そんな大袈裟な……」

 

そうなると【先生】というのは余程重要な身柄、らしい。

自分の行動、言動1つ1つがこれから注意するべきものになると考えると少し億劫だ。

 

「大袈裟でも………ああ。言い忘れてました」

 

「?」

 

「私がこう言ったのは“貴方”が【先生】だからではありません。【先生】が“貴方”なのです。……私たちの【先生】は“貴方”だけなのです。」

 

だからどうか誤解しないでください。

リンの青い眼差しは強い視線で私を貫く。……その言葉の意味に気がつかない私ではない。どうにも嬉しい事を言ってくれるなと考えていた所、大きなフロアに着いた。

 

「ここがシャーレの部室になります」

 

まだ物資しか置いてない無機質な部屋ですが……ここをどう色付けるかは【先生】のお好みでどうぞ。そういうリンを尻目に、私は部屋を見渡す。新居のような匂いに、新品ばかりのデスクや座り心地が良さそうなチェア。更にはソファーや諸々まで至れり尽くせりだ。

 

「………ねえ。リン」

 

「はい?どうしました?」

 

「ここから私は何をすればいいのかな?」

 

何も貼られてないコルクボード。まっさらなホワイトボード。

それらを一度見渡して私はリンに問いかける。私が…【先生】として呼ばれた理由が〈サンクトゥムタワー〉の起動なら私はもうお払い箱のはずだ。

 

「……シャーレは権限のみある組織です。何かしろ、とかに強制力は無いんです」

 

「それは……」

 

「さらにはキヴォトスのどの学校にも自由で出入り出来…まあする場合は()()()()()()()()2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…………………」

 

なんともおかしな部活だと思う。権限だけがあって?さらにはそこに義務が存在しない?しかも何処でも侵入が合法的に許される?……胡散臭い事この上ない。

だけど学校に入る時は護衛…これは監視ということだろう。何処かの学校に入れ込みすぎないように、特権が暴走しないようにするためにはまあまあ良い手段だ。

 

「そして所属に関係なく、先生の希望する生徒を部員として加入させる事も自由です。」

 

「……………」

 

さらに自由なヘッドハンティング権。勧誘は自由だが、そこからは多分個人に任されるだろうがそれでも十分、特権だ。……私は何もしていないのにこんな空の玉座が与えられるのか。頭が痛くなってきた。

 

「面白いでしょう?……なので先生は自由にやって構わない、と言う事なんです」

 

「………………」

 

前言撤回だ。頭だけではなく、胃まで痛くなってきそうだ。

どういうつもりでシャーレを設立したのか連邦生徒会長を聞きたいがそれでも当の本人が失踪しているのなら出来ない事だと私は歯噛みする。

 

「ですがそれでは先生も困る…と言うのが事実。」

 

どうでしょう。簡単な私たちの業務…苦情や支援物資、補講さらには実際に足を運ぶ事務まで多岐に渡る一部を私…ひいてはシャーレに手伝って欲しいと言うのだ。

 

「私に出来る事なら、手伝うよ」

 

「ありがとうございます…必要な書類はデスクに積み上げているので暇な時にでもお読みください」

 

私が出来ることはこれぐらいですね。と頭を下げるリンに私も頭を下げて、これから共に頑張っていこうと握手した所だった。…まるで何かを思い出したかのようにリンが口を開く。

 

「シャーレの入部基準は早めに決めておくべきですよ」

 

「それは……どうして??」

 

おかしな事を言うものだ。まるでリンのその口調は…シャーレに入部したいという子がいっぱい来るということじゃないか。まさかそんなわけが……

 

「入部したい、と押し寄せる生徒が大量に出るので」

 

というかもうシャーレに所属したいからどうすればいい?なんて電話とメールがさっきから絶えないんですよね。と言うリンの目は笑ってない。表情も笑ってるのに怒りが漏れ出ている笑い。迷惑かけてると私が謝るとリンは私は関係ないと首を横に振るその姿は煤けているようにも見えた……

 

「それでは…先生。また後で。」

 

「今度こそ。ありがとうね」

 

 

 






チュートリアル clear!

next stage〔アビドス高等学園編〕


アイテムを入手しました!▼

【“先生就任!”生徒たちの寄せ書き色紙】

・説明
シャーレの先生が座るであろうデスクの中心に置かれていた大きめの色紙。
真ん中には大きく“先生これからよろしくね!”と書かれている。
その周囲には“連邦生徒会”、“セミナー”、“ゲーム開発部”、“温泉開発部”、“美食研究会”、“C&C”、“ゲヘナ学園・風紀委員”、“ティーパーティ”、“シスターフッド”、“陰陽部”、“忍者研究部”、“玄龍門”etc…と個人の名前も多い、先生就任を祝う寄せ書きが書かれている。
(使用することで青輝石1200個獲得※使用後もそのまま持ち物として保管されます)


感想、評価お待ちしてます。
ある日突然、少女しかおらず、その少女たちは軽々と銃火器をぶっ放し挙句には銃弾を受けても痛いで済み、天使のリングか何かを頭上に持っている美少女たちにあっても間もないのにクソデカ感情をぶつけられる先生の心情を答えよ(配点100点)


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