ここから、そして永遠に   作:ネマ

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アビドス編に行くんだったら一旦挟みたかった幕間。
バラッドとはそういう事。


権力者たちのバラッド

 

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい。ユウカちゃん」

 

先生と共にシャーレの奪還に成功したユウカはその後、先生とモモトーク上での“ともだち”設定を行い“ミレニアムサイエンススクール”に遊びにきて欲しいと声を掛けて帰ってきた。

 

こう見えてユウカはミレニアムサイエンススクールの生徒会…セミナーに所属しており少なくとも連邦生徒会とは予算だとか学校政治等で仲が良いわけではない。故に、その連邦生徒会傘下の捜査部“シャーレ”の手伝いは比較的簡単に断ることは出来た。だというのに意気揚々とユウカは『先生を手伝ってくる!』とセミナーから飛び出したのが数時間前…

 

「最初の出会い、どうでした?」

 

「分かってるでしょ。ノア」

 

ノア…と呼ばれる銀色の髪に紫色の目をした少女がユウカにココアの入ったマグカップを手渡す。それをユウカはありがとうと受け取り一息ついて吐き捨てる。

 

「【先生】は【先生】だった。だけど“前”との連続性は無いわ。」

 

「幸か不幸か……ですね」

 

ノアとして、先生の記憶がない事を素直に喜べない自分がいたのは事実である。

……いや。言い方が悪い。半々…と言えるだろう。前の青春の物語ブルーアーカイブを覚えていないのは悲しいが、【先生】の悲劇的な結末を覚えていないというのは安堵できるというものだ。

 

「あら。お帰りなさいユウカ」

 

「会長。そちらもお疲れ様です」

 

そうしてノアとユウカが一息付いていた所に、セミナーの戸を開ける音がする。

そこから黒髪赤目の如何にも出来るキャリアウーマンみたいにスーツを着込んだ1人の少女が立っていた。その少女の名は…“調月 リオ”ここセミナーの部長…つまりはミレニアムサイエンススクールの生徒会長である。

 

「こっちも“生放送”で大体把握してるわ」

 

お疲れ様ユウカ。

そう労うリオの姿は前には見なかった合理の中に他者を労るような優しさを含めるようになったリオがそこにあった。それはそれとして締めるところはキチンと締める会長には変わりないが。

 

「やっぱり準備してて正解ですね」

 

「ええ。この日のために年単位で準備してきたんですもの」

 

ノアの呟きにユウカは同意する。

それはエンジニア部が制作し、ヴェリタスと全知の美少女ハッカーの協力の下セミナーの予算を余すことなく使い作り上げたモノ。

 

先生の勇姿を余すことなく最初から見たいという欲望で作られた

リアルタイムで先生の勇姿を生放送し(この放送は連邦生徒会協賛である)ミレニアムの全技術を持って先生の姿と声を超高性能でお届けする(勿論、先生の邪魔をしてはならないので)シールド持ち超超ステルス式監視ドローン

 

 

通称……先生見守る君である。

 

 

「でも、残念ながら…生徒以外の接続は無かったわ」

 

「…………そうですか……」

 

リオの断定の声にセミナーは一瞬沈黙する。

生放送は生徒しか見れないように秘匿していたし現に外に漏らすような不届き者は出なかったが、それ以外の…言うなら“第三者”からの接続を待っていたのだ。

 

「“ゲマトリア”」

 

「先手が打てぬ今、絶対に先生と接触させてはいけません」

 

第三者。その名前は“ゲマトリア”という大人の組織。

生徒である私たちを使い悪巧みをしていた集団であり、前の世界ではその試みの全てが先生によって打倒されたと聞く。しかし私たちが警戒してるのは“悪巧み”の方ではない。

 

「もし奴らが私たちと同じだと言うのなら」

 

「おそらく、先生の身柄の奪取に全力を傾けるでしょうね」

 

先生の最期。その身、魂を掛けてキヴォトスを護る計画の完遂に手を貸したのはゲマトリアだった。…勿論、大人が生徒に物理的に敵う筈がない。だというのに私たちはそのゲマトリアの技術と()()()()()に敗れた。

 

本来なら私たちがいた場所にあの大人たちが我が物顔で立っているあの地獄は、もう二度とゴメンだ。……だからこそ私たちは“ゲマトリア”を絶対的な敵だとそこだけは合致している。まあ全然足取りは掴めていないが。

 

「とりあえずは置いておきましょう。」

 

今はこれからのミレニアムを考えましょう。

各自ゲマトリアへの怨念を強めている中、話が進まないとリオは一度手を叩き意識を自分へと持っていく。

 

「私たちの役目はアビドスが終わればすぐよ」

 

本来ならここで私が問題を起こすのだけれどね。

リオの脳裏に浮かぶ1人の少女の姿。世界を滅ぼす筈だった魔王は人の心を知り、見返りを求めぬ慈愛で世界を救う“勇者”になった。そしてその勇者は生憎と慈愛に報いる事はできなかったけど(それをいうと私たちもだが)今度こそという“意思”で自らの心を身体に撃鉄を上げ、廃墟籠の中から拳ひとつで飛び出してきた。

 

『解答不明。解説不可能。』

 

まるで【先生】をなぞっているかのように白い白衣一枚だけ羽織った少女はある日、雨の中ミレニアムに現れた。

 

『分かりません。分かりません。……でもそれでも私は、アリスはこう言っているのです。』

 

「AL-1S」。それが彼女という[名もなき神々の王女]は

 

『みんなと一緒にいたい。……そして』

 

紛れもなく人であり、勇者であるのだと。

 

『今度こそ、先生もキヴォトスも救う勇者になります。と』

 

 

「アリスちゃんがケイちゃんを抑え込んでいるから」

 

「まあ事実上、先生には休暇みたいになるでしょうね」

 

ノアの呟きにユウカも肯定するかのように付け加える。アリスが正式にミレニアムの生徒になった数日後。ある日、アリスの後ろを歩くアリスと瓜二つの少女が居たのだ。

 

『ア、アリスちゃん?』

 

『はい!アリスです!』

 

『その、後ろの子は?』

 

『ケイちゃんです!』

 

『その…王女。その説明は些か詳細を欠いていると思いますが』

 

天真爛漫を絵にしたかのようなアリスの後ろに隠れるようにその少女は人見知りのように隠れた。まるで前、初めてアリスと会ったときのような無機質感。

 

その少女の名前は〔key〕。アリスがキヴォトスを滅ぼそうと暴走する原因の少女がそこに立っていた。ケイと名付けられたその少女はあろう事かゲーム部とアリスとetcにボコボコ(大分オブラートに包んで)にされてアリスの妹として連れてきたらしい。

 

「先生には休んでもらって」

 

「歓迎会なんてものも楽しそうですね!」

 

ノアの発想にユウカも名案と言わんばかりにホワイトボードに記入する。アビドスで疲れた身体を癒してもらおうという企画だ。

 

「じゃあまずは」

 

「ええ。アビドスに密書を送りましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでは──作戦開始』

 

「……ミカ。そろそろ耳に障る。」

 

何度も何度も、数時間に渡り再生されるその先生の声についに1人の少女が根を上げる。そこは立派な庭園、整えられた草花に周囲の目を遮るような低木。そして純白に仕上げられている椅子に屋根に…カップに一目で見て分かる高級な皿に乗せられた色とりどりのお菓子。

用意された三つの席に座るのは、これまた天使と見間違えるような美貌を備えた3人の生徒。

 

彼女たちは…〔トリニティ総合学園〕の生徒会。通称〈ティーパーティー〉である。一人一人が生徒たちの派閥の代表者であり、学園の運営を定める少女たち。

 

「えー!別にいいじゃん!」

 

ピンク色と数多の装飾が付けられた先ほどから【先生】の声が再生され続けるスマホを片手に不服ですと言わんばかりに口を3の字にしながらピンク色の髪と金色の眼差しのその背に“天使”と言っても過言ではない純白の翼を兼ね揃えた少女は言う。

 

「まあまあ、ミカさん。嬉しいのはみんな一緒ですよ」

 

それを収めるかのようにホワイトアッシュの長髪に金色の瞳。そしてその背に純白の翼を揃えた少女は飲んでいた紅茶のカップを下ろしてピンク髪の少女…ミカと呼ばれた少女の仲裁に掛かる。

 

「むぅ…ナギちゃんだってセイアちゃんだってずっと見てたのにさ」

 

ナギちゃん…ナギサと呼ばれたホワイトアッシュの長髪の少女も、セイアと呼ばれた金髪にピンク色の瞳、頭に特徴的な狐の耳を付けた少女も図星と言わんばかりに目を逸らす。

 

そう。この3人…ミレニアムの生配信を1から10まで丸ごと全部、準備した巨大スクリーンで鑑賞していたのだ。アイドルのライブよろしくペンライトとうちわも準備して。

 

「切れとは言ってないだろう?ミカ」

 

私は最初の先生の寝顔が見たいんだ。

冷静に、且つ欲望全開のセイアの言葉は何処か勇ましく聞こえるのは幻聴であって欲しい。

胸を張って欲望を隠さないセイアの姿は2人にとって何かときめく物があったらしい。

 

「ま、まあ2人とも。考えるべきはここからどうするかですよ」

 

「さっきまで先生が抱きしめられていたところを何度も再生して楽しんでいたナギサは黙っていてくれないか?」

 

「ねーねーナギちゃん。あれ自分が抱きしめる妄想してたの?それともそのまま?」

 

そんな2人についにナギサが仲裁に掛かる、がセイアもミカも一瞬でその仲裁を切り捨てられキレたナギサがいつものようにその口にロールケーキを突っ込もうとするのだった。

 

尚、未来を予知できるセイアには普通に避けられた。

 

 

 

[一旦落ち着きまして]

 

 

 

「それでセイアさん、“予知”の方は進んでますか?」

 

ムキになって取っ組み合いになったナギサは赤面し、元の話題に戻そうとする。

元々、今日の集まりはトリニティがここからどう動くかの作戦会議のような物だ。

セイアの未来予知は“確実”に当たる…いずれセイアの未来予知は失われるがそれまでに未来を観測し切って私たちの望む未来に舵を切るだけだ。

 

「ナギサ正直に言おう。()()()()()んだ。」

 

「分からない?…と言いますと……」

 

「正確には毎分、毎秒毎に違う未来が見えているんだ」

 

セイアは解説をする。

【先生】の未来は常に揺さぶられているようなモノだという事を。したがってそれを揺らしているのは私たち“生徒”と先生の頼った“悪い大人たち”…自分たちが夢見る理想のために識っている未来過ぎ去った過去を参照して動いている。

 

「小さな蝶の羽ばたきも幾重に集まったら突風にも劣らない風になる」

 

現状の【先生】の未来はそんな状態だとセイアは結論にそう纏める。

バタフライ・エフェクト。それを怖がる生徒が“大筋”を変えなくとももう影響は出ている。とセイアはまた感情を感じ得ない眼差しでそう告げた後、黙り込んだ。

 

「……分かりました。ではミカさんそちらは……」

 

「至って問題ないよ⭐︎」

 

ミカのやらねばならない事はトリニティを目の敵にしているアリウスに接近し、記憶持ちがいるかどうかの識別だ。……アリウスそれはトリニティ総合学園の分校の1つだった物。昔の諸派の統合の際、反対を取っていたせいで弾圧され歴史から名を消した学園は“とある悪い大人”の根城になっている。

 

「持っていた聖遺物は“棺”…“聖槍”や“聖骸布”に並ぶよね?」

 

「“棺”……!読み逃したな」

 

ミカの報告にセイアも驚きの声を上げる。

それが本当ならアリウスの価値が大きく変動する。…本来ならどの学園からも捨て置いて良いと判断された学園が“この情報”1つで激戦区になりうる。

 

「それに多分、あれ“適応”しているね⭐︎」

 

「……うわぁ……」

 

ミカの追加情報でついにナギサは淑女らしくない悲鳴を上げて机に倒れ込む。

ただでさえ、激戦区になりそうなアリウスが更に酷いことになりかねない。アリウスがあったところが焦土になる。ぺんぺん草1つ生えない焼け野原に劇的ビフォーアフターしかねない。

 

「仕方がありません。セイアさん“杯”の使用を許可します。」

 

更なる精度と詳細の未来まで確認してください。

全部の情報を一応集め終わったのかナギサは機敏とした声で指示を動かす。

ティーパーティーは基本的に3人とも同じ権限を持つが事、頭脳で人を動かすのはナギサが一番得意である。

 

そんなナギサが選んだ行動は聖遺物の補助を使ったセイアの予知のフル活用だ。

これからきっと今までの記憶では無かったような展開になる可能性が非常に高くなる。……ならば打てる先手は全部打つ気でいる。

 

「ミカさん。貴方は再度アリウスに接触を」

 

特に“棺”に関しての動向に注視してください。

必要ならば“個人的”な支援も目を瞑ります。

前の世界では色々とやらかしていたミカだがそれも考慮内に入れておけばミカは比較的に自由に動いてもらったほうが利になるとナギサは考えている。

 

「了解」「わかった⭐︎」

 

セイアとミカの同意を得て、とりあえずティーパーティーとしての動きは決まった。……ならナギサは何をするのかとミカは問いかける。

 

「私ですか?……私は“シスターフッド”並びに“正義実現委員会”に聖遺物の返却の勧告そして」

 

そう。ここトリニティで保管されている筈の聖遺物はティーパーティー、シスターフッド、そして正義実現委員会という3つの委員会・部活動に分けられている。

勿論、それはおかしいと聖遺物は生徒会であるティーパーティーが守護する物だと言い張るが今までずっと煙に撒かれてきた。

 

「アビドスに向けての密書を作成します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【足】を風紀委員会に貸し付けとけ」

 

勿論、アコ行政官にな。

 

ここは[ゲヘナ学園]の生徒会〈万魔殿パンデモニウム・ソサエティー

ゲヘナ学園で真っ先に名が上がるとするならば“風紀委員会”と言えるほどゲヘナでは生徒会の認知度が著しく低いがそれでもゲヘナ学園を運営する委員会である。

 

「……いいんですか?風紀委員長に睨まれますよ」

 

「ああ。下手に動かれて手首を噛み切られるよりマシだ」

 

不穏分子は消しておきたいが、ここゲヘナにおいて風紀委員会がどれほど認知度が高いからよく知っている。それに風紀委員会にはゲヘナの最高戦力と名高い“空崎ヒナ”も存在している。

 

先生が、“シャーレ”が出てきたとなった風紀委員会は今までの万魔殿パンデモニウム・ソサエティーの不義理を名目に“シャーレ”に降りかねない。

 

「……この場合、噛み切られるのは心臓部ですけどね……」

 

席のネームプレートに“生徒会長”と書かれた席にゲンドウポーズで座る銀髪に二対の禍々しいツノを持った少女が意味深に座って語っている。その相手は眠気眼を擦りながら小さく生徒会長の言葉にツッコミを入れに掛かる。

 

「……………………まあ、いい」

 

どちらにしろ。ゲヘナ学園から風紀委員会が消える方が面倒になる。それに聖遺物の1つで【先生】の身柄が確保できるというのなら逆にお釣りが来るモノだ。

 

「必ず、必ず傷ひとつ負わす事なく丁重に、丁寧にお迎えしろ」

 

「はい。……やっぱり“エデン条約”のために?」

 

エデン条約。それは今までいがみ合ってきた各校の中で一番に仲が悪く、目視するれば銃撃戦が始まるほどだった〔トリニティ総合学園〕と〔ゲヘナ学園〕が戦いを止めて“仲良く”しようとするための条約。

 

あくまで表向きは、だが

 

「ああ。“前”は【先生】をトリニティ白鳩共に取られたからな」

 

今回は、我らゲヘナ学園が必ず【先生】をお守りする。

 

「……問題は、アビドスと便利屋68ですが……」

 

“前”の世界でもそうだったと覚えている。

私たちが【先生】の確保のために動くとなると確実に敵に回るであろう輩。

 

「キキ…問題はない、始末しろ。立ちはだかるのなら我々の敵だ」

 

ゲヘナ学園の生徒会長は冷酷に告げる。

来るべき未来を見据えて───────

 

 

 

「というか何でこんな暗くして会議してるの?」

 

「なんかそっちの方がカッコいいだろう?」

 

「おそらく私たちが黒幕に見えるだけですよ…あ。アビドスに向けて手紙書いてくるね」

 

「何ィ!?……そしてアビドスに??」

 

「うん……」

 

 

 

 


 

「「「先生と“ゲマトリア”の敵対関係を構築せよ。と」」」

 

 

 

 






ミレニアムの秘密その1……天童姉妹とは有名なミレニアムの生徒。ナチュラル天然問題発言の姉:アリスとそんな姉のツッコミ&フォローを入れる妹:ケイちゃんの会話はクスッと笑えるらしい。


トリニティの秘密その1……実は“前”よりも内側がぐちゃぐちゃ。特に三大委員・クラブと名高い“ティーパーティー”、“シスターフッド”、“正義実現委員会”は聖遺物の所有の有無で常に揉めているらしい。


ゲヘナの秘密その1……実は前よりも万魔殿パンデモニウム・ソサエティーの権力があるらしい。ただ殆どの生徒は知らないが立場が上の方な部活はそれが目の上のたんこぶ状態になってるらしい。


〔アビドス高等学校編〕

副題:秘めたるウソの糾弾者


感想、評価お待ちしてます。
まさかこんな澄んだ世界観にウソなんてあるわけないしなぁ……()
糾弾者?……くくく……


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