アビドス編へレッツゴー!
始まりの手紙
私がシャーレの【先生】になって数週間。
私は非常に忙しい毎日を送っていた。
シッテムの箱を介した物資の運搬、整理。シャーレの近隣及び、周囲の点検。
ここに来るまでの戦闘で使用した銃弾やその他諸々の請求。そして点検の時に発生したゴタゴタに使用した物資の整理などなど。おおよそ気が休まる時間の方が少ない中で私は1つ小さな楽しみを見出していたりする。
『……先生。そっちは危険だ』
「……いつもありがとうね。黒マスクちゃん」
それは私に声をかけてくれる生徒たち。どうやら恥ずかしがり屋なのかその姿を見せてくれる事は少ないが道に迷ったり、行く先に危険があったらこうして声を掛けてくれる。
どうやら今日声を掛けてくれた子は黒マスクに青目の少女。頭上の天輪…ヘイローと呼ばれるのは大きなバッテン印に十字が重なったモノ。最初あった時はガスマスクを付けた紫髪の少女と共にいた筈だがどうやら今日は1人らしい。
「………あ。そうだ」
そういえば…と思い出した。こうして助けて貰っていたり、色々と手伝って貰っている中で何も返せないのは流石に大人としての沽券に関わるだろうと最近は何か出来ることはないかと考えていた。
「飴食べる?」
『いただこう』
考えついた手段がこれだ。大人の小賢しさというべきか…こんなので返せている気がしないが何もしないよりマシだろうと用意したのが甘味だった。今日持っていたのは飴。手軽に取れる糖分として私自身も重宝していた。(シャーレの売店で大量に購入している)
ひとつだけ取る黒マスクの子に私はつい“好きなだけ持っていっていいよ”と声を掛けてしまう。紫髪の子も居ないし、流石にここに居る1人だけというのは夢見が悪い。
『……いい、のか?』
「うん……いつもありがとうね」
そうすると少し手を迷わせながら、思い立ったように5つの飴を取って一言感謝を告げて消えていった。…この前はウサ耳を付けた子や狐耳を付けた子が案内してくれたり、天使の羽根を付けたピンク髪の子やメイド服を着た子や狼耳を付けた金髪の子(どうやら警察官らしい)などなど…様々な子たちに助けられている。
こうして色んな子に会えるのはとても嬉しいし、純粋に先生として慕ってくれている子がこんなに居るとは感無量だ。だから私も先生として早くキヴォトスに慣れたいと思うし、生徒とももっと関わりたいと思っている。
「……………ふんふんふん……」
街中を見回って歩いていると挨拶してくれる子も多い。
初日に感じた修羅の国という程の銃撃戦は“そこまで”多いわけではないがこうして歩いていると遠くから爆発音が聞こえるのはもう日常茶飯事になってしまった。
だけどそういうのはヴァルキューレ警察学校の子たちが即座に鎮圧できるようになっているらしい…まあヴァルキューレの子たちが即座に動ける範囲が各学校の自治区手前までというのが何とも世知辛い話ではあるが。
こうして見回って異常が無かったり有ったりしたらシッテムの箱から連邦生徒会宛に報告をする。ちなみにこの報告書を書くためにユウカとアオイが付きっきりで教えてくれたという話はまた今度。
『先生!重要な手紙が一件。届いてますよ!』
シャーレの部室に帰ってすぐ、シッテムの箱からアロナが声を上げる。
基本的にメール管理や通信関係はアロナに任せているし、何か重要な案件であればアロナが直接伝えてくれる。どうやら今回のアロナの報告によると手紙を送ってきたのが“外部”という事だ。それもキヴォトスでは珍しい紙媒体での、手紙。
「……アビドス廃校対策委員会?」
『はい!宛名はそうなってますが……』
どうやら連邦生徒会の預かり知らぬ部活だそうです。そうアロナは告げる。それを意味するのは認可されていない、言うなら委員会と認められていない委員会。だと言うのにその手紙の消印は正式なアビドスの消印が使われているらしい。
「この“アビドス”というのが学校名かな?」
『多分そうですね……』
アビドス…正式には〈アビドス高等学校〉。
昔はトリニティ、ゲヘナ、ミレニアムの三大校に引けを取らないほどの規模を誇った学校だったが……
「砂漠化……ね」
『はい。』
少女たちがどれほど強靭な身体を持とうとも荒れ狂う砂漠を止める術は無かったらしい。今やアビドス地区の殆どは砂に覆われ人が暮らせるような場所で無くなったと言う。
『人が去り、物が朽ち果てて…確か校舎も毎年毎年場所を移していると報告があります』
その報告もおよそ数年前まで。
「そんな中出された……」
およそ最後のアビドス高等学校の生徒たち。
私はその事実を小さく口の中で反芻する。一体この少女たちはどうして今も尚、その学校に固執するのか。こんな出来て間もない組織にまで助けを求めて。
「…………………」
三角形に太陽のマーク。学校のシンボルマークであるそれに手を触れて私は手紙の封を切った。
────そこで私は少女たちの意地を見る。
連邦捜査部“シャーレ”の先生へ
突然の手紙失礼します。私はアビドス廃校対策委員会所属の奥空アヤネと申します。今回、どうしても先生にお願いしたい事がありましてこうして手紙を書きました。
単刀直入に申し上げますと、私たちの学校は廃校寸前です。
あまりに多すぎる原因に手紙では語りきれないほど問題があります。
挙げ句の果てには不良たちに校舎を狙われる始末。
どうにかやりくりしていますが、このままだと破綻するのが目に見えています。
今、アビドスに居るのはこの委員会の5名だけ。
それでもこのアビドスを見捨てるわけにはいかないんです。
非常に厚かましいお願いですが…
先生、どうかどうか私たちの力になってくれませんか?
「…………」
計三枚にも連ねられた手紙を読む。その文字から滲む、少女たちの想い。
“守りたいから手を貸して欲しい”分かりやすく単純で、それでいて大人になればなるほど失う輝きのまま綴られた文。きっとこの少女は…“アビドス廃校対策委員会”があるアビドス高等学校が好きなんだろうと分かる。
「アロナ」
『はい!先生!』
準備を始める。“どうにかやりくりしている”と言う時点で物資は不足…或いは枯渇寸前という事だろう。シッテムの箱と、それに繋がるクラフトチェンバーがいかに便利極まりないオーパーツと言えどキチンと準備しておかなくては宝の持ち腐れだ。
クラフトチェンバーなど特にそう。
「アビドスまで行こうか」
なんてどうでもいい事を考えながらアロナにシャーレの施錠と防犯装置の起動を頼む。施錠は当たり前の事だが…この防犯装置は私がシャーレの先生となった数日後にユウカが持ってきてくれた“ヴェリタスとエンジニア部の傑作”らしい。
これからシャーレには重要な書類や機密書類が置かれるというのにそんな薄っぺらい防犯では先生の身柄を守れるかどうかも怪しいという事でユウカ…改めミレニアムサイエンススクール寄附という事で付けて貰っている物だ。
ユウカが言うには『寝る時も絶対、絶対に付けてくださいね!?』と念押しまでされているのはさておいて。
『すぐに出発ですか!?……はい!施錠完了。防犯装置起動……完了!』
アロナのいる教室から画面はシャーレの部屋の地図に代わり、南京錠に鍵がかかるエフェクトと共に防犯装置が起動したことを文章でも送られる。これで私がシャーレの部室から出てしまえば私以外がシャーレに入るためには私の許可が要るし、誰かが尋ねて来たらリアルタイム映像で分かる。
「……ごめん。アロナ。道案内もお願いしていい?」
『確かにここから遠いですからね……』
そうして出ていった私は、ついぞ気がつくことは無かった。
手紙の後ろに小さく書かれてあった文に──────
p.sうへー…アビドスは少し遠いからキチンと準備してきてねー
◆
「……ほ、本当にこっちで合ってるの……??」
『い、一応地図上ではそうなんです……けど』
シャーレがあるD.U地域から出ている列車に乗ってアビドス地区に来たのは良いのだが…列車を出てまず目についたのはとても広大な砂漠と、その砂漠に沈んだであろう街並み。
完全無欠に滅んでいるであろうアポカリプスな世界線に流石の私も困惑している。
穏やかな春に近い日がアビドス地区を照らしているが、風が吹いていなかったり日照りでない事だけマシかと思い、砂漠に足を踏み入れる。
『先生…キチンと体調管理だけはしてくださいね?』
「……ふぅ……うん。まだ行けそうだ」
地図を見るとまだ半分も歩いていない事が分かる。
飲料水や食料の残りを考えると少し配分を変えないとまずいことになりそうだと砂まみれの静寂に満ちた道路を歩く。
砂漠というだけあってもう錆びかけていた蛇口を捻っても水は出てこないし、食料なんかがそこら辺に生えているわけでもない。乳酸が溜まっていく身体に私は少しずつ迫り来る“限界”を感じ取っていた。
『……先生?無茶してませんか?』
「……いや。大丈夫だよ。」
それよりアロナ。今どんな感じか教えてくれ。
そうアロナに問うもやはりまだまだアビドス高等学校には遠い。……今更な話だがこうしてアロナが居なければもっと先に根を上げていてもおかしくはない。
静かな砂漠はどこか神秘的で、そして恐ろしい物だった。
流石に足が悲鳴をあげ始めたを感じて私は日差しが当たらぬ物陰に腰掛けることにした。ずっと日向を歩いて来た物だからこうして日陰で休めるのは砂漠のオアシスにも似た感覚。
「……ごめん。アロナ少し休憩するね」
『はい!ゆっくり休んでください!』
周囲の安全は私が守ります!
そう意気込むアロナに心強いと思いながらも私の瞼はまるで重りが付いていたかのようにすぐに意識が遠のいていく感覚がした。
「何があろうともアロナがお守りしますから」
◆
同時刻。アビドス高等学校───────
「そろそろ!先生が来るということで!」
「ん。迎えにいってくる」
今や本校は砂に沈んだという事で別館に〈アビドス廃校対策委員会〉とそこに所属するアビドスの全生徒5人はいた。砂嵐にも負けず、先代たちが残した負債にも負けず、そして薄々勘付いている様々な“問題”にも負けず、少女たちは心強くそして逞しく生きていた。
「シロコちゃん落ち着いて〜……まずは現状を整理しとかないと」
「はい。ホシノ先輩の言う通りです。」
借金問題は変わりませんがその他諸々が大きく変更している点がありますから。
音頭を取る様に赤いフレームのメガネをかけた黒髪の少女がホワイトボードを裏返す。
「借金の高金利…これは先生と解決していく案件です」
「それと同じ様に先生にこの部活の正式な認定もしてもらわないと〜ですね」
ホワイトボードを見ると、金利の横に“カイザーコーポレーション”と書かれている。
さらにその下には“アビドス対策委員会の生徒会認定”と書かれている。
「…………ん。ん。」
「シロコちゃんステイ。手紙にはキチンと準備して〜って書いてるから」
話し込む少女たちを尻目に特徴的な狼耳をした銀髪少女は早く外に行きたいと何度も席を立ち上がろうとするのをピンク髪の少女が押さえ込む。
「………でも先生、迷うと思う」
「…………まああの広さだからねぇ……」
先生を一晩、この砂漠で過ごさせるのもどうかとピンク髪の少女は少し考える。
本来なら明日の朝、自転車で通りかかったシロコちゃんが萎びている先生と会うのだが………
「ま。一日ぐらい大丈夫でしょ〜」
「!!それって…!」
驚きを表す様にピンッと力が入るシロコの狼耳を見てピンク髪の少女は苦笑する。
時間軸が一日ほどズレるが…まあそれぐらいなら許容範囲内だろう。むしろ早ければ早いほど話は早く進み、楽になっていく。とピンク髪の少女はシロコと言われた狼耳をした銀髪少女の押さえを解く。
その瞬間。まるで風の様に駆けて行ったのを横目に、ピンク髪の少女は椅子二つ使って横になるのだった。
「…………おじさんも──────」
多分おそらくですが、ブルアカを始めてストーリーを読み進めていくにつれて先生のファンになってしまった生徒も多いんじゃないでしょうか?かく言う作者も生徒もいいけど先生に脳を焼かれまして。
と言うわけで先生は生徒の前で盛大に怪我して欲しいなぁ!具体的には手足が一本ぐらい吹っ飛ぶ様な大怪我をさ。
守れなかったという後悔と、これから先生の手足の代わりになれると言う背徳感で頭おかしくなってしまった生徒の顔とか絶対見応えしかないでしょ。
ん。やっぱり先生は早急に生徒の脳を焼き尽くすべき。
……とまあ拙い妄想は置いといて。
この小説は大体全て知っている生徒と全く何も知らない先生で構成されてますが“前”までは逆だったせいで生徒たちの脳を焼き尽くしてたんだよね。おらっ!先生コミュニケーションはどれもこれも致命的成功だったらいいとかそう言うわけでもないんやぞ!…あーあ生徒との会話を全部ファンぶってしまったせいで生徒が先生を性的すごい目で見始めました。大体全て先生のせいです。先生はその責任を持って生徒全員を娶るべきですね。間違いない。
感想評価お待ちしてます。
そもそもヴェリタスとエンジニア部の合作とかなんで先生はバックドア仕込まれてないと考えるんでしょうね?流石はミスター無防備。そんなんやから気がついた時には生徒のお腹からヘイローが浮かび上がるんやぞ。