学校が廃校するなんて考えられませんよね…一体何が起きてるんでしょうか?
ヘルメット団との戦闘を終えたアビドス一向。
傷を負わなかったシロコたちだけどそれでも汗をかいでいたり砂埃で汚れてしまったと言うこともあって、休憩と同時進行で体を拭きに行った。
私とアヤネは特に汚れたわけではないからお茶を飲みながらとりあえずアビドスの地名とその他諸々の情報交換となった。とりあえず私がアビドスに来たのでシャーレ“公認”と言う事だけあって資源や資材の援助ができると言う事で持ってきていた(クラフトチェンバーで一部作ったとも言うが)弾薬や食料、更には燃料の受け渡しが終わった。
「ん。先生お疲れ様」
「シロコたちも、お疲れ様」
後はアビドスの現状を聞くだけ…と言う所まで来てようやく所用が終わったシロコたちが帰ってきた。銃を置いた少女たちはまるでどこにでも居る女子高生のように思うがままに席に座り、私とアヤネが話始めるのを待機する。
「…………はい。みなさん戻りましたね」
お疲れ様でした。とアヤネの声にもう一度お疲れ様でしたと言い合いそして話が始まる。
「先ほどは急でしたがもう一度先生に挨拶を。」
私の名前は奥空アヤネ…アビドス高等学校一年。一応書記ですね。
アヤネはこういう会議の進行役になる事が多いが、実はこの中では歳下らしい。
随分出来た子だなぁとは思っていたがまさか一年生だとは驚きだ。
「そ。私は一年、黒見セリカ。…………セリカって呼んでくれるのならよろしく」
クールっぽい?というか凛としていると思っていたが、私がよろしくセリカと声を掛けると無言で猫耳が嬉しそうに揺れ動くのを見て、実はシャイなだけであって意外と社交的な子なのかな?と思っている。
「じゃあ次は私ですね〜」
私は十六夜ノノミと言います〜……これから“ずっと”よろしくお願いしますね〜
やけに力強くそして両手を掴んでブンブンと振り回すその姿はまるで天真爛漫という言葉が似合いそうだ。言葉選びといい、シャーレでも慣れたがこれぐらいの子はこれがデフォなのか。
「ん。……砂狼シロコ、2年……よろしくね先生」
知ってるとは思うけど。という暗黙のシロコの言葉に私も苦笑するしかない。
確かにここに来るまでに彷徨いかけていた私を見つけて連れてきてくれたのはシロコだ。もしあの時シロコが見つけてくれなかったら私は倒れていたかもしれないと考えると命の恩人でもある。
「…じゃあ後はおじさんだね〜」
私は小鳥遊ホシノって言うんだ〜こう見えて三年生だよ?
と机に脱力しながら告げるその姿は何処か微笑ましく、多分アビドスの中で一番背が低いであろう姿に遺伝子の神秘を感じながらもよろしくと手を振りかえすとこちらも微笑ましくなってくるフニャリという笑みを浮かべてまた脱力する。
◆
「まずはどうしてアビドス高等学校が廃校になりかけているか。をお話ししますね」
自己紹介(2回目)を終え、少ししてからアヤネが話題を戻す。
そうだった。会って数秒にはヘルメット団が攻めてきていてそれを追っ払う所から始まった様に見えたが元はアビドス高等学校が廃校の危機だと言う事で来ているのだった。
「結論から言いますと……」
アヤネは言いにくそうに吃らせる。
「多額の借金で廃校になりかけてるんです」
「…………借金!?」
目を見開く言葉が聞こえた。まさかこんな学校で借金が原因で廃校になりかけだという言葉が出てくるなんて。私の驚愕する声に少女たちの苦笑する声が響く。
「ま、まあ借金と言っても後9億程ですし……」
「億………?」
学校が廃校するほどの借金となるとどれぐらいだろうか。
数千万?ぐらいだろうかと考えていた所の億。それも9億という想像もつかない様な金額に私の脳みそは停止してしまった。
「実はこう見えて減らした方なんですよ?」
色んな所からやっかみを買っちゃいましたがね。
そう言葉をフォローするノノミ。9億で減らした方となると大元がどれぐらいなのか非常に気になる。と思っていた所、斜め前からホシノが小さく両指を動かす。
その指が指し示す数は……13。
「………13億??」
「うん……私たちだけでこれだけ、頑張った」
確かに四億ほど減らしたとなるとそれはすごい成果だ。
“私たちだけ”となるといつから借金があったかは知らないがここ数ヶ月だけで四億減らしたという事になる。……じゃあ後はそこから更に減らしていくという事ではないのだろうか?
「はい。ですがここからの借金。およそ9億と少しは……」
“アビドス生徒会”の管轄になってしまうんです。
アヤネの解説によると今までの借金は、全て過去のアビドスが借りていたモノ。
借りた資金は全て……
「砂漠化の対策に使っていた…か」
「はい。ですが事態は悪化の一途を辿り……」
そして遂には返済できぬほど膨れ上がった借金と、砂に飲み込まれて久しい多くの地区だけ。そうなってしまってはもうアビドスを去る人が増えて今、この通り。
「そして追い討ちを掛けるかのように利子が増えました」
「それは一応想定できたのよ。だけど問題はここからだった」
毎月返済する利子は月々に増えていき、最も借金が多かった時が13億。
それでもなんとか対応できなかったわけではないとセリカが言葉を続ける。
「………問題?」
「問題は……私たちが生徒会ではない。という事なんです」
あくまでアビドス廃校対策委員会は“アビドス委員会に認可された一つのクラブ”に過ぎないという論弁。今やアビドスに残るは対策委員会の5人だけだというのに、それは“アビドス”の代表の組織ではない。という事らしい。
「悪辣なのはここからです。」
「…………………」
まだ、有るのかともう私のお腹は一杯だ。
だけどここまで言われたのなら想像がつかないわけがない。
「返済させない…という事で向こうは“返済出来ない”とみなして私たちの学校を奪おうとしているんです。」
「それが、廃校の危機…というわけか」
はいと頷く。
残りの9億。それはまだ生徒会の権限下であるが、利子の支払いはアビドス高等学校として認められているらしい。そして利子の支払いだけでなく借金を返済しようにも“生徒会”ではないから返済出来ず、出来ないから学校自体が狙われているという事らしい。
「そしてそれに伴い、さっきのヘルメット団のような輩に攻め込まれていて…」
利子の返済は出来ているから今まではそう簡単に学校を奪われるなんてあり得るべきことではなかったが、最近では先ほどみたいに物理的に学校を奪おうとする輩が出てきてしまったらしい。
ただでさえ不足気味な銃弾やその他諸々で既に自転車操業でもパンクしそうになった時、シャーレという組織の噂を聞き、藁にも縋る気持ちで手紙を出してきたのがこの話の原点であるという事だ。
「なるほど、ということは」
私の先生としての力でアビドスを正式な委員会と承認すれば良いんだね?
そうだと頷く少女たちに私はようやくこの大きすぎる権力の使い方を見出したような気持ちになった。
「今連邦生徒会に申請したよ」
アロナに手伝ってもらって、委員会の承認を連邦生徒会に回す。私自筆のサインとメンバーの人数、そして今までの功績を考えたら承認は比較的早いはずだ。
そう考えていたら、ものの数秒でリンから承認が降りた。忙しい中よく頑張ってくれていると思う。今度、リンたちに何か労いを用意しないとなと考えていた。
「………これでこれからアビドス廃校対策委員会はアビドス生徒会も兼任することになった」
「ありがとう、ございます」
感極まるアヤネたちにこれでようやくアビドス高等学校がすぐにでも廃校するということは無くなったとひと段落着いたと私は思っていた。本当は、ここからが始まりだったというのに。
「じゃあここからだねー」
「ひとまずそっちの危機は去ったとしても…残念ながらヘルメット団の脅威は収まってません」
肩の力を抜く私とは裏腹に、ホシノは逆に体に力を入れ立ち上がる。
それに賛同する様にアヤネの呟きに私も理解する。
確かに、借金を返すことはできる様になったが襲撃してくるヘルメット団に対する対処も出来ていないのだと。このままではまた攻め込まれ、今度は戦車が準備される可能性がある。
強い、違和感
「じゃあどうするの?このままではジリ貧よ」
「確かにそうですね〜数では向こうのほうが圧倒的ですし〜」
万が一ゲリラ戦法を使われたりしたらどんどん削られていってやられますね〜
おっとりとした声で中々恐ろしい敵側の戦法を口にするノノミだが私もそれに似た事は想像できる。数の差というのは非常に利になるからだ。
強い、違和感
「ん。力量差があっても数だと押し切られる…かも」
「うへー…三倍以上だからね……」
シロコの見積もりに反応するかの様なホシノの呟き。
三倍。というヤケに現実的な数字は攻撃三倍の法則から引用されているのだろう。
攻撃三倍とは攻撃側は防御側に対して三倍の兵力を必要とする考えのことだ。
ここキヴォトスでは文字通り、一騎当千の戦いをする者が居るからそれが当てはまるのかは少し怪しい所だがそれでも大まかに戦力がぶつかり合うのなら3:1の法則が当てはまるのだろう。
強い、違和感
「じゃあどうするのよ!」
「……ま。それは簡単でしょー」
悲観的な発言を前に遂にセリカが机を叩く。
気持ちは分かる。悪い方向に転がる妄想だけが場に出されるとどうすればいいかという判断能力さえも鈍ってきそうになる。だけどそんな悲観的とは裏腹に少女たちの顔から挑戦的な笑みが消える事はない。
強い、違和感
「逆に攻め込むんだよ。私たちが」
ホシノがわかりやすく机を人差し指で指差す。
物資が充実している今のうちに周囲のヘルメット団を一斉掃射して壊滅させる。
そうする事で危険は減り、私たちも動きやすくなる。
「それに〜………んにゃ。これはまだいいや」
「ホシノ先輩。そこで切られると気になる」
意味深に呟かれた言葉に、シロコが即座に突っ込む。
そんなシロコを置いといてホシノは一度手を振り、どうせこれが終われば分かる事だからそれからでいーよ。と言ってまたフニャリと椅子に倒れ込んだ。
「じゃあ先生。またしばらくお願いしていいですか?」
「………そうだね。よろしくお願いされようかな」
ノノミのお願いを前に私の考えは既に決まっていた。
仕事はアロナとシッテムの箱があればどこからでも出来るし、家は…まあ二日三日ぐらいなら大丈夫だろう。シャーレとして、先生として長期的な任務に関わる。これもきっと私の仕事の一つだろう。
「…………!はい!よろしくお願いします!」
大袈裟に抱きついてくるノノミを軽く抱きしめ返しながら、私はアビドスでの生活が始まったのだなと今になってようやく何か実感らしいモノが湧き上がってきた様な気がした。
◆
「じゃあ先生。私たち銃取ってくるね」
少し時間が経った後、シロコたちはまた銃を取りに部屋を出る。
私も準備しようかと席をたったその時だった。アヤネに背中を引っ張られたのは。
「………どうしたの?」
「……………………先生」
その時のアヤネの表情はあいにくと見ることが出来なかったが、開かれた口から重々しく呟かれた私の呼び名はまるで今から大事なことを言うのではないかと私も固唾を飲む事になった。
「…………………いえ。私はここからオペレートになりますがよろしくお願いしますね!」
「………うん。ありがとうアヤネ」
とは裏腹に私に対しての激励の言葉。
その一言の後に私たちは互いに背を向けて準備を始めた。
今から始まる強襲作戦。その成功のために──────
「…………ねぇ。あれ、でよかったのよ、ね?」
「はい!セリカちゃんよく頑張りました〜!」
「ん。話の筋は通ってる。増えていく借金、それを減らす名目……」
「大体ザックリで良いんだよ〜…必要なのはどう先生をアビドスにかかりっきりにさせるからだからさ〜」
「そう、よね……じゃあ次はカイザーとその裏?」
「うん。全然誰にも接触してないけど確実に【黒服】は動いてるはず」
「うへ〜…狙ってるのが私の身柄じゃなくて十中八九“あれ”だろうしね」
「まあまあ!話はそこまでにして!先生を待たせすぎるのもダメですし〜」
「先生、ごめんなさい」
「でも、こうしないといけないんです。こうでないとダメなんです。」
「どうか、どうか私たちを嫌わないで。私たちを嫌がらないで。」
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい………」
「どうか、こんな身勝手な私たちをどうか────────」
先生は生徒たちの事を思い、生徒たちは先生の事を想っている。
そこには何の違いもないですね。かんぺき〜
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