2017年の約束〜白紙化地球に遺されたもの〜 作:食卓の英雄
〜サーヴァント・サマーフェスティバル2023〜 え、題材アルトリアのみの同人誌を?できらあっ! 勝ったぞバーサーカー。この戦い、我々の勝利だ
夏、それは水着の季節。夏、それは周年ガチャの石を溶かす魔の吸引口。夏、それはサバフェスの季節………!
いかん、なんか変な電波を受信した。なんだサバフェスって。この世界の危機にそんなもんがあってたま……あるの? セレシェイラ…お前疲れてるんだよ。休めてるか?神とか相手にして疲れてるんならゴルドルフ所長に言うんだぞ。…え、違う?本当にあるって…? マジ? 何で?
……まあ、いいや。聞く限りではそんなにヤバい案件でもないみたいだし。コミケ的な感じか。了解。藤丸くんも参加するらしいし、楽しんでおいで。…は?レポート終わってない?夏休みの学生かな。…あ、いやごめん。確かに学生のままだった…。
「アルカズルさんはお先に行ってください…」
「何で俺が行く前提で話が進んで?」
藤丸くんに声をかけに行ったら何故かそう言われた。というのも、これはゴルドルフ所長とも話し合った結果らしい。
いくら危険の少ない夏のバカンス気分だとはいえ、それでも特異点。夏の陽気に当てられたサーヴァントや発生したよくないものがカルデアに悪影響を及ぼす可能性が、悲しいかなないとは断言できない。
具体的にはリソースの横領とか前回サバフェスの
そんなわけで、マスターである藤丸くんがレポートにかかりきりで行けない間、マシュ同様に現地スタッフとして活動してほしいとのこと。
戦闘能力があり、マスター適性もあるにはある。生存能力も高く魔術的な知識や機転も利く。それでいていざとなれば単独で脱出することも可能となれば、先遣隊としてはこれ以上ない適性だ。
『―――何よりも、カルデア所属スタッフという点が素晴らしい。サーヴァントはねぇ、何か割りと好き勝手やっちゃうから。期待してるんだよキミィ。ホントに』
おのれゴルドルフ所長。
「多分大丈夫ですよ。サーヴァントのみんなもあんまりヤバそうなら協力してくれると思うので…。それと、特に何もなかったらその時は普通に参加して楽しんでおいて下さい。あ、あと向こうでいい感じのお店とか食べ物とかあったら教えてほしくて…。それとマシュにも頼んでるけどホテルのチェックインの方を。場所は――――」
こんな感じで忠告を…。いや、殆ど観光に関わることだったけども。まあ、休暇感覚で行ってくるか。今世でも前世でもハワイでバカンス、なんてやったこともないし。いっちょ楽しんでくるか。
―――そうして、俺はマシン・フラウロスに跨り南国の特異点。ルルハワへとやってきた…のだが。
「うわぁ…空港は多いな。虚数空間から来て良かった。混雑しすぎ…っていうかあんな数の英霊に囲まれるのは味方だと分かってても怖い」
藤丸くんみたいな立場ならともかくこっちは一般スタッフ。話の通じないタイプのに絡まれたら一溜まりもない。
と、そんな喧騒を眺めながら、一先ず頼まれた通りに情報収集だ…。と、その前に…。立ち食い用に何か買っていってもいいよな。そんなわけで、明らかに観光客用の出店(何故ある?)へと声をかける。
「すいませーん。シェイブアイスください」
「あいよ」
こちらも何故か店員がいて、現代の機械を慣れた手付きで動かしていく。特異点とはいえ自由が過ぎないかこれ。
「あいよ。1500アルポンドね」
「アルポンド? BBドルじゃなくて?」
買い物の際にと持たされていた月のラスボス系後輩()が印刷された紙幣を取り出す。すると店主は疲れたように説明してくれた。
「何だあんた、知らなかったのか。BBドルが主流だったのも今は昔。支配体制が変わったとか何とかで、貨幣も変わっちまったのさ。お陰でこれだけあったBBドルは全部ただの紙切れだ」
……これは異変では? 第一、前回のログから確認する限り、あのBBがこんなことをする必要はない…とは言い切れないが、限りなく低い。そして、新たな紙幣に描かれているのは第6異聞帯での記録にあるアルトリア・アヴァロン。………犯人か?
「ま、そういう訳だからさ。アルポンドがねえんなら売れねえよ」
「そういうことなら…」
さて、早速問題点を見つけたので、調査に入りたいと思う。実質休暇とは何だったのか。というか犯人はアルトリア・アヴァロンじゃ駄目?駄目かー。
―――…
そんな訳で、一日中島を駆け回って手に入れた情報は以下の通りだ。
まず、サークル参加者への待遇が手厚い。施設の無料化や有名店で使えるクーポン、要望に応じて物資の調達などなど。そして一般客への配慮も抜群だ。あこぎな商売が徹底的に排斥されている。それには、正常化委員会とやらが関わっているらしい。
この時点でBBではないな。うん。というか、この徹底した管理ぶりや、マメな活動。それに訪れる相手に対しては素晴らしい待遇。………そして、アルトリア・アヴァロンのことを知っている人物。
………ああ、成る程。かなりどころかすごい限定されてきたが……。まあ、これはまだ憶測に過ぎないし、ワンチャン別人でしたパターンがあるから……。うん。
とりあえず、判明している事実だけを合流時に渡せるようタブレット端末にメモって…。後はマップのおすすめ観光地とか店にもマークして渡すか。何だろう、普通のことしてるだけなのにすごい楽しい。
「あ、そっか。俺、今世で旅行とかしたことないのか」
そりゃそうか。殆ど生き残ることと力を身につけるのに必死だったから。全盛期時に一番休めたのが魔眼列車なのは不味いかもしれない。
まあ、こういうのにガチになっても後からくる藤丸くんの楽しみを減らすだけだし、ここらで一区切りだ。
うーん、後はどうしたものか。短期アルバイトでアルポンドは稼げたとはいえ、数日過ごすには足りない。…サークルならそこら辺気にしなくても援助が受けれたのにな…。
……いや、ならサークル入ればいいのでは?
そういえば、管理人から通達された題材はアルトリア。正直範囲が狭すぎないかと思ったし、現に不満垂れてるサーヴァントも多いが…。
ある、俺にはとっておきのアルトリアの引き出しが…!
そう、この世界ではない平行世界で行われた第五次聖杯戦争。そのセイバーと衛宮士郎(村正がいるがよく似た別人としておこう)の馴れ初め、黄金の別離。そしてあの邂逅…!
いける…!いけるぞ…!あくまで同人誌だから聖杯戦争要素を抜いて…。日常パートを増やして…!いや、サーヴァントということを活かさなければ別離が上手く行かない。なら予め消えることがわかった上で―――。
考えれば考えるほどにアイデアが湧き出してくる。もういっそのこと、サークル創っちゃうか!
人員は……。まあ、集まらなければやるしかないけど…。複製した人格をペーストしたホムンクルスとか…。あとは、そこらへんの自我の薄い精霊とかを捕まえて俺の人格を移植していけば……。
よし、じゃあ早速ペンと原稿を買いに…!
「君はこっちね」
「は?」
◆◆◆
幾日もの溜まったレポートを片付けてハワトリア特異点に降り立った藤丸達。BBからの頼みでこの特異点の黒幕を探しに来たのだが……。
「あっ、そういえばマスター! こっちにカルデアの人がいるんだったよね。その人なら他のサーヴァントよりも真面目に情報集めしてるんじゃない?」
「そっか、アルカズルさんがいるのか!」
向こうからの連絡はないが、それは藤丸が本来想定されていた時間よりも早くレポートを完了させたためだろう。
あの人なら、あくまで第三者として異変を調べ回っているはず。早速、藤丸はアルカズルの持っている端末の電話番号を入力し始めた。
『………もしもし。藤丸くんか? レポートはもう終わったの?』
「はい、ちょっと聞きたいことがあって…。これから会えます?」
『エッ…ウーン。チョットイマテガハナセナクッテ』
「絶対嘘だ!?」
『ウソジャナイヨ』
「俺でも分かるよそれ!」
『流石に無理か…。いやまあ、忙しいのは本当なんだけどね。サークル入らされたし』
「ってことはアルカズルさんも同人誌出すんですか?」
『まあ…そうなるな。メインは他のやつだけど。んで何?今ならまだ余裕あるから聞きたいことあったらバンバン聞いちゃって』
そう言って、次々と疑問や今ここで起こっている問題に対して質問をしていった。
結果、得られたのはここの黒幕らしき人物の性格や紙幣から見た考察。そしてその他の異常に関しては把握していないし、実物を目にしていない以上は何とも言えない。ということだった。
「そうですか…」
『力になれなくてごめんな。代わりに初日に調べた美味しい店とかのデータ送るから』
「全然! ありがとうございます。後でマシュやアルキャスと回ってみようかな」
『アルキャス? そっちにキャスターのアルトリアいるの?』
「はい、まあ今は水着なのでバーサーカーですけど」
『アルトリア・キャスター(バーサーカー)???』
「はい、バーサーカーのキャスターです」
頭痛くなってきたかもしれない。
「あ、そういえばサークルに入ってるってことは何か出す予定なんですよね。後でいってみたいのでサークル名と場所を教えてくれませんか?」
『………………………』
「アルカズルさん?」
『……黙秘権を使用します』
「はい?」
『いや、ホントに。探さないでよ? 知らないほうが幸せな世界とかもあるから。マジで』
「え、ちょ」
そういったっきり、ブツリと電話は途絶えてしまった。サークル活動を恥ずかしがっている…にしては堂々と答えてたし。どういうことだろう。
「今、電話の向こうでポッポー! って音鳴ってませんでした?」
「電車の汽笛かな…?」
「はい。そして今このハワトリアで電車が停泊している場所はこことこことここの3箇所。そしてこっちの方は正常化委員会と一般向けで、缶詰出来る施設もそこまで近くないから……。そこから導き出せば、彼のいる場所は残ったここ付近の建物になります」
そうキャストリアが地図を示す。確かに、論理的で説得力のある推察。
「すごい…初めて探偵みたいなことしたね!」
「そうでしょうそうでしょ…ん? 今初めてって言わなかった!?」
「言ってない」
「そ、そんなバレバレの嘘を…」
「ま、まあとにかく、場所が割り出せたんなら行ってみようよ」
そう言って、キャストリアの割り出した位置へと歩みを進めることにした。列車が停まっているのが見えた。
そこから導き出そうとしたが、どうにも周囲の人の顔色が悪い。声をかけても反応が鈍く、どうしたものかと迷っていると、向かいのホテルからアルカズルが出てくるのが見えた。
「あ、アルカズルさん発見!」
「げ」
「あー!逃げたぁー!?」
「追いかけよう」
こちらを見るなり全力で逃げ始めたアルカズルを追うべく、キャストリアは駆ける。
「行け! 足止めを頼んだ!」
『了解!』
ハワトリアに来てから初めて見かけたような純正精霊と人型生物などを繰り出し、足止めを測るアルカズル。しかし、それもマスターを得たキャストリアによって尽くが蹴散らされた。
「……ハア、ハア…。精霊だけならともかく、何で吸血鬼まで…!」
「追い詰めましたよ」
「ああ、クソ。流石にこの状況から歴戦のマスターと聖剣の妖精から逃げ切れるほど鍛えてはない…か」
達観したように、諦めの籠もった瞳で両手を上げるアルカズル。どうぞ何でも聞いてくれとばかりにやけになっている。
「あの、なんで逃げたんですか?」
「サークルに来てほしくなかったからだな」
「…何でですか? 何か良からぬことでも?」
素直に白状していくアルカズルに、アルキャスが詰めていく。それに困ったような顔をして、けれど答えると言った手前だんまりも難しい。そして、数度の逡巡の後、いよいよ言葉が紡がれ出した。
「……いいか。まず、俺はサークルに入らされた形になる。相手は知人だし、こっちに利のあることも条件に入ってたし、一応世話になったこともあるから断ることも難しかった。だから俺の趣向とか趣味とかはなくて、そいつが全てを決めていて、俺のやることなんて指定されたことだけだということをわかって欲しい。そしてまあ、来てほしくない理由はサークル名だけで理解できるだろ」
「……その、サークル名は?」
ごくり。つばを飲む音が聞こえる。知らず知らずの内に緊張していたらしい。あのアルカズルがここまで早口にまくし立て、嫌がっているというのも珍しいものだった。
尋ねると、ゆっくりと、ゆっくりと口が開き、嫌そうに恥ずかしそうにサークル名を声に出した。
「…ふ、『ふたなり大好き』……」
アルカズル「頼む…!マジで記録に残さないでくれ…!セレシェイラにどんな顔されるか分からない…!!」
ちなみに黒幕は俺は知りません。