2017年の約束〜白紙化地球に遺されたもの〜   作:食卓の英雄

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まだ本題ではない


本編
転生者の勇気


 

 俺は、魔術師だ。いや、魔術使いかな?

 まあ、それは今の仕事にはあまり関係ない。いや、職場自体が魔術と神秘の塊みたいなものだが、とにかく俺に割り振られた仕事の限りでは、魔術を使うような機会は滅多にないってこと。

 あったとしても基本属性や基礎の能力補佐とか、そんな感じ。

 

 職場の名前は『人理継続保障機関カルデア』

 魔術師の総本山である時計塔12のロードの一角、アニムスフィア家が管理する機関だ。

 

 人類史の観測、保持を旨とした魔術師にしては真っ当な目的のための施設だ。中でもスタッフやメンバーは当主マリスビリー・アニムスフィアが直々に勧誘したものも多く、彼のお膝元である天体科以外からも人員が集まっている。もちろん一番多いのは天体科出身の奴らだが、それでも排他的な奴が多い魔術師にしては異例と呼べるくらいには混ざっている。

 そんな所だからか、一般スタッフの中にはいい意味で魔術師らしくない奴が多い。何なら魔術に関わりのない出までいる。これは俺も初めて知った時は言葉を失った。 

 

 まあ、大抵は落ちぶれた家の子孫であったり、現代魔術科出身であったりとだったが、普通の感性のまともな同僚達だ。そこでの暮らしは中々居心地が良かったものだ。

 

 何気に国連承認機関であるカルデア(ウチ)は給金もよく、ロードのお膝元だけあって外野の魔術師の手もかからない。まあ、それでも魔術師の集まるような所だ。後ろ暗いところがないとは言えないが。正直今の仕事が自分にあっているとは思わないが、それでも今までの生活に比べれば気楽でいい。

 

 おっと、その前に俺の生い立ちなんかを話しとこう。

 

 信じられないかもしれないが、俺は転生者だ。魔術的観点から見た魂の転写や乗り移りとか、宗教的な意味合いを持つ方のじゃない。

 俺は現代日本に暮らしていた筈だが、いつの間にやら赤ん坊に生まれ変わっていた。生まれ変わった直後の俺はそれは混乱した。それはそうだ。なんせいきなり過ぎたからな。

 その時に混乱すれども取り乱さなかったのは、この世界に転生して俺の根本的な何かが変わったからだろう。知識を身につけた今となっては、俺の起源が元々のものから変質したせいだと考察できるが。

 

 そして、何よりだ。この転生先の世界には前の世界では創作にしか存在しなかった(ひょっとするとあったのかもしれないが)魔術や様々な神秘が存在していた。

 

 そして魔術回路や時計塔。アトラス院などという単語がクソ親から出たことで、俺はここが型月のいずれかの世界だと理解した。

 型月作品は追えていないものも多いが、基本的な世界のシステムは分かっている。それを知ったときはただひたすらに喜んだ。

 あの人に出逢いたい〜だとか、こんな魔術を使いたい…等など。あのときの俺はファン故の期待に満ち溢れていた。

 

 そして魔術を教えてもらうことになったのだが、そこからが地獄だった。

 

 俺の生家は日本にあったが、かつてはアトラス院の錬金術師でもあったらしい。だが、ご先祖様は何があったのかアトラス院を追われ、逃げるために各地を転々としつつ、零落しきった末に日本で6番目の霊地に腰を下ろしたらしい。

 

 それで、魔術の話だが、最初は楽しかったさ。親は厳しかったが、それも作品として知っていたから許容していた。……あの両親に限って、そんなことは無いはずなのにな。

 端的に言ってしまえば、両親はかつての栄光に縋っており、自分たちが成り上がるための道具として俺を育てていたのだ。

 情など欠片も感じなかったが、それでもまだ許容は出来た。

 だが、俺の属性が虚数と無だと判明してからはそれが酷くなった。超希少な属性の二重属性。それは魔術師であるなら喉から手が出るほどに強力なそれだ。作品での話だが、虚数を持っている間桐桜は後ろ盾がなければ魔術師に解剖される程度には希少で強力。無属性に至っては型月作品のどこにも未だ一度として出ていない更に希少な属性。

 

 生まれ持った属性による得意不得意は誰にでもある話しだが、こと虚数と無に限っては五大元素とはまるで違い属性を扱うことすらほぼ不可能なのだ。

 

 こうなれば、復権を目論んでいた親は止まらなかった。気持ちはわかる。こんな貴重な二属性持ちで駄目なら、それこそ生まれながらの根源接続者(バグ)とか魔法に頼るしかないだろう。

 

 そこからが酷いこと。まず、俺に睡眠と怠惰は許されなかった。如何に希少な属性とはいえ、それは資料や先人の知恵が少ないことも同義である。少しでも扱いや鍛錬のために僅かでも手を抜くと礼装まで使った叱責が飛んでくる。

 食事なんて料理とも呼べぬ味気のないもので、それもすぐに食べないとあからさまに睨みつけてくる。

 

 古臭い家系の栄光をうんたらかんたらと語られ、時には儀式と称して磔にしたり、魔術をかけて拷問じみたことまでするようになった。

 ギリギリまで追い込まれて、でもやらなければもっと過激な罰が待っていて。まあ、精神が既に育っていた俺じゃなきゃそのまま洗脳でもされていただろう。

 

 それが終わったのは、桜の映える綺麗な季節だった。

 

 両親が、俺の力を効率的に扱うための外付け回路として、7歳、5歳、3歳の少年少女を一塊にした装置を見せびらかしてきたその時だ。

 

 肉塊となって蠢く彼ら。ただ呻くことしか出来ず、閉じかけた瞳が誰かの口と縫合されている。両親(ゴミクズ)は瞠目する俺に淡々と語った。

 ここ日本では7つまでは神の子として扱うという風習がある。その伝統を利用した儀式魔術の一環として、魔力の融通や使用術式の大幅強化。加えていざとなった際の命のストックとしても活用が可能だと言っていた。

 

 まあ、魔術師ならよくある非人道的な実験というやつだ。だが、その中でもこれは最低だった。なんの罪もない未来ある子供たちをこのような礼装に作り替え、未だ生き地獄を味わわせている両親を、こんなことをしておいてのうのうと己の躍進を夢見る悍ましい彼らを目にして、ぷつんと何かが切れた。

 

「死ね。死ね。死ねっ。死ねっっ! 死ねえぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!」

 

 俺は魔術回路を発起させ、虚数の鞭と衝撃で両親を殺していた。両親は弱かった。それこそ、こんな力まかせの子供の攻撃に当たるくらいに。

 両親は結局のところ、現実が見えていないひ弱な魔術師だったのだ。計125人の子供を犠牲にした礼装は、蒼崎橙子曰く欠陥品の一言。「私なら誰一人犠牲にせずとも完全上位互換を作れる」とも。

 

 両親を殺した俺はどうしていいか分からず、単身時計塔へ向かった。そして良識派を捕まえて無事入学。この頃には既にウェイバー・ベルベットことロード・エルメロイII世が教鞭を執る現代魔術科もあったが、俺はそちらにはいかなかった。

 別に魔術師として大成したいわけではなかったし、優れた師としては良いのだろうが、厄介事に巻き込まれる可能性が高いため無しとした。

 

 それに、師なら他にいた。

 

 全身緑の謎コーデに紳士的な服装ながらに粗雑で魔術師らしくない態度の男。ライノール・グシオンだ。

 彼は後進の育成に興味はないみたいだが、俺がより良い未来のために(嘘ではない)と同じ虚数属性使いだと言い張って粘ると、折れたのか活動に付き合わされながら色々なことを教えてくれたのだ。

 虚数ポケットの使い方や、各地にデータとして貯蔵しておく手法に驚かされたし、新しい発見があるとしれば即座に喧嘩を売りに行く彼と共に居たからか、俺が舐められることも少なかった。

 

 3重人格者である彼と会えるのはそう容易いことではなかったが、いざ実地的な活動をするとなれば強引にでもついていったので密度としてはそこまで変わらないだろう。

 そのおかげか、元々肉体の素養は高かった俺は結構なレベルまで至った。勿論虚数魔術でだ。

 

 師とはいえ、無属性のことは伝えていない。流石の彼も虚数に加えて無の2属性などとは夢にも思わないようで、そこは上手くいった。

 虚数魔術の使い手として在ることで、逆にその他の属性の可能性を意識から逸らす。単純だが、こんなイレギュラーを最初から計算に入れてるやつはそうはいない。

 

 まあ、これも結局のところ保身が目的であったし、最低限狙われない程度の地位は保証できたらあまりそういったことを表立って行うことはなかったが。

 

 まあ、それはそれとしていつ力が足りないから即死亡となってもおかしくない世界だ。自己鍛錬は続けている。備えあれば嬉しいなってな。

 そうそう、自己鍛錬といえば無属性魔術のことだ。

 

 これに関しては誰にも言ってない上に資料もほぼないために独学でなんとかするしかなかった。

 虚数使いとして同じく特殊な存在として調べる…という名目でも資料を漁ったが、目星はなかった。

 

 そも、基本五元素と違って虚数と無は定義からして特殊。

 「魔術世界の原理的にはあり得るが現実に無いモノ」を指す架空元素が虚数。

 「魔術世界の原理的にあり得ないが現実に在るモノ」を指す架空元素が無。

 

 互いに対極の存在であり、それでいて全くの無関係でもある。練度は当然虚数の方が圧倒的に上だが、この二つの相性は意外にもよく、世界にとって矛盾の生じるような理論でも確かな強度で成り立つような術式まで……。

 

 いや、ちょっと話が脱線しすぎた。

 

 こほん。とにかく、庇護の必要がない程度には自立してからは一学生として暮らしていくつもりだった。根源には興味はないが、色々な魔術を学ぶのは苦ではなかった。何より、取れる手段も増えるし学ぶからこそ対策も出来るというものだ。

 浅く広く魔術を齧ったせいで個々の性能は高くないし、他の生徒からもシャチだのなんだの言われながら白い目で見られることもあったが、そんな時に転換期が訪れた。

 

 日本なら桜舞う季節…。まあ、ロンドンに桜が見れるようなスポットは思いつかないけど。我が師ライノールからカルデアへの勧誘を受けたのだ。

 何でも他の人格がそこで働いているらしくて、妙に未来のためと念を押して推薦してくれた。

 話を聞いてみてもそう悪いものではなかったし、何より科学を厭わず堅苦しくないというのも気に入った。時計塔で学べる魔術の基本原理は学び終えたし、そろそろ腰を落ち着けるべきかとも思っていたところだ。この際どうでもよかったと言ってしまえばあれだが、まあ、マシな感じの勧誘ではあった。

 

 あの時、「もう二度と俺に会うことはねえだろうがな」と言っていた通り、彼は己の死期を悟っていたのだろう。それがどのような方法かは分からない。人格が自然消滅したのか、はたまた魔術的なアプローチがあったのか。ともかく、その日以降、彼の肉体にライノール・グシオンが現れることはなかった。

 

 まあ、俺がカルデアで働いてるのはそんなワケだ。待遇は一般スタッフだが、これは俺が望んだことだ。最初はマスター候補としてAチームとやらに入れるつもりだったらしいが、レイシフト適正がないことを知り断念。他にやりたい仕事がないかと問われた結果、特に考えていなかった俺は一般スタッフとして働くことになった。

 いや、今になってみればもっと色々と考えておけば良かった。職場の感じはともかく、この仕事自体はそんなに好きな方じゃない。兼任してる方は退屈なだけだし。失敗したかな…?

 

 前にも言った通り、ここは居心地が良かった。時計塔とかじゃ神秘が云々と煩いし、いつ馬鹿なやつが狙ってくるか分からない。それと比べれば比較的普通の仕事をして、職場の同僚として前世で知るような関係を構築出来たことは素直に喜ばしい。

 

 今までが陰謀権謀渦巻く時計塔に在籍していただけに尚更だ。ここでなら初めて気を張らずに素を出せた。後ろ盾のない虚数魔術使いという立場で張っていた気も態度も、ここでは必要なかったってことだ。こういう人生を辿っておいて何だが、元の俺は男子高校生とかに近いノリなんだぜ?

 それに……気になる相手も出来た。今までに色々とアプローチを仕掛けているが、良い返事はもらえない。でもそう簡単には諦めない。クソだらけだった今世で初めて出来た好きな相手だ。よっぽど拒絶でもされない限りとことんやってやるよ。

 

 まあ、最初はそれでも良かったんだが、ここが型月作品の世界であることを忘れていた。

 レフ・ライノールによる爆破事件。人類史の焼却。7つの特異点に残ったマスターは一般人である一人だけ。

 

 それで何となく察した。ここ絶対何かしらの作品だ。と。それもかなり規模のでかい感じだ。

 幸いにして俺の想い人や気の合うスタッフなんかは無事だったが、それでも状況は最悪に近い。

 48人いたマスター候補は魔術の魔の字も知らない彼に一任された。

 それからは、波乱の日々だった。英霊召喚を繰り返して戦力を整え、特異点で戦う彼をモニターし続ける。彼、藤丸はよくやった。マシュと共に7つの特異点を駆け巡り、時と運と縁の力に助けられながら、とうとう魔神王すらも撃破した。

 

 これで物語も終わり。一息つくことが出来た訳だ。その後に亜種特異点も起こったが、エピローグ後の物語のような感じだろう。

 そして昨日。これが最後ということでみんなで食事会も出来た。藤丸やマシュ。ダ・ヴィンチ所長代理とも話せたし、主に頑張った彼らやその後の職場が決まっているスタッフへの送別会も兼ねたそれだった。

 特に、藤丸は元々が一般人だというのにこのようなことをさせてしまった負い目もある。願わくば元の生活を取り戻してほしいものだが……。まあ、それはみんな考えていることだろうな。ああ、こうして思い返すと色々と濃ゆかった記憶が思い起こされる。ああ、しかし本当に。

 

「あーあ、この仕事もおしまいか…」

「あーあ、って何よ。そんなにこの仕事好きだったわけ?」

 

 しみじみと考えていると同僚が話しかけてきた。どうやら声に出ていたらしい。

 

「そんなわけないだろ。他の仕事との兼任ではあるけど、南極の秘密基地のゲート係なんて、やる前から退屈なのはわかってた。客として想定してんのは誰なんだよ、ペンギンか?」

 

 と、軽口をたたく。いや、実際誰のためのゲート何だよとは常々思ってたのだ。基本的にはカルデア側からの出入りは少ないし、そもそも来客は来ない。

 強いて言えば発足当初なんかではあれば勧誘やマスター候補生なんかが来ることはあったが、それでも機会はほぼない。

 南極という極地の山の上にまでわざわざ訪れるような魔術師はまずいない。ましてここがロードのお膝元であり、科学を扱っていて、かつド派手な成果を叩き出しているほど高名でもない施設だ。

 ぶっちゃけると、今回査問会が来るのだって人理焼却という異例の事件が起こったせいであり、多分これから先もあまりここが使われることはないだろう。

 最初はこれまでの探求から退屈な門番というギャップに辟易としていた。それでも、ここで過ごした日々を象徴する一つであるのは確かだ。

 

「でもまあ、そんな退屈過ぎる仕事も……これで最後かと思うと、感慨深いもんだよ」

「そんなものかな」

「で、そんな大事な最後のときに、なんでゲート係の補助がお前なんだ?」

 

 この同僚。セレシェイラ・エルロンは、元は記憶することに長けた魔術の家系出身で、その能力を活かしてカルデアの記録書記をしている。

 そして、俺の想い人でもある。正直結構勇気を出して見たアプローチもすんなり受け流されたが、絶賛片思い中だ。

 一般の出のダストンに相談したこともあったな。まあ、相手は未婚の元学者だけあってぶっちゃけ役に立たなかったが。何だよ。ファーストネームで話しかければ距離感が近くなりやすいって。むしろ警戒されたわ。まあ、それでもつい収まりがよく口の中で転がしてしまうんだけどね…。

 

 ダウナーな感じの顔立ちに、派手ながら美しいコントラストを描く星色の髪。左目元に入った髪と同色の星型のタトゥーは正直…その、うん。エッ……タイプです。

 それに、ダウナーで冷静に見えて結構天然なところがあるのもまた魅力の一つだ。前それを言ったら怒られたけど。

 最初は一目惚れに近かったと思う。それで照れ隠しを含めたちょっかいをかけたり、話したりしてると、一挙手一投足にすら視線が向いて、どんどん想いが募って来た。前世でも今世でもこんな気持ちになったことはなかったから、こんな感情になるとは思ってなかったけど、この気持ちは悪くない。むしろ好きだ。

 

「まさかセレシェイラ、最後だから俺とできるだけ一緒にいたいとかそういうアレで……」

「んなわけない。普通に上からの指示。珍しくゲートの出入館の記録が意味を持つ機会だから、暇な記録書記係でも充てとくかって話」

 

 ふざけ半分、僅かな期待を込めて言葉を返すも、にべもなく切り捨てられる。

 

「あとファーストネームで呼ぶなって、何度も言ってるでしょ」

「何度も呼びたくなってるんだからしょうがない。結局、何回言ったのかな?」

 

 やれやれと言った風に息をつく彼女と、いつものやり取りをする。彼女は口では嫌がっているものの、それなら俺に話しかけなければいいわけで、何だかんだ彼女も本気で怒っているわけではない。………と信じたい。

 何より、俺はこのやり取りも心地が良い。なんていうか、こう。

 あ、いや。セレシェイラもカルデアを離れるんだ。きっと、いつも通りだと思っているこれも最後になるってことだ。

 

「……あー、なあ?その代わりに、今まで言ってないこと、駄目元で言うんだけどさ。一緒の仕事場にいて、それなりに長い付き合いで、んでここが解散になって今度初めて外に出るわけで……」

 

 あー、くそ。緊張しすぎてうまく纏められない。怒られる前の小学生かよ。それでも、これが最後のチャンス。完璧とはとても言えないがその言葉を最後まで続けた。

 

「その、外に出たら、一回くらい、一緒に食事とかどう……かなって」

 

 言った。言ってしまった。断られるのが怖い。でも言わなきゃ後悔するに決まってる。顔が熱い。目を逸らしてしまったが、セレシェイラはどんな顔をしているのだろう。

 呆れ?軽蔑?それとも嫌悪?

 

「………。………」

 

 その答えはどれでもなかった。やや驚いたように視線を上げ、言葉を失っている。この反応はどうなんだ…!? アリなのか?ナシなのか?

 ついその視線に耐えきれなくなって、弁明のように声を上げる。

 

「ま、真面目に言ってるぞ、俺は」

 

 そんな言葉も素人みたいで、恥ずかしくなって……。

 

「…312回」

「え?」

 

 セレシェイラが声を上げた。何の数字かと訝しんでいると、視線を逸らして呟く。

 

「あんたがあたしの名前を勝手に呼んだ数。覚えてるの、あたし」

「お、おお。そうか。さすが記録書記係。そういう記憶系の能力があるんだっけか」

 

 そんなに言っていたのか?という内心の驚きと、この感じでは駄目っぽいなと察して、少しでも続く言葉を遅らせようと、思ってもいないことを声に出す。

 でもそんな抵抗は数秒にも満たず、セレシェイラは目を閉じて俯き口を開く。

 

「いや、そういう話じゃなくて」

 

「……一回でいいの? ってことなんだけど」

 

 うん?

 

「それだけしつこくあたしの名前呼んで、仲良くなろうとしておきながら。真面目な食事の誘いは一回だけ?」

 

 ………。………!これは、もしかして、もしかしてがあるのか!?

 

「い、いや、馬鹿言うんじゃねーよ。何回も誘うに決まってるだろ?何回も誘うし、もし言ってくれたら、そのあとだって何回も……!」

「……いいのか? いいってことだよな? よーし、よしよし、よーし。やったぞ俺。ナイス勇気だ……!」

 

 本当に自分を褒めてやりたい。まだ成就したわけではないけど、この言い方ではその先も期待しているというニュアンスだよな?

 ヤバい。半端じゃなく嬉しい。循環砲の術式編んだ時より嬉しいかもしれん。いや間違いなくそうだ。自分でも気分が舞い上がってるのが分かる。魔術師の家系に生まれて、あんな立場だった自分には真っ当な恋愛なんて出来ないだろうと諦めかけてたが、ここに来た甲斐があった。諦めなくて、最後に誘ってよかった……!

 

「ガッツポーズはいいから、ちゃんと仕事しなよ。ほら、ゲート前に反応あるよ」

 

 やや頬を赤らめ、モニタを指す。今の俺でも分かる。照れ隠しだ。あー、こういうところも好きなんだよな…。

 

「来たみたい。新しい所長、ゴルドルフ・ムジークと……誰、このピンク髪の……秘書?」

「そりゃまあ、秘書なんだろ」

 

 一緒に来ていた言峰綺礼の存在には驚いたが、この世界では冬木の聖杯は汚染されていない。マリスビリー所長が願いを叶えた時点で、問題はないだろうと思っていた。

 

 浮かれていた。のだろう。それに、ゴルドルフ・ムジーク。ムジーク家の嫡男である彼が新しい所長ならば、態度はともかく、そう悪いことにはならないだろうと、安易に考えていたのが駄目だったのだろう。

 

 そして5日後―――2017年、12月31日。カルデア南極基地は壊滅。スタッフの殆どを失う被害を被った。




主人公

名前 アルカズル・パラドキシア 22歳

虚と無という希少属性の二属性持ち。魔術教会に属していたが、在り方は魔術使いに近い。というより一般人寄り。
実は転生前の世界にFGOだけが存在していない。

魔術回路の質A++(産まれた当初の元の質はいいとこB)
魔術回路の量C(+D)

特性 魔術回路が肉体からズレた位相に存在している。

魔術師的な実力 85+α(特殊礼装分)

【参考:ケイネスが100+α、アルバが100、2004年当時の凜が20〜30、士郎が10〜20】

魔術師としての才能 70 

【単純に数値化するとシエルが100、凜が70〜100、士郎が10(特定条件下で40)】

魔力生成量 300

【平均的な魔術師の魔力生成量を20とした場合、シエルの生成量は5000に届く。 衛宮士郎が25、遠坂凛を500とした時、ロード・エルメロイ二世は70+10(10は魔術品や術式による隠し貯金のようなもの)。ウェイバー時で20。 『魔力生成量が100に届けば一流の魔術師と呼べる』とされている】

魔力量 200+α

【通常の魔術師の魔力量は20。遠坂凛は500+α。マグダネル・トランベリオ・エルロッドは2000(彼は時計塔で最大の魔力消費量を記録している)。
魔力量、魔力消費量、魔力の生成量、貯蔵量が同じものを表しているのかは定かでない】

カルデアにおいては、これらの能力を誇示せず、また使う機会もないため一部意外には知られていない。また、魔力的に余裕のある自分がやるべきだと仕事を複数請け負って地獄を見た。
ちなみに、セレシェイラの罪悪感の話ですが……この主人公、ボーダーに乗れないんですよね…。悲しいなぁ…。
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