ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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第九章、最終話です。長かった84日目もこれで終わりです。

今回もよろしくお願いします。


99. 84日目⑪  見えてきた最後の目標

「話を聞いても半信半疑だったが……間違いなくアルだな。最初の手合わせにも納得がいった。この状態の時の動きが混じっていたんだな」

 

『ご納得いただけて何よりです』

 

「分かったのなら、ここでの戦闘はやめてくださいね?」

 

「いきなり「構えろ」なんて口にする脳筋を許してやってくれ。それにしても……魔法よりも魔法をしている錬金術だな」

 

「懐かしい声だよな」

 

「そうだね。今の僕より高い感じの」

 

「あたしはこの声が落ち着くんだよなあ」

 

「確かに久しぶりに聞く声だ。いつからそうだと思わなくなったんだろうな」

 

「何であれ、アルである事に間違いない。リラも反省しているだろうから、クラウディアも笑顔で冷気を振りまくのを止めてあげて?」

 

「まさかこれだけのメンツがさっきの事情に関わっていたとはねえ」

 

全員集合――20分で!

 

頑張って走ったよ! トレッペの高台は地獄だったけど! ボオスが突撃寸前で助かった。

ボオスを引き留めてたランバーはグッジョブ! 事情は全然分かってないだろうけど!

水を返したらブルネン家も引っ越ししてもらおう。

 

ついでにお母さんたちにも謝ってきたよ! 一言だけどさ!

 

「ところで皆様、その節は大変なご心配をおかけ致しまして……」

 

「本当だぞ、まったく……」

 

「拠点でも通夜状態だったからな。いつものキロ嬢が戻って来たなら何よりだ」

 

「俺は精神修行のし直しだな……」

 

「一体何をやらかしたのさ……ホントにもう大丈夫なんですね?」

 

『現場は見ていないけど、よっぽどの状況だったみたいだね。まあ、あの取り乱し様から大体の想像は付くけど』

 

「留まってくれたならそれでいいが……完全に別人だな。エルリックさんがいるだけでここまで変貌するのか。しかし、これでロミィも事の関係者か。面倒事に首を突っ込んだな」

 

「周りの行商人に他の町の話を聞きつつも、ロミィさんに聞きに来ない時点で勘ぐってはいたけどね――私にバレたくない何かをしているって。いつまでもなけなしのプライドを張っていたボオスみたいなガキんちょと一緒にしないでもらえる? アル君の命が懸かってるんなら考える前に飛び込むっての。まあ、水の話や島の現状には驚いたけどさ」

 

「ガキん……俺達の事を何時から知っていた?」

 

「この島に関わり始めて割とすぐよ? アガーテちゃんから何となくは聞いていたし、お子ちゃまの突っかかりにしちゃ理不尽さがなかったしね。当時のあんたの様子見てりゃ大体分かるっての。まっさかここまで引きずるとは思わなかったけどねえ。ロミィさんに相談したくなかったの?」

 

「ガキ扱いは止めろ! 初めて会ってから何年経ったと思っている!?」

 

「あぁ~「ロミィねえちゃん」って後ろをついて来てた頃が懐かしい……この程度で噛みついてくる時点で子供って自分で認めてるわよ?」

 

「行き遅れ間近め」

 

あ゛あ゛?

 

ロミィさんから凄まじい圧が……これ女王よりヤバくない?

あたしたちの関係の正体にも気付いていたらしい。この辺はホントにあたしたちがマヌケだったんでしょうね。

 

それにしても、ボオスがロミィ「ねえちゃん」呼び? 6年位前だよね、ロミィさんが来たのは。

ボオスは12歳くらい。とうの昔に水の事も知っててあたしらともケンカしてて……ねえちゃん?

掟の事もあってつんけんしてたはずなのに、一体何があった。

 

そしてキロさんがムチャクチャ弱体化してる。こればかりは擁護のしようもない。

 

「アル君も、形はどうあれ戻って来られて本当によかった。無事……と言っていいか分からんが、どうしたものかと思っていたからな。見捨ててしまったのはオンボロの心にもかなり効いた」

 

「もう二度と……自分を犠牲にした手段を考えないで」

 

『悪いと思ったけどあれしか思いつかなかったんだよ。今も最善手だったと思っているし』

 

せ・い・ざ(正座)二度としないで」

 

『ハイ』

 

「全くだ。全員虚無に消えるよりいいのは分かるが、相談の一つはして欲しかった。まあ時間もなかったし……私がそれだけ頼りなかったという事なのだろうが」

 

『申し訳ないです。ハイ』

 

今度は鎧のアルさんがオーレン族に説教されてる。あの鎧、正座できるんだ。

 

 

 

「とにかく……ライザから聞いた話の限りでは、エルリックさんの身体が精霊の世界に囚われているという事でいいんですね?」

 

『そうだね。それで皆への相談は』

 

「災厄の抹殺方法」

 

「あるいは他の封印手段のアイデア募集、ですね」

 

キロさんの殺意はマシマシだ。過激な手段はカンベンしてもらいたい。

クラウディアはやっぱり完全スルーらしい。

 

「キロ。確か大精霊様に会う手段があると言っていたな? どうするつもりだったんだ?」

 

「ん。ピオニール聖塔に行く事になるかな」

 

「また……あそこにっすか?」

 

なんかあったっけ?

 

「大精霊様から力を借りているって話はしたね? 聖塔、火山山頂、洞窟の神殿、峡谷の遺跡。この4か所には大精霊様を祀る祭壇、あるいはそれに適した場所があって――この内聖塔以外の3か所の大精霊様にはもう力を貸してもらったんだけど、聖塔の雷の大精霊様からはまだ借りられてない。でも必要なら力を貸すと仰ってくれたから訪ねれば多分謁見が可能だと思う。そこで精霊の世界の様子とかを聞けるかもしれない」

 

「聖塔にも降臨場所があったのか。錬金術の研究所が祭壇の一種とは中々皮肉が利いているな」

 

「あの北の塔って聖塔っていうんだね。で、皆さんそこに到達されていると……掟はどったの?」

 

「最も多くの大精霊様に謁見した存在になっていそうだな、キロは。早速明朝に向かうとしよう」

 

『力を借りていなかった事がこんな手に繋がるなんてね』

 

確かに以前説明してもらったっけ、火山の祭壇とか。

あたしたち島組は誰も会ってないんだけどどんな存在なのかな。

 

あとロミィさん、もうあたしら掟をぶち壊しまくってるから。破ってない箇所あったっけ?

 

あとそういえば。

 

「もう一つ、キロさんはひょっとしたらって言ってたのもありませんでしたか?」

 

「うっ……ううぅ。そうだね、口にしちゃっていたね……」

 

そうそう、そこは詰め寄りなさいタオ。かもしれない的なのがあるって言ってたよね。

なんだかキロさんバツが悪そうな感じだ。自己犠牲案っぽいから当然なんだけど。

 

「さっきライザ達には説明したんだけど……私の身体には闇の精霊? みたいなのが宿っていてね――それも飛び切り強力な。だからそれを全力解放しちゃえば世界の異常に気付いて闇の大精霊様が出てくる……かなぁ? って思っていたんだけど……」

 

『何を考えているの!! 自分が犠牲になる気満々じゃないか!!』

 

「不確かな上に、そっちの影響で世界が滅びそうだな……笑えん話だ」

 

「うん、はい。ごめんなさい……」

 

自己犠牲どころか世界犠牲クラスだった……。

 

「あの時のキロならやりかねん雰囲気ではあったな。しかしそんなモノを宿していたのか。道理であれほどの……待て。それで私がキロを手にかけるなど、どう考えても不可能じゃないのか? 私はどうあっても影の女王の後を追う事になったのでは……」

 

「ライザ、どんなのが宿ってるらしいんだ?」

 

「はっきり分かんないらしいけど蛇だってさ。影の女王を一口で食べたらしいわよ」

 

「蛇かあ、島じゃ見ないよね」

 

「ライザが見たっていうワンちゃんより大きいのかな?」

 

「あの怪物を……一口?」

 

「蛇って色々いるからねえ。ロミィさん的にはクラウディアちゃんの言う犬が気になるわ。ガルムでもいるわけ?」

 

世界の危機って……わりとそこら中に転がってるわね。

大侵攻どころじゃない事が身内の手で起こされそうになってたとは。

 

あのワンちゃん――フェンリルもあのサイズで世界を食べたらしいし、ありえるかも?

ほらボオス、帰ってきなさい。ロミィさんはヤバそうな新情報は止めて?

 

『まったく……まあ雷の大精霊に会いに行くのは確定だね。それで他にもアイデアがあればと思うんですけど』

 

「これまでの話を聞いた限り、別手段の封印というのは困難を極めるのだろう。そも大精霊達が抑え込み続けていたモノが抑えられなくなった結果、アル君を直接封印に使うまでに至ったという事だからな。拉致される形だったのに最初から部品にはされていなかったんだ、大精霊もそのくらいの情はあるのだろう。今はそれを止めてまでも強力な手段が必要になったという事だ」

 

「言い方が気になるが……確かに大精霊様の価値観が私達と別物なのは事実。アルが発見された時点で封印に使われていてもおかしくはなかった。だが、今はそれしか手段がないのだろうな」

 

別世界の住人だし見てる規模も違うし……そんな考えになっちゃうのかな。

 

「やっぱり別存在なんですね……アルさんは封印や災厄を見てないんですか?」

 

『そうだね。最後に見たのは遺跡っぽいのと、大きな聖石みたいなものと……それを取り巻いてる設備みたいな物、かな? 見えたと思った直後にブラックアウトしちゃったから。ただ、なんとなくだけどボクの世界のモノっぽい事は分かったよ』

 

「聖石はボトルみたいなもので、その中に災厄がいるんだろうね。設備に関しては不明かな」

 

どういうものかわかんないなあ。

そもそもアルさんたちの世界の錬金術製らしいもんね。実物を見るか、説明を訊くかしたい。

 

アルさんを助けるには――一瞬とはいえ封印を緩めるか下手すれば解除する必要があるわよね。

封印の上書きはよくなさそうって話。今の封印を維持したままアルさんを組み込まない別の封印を作るしかないんでしょうけど……う~ん。

 

アンペルさんの予想はNo(代替不可).。まあそうか。

 

「リラさんたちは、その災厄っつうのがなんなのかは知らないんすか?」

 

「私は言葉すら知らなかったな」

 

「私も大精霊様から聞いたのが初めてだね」

 

「世間的にはわりと色んなものが災厄に例えられているかな――天災とか疫病とかね。他に何かしら情報はないの?」

 

『ロミィさんには少し工房でお話ししましたけど、強力な闇の力を持った古の存在という事ですね。世界を魔界に呑む力があるそうです』

 

オーレン族は知らない、か。ロミィさん的なのはまだなんとなく分かるかな?

マカイってのが何なのか分かんないけど、ロクでもない事は間違いないよね。

 

「魔界って聞くと……なんだか悪魔とかみたいだよね。掟の「渇きの悪魔」みたいな」

 

「あとは……魔神とか邪神とかかな? 小説には結構出てくるよね」

 

「……災厄。負の存在……悪魔……渇きの悪魔。示していたのは掟――伝承? キロ」

 

「なあにボオス?」

 

「災厄とは切り離して考えてくれ。キロ達の……オーレン族で掟や伝承のように言い伝えられているものはないか?」

 

「あたしたちの、島の掟みたいなって事?」

 

「ああ」

 

結局、掟の中身はストレートな表現じゃなかったけど本当の事だった。

キロさんたちの世界にもあるのかな?

 

「……成程、確かに1つあるね。そういえば一回考えた事があった」

 

『あるのかい?』

 

「私は初耳だが……私達に掟などあったか?」

 

「掟じゃなくて伝承になるかな? でも記録なんてなくて唯の口伝だよ。私達霊祈氏族のごく一部や奏波氏族くらいしか知らないんじゃないかな」

 

あった。ボオスのお手柄だ。そしてまた新しい氏族が出てきた――結構いるんだね。

「そうは氏族」ってどういう人たちなのかな。

 

「全くもって正体不明だけど――『常闇(とこやみ)』って存在がいた事だけは伝わっているよ」

 

「うわあ超それっぽい」

 

「真っ黒だな」

 

「闇の中の闇みたいな」

 

「本来は状態を指す言葉ですよね? 永久の暗闇というか」

 

「俺達も既に災厄を生物のように扱っているからな。同じようなものだろう」

 

「昔で言う所の日蝕みたいなものなのかもね。あれも昼を喰らう存在ってされていたし」

 

『真理も喋るしなあ。アレみたいなものかな』

 

「オーレン族にとっての伝説の存在か。どれだけ古の話なのだろうな」

 

「さあな? だが極めて危険な存在なのだろう。白牙氏族に伝わっていないのが気になるが」

 

「よくよく考えれば普通にそれっぽいよね……相談って大事なんだね」

 

全員からツッコまれてなんだかキロさんがへこんでる――しっかり反省してください。

ついでにアルさんが言ってる事は意味不明……今に始まっちゃない。

 

それにしてもドンピシャだわ。

災厄は闇属性の存在。『常闇』なんてそのまんま、闇の総元締めみたいな感じじゃん。

 

つまりは。

 

「すっごい古い時代からいる闇の塊みたいなもんって事ですよね? 大昔のオーレン族の人たちは関わってたかもしれないなら……これも精霊の一種だったり?」

 

『そうなんだろうね。それならボクが光の加護を与えられた事にも納得がいく』

 

「強力な闇そのものに対する耐性だったという事か。やはり大精霊様は情をお持ちという事だ」

 

「封印とやらを取り扱う為の処置でもあるんだろうな。精霊の一種なのかは分からないが……まあいい、何も分からないよりずっと考えやすくなった」

 

「……キロ、しゃきっとしてくれ」

 

「こんな事もあるって、拗ねない拗ねない。使命を持った界渡りってのはやっぱり大変なんだなあ」

 

「色々一気に進む様を見て、なんかこうクるものがあってね……ありがとうボオス、ロミィ」

 

ちょっと溶けてる。2時間前まで負のオーラ全開だった人とは思えない。

数百年1人で戦ってたせいで人に頼る事を忘れてるんじゃないかな?

 

「それじゃあ……封印がどうこうより、その『常闇』ってのを倒す事を考えた方が早くないっすか?」

 

「いやレント、キロさんたちにとっての伝説の存在だよ? そんなのに僕たちが挑むのかい? 普通に怖いんだけど」

 

「でも、それしかアルさんを助ける方法がないのなら」

 

そう。選択肢なんてない!

 

「ぶっ潰すだけよね!」

 

 

 

 

 

 

色々と私は抜けているらしい。話しておけばもっとスムーズに進んでいた気がする。

ヘマはするわ、闇堕ちするわ、大泣きするわ、無能を露呈するわで生涯忘れられない日になるだろう――黒歴史として。

 

『いやホント、戻ってこれてよかったよ。別口で世界がおかしくなりそうなのを止められて』

 

「その事にはもう触れないでくれない? 反省しているし、今も内心頭抱えているんだから。とうとうロミィまで巻き込んじゃって……」

 

『別に揶揄っているつもりはないんだよ? だけど責任の一端はボクにもあったんだし』

 

表情がわからなくなったけど、なんとなくわかる……ニヤニヤしているな?

元の身体を取り戻したら覚えておいてよね。

 

『しかしまあ……ゾッとするね。気紛れで作ったこの鎧に助けられるなんて』

 

「アルの気紛れ、私の気紛れ、偶然の理解、事故に近い混線……まあそうだね」

 

確定していたわけじゃないけど……どれか一つでも欠けていたらアルは封印されたままで意思を伝えられず、情報も分からず。

 

私は暴走して、少なからず世界にダメージが入っただろう。

 

落ち着いてるようで中身は大噴火していたらしい。

エドさんに感謝しないと。このコートを見て最後のピースが嵌ったんだから。

 

という事は、私の感情ってそう言う事なのか。人生の大半があっちだったから自覚が薄いけど。

 

「ただ……確か拒絶反応も起こっていたんだよね? 鎧はあくまで鎧、アルじゃないんだから」

 

『うん。だからいつまで話せるかは分からないよ。あっちで鎧だった時とは状況が全く違うから、長いのか短いのかもサッパリだ。だけどこちらは魔物として動く鎧がいるくらいだから、神秘が強いって言えるんだろうね。多分だけど直ぐに剝離するって事はないんじゃないかな』

 

これについてもライザ達には話していない。今からでも聖塔に突撃しそうな気がして。

あぁ、また怒られそうな要素が増えた……。

 

当時のアルを繋ぎとめていたのは……天才って事もあるだろうけどなにより血縁であるエドさんの血だ。一方の私は世界すら違う完全な赤の他人、おまけに真似事の錬成陣でしかない。

加えて、アルの身体の居場所は真理じゃなくて災厄の封印の中。もう予想がつかない。

 

『まあ伝えたい事は伝えられたんだし、仮に停止しても魂全てが消滅するわけじゃない。別世界とはいえ、肉体も精神も魂も現実に残っているんだしね』

 

「だからトロトロやっていいって事じゃないよ。貴方が居なくなった時の影響の大きさも考えて。パーティーが崩壊しそうだったよ……9割私のせいだけど。また楽観視したら怒るからね?」

 

『わかったよ、ボクもいい気分はしないしね。さて、もう夜も更けるけど眠らないのかい?』

 

「アルは寝ないんでしょ?」

 

『分かってるでしょ? ――寝られないんだよ。目は閉じられないし耳も塞げないんだもん。しかも今は……眠ってしまったら次に起きられるか分からないんだから』

 

「なら私も起きているよ。消費はしていても半年くらいは仮眠で大丈夫だし、ご飯も食べられているんだし。それに傍でアルが起きているのに、私だけグースカ寝顔を晒すのはどうかと思う」

 

『気にしなくていいのに。何回か寝ていたじゃないか』

 

「私の勝手だよ。一人でここにいるのもヒマでしょ? 話し相手だよ」

 

疲れているのは事実だからベッドは借りるけどね。家主が目の前にいるけど。

流石にこの状態じゃあ加護の反転であろうが寝てはくれないだろう――そもそも睡眠の概念がないんだから。

 

アルは再び三感を失った。難儀な人生だ。

 

『そういえば……あの時よくボクの言う事を聞いてくれたね? 拒絶されるんだろうなあって思っていたんだ』

 

「……アルの指示、命令には全てに優先して従うよ。全裸で島一周ランニングって指示してみてごらん? ちゃんとやってくるから。あれに近い事を、メイは自分の意思で決行したのか」

 

記憶で一例を知ってはいたけど、まさか自分が実行する羽目になるとは思わなかった。

本当に女泣かせだ――今回は本当に私が泣いてしまった。抑圧されたものが吹き出すと大変だね。

 

『なんでボクを鬼畜にしたいんだい? ……真面目に考えたらエルマーが大変な事になりそうだ』

 

「……ああぁ、あの子か。なんか色々捻じ曲げちゃったみたいで申し訳ないね……」

 

どういうわけか、彼は私という年齢差だけなら化石と言える存在に興味を持ってしまったらしい。

このままだとオーレン族としか付き合えなくなってしまう。なんとかしないとシンシアにも申し訳が立たない。いっそ裸走りを見せて幻滅してもらうのも……私が色々失うけど。

ついでにシンシアに滅茶苦茶叱られそう。死ぬまで心に刻まれていそうな教訓が得られそうだ。

 

「こっちにいる間になんとか考えよう……災厄の討伐の方が難度が低いかもしれないけど」

 

『随分な課題が出来ちゃったね。まあそれは置いといて、強迫観念じみた行動は勘弁してよ? あの時は助かったけど、あんまり大した意味を持ってない場合もあるんだから』

 

「そういう「約束」として「私」に言い聞かせてあるから無理。少なくとも事が終わるまではね」

 

『具体的な終了条件があるの?』

 

「あの門の封鎖」

 

『……成程。じゃあとっとと終わらせなきゃね』

 

不思議なものだ。

その気になれば私を好き勝手に出来ると理解したはずなのに、早期決着を目指すらしい。

思っていたとしても口にはしないだろうけどさ。

 

欲が無くなっているとはいえ、それ程までに私には魅力がないのか……なんかムカつくね?

さっきエルマーにとっての私は化石だと評したけど、自分が思っても他人から思われるのは別。

 

ただまあ、私の「アルへの関心の根源」は私自身のものではないのだろうけれど。

やっとこの辺りが理解できた気がする。

 

ならまあ、悶々と理由など考えずに心の赴くまま動いてしまうとしよう。

 

「まあ、必要だと判断したらお申し付け下さい……ご主人様って呼ぼうか?」

 

『何を言っているの? まったく。そんな機会を作らないように努力しておくれよ』

 

「元よりそのつもりだよ、ノリが悪いなあ……そういえばその体の事、島の人達にどう説明するつもり?」

 

『たしかにどうしようねえ……ライザ達があっさり受け入れちゃったから深く考えていなかったよ。キロさんの魔法の一種とでもしておけばいいかな』

 

「承知致しました、旦那様」

 

『ホントそういう言葉遣いや知識、何処から覚えてくるの?』

 

「私の中には様々な世界の叡智が溢れているんだよ?」

 

私も中身はまだまだ若いらしい――あの時から成長していないって事なんだろうか?

 

こんな他愛ない会話が出来る事が、この上なく嬉しい。

また頑張ろうと思えるんだから。




という事で第九章は完結です。お疲れ様でした。
何気に99話まで来ました。元々は70万文字くらいで終わる予定でしたが……。

ロミィとボオスの関係は姉弟に近いオリ設定です。立場は圧倒的にロミィが上になります。


さて、本章にて原作のラスボスと裏ボスを撃破しましたが……本作では別の存在がいます。

という事でまた数日時間をいただきまして。
原作には無かったエキストラステージ、第十章に続きます。冒険としては事実上の最終章です。

ここまでお付き合い頂きありがとうございます。
後ひと月少々かと思いますが、宜しければ最後までお付き合いいただければと思います。

それでは、次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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