ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
闇の大精霊との謁見です。そして……?
説明回になりますので長ったらしいです。これでもまだマシな方なんです……。
誤字報告ありがとうございます。未だにどっちが正しい感じなのか理解していない箇所が多々……。
今回もよろしくお願いします。
……っ!?
真っ暗な中でも目は開いてたはず。でも「見えない」の質が変わった。
何もない。
音も聞こえない。気配もしない。匂いもしない。立ってる事も分からない。
――あたしはここにいるのか?
パン!
「っ!? えっ!? あ、音が!?」
「皆、意識はあるかな? 深呼吸をして」
キロさんが気付けに手を叩いてくれたらしい。
助かったよ。全部の感覚がなくなる気分だった。
たしかに光のない真っ暗な空間のはずなのに、みんなの姿が見えてきた。どうなってんのこれ?
「あたしは大丈夫です!」
「俺もだ!」
「僕もです!」
「私も大丈夫です!」
「俺も無事だ……なんだこの妙な暗闇は」
「私も問題ないが……同感だな。暗いというより何も無いのか?」
「私もいい。これが、本当の闇というものか」
『ボクも大丈夫。全員無事みたいだね』
幸い全員大丈夫らしい。ホントに暗いだけなのかな。
『こうして再び相まみえたという事は、アレを上手く役立てたようだな』
「うひっ!?」
いきなり後ろから聞いた事があるようなないような声が聞こえて、みんなもそっちを向く。
昨日会った雷の大精霊さんみたいな黄色基調じゃなくて、黒紫色を基調とした存在。
闇の大精霊さんだ。
「ご無沙汰しております。闇の大精霊様」
『よい。そういった状況でない事は汝らも理解しておるだろう? しかしまあ、巫女に宿るモノがまさか此れほどの存在とはな』
「えっ、ここにいるの!?」
「ライザ! 口を慎め!」
うわぁまずっ。またリラさんに怒られちゃった。
『よいと言った。赤子に礼儀なぞ期待しておらん。汝らには分からぬか? 上を見てみよ』
大精霊さんにオッケーをもらった。助かるなあ、こっちもわりとフレンドリーだ。
でも上って……単に真っ暗なだけだけど?
そう思った瞬間――亀裂の入った二つの赤い丸が灯った。
見ラレタ。
身体が凍った。息ができない。汗が吹き出す。心臓がバクバクして耳がうるさい。
動クナ、音ヲ出スナ、息ヲ止メロ、気配ヲ消セ。
喰ワレルゾ。
『ライザ!』
「はっ!? ……っげほっげほっ!」
「皆もしっかり!」
パン! パン! パン!
アルさんに両肩を叩かれて、現実に意識が戻った感じ。
みんなもキロさんの拍手で戻ったみたいだ。あたしも一緒だけど咳き込んじゃう。
助かった。あのままだったら倒れちゃってたよ。
さっきのは……生存本能ってやつ? あんなの初めてだ。
――蛇に睨まれた蛙。
そう、あれは。
「……眼? なの?」
「ああ――眼。馬鹿デカい蛇の両の眼だぜ。スケールがやべえ……」
「目の前にいるのが信じられないよ……これ、よく見ると周りも」
「真っ暗なんじゃなくて……真っ黒な、鱗?」
「俺達は……キロの精霊に包まれているのか」
ボオスの言葉でようやく状況がつかめた。
――あたしたちは、バカでっかい黒い蛇のとぐろの中にいるらしい。
大きさ長さは想像がつかない。体の太さすら全く分かんないよ。
ただ頭の大きさを見た感じ、クーケン島を平然と一飲みに出来そうな気がする。
突き刺さった剣みたいに、頭からいくつも生えている鋭い逆鱗。
細長い……それだけでも女王より大きそうな舌がチロチロしてる。
これが蛇なら、以前戦った竜が赤ん坊のトカゲにすらならないレベルだ。
「これは……なんという事だ。こんな存在が」
「精霊の中でも別格だな。道理で影の女王を噛み砕くなど造作もないわけだ」
「ありがとうヨルムンガンド。全員無事だよ」
≪のーぷろぶれむ≫
『やっぱり喋れるんだね。それにしても……驚いたよ。これが真の
≪はろー。あなざーふるめたるあるけみすと≫
何言ってんのか分かんないけど、フェンリルと同じでしゃべれるらしい。
精霊なんだし動物と一緒に例えるのがおかしいんでしょうね。そもそも超常の存在だし。
重々しい声だけど威圧されてるわけじゃないっぽい。されたら心臓止まりそう。
『
神様!? ホントにいたんだ。
まさかそんなのに会う日が来るとは。
『さて置き話を戻すが。其方は錬金術師アルフォンス……でよいのだな?』
『はい。アルフォンス・エルリックです』
『随分と妙な事になっておるが……其方にはすまぬ事をしたな。まさか光のやつがいきなり其方を封印に放り込むとは思いもせなんだ』
……!
やっぱりアルさんは封印にされてるんだ!
『何故ワタシは封印として機能を?』
『以前伝えた通り、災厄の封印は其方の錬金術で扱う事が可能な、其方の世界の理論に依るモノのようじゃな。そして其方は真理を見ておる――つまり封印の図解はその身に宿っておる、でよいか? それを把握しておった光のやつが即座に放り込みおった』
「アルさんはどうなってるんですか!?」
『封印と一体化したと言えよう。今の封印の破壊はアルフォンスの破壊と同義であろうな』
そんな……。
それじゃ助けようがないじゃない!
「今、災厄はどういった状態になっているのでしょうか?」
『あの偶像に宿っていたヒトの負、アレを取り込み存在を増した。アルフォンスから多少は聞いておるな? 災厄の封印は内から侵蝕され続けており、我らの力を以て外へ漏れる事は抑えられても外からの干渉は防げなんだ。ヤツが負の存在を感知した際、一瞬漏れ出たヤツの力に負が寄ったのだろう。罅割れた封印を修復する事は我らには不可能。あくまで強固にするだけで再生には至らぬ』
『その修復、再生の為のワタシ、ですか』
『本来はな。じゃが、応急処置としてアルフォンスの肉体を封印の外に被せる様な形で光のやつが組み込みおった。今は「拮抗」はしておっても「平衡」はしておらん。何時かは崩壊しよう』
経緯は大体想像通り。問題はアルさんの状態だ。
アルさんが元の封印に蓋をするような感じで取り込まれちゃってる。
それでも完全に抑えるには至ってない。あくまで蓋をしただけ。
亀裂自体は塞がってないんだから、内から徐々に膨張したら……。
「今も外の悪意を吸い続けて……どんどん強くなってる、って事?」
『理解が早いな、童女。正確にはアレに当てられた負の力が自ら集い、加速度的に力を増しておる。アルフォンスによる封印も長くは持つまい。そうなれば我らは我らの世界を此処から切り離し、それ自体が災厄の封印を成す世界の構築に入る。アレを他の時空に放逐するわけにはいかぬ』
「どういう事なんだ? ライザ」
レントたちにはちょっと分かりにくいか。
例えるなら。
「たき火の中に放り込まれた超強力な
「それじゃあ……時間が経ったら」
「せっかくアルさんが頑張ってくれていても」
「吹っ飛ぶ、と……その場合はどうなるんだ?」
ボオスの言う通り――災厄が封印を破った場合の事を知らない。マカイがどうこうってやつ?
まったくいい未来が描けないけどね。
『なんじゃ、話しておらんかったか? 先刻の通り封印が破られる前に今の我らの世界を虚無に堕とす。アレは我らの管轄内で生まれた存在のようでな、他の時空に侵蝕はさせぬ。その後は我らの総力を持って災厄を抑制し、わらわと光のやつで新たな世界の構築を並行して行う。予め作っておくなど器用な真似は出来ん。既にある他の世界の維持が難しいでな』
「……話していなかったな。その間、我々の世界は大精霊の管理から外れた状態になるらしい」
アンペルさんが苦しそうに声を絞り出してる。
聞いてない。そんな話聞いてない。
「その結果、待っているのはエレメントの秩序が崩壊した世界。いきなりこの世界が消えるわけではないようだが……ライザは理解できるか。様々な法則が狂うだろう――錬金術や魔法どころではない、我々生物や物質の根本が別物になる。私も……私に似たナニカになるのだろうな」
「そんな……そんな! なんで言ってくれなかったの!?」
また。またあたしたちの知らない事が出てきた。
つまりなに? 災厄の封印が壊れちゃったらこの世界も含めて色んな世界がぶっ壊れちゃうから。
今ある精霊の世界とやらを先にここから切り離して、災厄のための別の世界が作られる。
他の世界がどうなのかは分かんないけど、あたしたちの世界は大精霊の存在が不可欠。
あたしたちや世界を形作るエレメントは、大精霊さんがなにかしら関わってるんだから。
でも、世界を作る片手間にこっちの面倒なんて見てられないって? そんな……。
そうなったら――世界が世界じゃなくなる。
島の話どころじゃないじゃない!!
「アンペルだけを責めないでやってくれ、ライザ。私達も同罪だ。お前達に話したとしても不安を煽るだけで……何かが好転するとは考えていなかった」
『今の状態になる事を前提に動いていなかったんだ。ボクだけが関わる事だったから解決出来る事として取り扱ってしまって……だから話さなかった。約束を破ってしまった――ごめん』
「私がそもそもヘマしなければ、こんな事になっていなかったから……ごめんなさい」
アルさんたちから頭を下げられる――違うよ。
違うんだよ。別に謝ってほしいとか、そんなんじゃないんだよ。
こんな事を望んでるわけじゃないんだよ。
ただ、なんでここまで信用してもらえないのか、それが……。
あーーーーーーーーもうっ!!!
「アルさん! キロさん! アンペルさん! リラさん!」
グダグダ引きずらないで――ここで終わらせる!!
「正座!!!」
「おっおいライザ!?」
「大丈夫だよ、レント君。ライザだから」
「僕も内心グチャグチャな気持ちだけどね……シンシアさん流か」
「まさかライザがこんな立場になるとはな」
4人とも素直に正座してくれる――話が早くて助かる。
「他に! 今回のどうこうで!! 隠してる事はない!!??」
『……ない、はず?』
「どこまでが隠している扱いになるのか分からないね……」
「私の……過去、とかか?」
「
この4人に……いやリラさんは幸い普通の答えだった。
あたしらの常識を求めんのがそもそもおかしかったのか。
「もうこんな事ないと思うけどさ――あたしたちだってみんなの力になりたいんだよ! みんなから見れば子どもだよ? だけど、子どもでも子どもなりに役に立ちたいと思うの! 今も全然役に立ってないわけじゃないでしょ!? 暗い話でも悲惨な話でもつらい話でもちゃんと受け止めるから! ……今後は全部、きちんと教えて」
元はといえばあたしたちが「未熟」なのが原因だけど、もう守られるだけの立場じゃいられない。
役に立つ、並び立つ、支えるって決めたんだから――それを知ってほしい。
「……こんなに生きてきたのにお説教されちゃった。私って全然成長していないのかな?」
『違うよ。ライザ達がボクらの目線に合わせてくれている、そういう事さ。わかったよライザ、前の約束を破ってしまったからもう一度誓う。今回の件で今後は絶対に隠し事はしない』
「……そうだね。うん、約束するよ。全部そのまま伝える」
「約束しよう。全てありのままに……師匠失格だな」
「私も誓おう。感謝するライザ、やり直しの機会を与えてくれて」
「……うん! じゃあこの件はこれで終わり! みんなもそれでいい?」
レント、タオ、クラウディア、ボオス。
あたしたちは、アルさんたちに比べたらそりゃあ子どもだ。
でも子どもには子どもの意地がある。甘やかされるだけの存在じゃないよ。
みんな笑ってくれてるね――いよっし! じゃあこれでもう終わりだ!
『面白いものじゃな、ヒトというのは。成長するというのはこの事らしい』
≪いんたれすてぃんぐ≫
そういえば大精霊さんを放置しちゃってた。またおもしろ認定されてんの?
そろそろ話を戻さなきゃ。
「それで……闇の大精霊さん。雷の大精霊さんから聞いたんだけど、あたしたちを精霊の世界に運んでもらう事って出来るの?」
『説明しておったか、あやつも生真面目じゃな。可能じゃ――が、それだけじゃ』
「……どういう事でしょうか?」
運んでもらう事自体はオッケーらしい。けど、
キロさんから質問が入る。
『これも話したか? 我らの世界は此処と時空が異なる。比較的在り方が近いが故に此処と紐付けてはいるがな。肉体に作用する時間の法則が書き換わり、急速に進行し、逆行する。光のやつの力を得ておるアルフォンスや、大蛇の保護下にある巫女はまだしも……汝らヒトではもって数秒か? 今わらわがこの場に居られるのも、強力な大蛇の力によって独立した存在が維持出来ているからこそ。そうでなければ時空を修正して降りる余裕もない。それでいいなら連れて行くが』
「意味ないですって!」
一瞬でおばあちゃんを通り越しちゃうんじゃ無駄骨以前の問題だよ! 説明ありがとう!
また新しい課題だ。時空、まあ時間だよね? これを何とかする方法を考えなきゃいけない。
……時間といえば。
「アンペルさん」
「分かっている、私もそれを考えていた。私の魔法か……正直難しいと言わざるを得ない」
さも当然って感じでアンペルさんも考えてくれてたみたい。
でも難しいのか。
「その時間の進み具合とやら。私が皆に魔法をかけたとして、どこまで正確に維持出来るか想定もつかん。居られる時間が数秒から数十秒、数分になっても解決にならんだろう。もう「遅くする」ではなく「止める」レベルでなければな……いや、待てよ?」
「思い付いたなら口にしろ。約束したばかりだ」
「そう急かすな……ライザ」
「うん?」
あたしも知ってる感じかな?
「時空の天文時計を覚えているか?」
てんもんどけい。とけい……天文時計。
アレだ、書き起こしてもらったレシピにあった謎の一品。
「もらったレシピに名前があったやつだよね? アンペルさんの魔法を込めようとしたっていう」
「そうだ。アレは私の完全オリジナルというわけではなく理論自体は古代のもの、つまり古式秘具級だ。完成すれば時空を操る力を発揮する禁忌もののアイテムになる。アレならば精霊の世界にいる間、我々の時間を止める事が出来るかもしれん、が……問題は素材だな」
アイテムってのは決められた機能、特性を間違いなく発揮するもの。
アンペルさんの魔法をアイテム化出来れば可能性はあるかもしれないね。
たしか天文時計のレシピは……レシ、ピは……。
「……ちょっと、待ってよ。そんな」
「どうしたのライザ? 顔色が……」
アレのレシピ――記憶違いじゃなかったら、たしか。
「素材……
「ああ。私が知っている限りでは一つしか存在しない。新たに調合する時間があるか……」
「それって……まさか中枢のコアの補助にもらった物ですか、先生!?」
そう。そうだよタオ。
キロさんが島を維持するべく、魔力を溜めてくれてたアルクァンシェルリング。
アルさんがムチャクチャ負担をかけて錬成して、時間をかけて魔力を注いだ唯一無二の一品。
アレに使ってる核。すなわち――島の命のストック。
「何か代替は利かないのか? 昨日のはダメなのか?」
「すぐには思い浮かばん。昨日作った物は恐らく使えない……エレメントの在り方が違うんだ。加えて私の才能程度で二役は出来ん。調合そのものはライザに担ってもらう事になる。だが時空魔法に適性があるわけではないライザに中途半端なレシピを渡せば、それこそ最悪の事態を招く」
「アル、もう一つ作る事は?」
『残念だけど難しいと思う。アレは他の錬成とは毛色の違う、力づくもいい所の一品だからね。この体じゃリバウンドを起こす可能性が極めて高い……自爆覚悟になる』
「加えてアレも本来は「もどき」だしね……私の魔力で初めて真っ当になっている感じか、あるいは私の魔力に長期に当てられて変質しているだろう七煌石が素材だからか……」
天秤だ。
掛けるのは――精霊の世界に行く権利と、島の命。
賢者の石が調合出来ればそれでいい。けど、どのくらいの時間で出来るか分かんない。
素材は揃っていても、レシピとしては思い浮かんでいない。リンケージのイメージがない。
出来た時には全部手遅れになってるかもしれない。
天文時計もすごいけど、錬金術の到達点らしい賢者の石よりは難度が低い、と思う。
でも、それがちゃんと機能するか分かんない。あたしは時計の基本構造すら知らないんだから。
アルクァンシェルだって、素材はともかくレシピは知らないし品質が十分かどうかも。
それで精霊の世界に行けたとして、削ってしまった制限時間内に事が上手く運ぶかもわかんない。
島の残りの時間……世界全体で見ればほんのちっぽけな事なのかもしれないけど。
その行先を、あたしが決める事になるの?
――えらべないよ。
「悩むまでもない」
「ボオス君?」
ボオスがこっちに来て、正面切ってこう言ってきた。
「ライザ、その時計を作れ――島の命を使って」
「……っ、分かって言ってんの?」
「当然だ。お前こそ分かっていない」
なにがよ。
「そもそも、俺達は島の寿命を延ばすより優先でやるべき事があっただろう?」
本当の、あたしたちが為すべき事は。
「……水の返還、だね」
「そうだ、それが最優先だ。島が沈むかもしれん場合の事は俺の仕事だ。いきなり全員消えるわけではないんだぞ? 何の為に俺が……俺達が動いていると思っている。それにもう一方は放っておけば島だけでは済まない。世界が終わるやもしれんのだろう? エルリックさんの件もあるのに選択の余地などありはしない。それにこれはライザの責ではない、今お前に命令した俺の責だ」
「へっ! なーにかっこつけてやがる」
レントが話に乗っかってきた――笑ってる。
「そうだぜライザ、お前ひとりの話じゃねえんだ。「俺たちの」、だぜ? ライザにしか出来ねえから任せちまってるだけなんだよ。その選択、誰にも咎めさせねえよ。絶対に」
「僕らはライザの頑張りを一番近くで見て来てるんだよ? それを島の大人たちに汚させる真似は絶対させないさ。いつも僕らがライザの尻拭いをしてきたのをもう忘れたのかい?」
…………あんたら、大バカだ。
今までの事と、今の事を一緒にすんじゃないわよ。
でも……ありがとね。
パン!
気合を入れるために両手で顔を叩く。
出来るかもしれない事は、出来るようにする! それだけだ!
「分かった! やる!」
「おう!」
「やろう!」
「あの方が、あいつららしい」
「やっぱり励まし方をよく知っているんだね、ボオス君は。よかったよ」
『ボクらは……もう面倒を見るなんて立場じゃないね』
「ん。皆、立派に自分達だけで歩いているよ」
「見習わなければならんな、本当に」
「ふた月前が信じられんな。子の成長というのは早いらしい」
島の命を借りて、時計作って、災厄ぶっ倒して、アルさん連れ帰って、賢者の石作って、島を復活させて、水を返す!
バカみたいに忙しいわね! やってやろうじゃない!
『汝ら、こちらに来て災厄を滅ぼす真似でもするつもりか?』
「そのつもりだよ!」
もう迷うもんか――突っ走ってやる!
『……くっくっくっく』
「大精霊様?」
『本当に面白い。我らが幾年月とかけて手を焼いていた存在を、まさか赤子が滅ぼすと言うのだぞ? これが笑わずにいられるか』
≪べりーくーる≫
なんか大蛇さんにもウケてるっぽい。まあいいけど。
『ところで……大精霊様。災厄というのはオーリムにおける『常闇』、で合っていますか?』
『……その名は好かんな、「闇」を冠するなど。まだその名を覚えておる者がおったか』
やっぱり同じ存在だったんだ。
だけど名前が変わってた――大精霊さんの都合かい! 伝承ってそんなもんか……。
「詳細については、以前御存じないとの事でしたが?」
『そうじゃな、今のわらわとなるより
「無……「無いもの」なのに存在があるの?」
『童女には理解し難いかもしれぬが、無とはそれだけでは成立しない。有……すなわち物があるからこそ初めて無を観測できる。形有る物を崩壊させる意志を持った概念に近いのじゃろう』
むずかしいなあ……まあいいや!
その辺はアルさんたちに丸投げだ。勉強は追々という事で。
『さて他は良いか? 今は大蛇から得ている力がある。こちらで一日くらいは居てやれるが』
「明日ここに来た時に、あたしたちを精霊の世界に連れてってくれないかな?」
『よかろう、可能といった手前な。光のやつに話をつけるのは骨が折れそうじゃ。ああそれと』
うん? 大精霊さんからまだ話があるらしい――目線の先は。
『小僧。貴様の持っているものを出せ』
小僧とはアンペルさんの事らしい。ホントの事だったんだ、この呼ばれ方。
「アンペル! 早く出せ!」
「わかったわかった。お前は過剰だな……これの事でいいか?」
手に持ってるのはクリスタルエレメント。大精霊さんはげんなり顔のご様子だ。
『はぁ……あの小瓶でまたこんな物を作りおったか。この際都合がいいとも言えるが』
「都合、ですか?」
『災厄は我らにとっても面倒極まりない存在。その手間から解放されるというのであれば、褒美を与えねば対価として不足。災厄を滅するなりした暁には――その結晶に我らの力を込めてやる』
「なっ……それ程の事を!?」
キロさんがめちゃくちゃびっくりしてるね。相当の事らしい。
『そこまで大した力ではない。こちらの時間で……百万年いかんくらいじゃろう』
「スケールがおかしいよ!」
そりゃ相当の事だよ! って事は、多分もう島の寿命が切れる事はない。
さすがにその時にはどっかに引っ越す手段くらいは作ってるよね?
≪こんぷりーと?≫
「あっうん。ありがとう、ヨルムンガンド」
『では明日再び此処に来い。連れていく』
「はい。ありがとうございました、大精霊様」
闇の大精霊さんが消えて、気づいたら明るくなった祭壇の内側。
アルさんが作った壁もきれいさっぱりなくなってた。大蛇さんが持っていったのかな?
まあそれは置いといて。
「急いで島に戻るとしよう。エネルギーの残量を確認せねばな」
「出力制御は任せてください!」
まずは中枢に行って、アルクァンシェルリングを外していいか確認しないとね。
その後は急いでレシピを考えなきゃ!
「……これが、お前達の歩いていた世界だったか」
「信じらんないでしょ? あたしも信じらんないもん」
「ただの対岸への冒険だったのが、いつの間にやら世界の救済だぜ」
「物語のほうが信じられそうだね。でも頑張ろう! お引っ越しの件なら私もお手伝いできるように掛け合ってみるから! ロミィさんに負けていられないよ!」
うん? 何故にロミィさん? まあいいや。
「ありがとね、クラウディア――でもね」
全部解決すんのが大前提だよ!
という事でキロの契約精霊の登場です。北欧神話が好きな方にはバレバレですよね。
イメージは真っ黒な鱗の蛇〇龍、全長フルマラソン、口調はポ〇ンガ、CV:穴子さんです。
ライザの「子供からの脱却」を想像して書いた結果、こうなりました。
ごちゃごちゃしてしまいましたが、これで精神的にもアル達にただ付いていく存在ではなくなった感じです。
次は随分原作と在り方が変わってしまったアイテムの調合へ。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。