ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
原作ではチートもいい所だったので、本作ではキーアイテムとしました。
さてその調合レシピは。
今回もよろしくお願いします。
中枢。正しくはクーケン地下構造体っていうらしいけど、誰もそう呼んじゃいない。
だって長ったらしいんだもん! 中枢で分かんじゃん?
ここにいるのはあたし、タオ、アンペルさん、アルさん、キロさんの5人。
アルさん以外は現在サンドイッチを片手に作業中だ。
タオとアンペルさんが、何が映ってんのかさっぱり分かんないものとにらめっこして。
「どうだ、タオ?」
「ギリギリまで絞って、リング無しでの残量は3日が限度だと思います。次の日にはもう……」
初めて中枢に来たのが9日前の朝。その時は島だけの寿命で10日半だっけ?
さらにアルさんたちの改造で1日延びた。ちょっとは水流制御に使ったかな。
リングから優先に~なんて事は出来なかったらしい。燃料を追加する事が前提じゃないもんね。
で、ホントなら残り1日少々……ゾッとする。もう避難完了してなきゃ大変な状況だ。
それがタオ曰く3日分。島を維持できる限度だろうから、吐き出し切るなら4日かな?
つまり、この9日間で2.5日分をリングと改造で稼いだって事。
という事は、まだ残り3.5日分の魔力はリングの中に残ってるから。
「触っていい?」
「設備に巻き込まれないよう気を付けてね」
「りょーかい」
リングに触れる……うん、素材として認識出来るね。もどきじゃないよコレ。
「十分使えそうです!」
『よかった。それだけは判断しようがなかったからね』
「コアと共鳴させられているんだから、この世界の物として認識されているって事だよ。加えて素材の七煌石は私の魔力で変質しているっぽいし。必要なら臨時で魔力を補充するよ。今ならヨルムンガンドの力もほんのちょびっとは……いや、宝石部が弾け飛びそうだね」
『聞いた話じゃ毒蛇なんでしょう? そんな気がする。止めておこう』
「うん……ありがとうキロさん」
あの大蛇さん。見た目や大きさや神様って事は別にして、性質も相当にヤバいらしい。
調合に関わった途端に何もかも真っ黒になりそうだ――あたしも含めて。一旦ご遠慮いただこう。
さて。コレが素材に使えるとなってくると、問題は調合レシピだ。
まず起点になるアルクァンシェルリングは四属性のエレメント持ち。素材として超優秀。
アイテムを形作るインゴット類はクリミネアかゴルドテリオン製。
元々アルクァンシェルってのはオーリムの七煌石だから、同じオーリムの素材で組むべきだよね。
だけど魔力自体はキロさんの物で、キロさんは闇属性持ちだ。並みの素材じゃもたない。
となると、バランスをとるなら光属性が欲しい。必然的にゴルドテリオンになるかな。
問題の、想像がつかない要素は。
「調合の際は私の魔法を錬金釜に掛ける。出来る限り調整はするから遠慮なく指示してくれ」
二つ。
一つは、今回の調合はアンペルさんの魔力を込めながらやるって事。
錬金術士としてじゃなくて、魔術士としての魔力。これがアイテムに込められるか分からない。
なにせリンケージ調合で使うあたしの魔力に異物を入れる様なもんだ。
他の素材を邪魔しないように、かつ魔法の特性を宿すようにしなきゃいけない。
オマケに単なるエレメントの魔法じゃなくて時空魔法。あたしにはほぼ未知の領域だね。
そしてもう一つが……。
「何とか……アイテムとしての時計が欲しいなあ」
『構造を見るだけじゃ難しそうかい?』
「その構造の……要素とでも言えばいいのかな? それがあるとずっと形になると思うんです」
リンケージ調合の基本は術者のイメージ。
今回ならあたしが「このアイテムは正確に時を刻みます!」って分かってないといけない。
クラウディアのエセリアルトーンの調合に近い感じだね。
時計の構造自体は実物を見れば、まだ何とかなると思いたい。
けどフルートと違うのは、魔力を帯びてる――アイテムとしての時計を素材に使えない事。
そんな都合の良い物は手持ちに無いし、自然に生えてるもんでもない。
アルさんに錬成してもらったとしても、それは精密な「物」であって「アイテム」じゃない。
つまりは
アイテムとしての時計が釜の中にあれば、アンペルさんの魔法もかなり見やすくなる。
目で見て分からない物が見えるようになるのは、今のあたしにとっては相当にありがたいのだ。
あたしたちの世界で出来ている物で魔力を帯びていてほしいんだけど、思い当たる物が……。
「魔力を帯びた時計なんて……」
「ライザ」
「ん? どうしたのタオ」
「時計が要るっていうなら……これ、使えないかい?」
そう言って、タオが差し出してきたのは。
「タオあんた……これは宝物じゃあ」
タオがいつも身に着けてる――懐中時計。
いつ頃からか忘れちゃったけど、プレゼントしてもらってて大喜びしてた記憶がある。
基本的には本が大好きなタオだけど、この時計だけは別のはずだ。
たしかにこの時計は特別な機能こそないけど、タオの魔力をずっと浴び続けてる。
だけど……。
「元に……戻せないよ?」
「うん、大事なものさ。だからこそ大切な事に使ってくれるとうれしいんだ」
タオの言葉に迷いはない。もう決めてくれている。
なら、その思いと期待に応えなきゃね。
手に取らせてもらった……うん、使える。
調合のイメージが浮かぶ。アルクァンシェルと並ぶ天文時計の要だね。
さあここから詰めていこう。みんなを守るために。
「じゃあ、使わせてもらうね。ありがと」
「うん。頼んだよ」
あたしのアトリエにて。
メンバーは調合役のあたしと、時空に関する魔力を供給してくれるアンペルさん。
アルクァンシェルの魔力調整と光の加護の取り扱いを担うキロさん。
光の加護の供給源兼時計に関するアドバイザーのアルさん。
『久々に道具屋として仕事をする気がするよ』
「そういえばここって道具屋だったんだね。今や完全にクラウディアのお店だよ」
「なかなか錬金術の道具を取り扱っているカフェは存在せんだろうな。最初からそういう営業形態でも流行るかもしれんぞ? クーケン島でなければだが」
「なんでもありの不思議の工房なんで。アレ、あたしの作ったアイテムってどこだっけ?」
気付いちゃいけない事実に触れかけた。いまさらですけどね!
そして。
「やっほ、大体の準備は完了したよん。ふい~身体に染みるぅ……」
って感じで紅茶とプリンを食べてるロミィさんだ。何か書いてたらしい。
「何が完了したの?」
「ライザは聞いてなかったっけ? 根回しの準備というか、あんたら用の紹介状作りよ。クーケン島の人達が引っ越しする場合の予定先向けのね」
『これはまた……随分な枚数ですね』
「そうだよ~だから手が疲れちゃって。アル君褒めて褒めて~……マジで可愛い声だね。10年前だったら押し倒せてたかもしれないのが悔やまれる……」
「代わりにアガーテにサメの餌にされるよ。しかしまあ……これ、手紙によって言語が違うの?」
ロミィさんが見せてくれた手紙は……数十枚はある? コレ普通に書くだけでも超大変だったんじゃあ。しかも一部はあたしじゃ読めない。キロさんの言う通り別の言語?
クラウディアが言ってたのはこういう事か。
「ふむ。こっちはアーランド、こちらはシグザール。これは? 相当に遠方の国も含まれているようだ」
「それはキルヘン・ベルってちっちゃな町のですよん。全員適材適所を目指すと、流石にロテスヴァッサ王国内だけじゃロミィさんでも人数分を賄えなくてさあ? だから爺様達は国内に居てもらって、ライザとかボオス達みたいな若手は経験も兼ねて遠方でも行ける案を準備したのですよ」
「ロミィさんがいろんな国を歩いてる事もビックリだけど、言葉も全部分かんの?」
「当たり前じゃん、こちとら商人だよ? 歩いてナンボだし……アル君を探す為に伝手作ってたのもあるしね。ボオスも周辺国の言葉くらい話せるならまだマシだったんだけど」
これは、それで片づけていいレベルを通り越してない?
閉鎖的なクーケン島の住民じゃ逆立ちしようが達成できない。ロミィさんにしか不可能だね。
「ま、使わないに越した事ないけどね~場合によっちゃ内容を書き換えなきゃだし。んで、ライザ達は今から常闇とやらの対策?」
「うん。錬金術的な時計を調合しなきゃで……ロミィさんって時計も取り扱ってる?」
「ん~とね、普通の懐中時計と、最近他所で作られたばっかの腕時計ならあるよ?」
「見せてもらってよいかな? ……これは素晴らしいな。このサイズにまで縮められるのか」
『買わせてもらってもいいですか? 普通に興味があります。見本の時計はボクが錬成するよ』
「まいどあり! 今なら貴方を健気に愛する可愛い女の子もサービスで付いてくるよ!?」
「ロミィ……売り込み方が流石におかしいって。もう少し自分を大事にしようね?」
『ライザ、これでいいかい?』
「はい! ありがとうございます……うわぁ、すっごい複雑なんですね」
「まさかコレの実物を目に出来るなんてね」
「そんな大事な物がものの数秒で作れてしまうのは結構問題ではないのかね?」
「
調合の前に、まずは時計のお勉強。中身って全然気にした事なかったよ。
アルさんが錬成してくれたのは国家錬金術師の証であるらしい「銀時計」ってもの。
大きく再現する形で錬成してもらったけど……こんなに部品があんの? いくつあんのよ!
この中に不要な部品は一つもない。一つでも欠けたら作動しない。すごいね、コレ。
腕時計はあのサイズの中にこれが全部詰まってんのか。
『細かな解説は不要だろうから大まかに。動力源のぜんまい、各部品を繋いで表示する針に力を伝える歯車、使う動力を制御するがんぎ車、一番大事な繰り返しの力……時を刻む力に変換するテンプ。大きくはこの四つだよ。一つでも狂ってしまうと正確に作動しない』
「興味を持った事がなかったけどすごいね。これがエレメントに依らない単なる絡繰りだとは」
「古代より、錬金術を含めて時間の概念とは極めて重要な要素だった。故にそれを正確に表そうとして試行錯誤を重ねた結果なのだろう。ある種の芸術品で職人技だな」
「長期間航海をする大型船なんかは、高精度で揺れにも強いクロノメーターっていう文字通り職人技の結集品を積んでますよ。一個で屋敷二つくらいは買えるんじゃないですかね?」
中身がこういう物だって事は分かった。四つの大きな要素もわかりやすく教えてもらえたね。
問題は、どれにどれを当てはめるか。
ぜんまいはアルクァンシェルでいいね。動力は魔力になるんだし。
歯車は時計の構造体として捉えてよさそうだからゴルドテリオンが合う。
タオの時計は全体をまとめる役目をしてくれそうだ。身体でいう骨ってとこだね。
後はリズムの正確性と繰り返しの力、がんぎ車とテンプ。
リズムの正確性は……魔力のバランスが一つ。いかに正確に宝石から魔力を取り出すか。
闇属性の魔力であるキロさんに対して、アルさんの光の加護を両立させてバランスを取る。
つまりは加護のアイテム化でもあるわけだ。ゴルドテリオンの要領で何とかなると思いたい。
もう一つはアンペルさんの時空魔法。魔力に時間の特性を与えるキーになるわけだね。
このがんぎ車ってのでエネルギーの吐き出され方が制御されてるんだから、ここを担ってもらう事になる。普通の時計と違って一方向だけじゃなく、逆方向にも動くような指示を飛ばすわけだ。
その調整はタオの時計で時間の刻み具合を感じながらやる事になるかな。
残ったのは。
「テンプの代わりかぁ……」
『繰り返しの力、という事かい? これが時計の心臓部だからね』
「はい。あたしが知ってる素材やアイテムじゃそれに当てはまる物が思い付かなくて」
「ヒゲゼンマイってやつね。時計の部品で作るのが一番難しいらしいわよ」
「正確じゃないとダメって物は、ある意味時計がその代表なのかもね」
キロさんの言う通り、日常で正確さを求められるものって時計くらいなもんだ。
これを担える要素は……思い当んないなあ。
タオの時計が当てはまるかもしれないけど、担ってもらう要素が多すぎる気がする。
正確さを求めるならそれ専用の素材が欲しいんだけど。
「何だライザ。自分で作ったのに忘れてしまったのか?」
「えっ? あたしそんな正確に動くような物って作ったっけ?」
全然覚えがないんですが?
「おいおい……これだ」
アンペルさんが右腕をポンポンと――そっか!
「義手のエネルギー源! 共振の玉石、だっけ!?」
「そうだ。この素材は周期的、つまり繰り返し同じ力を出力する特性があるのさ。トラベルボトルの中で入手したと聞いたが使えるのではないか?」
「あったはず! え~~とえとえ~~~~っと!!」
ベチャッ ゴツン パキン ゴロゴロ ア゛ア゛アァァァァ……
「あ~あ、せっかく片づけたのに」
「……今の、呪われそうな屍の声っぽい音は何? あと義手を作ったとな?」
『昨日の完全再現だね。まあまた片付ければいいさ。ロミィさんは気にされているとキリが無くなりますよ?』
入手元はトラベルボトルの世界。あれから何度か入って、リゼンブールやクセルクセスに行く事はなかったけど手に入れたのがあったはず!
えっと、え~~~~~~っと……おっ!
「あった!!」
「そいつは僥倖だが……一体何がへばりついているんだね?」
「ニオイから察するに、はちみつが大本だね」
『それにローズビーと灯籠ホタル、アンバーフライですね。タオが見たら卒倒しそうだ』
「ライザは絶対に商人にはなれないわね……」
ちょっとぬちゃっとしてる。後で洗おう。
球を手に入れた後にメイプルデルタの素材を突っ込んだのかな? まあいいや!
商人になれない自覚はあるから大丈夫だよ! あたしが錬金術で生計を立てんのは無理だね……。
「準備はいいかね? 勿論努力はするが、私では魔力制御の精度と集中力が未熟と言わざるを得ん。すまないがよろしく頼む」
「大丈夫だよアンペルさん。レシピ自体はしっかりしてるし、もらえる力のイメージも正確だから。昨日の調合に比べたらマシじゃない?」
「ソレが異常だと思うのは私だけかな? まあ短時間で調合出来るならそれに越した事はないんだけどね。声掛けはしてあるから必要なら闇属性の力も借りられる。加護が要るのか魔力が要るのか、指示を間違えないようにお願い。特に闇属性の魔力は強力だから」
『ボクは今回供給源にしかなれないかな。申し訳ないけどよろしく頼むよ』
「手足が必要な補助は私がするから遠慮なく言ってね!」
「ライザの錬金術は初めて見るわね。必要だったらロミィさんにも言いなさいな」
こっちで作戦会議をしている間に営業を終えて、玉石を洗いに行くあたしと遭遇したクラウディアも参加してくれてる。
――さあ、始めよう!
「アンペルさん……逆行の強さを2割強めに。キロさんは光の加護を3割絞ってください。アルさんは一歩左に。クラウディア、そっちの小さなヘラと赤い目玉を取ってもらっていいかな?」
「分かった。このくらい、か?」
「加護の方だね。ここから3割……漏れ出るみたいにすればいいかな。一定量にするんだよね?」
『この体は大きくて邪魔だね』
「ヘラはこれでいいかな?」
「素材はロミィさんが見るよ。赤い目玉……これワイバーンの眼? 随分とまあ高級品が揃ってるわねえ。グランツオルゲンを素材にするくらいだし今更か。ほいライザ」
この調合の場合、難しいのは素材じゃなくて魔力を混ぜるって事と正確さ。
普通の調合ならエレメントが変質する事はあっても、量はそこまで上下しない。
高品質の材料を使えば自ずと出来上がる物も高品質気味になるし、逆も然りだね。
だけど、今回は魔力と加護を釜に送って素材と混ぜてもらう必要がある。それも正確に。
素材の――調合をした先のエレメントの量や質を予想しながら、それに合わせた調整をしてもらわなくちゃいけない。
いきなりまとめていろんな時間の要素を持たせる事はあたしにゃ出来ない。
だからリンケージさせる素材ごとに時の魔力を注いで、それぞれに時間の特性を持たせる。
各素材にも込められる要素の許容量と得意・苦手分野があるから、それを考えつつ最終的に同じ量になるようバランスを取っていく。
時間の特性を持った素材に、「あなたは時計だよ!」って要素を加えてくれるのがタオの時計だ。
ある意味この調合のレシピそのものって言えるのかもしんないね。タオ、ありがとう。
そんな調合だから魔力を扱う二人の負荷は半端ない。でも、だからこそ正確な物が作れる!
これをエレメント環で形作り――リンケージ調合に繋げていく。
外枠を形作るタオの時計に、カチャリと各部品が嵌まる感覚――来たっ!
パアァァァァァァァ
「止めてもらって大丈夫です! 出来ました!」
「……っはぁ、自身の未熟を痛感するな。魔法を蔑ろにしたツケがここに来るとは」
「ぷはぁ……十分なんじゃない? 私じゃ瞬間調整は出来ても維持は出来ない気がする」
『お疲れ様。何も出来ない状況がここまで歯痒いとはね』
「結構ライザの調合は短時間で済むんだね。そうでないと困るんだけど」
「みなさんお疲れさまです! 休憩の準備をしてきますね!」
いけた、はず。いつも釜の中を見る時はドキドキするんだよなあ。
……あった。これか。
「またずいぶんと変わった形になったなあ。案の定原形がない……」
「アイテムなんてそんなもんよ。気を付けなさいな? 時間に関わるアイテムは怖いんだから」
時計には違いないけど、なぜか文字盤が3つある。針がないから機能するのは1個だけだけど。
ベースの文字盤はなんとなく夜空の天の川をイメージさせる色合いだね。
このサイズになったのは、さっき銀の懐中時計と腕時計を見たから?
んで、ロミィさんは過去に何を見てきたの? ヤバそうなのは同意するけど具体的っぽい。
『三つの文字盤は……過去、現在、未来を示しているのかな? 宇宙を感じるよ』
「やっぱり錬金術は分からないね、加護やら魔力やらを両立させて物に固定だなんて。方向性の違う賢者の石と言えるんじゃない?」
「何れの分野もその深淵は遥か遠いものという事さ。ライザ、持たせてもらっても?」
「うん。はいコレ」
時間についてはアンペルさんが一番理解してるもんね。試運転するにしても一番適任だ……。
――アレ?
「アンペルさんがいない……?」
「後ろだライザ」
「うひゃっ!?」
目の前にいたはずのアンペルさんが……いつの間にか真後ろに!?
耳元で囁かれたもんだから飛び上がっちゃった。
「ちょっとアンペルさん!?」
「ははは、すまんすまん。今まで弟子にやられっぱなしだったのでこのくらいはな? だが、どうだったかね? 私にとってはこの時計に魔力を流しながら歩いただけなのだが」
全く分からなかった。単にあたしの感覚が鈍いとかそんなレベルじゃなくて。
ホントに目の前から消えたみたいだったよ。
「
『まだ賢者の石が残っているんだよ? その感想はまだ早いさ』
「いやあ十分だと思うよ? アル君。賢者の石が作れる前提がそもそもおかしいよ? 例の薬も?」
今まで敵の動きを遅くとかあたしたちの感覚を早くとかはあったけど、完全に止めた事はなかったよね。成功したんだ。
「いよっしゃ!」
『お疲れさまだよ、ライザ』
「うむ、間違いなく成功だ。発動した時空に身体をピン止めするイメージでよさそうだな。もう少し確認はするが使用時は任せてくれ。しかしコイツも封印物だな。ライザがいいなら事が終わり次第コレもジェム還元行きとしよう」
「全然いいよ? こんなもんあったっていい事ないだろうし。今回は特別だけどさ」
「貴方達がその英断を下してくれる事に敬意を評するよ。なんでもし放題だろうに。アンペルはこの瞬間にも何かやらかしたりしていない?」
「キロ嬢が私をどんな目で見ているのかが気になるが……既に私は人でなしだ、今更人の欲を無駄に満たそうとは思わんよ。それに、世界に制限があるからこそルール内で課題を解決しようとするのが錬金術だからな。こいつはルール違反さ」
『素晴らしいお言葉ですね。こんなものを持ったら、待つのは破滅なんだろうなあ』
「人じゃなくなるだろうね。失敬したよ」
「アル君も気を付けてよ? 流石に追いかけようがなくなるんだから」
「お待たせしました! 今日は頑張ってみましたよ! ……アンペルさん、これでいいですか?」
「おお! アスラ・ドーナツ!! 感謝するぞ、王都に行かねば無理だと思っていたのに」
「これ……砂糖の塊? なんで真っピンクなの?」
「私でも虫歯になりそうな香りがしているね、既に甘ったるい。これは無駄な欲じゃないの?」
『興味あるなあ。鼻が利かないのが残念だよ』
「いつか本場の物を御馳走してあげようじゃありませんか」
これであっちに行く準備が整ったね。じゃあ明日の、最後の確認だ!
これで精霊の世界に行く準備が整いました。
色々説明が長ったらしく、分かりにくい所もあるかと思います。申し訳ないです。
この章はこんなのばっかです。終盤はどうしても説明が多めに……。
次は状況の整理と決戦に向けて、最後の会議です。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。