ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
もう説明文のオンパレードです。上手く表現が出来ない力不足が如実に……。
大精霊に関してですが、セリフの識別が大変しにくいため色を付けております。
今回もよろしくお願いします。
「じゃあそろそろ行ってくるよ。最近こればっかでゴメンだけど……今日も遅くなると思う。でも、今日で最後だと思うから」
「そうでないと困るねぇ? もうすぐ収穫時期なんだから。ライザがやってるって事も約束通りその時まで。分かってるね?」
「うん。ちゃんと守るよ、お母さん」
「それもそうだけど……ちゃんと帰ってきておくれ。僕はそれが一番心配だ」
「お父さんは心配し過ぎだって。じゃあ、行ってきます!」
「「いってらっしゃい」」
「それじゃあ……期限は今晩9時、でいいね? この場所なら少しは逗留出来るかな」
『はい。よろしくお願いします』
「ちゃんと戻って来るからさ。期待して待っててよ」
「そうでないとオーリムに水を運ぶ手段がなくなる。問答無用で叩き割る事になるからな……死んでも戻ってこい」
「ボオスはもう少し素直に激励してあげていいんじゃないかな?」
悪魔の野に入る橋の手前でロミィさんとボオスと……最悪の場合の確認。
この時間までに戻ってこれなかった場合はクーケン島民の大移動が始まって。
あたしたちは……だね。ボオスの言う通り死んでも戻ってこないと、だ。
「お前こそヘマすんじゃねえぞ? クソ親父はちゃんと湖に沈めとけよ?」
「あ~っと、それから僕の家の蔵書も全部運び出しといてもらえると嬉しいかな」
「お父さんにお話ししてもらうのが大変だと思うけど、よろしくね?」
「……ルベルト氏が一番マズそうだな。お前達は何処かを漂流している事にしておこう」
こっちは軽口を叩き合って。
「アル君はこれにサインしといてもらっていい?」
『こちらは? なんだか色々な部分が黒塗りにされていますが……』
「形式は王都の役所で扱われるものだな。複写式の物か?」
「ロミィ、回りくどい事をしていると男など一生捕まえられんぞ。自分から襲え」
「そうそう、アルなら尚更だよ……だからこんなものはこうさせてもらおう」
「ちょまっ……一瞬で灰になった!? ああぁ、せっかくの既成事実が……」
『既成事実?』
こっちは……なにやろうとしてんのよロミィさんは。
あっちにはそういう習慣がないのかな?
まあ、みんな明るくて何よりだよね。
こんな日常を、続けられるように。
『それじゃあ行きましょうか』
アルさんの声に続いて、悪魔の野へ。
「ライザ。キロちゃん」
「ん?」
「なにかな?」
ロミィさんに呼び止められた。なんか伝え忘れ?
「
……ああ、そういう。
「もちろん!」
「承ったよ」
さあ、いこっか。
『準備は良いな?』
ライムウィックの丘の祭壇にて。
あたしたちを精霊の世界に運んでもらうために、闇の大精霊さんにご足労いただいた。
大蛇さんの力が余ってるらしくって、今回は真っ暗にしなくても出て来てもらえた。
「光の大精霊様はご納得いただけたのですか?」
『骨が折れたぞ、あの堅物め。だが幸いにして他のやつらと巫女は正しく顔見知りのようじゃな? その事もあれば、封印に関わっておるのは光のやつがとちりおったせいで面倒な事になっておるアルフォンスじゃからな。後は……やり方が何であれあの偶像を滅ぼし、我らの世界で存在を保てると言いおったのじゃ。力はあろう。この辺りを絡めて渋々じゃが承諾させた、邪魔はすまいよ』
「ありがとうございます。闇の大精霊様」
超常の存在だとだけ思ってたけど、大精霊さんたちにも色々あるらしい。
「なんつーか、人間と変わんねえ悩みだよな」
「あたしたちが特別扱いしてるだけだもん。楽してるわけじゃないわよ、きっと」
「折衝って大変なんだよ? 人と人の関係が新しいものを生み出すんだから」
「クラウディアが言うと説得力が増すね。今回は精霊と精霊だけどさ」
さてこちらは。
『あと一分……アンペルさん。準備はよろしいですか?』
「勿論だ。飛ぶ瞬間の時間を起点としてピン止めする。私から離れないようにしてくれ」
昨日の銀時計で午前9時を確認して移動する。天文時計も準備完了だ――よし!
「じゃあ――お願いします!」
『よかろう。行くぞ』
「発動する!」
そこであたしの意識は一瞬途絶えて……。
「……ここは?」
目の前の景色は――明るい。快晴だね。
島と変わんない。空だけは。
「ここが、精霊の世界。大精霊様達のいらっしゃる座」
ぐるりと周囲を見渡すと、アルさんが言ってたみたいに遺跡っぽいものが結構な数あるね。
闇の大精霊さんの祭壇みたいな感じだ。遺跡なんだろうけど風化してない。
真正面には真っすぐ上に伸びた長い階段。あの頂上に常闇がいるのかな。
そしてあたしたちの周りには。
「アンペル、私達の身体はどうなっている? 魔力が極めて濃いようだが」
「安心しろ。私達の「存在」に対する時間経過は正しく制御されている。しかし……天文時計が無かったらお前でも数分と持たんだろうな。老化というよりは変質してしまいそうだ」
「見た目はあんま俺たちの世界と変わんねえ感じだな」
「遺跡の形式はクリント王国より古そうだけど洗練されてる感じだね。こっちがオリジナルなのかな?」
『そのあたりの考察は後にしようか……見ただけで緊迫感が伝わってくるよ』
「大精霊さんたちがみんな……集中されている、のかな?」
降り立った場所は、街道みたいな自然が広がってる中で円形の広場みたいになってる場所。
そこにあたしも会った雷の大精霊さんのほかに、赤、青、緑の印象を受ける3人の大精霊さんもいて……みんな目を瞑って何かに集中してる。
『一時とはいえ、封印を解除した状態で災厄を此処に留める事になる。汝らの世界から切り離さぬままにな。覚醒している状態では制御が足りぬ故、わらわと光のやつ以外はここと汝らの世界の維持に大半の力を割いた。とはいえ、災厄が解き放たれた状態でどれほど汝らの世界に影響をさせずに済むかは分からぬぞ。心得よ』
「ありがとうございます。闇の大精霊様」
「ありがとう、大精霊さん。じゃあみんな、行こっか」
こう言っちゃなんだけど……大精霊さんたちにとっては無駄な時間なんだよね。
あたしたちの世界がどうなってもささいな事のはず。他の世界の事もあるんだから。
だけどこうして、こっちに意識を割くくらい手間をかけてもらってる。
これだけ協力してもらってるんだから――その期待には応えなきゃ。
あたしたちのためにも、ね。
闇の大精霊さんの先導で階段を上る。
この世界も島みたいな感じなんだね。遺跡でできてる町って感じだ。
あっち側に海が見え……えっ?
「あっちのアレって……まさかクーケン島?」
「僕には見えないよ……レント、どう?」
「……たまげたぜ。こっから見えんの、ライザの家だよな?」
「よく見えるねレント君。でも、たしかにクーケン島の配置だね?」
ここは違う世界にあるって思ってたけど、そうじゃない?
『時空が違う、という感覚は汝らには理解しがたいか。汝らが生きる世界に全く見えぬ世界が重なっておると言えば分かるか? この場所の座標はわらわの祭壇の南にある湖になる。今は汝らを連れてきた時間の景色が見えておるだけじゃ。ここ数百年大して変わっとらんが』
ライムウィックの丘の南の湖――エリプス湖。
じゃあ間違いない、あれはクーケン島なんだ。始まりの場所がこんな近くにあっただなんて。
「まさかこれほど近くに元締めがいたとはね。世の中分からない事だらけだよ」
「そんな物だらけだろう。我々のような存在が世界の全てを理解しようというのが傲慢なのさ」
「お前の口からそんな言葉を聞くとはな。こうしてみると大精霊様達の世界を身近に感じる」
『大精霊達の拠点はここ……つまりは』
クーケン島を見つつも階段を上り続ける――たっかい! ちょっとこわくない!?
頂上付近が見えてきたところで、大きな台座に座る太陽のような色の印象の女の人。
多分光の大精霊さんだ。その後ろでグルグル動いてる遺跡が封印なのかな。
『来たか』
『ああ。邪魔はしてやるな』
「お初にお目に……」
『要らぬ。事は急を要する……が、何故汝が此処にいる? 鋼の……いや、まあいい。アレをどうするつもりだ?』
あいさつ不要――たしかにそれどころじゃないもんね。
キロさんがガクッて感じだけど、気を持ち直す。緊張してたんだろうな。
「私の精霊召喚を以て一時的に闇の世界を構築します。同時に封印を解除して常闇と戦闘を実施致します。光の大精霊様から頂いたお力、錬金術士達の叡智、我々の技能の総力を結集して」
『随分なモノを飼っておった様だな。異界の神ともいえる存在であれば隔離は可能か。だが力は振るわせるなよ? 封印の解除もあやつの血縁者ならば当然可能か、いまや封印の本体だからな』
はい?
たしか封印自体はアルさんの世界の錬金術って話だけど……血縁? 超ご先祖様なのかな?
アルさんの血縁って言えば。
『お聞かせください。この封印を構築したのはホーエンハイムなのですか?』
『左様。汝の祖先でよい筈だな?』
『父になります』
「えぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!??」
またあたしの声が響き渡る――大精霊さんの前で叫ぶくせでもあんのかな……。
いやでも、叫ぶでしょ!
「またかライザ……まあ気持ちは分からんでもないが」
「まさか、正真正銘あちらの錬金術の理論でこの世界が維持されていたとはな」
「流石はアルの世界で「賢者」と言われるだけあるね。別法則の世界の存在を封印するなんて」
500歳のお父さん、まさかあたしたちの世界を救ってくれてたなんて――親子そろってお世話になりっぱなしだね。
『数億年前、災厄に抗える魂の強さと知識を持つ生命体として光のやつの検索式が探し当て、ここへ召喚したそうじゃ』
『光を冠するあたりわらわの力への適性もあったしな……しかし妙な奴だったな、話が若干噛み合わん上にヒトカタをした魂の集合体とでもいえる存在であった。そんな風には見えなんだのだが』
なんだか謎い情報が入って来たけど、光の大精霊さんにとって喚びやすい存在だったらしい。
さて、あっちの言い分を聞くとしよう。
『我らが一時全力で抑え込み、その間にあやつは災厄を「理解」して漏れ出た力を循環させ、自ら封印を強化する仕組みを構築した。あやつも「因果が濃すぎる」とやらで災厄を滅する事は勧めなかったからな』
『想定外だったのは汝らの世界のヒトがすぐに負の感情に
「そんな時に……負の感情の集合体たる影の女王の力を吸収し」
『今のザマだ。その際この封印にも世界にも罅が入った故、闇のやつが
『だが先刻告げたように、汝らの世界のヒトはすぐに災厄の力となる負の感情を作り出してしまう。今この時も侵蝕は進み、元の封印の構造はもう維持できん。じきに破裂するじゃろうな』
事情は分かった。
大昔、アルさんのお父さんが常闇を封じてくれた時はそれでよかったんだけど……あたしたちヒトが生まれてきて。あたしたちが学ばないせいで、常闇のエサはいつも世界に満たされちゃった。
ついには影の女王なんて災厄もどきすら生み出しちゃって、加えてそれを常闇が食べちゃった。
今もどこかで負の感情は作られちゃってる。だから急いで結界のヒビを塞ぐしかなかった、ね。
――だけどさ。
「いくらなんでもこっちの事情で他所から誘拐した人を、説明もなく人柱だなんてひどくない?」
「ちょっらい、ライザ!?」
キロさんが引きつってるけど、これは言わせてもらう。
この筋は通すべきだよ。
『汝らヒトカタの感情的とでも申す部分か? そも、その錬金術師は汝ら風に言うならわらわが術式を以て理解し、分岐させ、分解し、再構築した存在。道は作ったが連れてきたわけではない。加えてその場で説明してなにか解決になったか? 何故件の錬金術師の魂がここに立っておるのか知らぬが、お前も封印に加われば数刻は延びるやもしれんぞ』
……えっ?
アルさんを……「分岐させ」「分解し」「再構築した」?
こいつ――アルさんを「喚んだ」んじゃなくて「作った」のか?
『ワタシはオリジナルではない、と?』
『いや? ホーエンハイムは此処の記憶を捨てて分岐元の世界に戻り、同一の存在と成っている。可能性を与えただけで複製したわけではない。ある起点を境に別の歴史を歩んだと言えば理解できるか? 汝を此処で成立させる為にわらわの力で構築している点は異なるがな。だが……理由は知らぬが今の汝はわらわが求めた条件から外れ過ぎている。分岐元の器に嵌まるかは分からぬな』
難しい。本物のアルさんではあるけど、こっちの存在……?
説明してなかった件のお詫びがないけどさ。
「――「並行世界」という概念があってな。ほとんど同じような世界がいくつもある、という考え方だ。家を出た最初の一歩が右足なのか左足なのか、といった些細な事から世界は分岐するとされる。「本来の世界」という物なぞなく全てが本物だ。今回の場合は、アル君が光の大精霊に干渉された世界とされなかった世界に分岐したのだろう」
「だがアルが最初から此処に現れなかった結果か……大精霊様が干渉なさらなかった世界と違いが出過ぎて、いまや分岐元の世界と同じ存在は言い難いと。お前をあの場で殺したか殺さなかったかの差か」
「物騒な例えだがそういう事だ。我々にとって「あり得たかも」というのが、世界の何処かでは本当に形を成しているのさ。そういう意味では召喚されたと言えるだろう」
「分岐と仰っていたけど、私達風に言うなら大精霊様によって新しい歴史が一つ作り出されたって事だよ。この世界にいる為に光の加護を纏ってね。ライザ、この場は落ち着いてちょうだい」
とりあえず、アルさんがアルさんであるのは間違いないって事らしい。
アルさんが言ってた「人体錬成」みたいに勝手に作ったとかではないと……そこは飲み込もう。
世界の維持を優先する光の大精霊さんにとって、あたしら人間の同意なんて些細って事か。
価値観の違いって言われたらそこまでだけど……ムカつくなあ。
『さて、そろそろ説明は終いだ。事が済んだら幾らでも受け付けてやろう。始めろ』
『大蛇の影響は外側からわらわも制御しよう。小さな権能を振るう程度はよいが「力」は使うな。此処すら崩壊するぞ』
「はい。ありがとうございます、闇の大精霊様」
「なんつーか……光より闇の精霊さんの方が人間寄りか?」
「そんな感じだね。お互いを補ってるんじゃない?」
「光の大精霊さんはお仕事中心で、闇の大精霊さんは管理と折衝中心なのかもね」
「なんにしても納得いかないけどねぇ……光の方には後で根掘り葉掘り聞いてやるんだから!」
『まあまあライザ、そこまでにしようよ。光の大精霊様のおかげでボクがライザ達に出会えた事は間違いないんだから。ボクは感謝しなきゃね』
それは……そうだね。
アルさんがこっちの世界に来る歴史が生まれたから、あたしはアルさんに会う事ができた。
いろんな話をして、いろんなものを作って、いろんな経験をして、いろんな考えをして。
アルさんを手伝うために始めた錬金術――その力で今、あたしはここにいる。
……いよっし!
「あたしの錬金術が為すべきってやつを達成するためにも、やってやるわよ!」
『じゃあボクは描いてくるよ』
「分かった。こっちも準備をしておくね」
「では私達も準備に入ろう。ライザとクラウディアは強化を頼む。タオは力を溜めていてくれ。レントとリラは連携の手筈をしっかりとな」
『……あの鋼の。一体何をするつもりだ? あの図形は……』
『さてな。じゃがわらわが手を焼いて負った偶像を何であれ滅したうえ、災厄を封じたホーエンハイムとやらの子なのだろう? 勝算がない事はせんじゃろうて』
アルさんに聞いた通り、聖石みたいなものの周りを遺跡みたいな封印が周遊してるような感じ。
アルさんの身体は見当たらない。ホントに封印の一部にされちゃったみたい。
その周囲をアルさんが棒の先に付いた黒鉛でどんどん描いていく。描いているのはもちろん。
『描けたよ。幸い父さんの錬成した物って事もあるのか加護もあるのか……今はボク自身でもあるのか、理解自体は出来た。後で同じ物を錬成出来るかは別だけどね』
「それでいいよ。理解が出来たのは幸いだった……あの時以来だね」
錬成陣。あたしたちが目にした、一番おっきな奇跡。
「じゃあみんな! 準備は?」
「おうよ! 盾役は任せとけ!」
「遠距離は任せておくれよ!」
「回復をがまんしないでね!」
「存分に戦おうではないか」
「前衛は私とレントが務める。突出しすぎるなよ」
「なら、ヨルムンガンドに来てもらうよ。それじゃあ、また後で」
『うん――それじゃあ、
世界を浄化した、錬成陣で。
『ちょっと……ボクを錬成しに行ってくるよ』
という事で封印の正体、およびアルが召喚された理由のある程度の開示です。
500年の間に何してた分かんないし、まあいいや! と作者に選ばれました。
一部違和感を感じられる箇所があるかもしれませんが、多分故意になります。
次はラスボス戦……の前にとある視点へ。短いです。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。