ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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初の日程?マークです。

章途中ですが、次話は数日お休みを頂きます。

今回もよろしくお願いします。


107. 87日目?  ボクはこの道を選ぶ

「やあ。久しぶりだね」

 

『キミに久しぶりなんて感覚があるのかい?』

 

「勿論あるに決まっているさ。だって僕は君だよ?」

 

『そうだったね。キミはボクだった』

 

真っ白な世界。正面には白っぽい僕とアルフォンス・エルリックの真理の扉。

最後に見たのは、兄さんにボクを錬成してもらった時か。

 

 

 

ボクと兄さんの真理の扉の絵柄は似ているようで違う。一度調べた事があった。

大佐にも聞いた事がある。

 

大佐の真理の扉は――二重螺旋の爬虫類の尾が太陽に昇る絵。

だけど、そこにはあの焔の錬金術の為の錬成陣が描かれていたらしい……つまり生まれつき決まったものじゃないのかも。これまで歩んできた人生か、それともこれからの人生か。

 

兄さんの真理の扉の正体は、兄さん自身が見つけてきた。

なんでも神智学という分野における世界の成り立ちを示した樹なんだそうだ。

今頃それが何なのかを解き明かそうとしているか、既に解き明かした後なのか。

世界を知ろうとする兄さんの体現と言えるのかもしれない。

 

そして今、目の前にあるボクの真理の扉は――二重螺旋の樹。まるで兄さんと大佐の掛け算だ。

リンに見せてもらった、太古の砂漠から発見されたパピルスの図形。その名も「賢者の鉛」。

錬金術とは鉛を金に変化させる事から始まったと言われる。なら賢者の鉛は「金」なのかな?

これがボクの体現だというならば、世界たる鉛を変えようとしているとでもいうのだろうか。

 

 

 

感覚的には16年振りか……何も変わらないや。

 

「それで今度は何をしに来たんだい? また真理を見に来たの? 随分と欲張りだね」

 

『言わなくても分かっているだろう? ボクの身体(キミ)を引き戻しに来ただけだよ。父さんの構築式をバラすついでにね』

 

「ついさっき自分で自分を分解しておいて忙しいものだね。それで? この身体をあの世界に引き戻すだけの代価を、鎧の君は持っていると? 人体錬成自体に代価は不要でも、君がいた場所に戻すには通行料が必要だ。今の君の扉は一つだけ。今の君の存在はキロ・シャイナスが繋いだ偶然の産物に過ぎない。持っているのは僅かな魂とキロ・シャイナスに宿った精神の欠片――それで足りるとでも?」

 

『いや、ボクは持っていないよ。でも……()()は持っているよね? ポケットの中にさ』

 

錬成した際に感覚はあった――()()にあって、既に支払われたはずだ。

ここで求められているのは対価ではなく代価。真理が相手ならなんだっていい。

 

そんな真理()は、半分諦めたかのような笑顔で言葉を続ける。

 

「……やっぱり君は兄さんと違うよね。命に対する線引きが緩い――必要なら手段を選ばない」

 

『ボクは兄さんのように強くないからね。使えるものは使わせてもらう。キミならよく知っているだろう? ボクなんだから』

 

全体的に白みの強い僕が、ポケットから二つの小さなソレを取り出す。

 

 

 

――フィルフサで作った賢者の石(魂の結晶)

 

 

 

思い付きと言うにはあまりにも罪深い、この10年で最大の禁忌。命の弄び。

ライザ達の世界でも、ボク達の世界でも本物足りえないけど。

 

この白い世界なら関係ない。命の価値に優劣なんてない。それこそ等価。

 

 

 

一は全、全は一。

 

 

 

これも生命エネルギーの塊。代価として扱えないはずがない。

かつて兄さんは右腕を代価にボクの魂を、扉を代価にボク自身を錬成した。

 

通行料として支払うのに人の肉体・魂・精神である必要は無い。

あの石には複数体のフィルフサの要素……魂が籠っている。ボク一人分なら足りるはず。

 

だけど前みたいに……石のままでいるよりマシだ、なんて言い訳は利かない。

 

 

 

――それでも、ボクはこの道を選ぶ。今の()として生きる為に。

 

 

 

ペキッ

 

 

僕が持っていた賢者の石が砕けて、チリになって消えていく。

同時に僕もその形を影に変えていき、ボクの感覚が無くなっていく。

 

「君にとって、この世界は救う価チがあるものナのかイ?」

 

『そんな大それたものじゃナいさ。ただソうしたイと思ッた。そレだけだヨ』

 

「きミがいれば、セ界をすくえルと? ゴウ慢過ぎやしないかい?』

 

『世カイを変えるノはボくじゃない……僕達だ。出来る限り足掻くのが人間ってものだろう?」

 

体の感覚が消え、身体の感覚が戻る。

真理()を見ていた視界が消え、(ボク)を見ている視界に換わる。

 

『ならやってみるといいさ――ああ、ちなみにメイは今ボクを好き放題にしているから』

 

「その情報要らないよ!!!」

 

その言葉と笑い声を最後に――(ボク)が崩れ、僕は立ち上がる。

 

……なんなのかな? 嫌がらせかな!? 伝える意味あったのかな!!??

というか僕を好き放題にしているってなんだい、メイ!? あっちの僕は何をしでかしたの!?

 

締まらないなあ……まったくもう。

 

「さあ」

 

僕の扉の方を向く。さっきは見ていたのに、今度は振り返る形だ。

周囲に気配を感じる。

 

 

――いってこい、アルフォンス。

 

 

魂に、懐かしい声が響いた気がする。

 

 

――やってやれ! アルフォンス!

 

 

「父さん、兄さん」

 

 

扉を開けて――その先(僕の居場所)へ。

 

 

「いってきます!」




アルだけが主役の話はこれが最初で最後です。アトリエ世界を書いた作品ですからね。
せっかくなのでハガレン要素主体にしてみました。

言葉遊びですが「対価」は労働などに対するお礼、「代価」は商品の値段の意味ですが
作者の中では「人の価値観が含まれているかどうか」で区別していました。
本作では「対価」を使ってきましたが、この話のみ世界が違う価値の優劣はないという事で原作通り「代価」としています。

次は前書きの通り数日をお休みを頂きたいと思います。今週中には投稿できるかと。
よろしければお待ち下さい。

では、いざ最終決戦へ。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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