ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
32日目以来のクラウディア登場です。以降ぼちぼち登場していきます。
無印ライザのボオスってなかなかに複雑な立場なんだよなあと思いますね。
今回もよろしくお願いします。
というわけで、昨日から早速インゴットの調合中だ。
そっちに意識が向き過ぎて、お昼の準備を結局アルさんがやる事に。アルさんごめんなさい。
ちゃんと時間の線引きをするか、あらかじめ作っておくことにしよう……。
ごちゃごちゃやって、それっぽいものはとりあえず出来た。
けど品質は……う~ん。
素材はもちろんだけど、混じりけなくするために他の素材が必要かな?
とりあえず一旦はこれを使ってくとしましょうか。
んで、これをやってる間に一つ思いついた事がある。
リンケージ調合はイメージに依るところが結構大きいんだよね。
だから、言い換えればイメージがしっかりしていれば素材が雑でもわりと形になったりする。
例えば「インゴットに取っ手の部分になる何かを入れたら鎌にならない?」とか。
という事で適当に突っ込む事にしたけど――木より骨の方が相性がいいかな?
同じようにインゴットを作る要領で鉱石を放り込んでいくけど、リンケージを考えてもうちょっとエレメント環をつなげていく。
で、昨日拾った骨の中でよさげなものを釜の中へぼーん!
すると……出来ました! 鎌! なぜか持ち手は木製だけど! ホント謎だよね、試験管とか。
こんな感じで行き当たりばったりだけど、採取道具第一号の完成だね!
その辺で夕方になったので家に帰ることにした。約束は守るよ?
アルさんに挨拶して工房を出る。
結構順調にいろいろ……といってもまだ5種類かあ。それでも作れてきたからアンペルさんに聞いたみたいに料理レシピとかも覗いてこようかな。
と、思ってたらあの日以来の出会い。島の人よりおしゃれな雰囲気の女の子。クラウディアだ。
「こんにちは、クラウディア!」
「あっライザ! こんにちは! あれ……もうこんばんは? あの日以来だね」
「1回お屋敷には伺ったけど留守だったから。モリッツさんのとこにいた感じ?」
「そうだね、こっちに来たばかりなのもあってお仕事が多いよ。販路の話もあるけど……情報交換っていえばいいかな? 王都とか他の街の話も結構しているみたい。それにしてもあんな階段の先にあるんだもの、引っ越しの整理とかもあって疲れちゃったよ。ライザはお出かけの帰り?」
あそこキツイよねぇ。水源の都合上仕方がないけど。
「帰るとこなのはそうだけど、そこの工房で働かせてもらって……うん? あたしのアトリエがあるんだから自分の仕事をして? まあそんな感じ」
「工房っていうと、道具作りがとっても上手な方が居るんだったかな? モリッツさんがずいぶん褒めていたからよっぽどすごいんだろうなって思っていたけど。たしか……エルリックさん?」
「うん、アルフォンス・エルリックさん。あたしたちはアルさんって呼んでるかな。間違いなく島一番の道具屋さんだよ」
あの人を超えるっていうホラを聞いてみたい。
「そんなにすごいんだ。ライザも働いているなら一度お邪魔させてもらおうかな。ちなみに道具ってどういったものを取り扱われているの? 家具とか食器とか?」
「いろいろあり過ぎてあたしにも分かんないわね……。ただ、受注だったりあたしたち島民の希望を受けてくれたりでホントに何でもござれよ。あたしたちが初めて遭った時に使った、おっきな音が出たのあったでしょ? あれもアルさん製だよ」
「あの時のアレかぁ」といった感じでクラウディアが回想してる。
インパクト抜群だし記念すべき日だから、一生忘れない気がするね。
「アルさんを紹介したいのもあるけど……忙しい人だしなあ。今度話してみるよ。近いうちにお屋敷にお邪魔していいかな?」
「うん、もちろん! 美味しいお菓子を準備しておくね!」
といった感じで数日振りに会ったクラウディアにまた会う約束。
うん。やっぱり旧市街がにぎやかになってきたね。
暗くなる前にラーゼン地区のあたしの家には到着した。
腰に鎌を差してるもんだから「あんた他所で農作業やってんのかい?」ってお母さんに聞かれたけど、しないって。
「よし。これで一通りはそろったかな?」
それから4日。
アルさんの工房の一角、あたしのアトリエの作業台の上に調合できたものを並べてみた。
とりあえず見たもの、思ったもの、必要そうと感じてあれこれ試してみたものを作った感じだ。今作れるのはこのくらいかな?
まず中和剤。初めて作った時の緑のほかにも素材を変える事で赤、黄、青ができた。
緑は植物だったけど、赤は花、黄は砂、青は魚介類がベースだ。
錬金術の中で植物と花は別カテゴリーみたい。花が持ってる特性があるのかな?
青は生臭そうと警戒したけど大丈夫だった。魚醤を作ってる気分だったけどね。
実際魚醤みたいなアイテムも出来たりした。効果あんのかな?
あとはコアクリスタルに入れる攻撃アイテム。
うに爆弾とタルフラムを参考に、普通のフラムと氷のまきびしを押し固めた氷フラムのレヘルン。それからうに爆弾をアレンジしたクラフト――範囲とダメージ重視なブツ、を準備したよ。
あたしが居ればレントとタオでもコアクリスタルの力を使えるもんね。
料理のレシピを見て「材料もいけんじゃない?」と思ったら案の定、ハチミツや小麦粉なんかも作れちゃって、布や紙なんかも出来てしまった――これだけで商売できないかな?
あと、作れるなんて思ってなかったペンダント。
アルさんの依頼で物を研磨する粉を作ってたところで、思い付きでコンテナに転がってたよくわかんない石を入れたら、なぜかペンダントになっちゃったっていうね。
石自体にそういう性質があったのかな?
付けるとなんとなく……力が湧く、気がする?
といっても、あたしはお気に入りの星飾りをつけてるしレントとタオにあげるとしよう。
そして。
「ヘイヘイほりゃぁ!」
「さっきからなんなのさ? その掛け声」
「でもなんだか似合うよね。楽しそう!」
「意味はぜんっぜん分かんねえけどな」
斧ができた。
掛け声は木材採取がすっごく捗り上機嫌なあたしがいつのまにか口にしてた。
こんなもん気分よ気分!
そうそう。クラウディアのお屋敷で3人揃ってお茶会を開いてもらったよ。
レントには似合わなかったね。本人も自覚あったみたいだけど。
その後は島の案内やあたしたちがやってる事を話しつつ、素材採取にも付き合ってもらった。木はさすがに切り倒しちゃダメだから折れてたやつね。
ちなみに岩もある程度砕けちゃった。あたしが怪力になった気分ね。
にしても、斧をベルトに下げるのはさすがにムリだなぁ。カバン作んなきゃ。
て感じで作ったアイテムとかを眺めていたところで工房の入り口から声。
レントかな?
「ようライザ。アルさんとも話してたんだけど今から時間あるか?」
「特別用事ってのはないけど、また対岸で魔物狩り?」
「お2人からのお呼び出しだそうだよ。タオもお呼ばれしてるそうだから3人揃って話があるんじゃないかな?」
先に話を聞いていたアルさんが説明してくれる。なんの用事だろう?
アルさんには断りを入れてっと。あたしとレントでアンペルさん宅に向かいますかね。
「早い話、レントの試験のついでにお前達3人合わせての実力を見る」
既に到着していたタオと合わせて、3人で聞いたリラさんの第一声だ。
「えっと……レントは分かるんですけど、僕たちも?」
「お前達に色々教えているのは私達の手伝いをしてもらうためだからな。助手に足るかの確認も兼ねているわけだ」
あたしはアンペルさんの調合の補助、レントは……護衛? タオは古代文字の解読。
まあ確かにそうなんだけど、一体何をするのかな。
「お前達にはこれを探してきてもらう」
そう言うと、リラさんは手に持っていた物をあたしたちに見せてくれる。たしかこれって。
「コベリナイト?」
「ほう、知っていたか。よく勉強しているな」
「アルさんから貸してもらった本に載ってたから。でもこれ、対岸でも見たことないよ?」
「場所は教えてやる。対岸の西に地下へ続く洞窟があるだろう?」
あー昔住んでいた人が掘ったって聞く、水に沈んじゃってるらしい坑道ね。
ずっと前から使われてなくて魔物の天国になっているとも聞く。行商の人も近づかない場所だ。
そういえば、アルさんもゴーレムってのがいるって言ってたっけ。
「あそこの魔物も大した事はないが、この辺りでは比較的歯ごたえがある。魔物が落とすか採取なのか、それを選ぶのもお前達の試験だ」
タオはぶー垂れているけど、まあしかたがないかな。
レントは訓練の一環、あたしは素材採取が出来るいい機会なんだしね。
話を受けてアンペルさん宅を出る。
「さってと、どうするよ? 早速対岸に向かうか?」
「ううん。その前に情報収集だよ」
「あそこを知っている人が居るのかい?」
「そ。もちろんあの人よ」
「成程。それで坑道に」
あたしたちの知恵袋――アルさんに事のあらましを説明した。
冒険の前には事前準備をしっかりと。ルール違反でもなんでもないはずだ。
「アルさんはあの洞窟の事も知ってんすか?」
「うん。何回か入った事はあるんだ。この辺ではあそこでしか採れない素材もあるしね」
という話をしつつも、アルさんの表情は明るくない。
「ライザには前に話したと思うけど、あそこにいる魔物はゴーレム。石を纏った魔物、岩人形って言い方も出来るかな? タフで物理的ダメージに耐性がある厄介な魔物だよ」
「という事は、出来るだけ避けた方がいい感じですか?」
「以前の君たちならそうだね。だけど魔法は普通に通るらしいし、あそこのゴーレムは火属性が良く効くはずだよ。ライザの作った爆弾なら効果的だろうし、タオも減衰なくダメージを入れられるんじゃないかな。あと、これは忠告になるんだけど」
そうアルさんが一拍置いた。
「あの坑道の一角には大型のゴーレムがいるんだ。相当苦戦するだろうから今のライザ達は避けた方がいいかな」
「わかりました、ありがとうございます。アルさん!」
たくさんの有益な情報をアルさんにもらって、タオとレントの準備が整った後、対岸へGO!だ。
「アルさん、あの坑道の事知ってたんだな」
「以前メイプルデルタ? なんて聞いた事ない場所も知ってたし、結構広く歩いてんじゃない?」
「メイプルデルタは街道を北にまっすぐ行った所にある森林地帯らしいよ。ここよりずっと強い魔物が居るはずなんだけど」
この辺一帯は大体回った事があるのかもしれないね。
村の掟では、西の方は「悪魔の野」なんて呼ばれてる。
ただその西側の先、北の方向にレントの目指すあの塔があるのよね。
東側には竜が住まう城があるって聞いてる。
北東に見える火山の南にあるんだけど、あのワイバーンがたくさんいるのかな。
北については特別聞いてない。そもそも街道だしね。
そうだったとしてもアルさんの行動範囲は相当に広そうだ――つまり強いって事。
ホントに。普段はやさしいなんでも屋さんだけど、謎の多い一面もあるんだよなぁ。
対岸に着いて例の坑道へ。
気にはなっていたけど本当に入るのは初めてだ。警戒しなきゃ。
「俺が先頭で魔物を警戒する。ライザは遊撃で……コアクリスタルだったか? アレで攻撃してくれ。俺じゃ使い方のイメージが付かねえ。タオは魔法で後方支援だな」
「了解だよ。ちょっとだけど頼もしくなったかな?」
「だとしたらリラさんのおかげだな。あの人から教わる事は本当に多いぜ?」
「ぼ、僕も分かったけど……ホントに入るんだよね? イヤな感じがするなあ」
坑道内は真っ暗なのかと思ったけど、ところどころ魔石が生えて光源になっててわりと明るい。
そこら中に溜まってる水に反射して全体的に青っぽい色合いだね。
で。
「あれが……ゴーレムってやつか」
「そうみたいね。岩人形って呼ばれ方、しっくりくるかな」
「アレと戦うんだよね? ライザはちゃんとアイテム使ってよ?」
「わかってるわよ。あんなの殴ったら杖が折れそうだし」
青っぽい鉱石をまとった頭、手、胴体、下半身で滑るように移動してる。
まずは1体だけを相手にして、どんなもんか様子を見ないとね。
「んじゃ、俺から切り込むぜ!」
まずはレントの初撃が入る。
けど。
ガッ!
「くそっ! 見た目通りかってえぜ!」
「僕が魔法を放つよ!」
相変わらずいざ戦いって時はわりと勇敢なタオ。
毎度おなじみ農作業のハンマーで魔力刃を飛ばすけど……。
「……物理よりマシみたいだけど、やっぱタフね。じゃああたしの新アイテム行くわよ!」
なんとなくムカつく顔をしてこっちに近づいてきたゴーレム。
それに向かって、手に持ったコアクリスタルを振る。
「フラム!」
まずはお試し!
ドコン!!
爆音と土煙のあと、ゴーレムは消えてなくなっていた。おおう。
「アンペルさんの時もそうだったけどよ、錬金術のアイテムってやべえな」
「しかもコアクリスタルを使ってる限りは消えないからね。ヤバイわよ」
「……ねえ、これって」
そう言ってタオがゴーレムが居たところに近づいていく。
落ちていたのは――まああっさりと。
「これが多分コベリナイトだね、青色が特徴の鉱石。とりあえずの課題は達成かな」
「おう、サンキュな」
「じゃあ早くここを出ようよ。さっきの奴まだ周りにもいるし……大きいのも居るんだよね?」
たしかにそうなんだけど。でもせっかく来たのだ、素材を集めたいじゃない?
という事で、しぶしぶなタオも入れて3人で素材採取を始めた。
奥まった先に例のでっかいゴーレムらしきのはいた。たしかにアレは今はムリくさい……。
あと、さらに下ったところにはかなり風化していたけど石柱があった。
多分これも遺跡なんだろうけど、もう文字も読めないしいいよね? よっし!
「とぉうりゃ!」
「ちょっとライザ!?」
斧でぶっ叩き、砕いて素材にしてしまうあたし。なんて事をって感じのタオ。
大した遺跡はなかったってアンペルさんも言ってたじゃん? 大丈夫だって。
という事で坑道を引き返し、浜を通って島へと戻ってこれた。
全員ケガなしだ。
「ふむ、確かに」
「って事は?」
「新しい場所に足を踏み込む際の心構え、言いつけを守る程度は出来たという事だ」
とりあえず合格したみたい。
まあ元々レントの試験だもんね。リラさんから教わってる事が出来てればよかったんだ。
「これで最低限の事は教えたつもりだ。後は自分達で考えながら進むといい」
「自分たちで……それはそれで不安だなぁ」
「そうだ。自分で考えて動く事の方が今回の試験などよりずっと難しい」
「だが今日一日、自分達で未知の場所に踏み込んでみて、どう思った?」
タオは不安がっているけど――たしかに知ってる場所を歩くよりもずっと色々考えて、新発見もたくさんあった。新しい素材も採取できたもんね。
「……楽しかった、かな?」
「ならばいい。今後は私達も本格的に遺跡の調査を始める。お前達も自由にやるといい」
「えらくさっぱり終わっちまったが、よかったな」
たしかに、さっぱりだったのは同意見だね。
今後はあたしたちも自分たちのやりたい事を中心にやっていく。
あたしは錬金術とアルさんのお手伝い、レントは武術、タオは古代文字解読……あたし以外やる事変わってなくない?
アンペルさんたちの手伝いが必要な時はお呼びがかかるみたいだし、それまでは新しい素材採取やアイテム調合に励むとしましょ。
そんな事を考えてた時に……はあぁ。こいつらか。
――面倒だ。
「よう。今日も揃いも揃って悪だくみの考え事か? 悪ガキ3人ども」
「っボオス……!」
「そんなつもりないわよ。あんたも知ってんでしょ? あたしたちも正式に島の外に出る許可を貰ってる事は」
「エルリックさんの手伝いという名目だろう? それでお前達が騒ぎを起こしたらあの人に迷惑がかかるという事を忘れてるんじゃないだろうな」
ネチネチとうっさいわね、あいかわらず。
アルさんに迷惑をかけるつもりなんて当然ないわよ。
「あたしは今、正式にアルさんのお手伝いをしてる。お母さんたちにもキチンと話して許可はもらった。アンペルさんから習った錬金術で手助けして欲しいって事でね」
「なに?」
ボオスの顔が少しゆがむ。なにが気に障るのやら。
「あんな流れ者共と関わりを持っているのか」
「あんなってなんだ! あの2人がいなかったらクラウディアが危なかったんだぞ!」
「クラウディア嬢が助けられた事は知っている。だから礼として借家は手配してやった。だが流れ者であり、錬金術などという信用ならんものを扱っている事に変わりはない。加えて遺跡の調査とやらで島内や島の外で好き勝手に動き回っている有り様だ。友好的な付き合いなどありえん」
こいつの不満はあたしが得体がしれないとかいう扱いの、錬金術に手を出している事か。
新しい物に目を向けないあんたたちにはずっと理解できない事でしょうね。
「それが何だってのよ。あたしたちは2人から色んな事を教われた。アルさんもアンペルさんの錬金術は理解してて、使えるかもって事であたしと協力関係を結んでもらってるわ。あんたがよく言う「為すべき事をなせ」ってのが前のあたしに無かったのは否定しない。でもあたしはやりたい事を見つけて、これからも努力してく。レントとタオもアンペルさんたちに出会って、やりたい事を見つけて、日々取り組んでる。これ以上あんたの説教を受ける気はないわよ」
ボオスの奴の表情は苦々しい感じだけど、少し驚きも含んでいるみたい。
こいつは一体、これ以上何が気に食わないっていうのか。
「ふん、せいぜいあがくといい。ただ、お前達の行動がエルリックさんやあの流れ者どもの立場を悪くしかねんのを重々に理解しておく事だ」
「へっ、お前らごときがどんなあがきをしでかすのかみm」
「行くぞランバー」
「えっ、あっハイ!」
「それとレント。お前はまず父親の事を何とかしろ、面倒でならん」
そう捨て台詞を残して、ボオスは去っていった。
以前と比べると、若干当たりが弱い気がしなくもない、かな?
「毎度ムカつくやつだぜ。なんで俺が親父の尻拭いなんざしなきゃならねえんだ」
「まあザムエルさんの事はねぇ……この前もフレッサさんにお酒たかってたし。うちのお母さんたちには弱いっていうか、昔からの顔なじみみたいだけど」
「あいかわらずボオスには遇いたくないね。また追い回してきたりしないといいんだけど」
「気にする事ないわよ。あたしたちはやりたい事を見つけて、それを磨くべく動いてるだけ。まあアルさんやアンペルさんたちにも関わる話だし、今までみたいな大っぴらな事は考えなきゃいけないけどね」
ザムエルさんの事はホントに悩みものだね。
いつからああなってしまったのやら。お父さんたちが言うには、昔はそんな事なかったらしいんだけど。
レントとタオと別れ、工房に戻る。アルさんに報告しなきゃ。
「それじゃあコベリナイトは無事に手に入ったんだね。よかったよ」
「はい。あそこの魔物の事、教えてくれてありがとうございました」
「いえいえ。それにしても、3人ともあの坑道を探索できるくらい強くなったんだね」
「アルさんから聞いてた……おっきなゴーレムとは戦いませんでしたけどね」
「アレは他のゴーレムと比べて格段にタフだし攻撃も激しい。それが正しいと思うよ」
あの判断は間違ってなかった。あらかじめ聞いておいて本当に良かったよね。
というか、これだけ説明出来るって事は?
「それでこの後はどうするんだい?」
「一度このコベリナイトでブロンズアイゼンを作ってみようかと。そういえばアルさんってあたしの杖を改造してくれた時に、この素材を使ってくれたんですよね?」
「そうだね。渡した本にも載っていたようにブロンズアイゼンに必要な素材は明確だ。なら僕も僕の錬金術を使えば「精錬」って形で可能だよ。本当の意味でブロンズアイゼンには出来ないけどね」
あたしたちの錬金術はマテリアル環に沿って調合すれば形にはなるけど、アルさんの場合は必要になる素材を明確にして、理解・分解・再構築をしなきゃいけない。
本来は各素材のエレメントの要素も調べなきゃなんだから、正しく作ろうとするとあたしより数段手間だね。
コベリナイトは氷属性で、ブロンズアイゼンは本来火属性。アルさんがエレメントを扱えないならアルさんが作ったのは、実際には氷属性のブロンズアイゼン
「今からブロンズアイゼンの調合をやってみるんで、成功したら今後はあたしに任せてください。アルさんの錬成より簡単に出来ると思うしエレメント的にもいいかもですから」
「うん、分かった。じゃあ頼りにさせてもらうよ」
というわけでブロンズアイゼンの調合を始めてみた。
ただ、一から作るって言うんじゃなくてインゴットを作る過程でコベリナイトを加える形になるのよね。これって単に鉄と銅の合金になるんじゃ?
というわけで、とりあえずの調合は出来たけど……う~ん。なんというか、雑?
品質はよろしくないね。もっとコベリナイトを集めて選別するなりしないとなあ。
参考にアルさんの錬成したブロンズアイゼンもどきを見せてもらった。超綺麗だった。
あたしでも分かる。不純物っていうのかな? 無駄なものが全然含まれてない感じよね。
だけど他の素材から得られる……特性? っていうのかな。ブロンズアイゼンとしての良さは控えめって事になるかな。
案の定氷属性だしね。あたしの杖もそういう意味ではいびつなのかも。どうしよっかな。
今後の専門はあたしになるんだから頑張らなきゃ。
「ああそれと、これも作ってみたんだ」
ゴトッと、アルさんはあたしの前にインゴットみたいなものを置く。
若干青みがかった金属光沢。コンコン軽く叩くと、音が響くような硬ったい感触。
なんか最近何かで見たぞ? これって。
「――マジですか?」
「錬金術的に問題がないなら「スタルチウム」だね。エレメントを考えるなら「もどき」って事かな? いやあ彗星岩の取り扱いには苦労したよ、熱いのなんのって」
……ええぇ。
ライザはボオス相手には文章が長くなります。負けたくないからですね。
アルの錬成による素材は、特性やエレメント的にはおかしいので「もどき」扱いです。
とはいえ、ここはアトリエ世界。ライザの腕前で上書きしちゃえばいいよね!
次はクラウディア主体のオリジナルエピソードです。
次回もよろしければ、ご覧いただければ嬉しいです。