ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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やっぱりこういうサブタイは使ってみたかったりします。
では本作では何を意味するのか。

今回もよろしくお願いします。


110. 87日目④ 「ライザのアトリエ」

――こわい。

 

 

それで、いいのかな?

 

 

 

 

 

 

「封印は構築できそう?」

 

「加護の……残量とでも言えばいいのかな? それを振り絞れば」

 

「アルさん、キロさん――みんな」

 

確認しておきたい。

 

「どうしたの? ライザ」

 

「キロさん……今からすっごい変な事を言い出すんだけど、聞いてもらっていいですか?」

 

「……時間が経つとまた世界から負を吸って復活するかもしれないから、手短に」

 

「ありがとうございます」

 

正直、自分でもどうかと思う。

――これから口にする事を。

 

「封印は……ちょっと待ってほしいんです」

 

「なに言ってんだライザ」

 

「分かってるよ、そんな事は。でも……なんでか知らないけど、あたしに聞こえたんだよ」

 

「なにが聞こえたの?」

 

「……多分コイツの声。「怖い」だってさ。信じられる? クラウディア」

 

そう。

聞こえてたのは、多分だけど常闇の声。声というか言葉。

 

「それは……本当に常闇のものなのか、ライザ?」

 

「うんアンペルさん。あたしも信じらんないけど……みんなの声じゃなくて、聞こえたタイミングも大体合ってて……多分コイツ」

 

「だったとして……コレは一体何を恐れているんだ?」

 

リラさんのもっともな疑問。

けど、答えは結構単純なんだ。

 

「……光、なんだと思います。コイツはとにかく照らされるのが大嫌いな存在だった。侵蝕の特性なんて持って、余計に光を感じて、恐れて、排除して、無に帰そうとした……んじゃないかって。突然現れた理由とかはサッパリですけど」

 

「じゃあ……ライザが言いたいのは常闇が世界を滅ぼそうとか、魔界に呑むとかしようとしたんじゃなくて」

 

「うん。多分タオの想像通り……単に生きたかっただけなんじゃないかな」

 

あたしたちと変わんない。

 

あたしたちは、あたしたちの世界を守る為に常闇を封印し直そうとした。

常闇は、常闇の身を守るために……なんかの目的のために封印を破壊して、世界を暗闇に閉ざそうとした。周囲に与える影響は全然違うんだけどね。

 

あたしらにとっちゃ迷惑極まりないけど……クリント王国もおんなじなんだよなあ。

結果としては自分たちの欲のままにオーリムを滅ぼしたんだから。

 

「……ライザの言いたい事は分かった。だけど、私達も生きなきゃいけないのは分かるね?」

 

キロさんの顔はかなり険しい――そりゃそうだよね。長年の怨敵の元締めなんだし。

 

「うん、もちろんだよキロさん。だけど……これじゃあ今は良くてもまたいつか繰り返しちゃう」

 

「そうだね。それじゃあ――ライザの考えている事を教えてくれるかい?」

 

「はい!」

 

けど、単に封印するよりこの方がもっと良くなる気がする。

目の前で微笑む錬金術師さんは、すでにそれを理解してる気がするよ。

 

さて、確認だ。

 

「アンペルさん。あたしたちの調合に大事なのはイメージだよね?」

 

「おさらいだな。どういった完成形にするか、その道筋はどうか。それを明確に持つ事だ」

 

「リラさん、キロさん。光と闇のエレメントって表裏一体なんですよね?」

 

「ああ。別のものであると同時に同じもの。どちらも世界を形作る要素だ」

 

「そうだね。だから光属性の攻撃が本来無である常闇にも特に通用したんだと思うよ」

 

「「無」って何も無いけど……精霊も実体が無いけど、召喚で現実に顕現出来ますよね?」

 

「精霊を宿すという意味では有でも無でもなさそうだが……召喚なら」

 

「……一存在と捉えるなら無を有とする。そういう見方も出来る……かな?」

 

「アルさん。錬成の基本は理解、分解、再構築、でしたよね?」

 

「その通りだよ――つまりライザが言いたいのは」

 

「はい!」

 

さすが――この人は分かってるなあ。

 

 

 

「「侵蝕」の特性を打ち消す錬成陣を、光の加護の魔法陣で描いてもらって。それを素材にあたしがこの場でコイツ(常闇)調()()します」

 

 

 

錬金釜以外で調合なんてした事ないし、考えた事も無かった。

だけど、出来ないってルールは聞いた事が無い。大事なのは調合できる場所っていう認識のはず。

 

天才のアルさんなら、こんなムチャクチャな事をするための錬成陣も頭の中に描けると思う。

これまでに何度もあたしの調合にも関わってもらった。ならこっちの世界の要素も知ってるよね。

常闇が「分解」出来たなら「理解」も出来てるって事だ。疑問点はあるっぽいけど。

 

キロさんは……アルさんの記憶を見る事が出来る。2人には申し訳ないけど――アルさんの記憶から錬成陣を読み取ってもらって、光の加護で作った魔法陣を描いてもらう。

 

それを素材として、あたしが取り扱う。下準備は全部お任せ(丸投げ)だ。

自分で言っててムチャクチャな考えだね! それで解決すんのかも分かんないし。

 

だけど、このまま封印する前に一度やっておきたい。

でないと一生後悔しそうな気がする。

 

 

 

「………………ライザ、それ本気で言っているの?」

 

キロさんが……かわいそうな物でも見るような目でこっちを見てくる。

いや、気持ちはわかりますけれども!

 

「とっても変な事を言ってる自覚はあります。でも……猶予があるなら何もしないよりはやっておきたい。それは本気(マジ)です」

 

しっかり正面からキロさんを見据える――本気って意思を伝えないと。ロミィさん流交渉術。

 

長い……実際は数秒なんだろうけど、そんな時間が過ぎて。

キロさんは。

 

 

 

「………………はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~」

 

 

 

超長い溜息を吐きだした。昨晩のボオスみたいなげんなり顔だ。

 

「まったくこの子は本当に……アル、もう頭の中で描き終わった?」

 

「特性を書き換えるなんて考えた事もなかったけど、こっちの調合にも触れているからね。常闇が何なのかもある程度は分かったつもりだし、大体は」

 

「本気で出来るとお考えで?」

 

「ライザが言うなら出来るんじゃないかな?」

 

「また頭の中を覗かれる心の準備はOK?」

 

「命令した方がいいかい?」

 

「私を縛った過去の私を殴ってやりたいよ……」

 

≪おっぷす≫

 

なんだかとってもテンポの良いやり取り――つまりは。

 

「……時間は掛けられないから一発勝負。失敗したら即封印をお願いさせてもらう。それは大精霊様との約束だからね――それでいい?」

 

「はい! ありがとうございますキロさん!」

 

この調合の要たるキロさんが了承してくれた。

これで後は、あたし次第だ。

 

「……本気か? キロ」

 

「私も自分がちょっと信じられないけどね……でもまあ、私達の数百年をたった二カ月で覆した少女が口にした事だよ? やってみる価値はあるんじゃない?」

 

「……手伝える事は?」

 

「精霊の力を分けてもらえる? わりとすっからかんだから。余裕が欲しい」

 

「わかった、任せておけ。アンペル、回復薬の残りは無いのか?」

 

「コアチャージは空でな、エリキシル剤は使えないが女神の飲みさしを直飲みするなら可能だ。常闇には私の魔法を掛けておこう。今の状態なら多少は効果があるだろう」

 

キロさんはあの光の砲撃をぶっ放したばっかだしね。そりゃ燃料切れにもなるよ。

のみさしも、今のキロさんとリラさんならあの時のレントみたいに吹き出したりはしないよね。

 

「ありがとう、アンペルさん」

 

「じゃあ俺たちがやる事は」

 

「ライザが調合をサボらないよう」

 

「見守るって事、だね!」

 

「ひっどい!?」

 

この状況でそんな事するかい! クラウディアまで!

 

 

 

「キロさんの準備はいいかな?」

 

「いいけど、嫌なんだよねえこの感覚。私も頭の中に異物を突っ込まれるわけだから……あ~成程、最初のはヨルムンガンドの興味の産物だったんだね。道理であんな大量の記憶を……うわあ何この錬成陣。これ本当にちゃんと構築式なの? ハニカム構造のパチモンじゃない」

 

「こっちの要素を構築式で表そうとするとね。描けそうかい?」

 

「やるにはやるけど……何が何を示しているの? これは全く理解不能だよ。大きさは……取り敢えず直径50cmくらいあれば滲まないか」

 

アルさんの記憶を見ているキロさんは、あたしたちの中で一番アルさんの錬成に理解がある。

そのキロさんをして、何が描いてあるのか分からないっていう錬成陣。

実は錬成陣ってそんなに種類を見た事ないんだよね。違いってのがあたしに分かるかな?

 

「……もうこれは意味を考えずに、単に絵として捉えた方が描きやすいね」

 

「それほどに変わったものなのか」

 

キロさんが加護を使った光の魔法で、真っ暗闇の世界の空中に白く輝く錬成陣を描いていく。

 

循環を表す真円――これは普通の錬成のやつだね。まあ分かる。

次は五角形と……星? 構築式っていうよか星の絵だね、五芒星。魔法陣なら分かるかな?

それからハチの巣みたいな六角形の線が……。

 

 

 

……うん? これって。

 

 

 

「どうしたライザ?」

 

「レント……3人とも、アレを見てなんか思うところはある?」

 

「あん? ……線だらけだな。今までのよりゴチャッとしてるっつうか」

 

「……ハチの巣みたいだ。以前のアルさんの錬成陣とは全然違うってのはなんとなく分かるかな」

 

「大きなお星さまは、ライザの首飾りみたいだね!」

 

特別詳しいってわけじゃないけど、昔から星を見るのは結構好きだ。

とってもきれいで、どこまでも広がってて……あたしにとっては自由で壮大な存在の象徴。

だから首飾りも星にしたし、魔法も大体が星をイメージにしてる。

 

――つまり、これってあたしを示してる?

 

で、円の中を形作っていく六角形の線と図。

アルさん以外でこれが分かるのは……多分この場で2人だけ。

 

「これはまさか……リンケージ調合のレシピイメージ、なのか?」

 

「やっぱりアンペルさんもそう思う? たどれるよね、コレ」

 

あたしたちクリント王国式のリンケージ調合の錬金術を使う時、頭に浮かべるレシピの形。

一つのマテリアル環からつながる要素の最大数は、多分6個。

だから頭を整理する時は六角形で考えるときれいに表現できる。

 

これはそのレシピにそっくりだ。各交点はマテリアル環が持つ要素を示していて。

レシピの起点、中心にあるのが――多分常闇。

その侵蝕を無くすための素材と要素が、あたしを含めてこの魔法の錬成陣には描かれてる。

正確には術者のイメージを元に再構築する錬成陣って事だよね。

 

――すごい。こうなるんだ。

 

「描けたよ。あ~しんどい! 二度と御免だね、錬金術師(天才共)の真似事なんて」

 

「もうそんな機会はないだろうさ、お疲れ様。ライザ、どうだい?」

 

この錬成陣ならあたしも理解できる――だってリンケージ調合だもん。

錬金術師(アルさん)じゃなくって錬金術士(あたし)の領分だ。やれないわけがない。

 

「いけます! ありがとうアルさん! キロさん!」

 

「お礼は島が元に戻ってからたっぷりとね……なんでライザは理解出来るんだろう?」

 

「今までの清算を考えたら君が支払う側じゃないのかい? それじゃあ、後はお願いするよ」

 

「うぐっ」

 

「はい!」

 

 

 

物として存在しないんだけど、そこにある事は分かる――魔法。

その魔法で作った物質を理解し、分解し、再構築する式――錬成陣。

全てを拒絶する闇の存在を中和するための世界の要素――光の力。

これらを一つの特性としてまとめ、取り扱う存在――錬金術士。

 

そろった!

 

ゆっくりと回転する魔法錬成陣を受け取ってあたしの手に浮かべ、常闇のそばへ。

両膝を突いたまま今も気絶してるのか、アンペルさんの魔法で動きや頭が遅くなってるのか……動かなくて幸いだね。

頭は動いてるんだとしたら――コイツは今頃何を考えてんでしょうね。

 

 

ガシッ!!

 

 

常闇の頭を掴む。素材として認識をする――なんだかイヤに分かりやすい!

でもって、調合するための魔力を絞り出す!

 

 

 

最後に必要なのは調合する場所、錬金釜……錬金術士にとってはアトリエ。

 

――それは、みんながいるこの場所だ!!

 

 

 

あとは!

 

「ここが!」

 

絶対できるっていう!!

 

「あたしの!!」

 

イメージを持つ!!!

 

「アトリエだあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」

 

 

バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッ!!!!

 

 

調合なんて言い方するけど、実際に見たらやってる事は超単純。

――錬金術士の魔力をもって、ごり押しでくっつける!!!

 

 

 

「うぅぉぉおおおおぉぉりゃあああああぁぁぁっっっ!!!!!」

 

 

 

魔法錬成陣(希望)を! 常闇(絶望)に!

押し込めえええええええええええええええええええぇぇぇぇっっっ!!!!

 

 

 

 

 

 

…………カチリ。

 

 

 

 

 

 

≪…………あんびりばぼー(コイツヤベエ)




答え「ごり押し」。常闇戦、完全決着です。

次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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