ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
何事にも終わりはありますが、それが何も生み出さないわけではありません。
誤字報告ありがとうございます。やっぱりスマホで触っちゃダメですね……。
今回もよろしくお願いします。
『随分と世話になったな。まさか災厄をここから完全に切り離せるなど思いもせなんだ』
闇の大精霊さんが話しかけてきた。やっぱりこの大精霊さんの方が話しやすい。
「あたしたちもあたしたちの都合だよ。まあアルさんの身体を封印に組み込んだのは今も納得してないけど」
『安心せい、此度は我らも面倒を被った。焼きは入れておく。光のやつが抜けておるのは今に始まっておらん』
『火のやつに焼かれると、再生に数万年はかかるのだが?』
『自業自得』
『入れたところで矯正されるかは甚だ疑問じゃが』
『おい闇の。聞いた話はどうなった?』
『ああ、そうじゃった――小僧、アレを出せ』
「私の呼び名は「小僧」で決まったのだな?」
アンペルさんがクリスタルエレメントを手に持って、大精霊さんたちに向ける。
直後に4つのクリスタルが色濃く輝き始めた。これを……素材にすんの?
『これでよいな?』
「はい。ありがとうございます、大精霊様方……ライザ、使えそう?」
「使えそうどころか、一素材扱いすんのがもったいないレベルじゃないです……?」
「島の中枢が賢者の石ベースで出来ている以上は、フィルフサの要素も通さないと組み込めないだろうからね。そこは飲み込もうか」
「賢者の石に品質の概念があるかは分からないが、極上の品になるのは間違いないだろう」
「間違ってもその製法を表に出さないようにしろ。ライザもよろしく頼む」
「もちろんだよ、リラさん」
アンペルさんから光り輝くクリスタルエレメントを手渡される。
あたしですら「何に使えるだろう?」なんて考えちゃうシロモノだ。
ランクにするならSSS+くらい? もう表現すんのも無駄だね。
世の中に出回ったら考え方は十人十色――各々の考えのままに、だよね。
あたしが使うのは今回限り。使うのは……島のみんなの日常を守るために。
こうやって使えば悪用される事も無いんだし。
「私もお借りしていた力をお返しします」
『相分かった。それと……錬金術師アルフォンス』
「なんでしょうか?」
『そこの氷狼が口にしたように、汝の身体はある意味光のやつの手製――正しくはこの世界に馴染んでおらん。丁度この場には我らが揃っている。望むなら我らで汝の身体にエレメントを吹き込み、ただの「ヒト」とする事も叶うが?』
そっか。アルさんはさっき聞いたようにこの10年……今までのキロさんに似たような感覚だった。
――疲労も痛みもなければ寝る事もお腹が空く事も無い、鎧のような特性。
今ならあたしたちと同じようにエレメントを含んだ身体にしてもらえる。
魔法もエレメントも感じ取れる、こっちの世界生まれの人間の感覚を持てる。
「……いえ、お気持ちだけで十分ですよ。ありがとうございます」
『よいのか?』
「ええ」
「いいんですか、アルさん?」
意外な事にアルさんが断った。今の身体が便利と言えなくもないけど……。
「アルが普通になっちゃったら、私の特性をライザが書き換えられない」
「あったしかに」
ホントだ。元になる光がないんじゃあたしが居たってどうにもならないじゃん。
「それもそうだし……キロさんは僕の傍にいる限り闇の特性が抑制される。逆もしかりだね。これからオーリムの浄化で一緒に居るし、汚染の理解にも加護があった方がいいだろうし。オーリムで生活する分にも困らなさそうだからね」
「えっ!?」
『今のエド……アルフォンス・エルリックの身体には大して力を篭めておらん。これまでより性能が下がったヒトに過ぎんぞ?」
「えっ? ……じゃあ僕もこれから毒草生活?」
『篭めてやれ』
『『『『『相分かった』』』』』
――アルさん、キロさんとオーリムに行くの!?
「いつ決めたんですか!?」
「話が出た事自体は…… 最終訓練の日の晩だから5日前?」
「もしアルがここに残る事が出来たならって事だったけどね。ただ……人生を棒に振るかもしれないんだよ? 何一つ娯楽なんてないし」
「じゃあ、アルさんも島を離れちまうんですか?」
「というより……アルさんが元居た世界には帰らなくても大丈夫なんですか?」
「ここに来た時に……大精霊さんが「元に戻れるかは」ってお話はありましたけど……」
可能性はともかく、アルさんにはその話もある。
大ヘマをやらかしてくれた光の大精霊さんを働かせる手もあるよね――取り立てて当然だ。
けどアルさんは……なんか遠い目をしてる?
「……どうしたんですか?」
「いや……うん。戻らなくても大丈夫なんじゃないかな?」
「根拠は?」
「真理に、あっちの状況を一方的に伝えられた。丁度メイが僕をオモチャにしていたらしい。だからまあ……こっちで出来る事を、しようと思うよ……うん」
「えっ…………なんか、ごめんね? これは流石にメンタルケアが……」
遠い目をして、声のトーンが低くなって、なんかあきらめたような感じになっちゃった。
キロさんの態度を見た感じすっごい問題ってわけじゃなさそうだけど……。
めい、メイ……たしかアルさんに関わってた女の人? また女か。
でも、そっか――島を出て行っちゃうのか。
ロミィさんの予想が現実のものになっちゃった。
「そうだったんすか……俺も出ちまうつもりだったんで、アルさんがいればライザもまだ安心かなって思ってたんすけど」
「はぁ!? レントあんたっ……あんたもすぐに島を出ていくつもりなの!?」
「ああ。この一件が終わったら、とは思っててよ。認めんのはシャクだが……クソ親父の言う事は正しい。このまま島に居たんじゃ強くなれねえし、リラさんやアルさんみたいな強え人たちにも会えねえ。世の中の戦士って人たちがどんな存在なのかも分かんねえ。だから、世界を見て回ろうってさ」
「そういえばザムエルさんとのケンカはどうなったんだい?」
「あ? ああ、アルさんが消えちまった日に不甲斐なさに乗せて、頭突きで家の壁ごとぶち抜いてやったぜ。それで終わりだ」
レントも島を出てっちゃう――こんなにすぐ?
リラさんとキロさんっていう本物の戦士を知って、アルさんっていう特級の強者を知った今、島周辺だけじゃレントの世界には狭すぎる……かぁ。
「レント君も出ていっちゃうんだね。私も……近いうちに島を離れる事になるから」
「親父さんの仕事の都合がついたのか?」
「うん……あともう数日だって」
「クラウディアもなのかい? ……僕の件が言い辛くなっちゃったなあ」
「……えっ?」
タオまで?
「――実はボオスに王都への留学を誘われてるんだ。僕なら今からの勉強でもあっちの学園に入れるかもって。どうやって調べ物をするかとかをしっかり学べそうだし、そういったものに触れる伝手も作れるかもしれないから」
「……いつ、そんな話してたの?」
「話をもらったのは女王と戦う前日……4日前かな。元々の予定は3日後出発だって。まだ返事をしてないけど……行こうと思う」
「そんな……」
3人も、いなくなっちゃう。
「……私達も島の件が解決次第、あの門を封印して去る事になる。門はあの一か所だけではないからな」
「アル、キロとオーリムをよろしく頼む。私は――最後まで門を封じる事を使命としようと思う」
「ええ」
「それも大切な事だから。こちらこそお願いするね」
アンペルさんとリラさんも、島を去っちゃう。
――あたし、ひとりだけ? ひとりぼっちなの?
いつかこうなるかもって、思ってた事は何度かあった。
なんとなく、そうなりそうだって気もしてた。
でも。本当に。こんなにあっけなく。あっという間に――
「……ライザ」
その場で崩れ落ちてたあたしを、クラウディアが抱きしめてくれた。
たぶん泣いてる……最近はずいぶんと泣き虫になったなあ。
だって……さみしいよ。
『やはりヒトというのは理解に苦しむ存在だな』
召喚されっぱなしだったフェンリルが喋り始めた。
「……なに、が?」
『たかが一度の別離に対し、それだけの感情を寄せる事だ。
「フェンリルの例えは少し極端過ぎるかな? ――でも」
キロさんがあたしの頭を撫でながら笑って答える。
「フェンリルの言う通り――これで「さよなら」じゃないよ? 私達は皆に比べると……ちょっと大変かもだけど。また会いに来るしライザも探してみてよ」
「うん。世界は何処かで繋がっている。門って具体的な例があるんだしね。方法は気をつけなきゃだけど渡る手段はあるだろうし……なければ作ってみせるよ。僕は錬金術師なんだからね」
オーリム組、キロさんとアルさんが帰ってくるって言ってくれた。
「おう! そうだぜライザ。俺も一人前の戦士ってやつになったら一回武勇伝を聞かせてやんよ。世界中を回んだからクーケン島に戻る日も来るってもんだ」
「僕も……聞いた限りまとまったお休みの時期があるみたいだから、その時にはもちろん戻ってくるよ。またライザが何かやらかしてないか心配だしさ」
「私もたくさん勉強して、島での商いを担当させてもらうようにお父さんに認めてもらうよ! そうしたらまたお菓子をご馳走するね!」
年少組、レントとタオとクラウディアも帰って来てくれるらしい。
「私達はまあ……クリント王国関連で島に来る事はもうないだろう。だが唯一の弟子の様子が心配ではあるな?」
「あそこの飯は美味いんだ、偶には味わいたくもなるだろう。その時に探してやる」
旅人組、アンペルさんとリラさんは島に寄ってくれるらしい。
なんか……みんな大人だなあ。当たり前ではあるんだけど。
レントたちも、元々何をしたいかが決まってたのがあるのかな。
そっか。
みんな島を離れちゃうのはホントだけど……ずっとじゃない。
みんなに会いたいと思うなら……あたしが会いに行けばいい。
「……わかったよ」
だから、島に残るあたしがやる事は。
「じゃあ……あたしはみんなが帰ってくる場所を作っておくね」
その機会を作る事だ。まさか狼に教えられるなんてね。殺されたってなによ?
『汝よ、そろそろ魔力切れだ』
「えっ……? あぁそっか、大精霊様に力を返したんだったよ」
『弟も汝の器を去った――容量は大きくとも生み出される力の量はただのヒトと大して変わらぬ。気を配るといい。あのクソ鳥やクソ野郎の馬は汝との縁を残している。喚べば来るだろう』
「今まで通りにやっていると痛い目を見そうだね。ありがとうフェンリル」
「君の口の悪さってフェンリル由来だったのかな?」
最後にフェンリルは「ふん」と鼻を鳴らして消えていった――最後までめっちゃ面倒見よかった。
『さて、改めて礼を伝える。巫女よ、オーリムの環境が戻れば再び精霊は生まれるじゃろう。その際はわらわも気にかけよう』
「ありがとうございます」
『面白い物も見られたしの。我らももう少し真面な意思疎通が出来ぬものか……』
『それを考えるのが闇の役割ではないのか? そこの赤子といい光の系譜はどこか奇天烈じゃ』
『まずは光のやつをどうにかするとしよう――落とし前をな』
『
『そうじゃ。光のやつを地上に堕とそう』
『エレメント過剰で世界が滅ぶわ!』
やっぱり人間くさい。
枠組みが違うって言っても、そんなに変わるわけじゃないんだよね。
それは……あたしたちも同じであって。
アルさんたちがはるか遠くの世界に生きてる人……なんて事はないんだ。
まずは「なれる」って思う事からだ。
アルさんだって――まあホントに別の世界の人だったわけだけど。
最初から何もかも出来たわけじゃなかった。
たくさん勉強して、悩んで、考えて、行動した結果、今のアルさんになっている。
雷の大精霊さんのキテレツ呼ばわりはさすがにちょっと……。
それはまあ置いといて。
そうだ。前と変わんないんだ――まずは動いてみないとってね。
「……だる。アル、おんぶ」
「子供じゃないんだからさあ……歩きなさいって言われたい? あぁレント、僕の鎧を持ってもらっていいかい?」
「ぶぶー。ヨルムンガンドが私から離れたから、もう私に命令は効きませーん」
「了解っス! ……でけえな、背負うか。タオ、俺の剣を持てるか?」
「分かったよ。肩に担げばいけるかな」
「私も持とう、レントは脚部を持て。キロ、この子達の前ではもう少し威厳を残してくれ……」
「あの大蛇が宿っていた間、キロ嬢の精神は時の流れが遅かったのだろう。内面的にはお前より遥かに若いのではないか?」
「だからってあんなにベッタリしなくても……頭はあたしが持っておくよ」
「じゃあライザの杖は私が預かるね!」
『それではあの祭壇に送るとしよう――錬金術師アルフォンス、錬金術士ライザ。世話になった』
「どういたしまして!」
「ええ。それでは」
一瞬で祭壇に戻ってきた……らしい。ノーモーションはやめてほしいな。
もう真っ暗だ。朝からぶっ通しで戦ってたわけじゃないだろうし、やっぱり時間差があるのかな?
……つうか時間!!
「アンペルさん! 今何時!?」
「……残り25分、思いのほかギリギリだったな。少々長話が過ぎたらしい。これで解除だ」
あっぶな! あたしの泣き言でみんなの人生が終了するとこだった……。
「ロミィさん達が橋の前で逗留してくれているはずだから急ごうか。引っ越しが始まっちゃう」
「はいみんな~走った走った」
「背負われているキロに言われるのは思う所があるが……まあその通りだな。合流するぞ」
常闇と戦ってから特に回復もしてないのに全力疾走とかスパルタ過ぎない!?
つうかアルさん速っ!? キロさんを背負ってんのに! 光+4属性だからスーパーアルさん!?
「ア゛ル゛く゛ん゛お゛か゛え゛り゛い゛い゛い゛い゛!!!!」
「はい、ただいまですロミィさん」
「ロミィ。嬉しいのは、分かった、から……こっそり私の脇腹に爪立てないで! あだだだだだ!!」
「当たり前でしょうが!! こんな羨ましい事をロミィさんに見せつけおってからに!!」
ロミィさんはアルさんに抱き着くついでにキロさんを攻撃しているらしい。吹っ切れたのかな?
――そのままよろしくお願いします!!
「それで……全部終わったのか?」
「まだ島の事はあるけどね。あっちについては遺恨無しってところよ」
「たまげたもんだったぜ? この世界はアルさんの親父さんに守ってもらってたんだとよ」
「アルさんがここに来た経緯はずさん過ぎたしね……」
「それでちゃんと全部解決したんだからよかったよ!」
「あんな存在に敬意を払う必要があるのかね?」
「この世界が大精霊様に支えられている事は事実。敬うべき存在である事には……変わらん」
ちょっと間が入った。リラさんも少し揺らいでるらしい。
「まあ、終わったというなら何でもいい……よく戻った」
「そうそう、ちゃんと帰ってきてくれたんだからね。そうでないとボオスが「あいつらは戻って来るはずだ」って永遠に言い続ける絡繰りになるとこだったわよ」
「……っそういうお前こそ「アル君なら大丈夫」と何度口にしていた!?」
「あったりまえじゃない! 私はそれを恥じる気なんざ欠片もないわよ!」
なかなか……どよんとした逗留だったのかな?
しかしまあ、あたしとアガーテ姉さんやロミィさんとは違う関係性だ。
兄弟姉妹ってのがいたら本当にこんなのかもしんないね。
「さあ、一先ずは島に戻るとしましょう。僕も久々にお腹が空いたよ」
「私はお腹と背中がくっついて穴が開きそう……今後の私は苦労しそうだなあ……」
「じゃあ今からおつかれさまパーティーですね! 時間がかからない範囲でたくさん作ります!」
「短時間で済ませるというなら手は多い方がいいだろう。俺も手伝おう」
「え゛っ……あんた、料理できんの?」
「逆に何故俺が出来んと思った? 隊商を組むなら遠征中は自炊だ。出来て当たり前だろう」
「と、ロミィさんが口酸っぱく言ってきたのだよ。クラウディアちゃんも疲れているだろうし、ロミィさんも作ろうじゃありませんか」
「なら道中でイタチを何匹か狩るとしよう。レント、皆も食える植物は覚えたか?」
「う、ウィッス……」
レントの反応に不安しかない……。
しかしボオスが料理できるとは。これもロミィさん仕込みね……ホント何があったんだろう?
「不安だからレントは帰りの舟で魚を釣ってよ。植物は僕でも分かるから……それとボオス」
「どうした?」
「行く事にしたよ」
「もうそのつもりで連絡を送ってある。断られても困るぞ……食料はウチからも提供しよう」
「それよ! なんであたしにも話をしないわけ?」
レントも知ってたらしいから、当時の4人で知らなかったのはあたしだけ。
というか今までずっとタオの事見てきたのに、年長組のあたしには話しなさいな。
「ライザ……お前はタオの保護者か? ――お前が面倒を見てもらっていた方だろう」
「ばっばか!? お前!?」
むっかぁああああ!
未だにそこまで言われる状態かいあたしは! しかも顔を見た感じ――これは本気で心配してる。
見てなさいよ! キチンと島を復活させてやるんだから!
「タオは将来が楽しみだな……ところでライザ、賢者の石のレシピは何とかなりそうか?」
それよアンペルさん!
これについては誰にも話してなかったね。ほんのちょっと前の事だったし。
「うん、大丈夫! もうちゃんとレシピは描けてるし素材も揃ったんだから」
「へえ。何かヒントがあったのかい?」
「そうですね!」
思いがけない所から――ヒント元はあなたですよ? アルさん。
「すぐに作れそうっていうなら……今からは大変だろうし明朝の調合かな? エネルギーの臨時補給が必要なら――って今の私じゃそんな魔力も無いんだっけ……」
「ギリギリ安定して維持できるのが明日の夕方くらいだと思います。ライザ、大丈夫そうかい?」
「大丈夫よ。レシピもそうだし……コッチはこんなのになっちゃったし」
「ピカピカになったよね!」
「なにそれ! 4色の光る宝石セット!? 灯りにすら出来そうね! いくらで売れるかな……」
「止めろロミィ。それは値が付けられるものではない」
仮に値段付けたら、国の一つや二つ買えるんじゃないかな……。
「今日も遅くなってしまい申し訳ありませんでした」
「いや。ライザから事前に聞かされていたからそこまで心配はしていないよ。こちらこそライザがいつもお世話になっていて申し訳ないね」
「ただライザからは……遅くなるのは今日で最後って聞いているけれど。この子が関わってるお仕事が終わったのかい?」
ブルネン家の食材が大量消費された即席祝勝会の後。
今日も遅くなっちゃったからアルさんが送ってくれた。気張ってはいたけど体力はスカスカだし、いろいろ先の事を知ったのもあってか頭がショート気味なのもバレてたらしい。
「ええ、しっかり一区切りついたところです。ライザは働き者ですよ」
「そうなのかい? なら遅くとも来週には収穫を始めるから仕事ぶりは期待してよさそうだね?」
「勘弁してよお父さん……」
「何言ってんだい? そういう約束だろう」
たしかにそういう約束だけど――賢者の石を作った直後に錬金術を止めて農作業ってどうなの?
「それと……お二人には先にお伝えしておきます。これまで長年クーケン島でお世話になってきましたが――近くここを離れる予定です」
「……そうなのかい? アルフォンス君の故郷に関するお話かな?」
「いえ。キロ・シャイナスさんの故郷で流行っているという病の解決に協力出来そうだという事が分かりましたので、暫くはそちらに出向くつもりです」
あーそっか、キロさんはそういう設定なんだっけ。すっかり忘れてた。
「そう……あの店員さんの。アルフォンス君はあたし達を助けてくれたくらい頭が良いんだし、あの子の力にもなれるだろうさ。ただアルフォンス君が居ないと――またライザのサボり癖が戻らないか心配だよ。いっそ嫁として面倒見てもらえないかと思っていたけど」
「ちょっお母さん!?」
「そうだね。ライザがここまで真摯に物事に向き合うようになったのは間違いなくアルフォンス君のお陰だし……二人にその気があるなら僕は真剣に応援するが」
「お父さんまで!?」
「ライザ、僕について来てくれるかい?」
「アルさんも乗らないでください!!」
人の恋心で遊ばないでください! ついていけるならいきたいよ。
あたしはアルさんが好きだ。これに関しては間違いない。
考えなきゃいけないのは、あたしがアルさんを「どう好きなのか」。
アルさん好きの筆頭はロミィさん。間違いなく一人の女として、男としてのアルさんが好き。
元々好意を大して隠してもなかった。おふざけを含めても否定した事は一度もない。
多分だけど人として、商人としてのロミィさんの在り方を変えたのがアルさんなんでしょうね。
ロミィさんはアルさんのそばにいる為に、いろいろ勉強とかの努力もしてきた。
化学の勉強だったり、島の外の情報だったり――アルさんに情報提供出来るように。
それと昨日ボソッと呟いてたけど……今のロミィさんの人脈は、もしアルさんが望まない形で島を去ってしまった時に、世界の何処だろうと探せるようにずっと準備してたもの。
そのために他の国の言葉すら勉強してる。
その上で――アルさんが選んだ道なら仕方がないと思ってる。覚悟がすごい。
そして……言い方が失礼だろうけど突然湧いて出たキロさん。
今までの話をまとめた限り、キロさんのこれまでの性格? は大蛇さんの影響が大きくて、大蛇さんがアルさんに興味を持ったから記憶を見てしまったりアルさんとよく話をしてたりした。
あたしがキロさんに思ってた「キロさんの、アルさんに対する感情は恋愛のそれじゃない」ってのはそういう事だね。
だけど……アルさんの記憶を見てしまった時、キロさんはアルさんに絶対服従を誓った。
キロさんの精霊――大蛇さんにそれを誓ったんだから、誓ったのはキロさん本人って事になる。
だから、ある意味アルさんにキロさんの人生を捧げたと言えなくもない。
仮に門が閉じられないような事になったら、アルさんが世界を去るその日までキロさんはアルさんに尽くす事になってたんだもんね。
素に戻った今のキロさんがどうなのか分かんないけど……少なくとも好意的でない異性におんぶを要求する事はないよね? リラさんでもよかったし。大蛇さんが居ようが同衾すんのもない。
ロミィさんレベルになるかは分かんないにしても、一度は人生をかけてるくらいだから「そうなる」可能性は十分あるわけだ。
そんな二人を見て――うらやましいと思う。あたしらしくないのかもだけど多分「嫉妬」だ。
アルさんが誰かにとられちゃうっていう。そこまでアルさんに尽くせるのかっていう。
この夏が始まる前、あたしのアルさんへの印象は「すっごい物知りの楽しくて優しいお兄さん」。
その時に今までのロミィさんやキロさんを見ていたら「よくやるなあ」で終わってたと思うんだ。
だけど、今はどう?
――違うよね。
会った事はないけれど、あたしの中での偉大な女性トップクラスのある人はこう言ったらしい。
自分の人生「半分どころか全部あげる」って。
本気で相手を支えるってのは、正しくそういう事なんだよね。
でも、今のあたしじゃアルさんの隣に立って支えられない。悔しいけどまだまだ子ども。
こっちの錬金術を除いたら……あいかわらず憧れの存在、今は追いかけるばっかだ。
まずは知らなきゃいけない。話を合わすとかって以前に――
だからお母さんたちのお話は――もっと大人に近づいてからだね。
これで第十章完結です。ここまでのご読了大変お疲れさまでした。
8割オリジナルの章でしたが原作っぽい雰囲気を少しは感じられたでしょうか?
章題には3つの意味を込めたりしました。
やっとアルの本来の目的を達成し、後は島のエネルギーを補給するだけになりました。
騒がしかった冒険が終わった後には。
数日頂きまして、次章が最終章になります。
新たに評価コメントを付けて頂きありがとうございました。
作者冥利に尽きるというのでしょうか。とても嬉しいです。
どうぞ最後までお付き合い頂ければと思います。
次回も楽しんでいただければ嬉しいです。