ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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タオ、ボオス、パティを連れて対岸へ。
本作本編ではあまり出さなかった要素をちょいちょいと。

最近初期の頃の話を修正し直し始めておりますが、すっごい読みにくいですね……。
それらを乗り越えて、ここまでお付き合い頂き本当にありがとうございます。

今回もよろしくお願いします。


118. 819日目② ひと夏で学んだ成果と成長

「すごいですね、あのリュコの実がこんなにも……瑞々しくて大玉で」

 

「あたし達にとってはこれが普通なんだよ。だから特産品になるなんて思ってなくてさ」

 

「それを考えるのが商売人の仕事だからな……あの「でかぷに」は、なんだ?」

 

「これ……島のクーケンフルーツより品質がいい、のかな?」

 

「あたしの錬金術の実験場でもあるから、色んな肥料とかも試してんのよ。あのでかぷには大丈夫。飼ってるわけじゃないけどここを見て回ってくれてる変わったぷにだから」

 

 

 

あたし達の第二の拠点――アンペルさん達の拠点でもあり、アンペルさんが作った畑。

 

ここへの掃除やらを兼ねて通ってるうちに有効活用しようと考えた結果、うちの農場に比べたら規模は小さいけれどそれなりに拡張して、今では多種多様な果物とかを栽培するようになった。

 

一から種を作る事は……出来なくはないんだろうけどやるべきじゃないと思った。なんだか人体錬成を連想しちゃったからね。でも種と種を掛け合わせる事も錬金術で出来るのだ。

品種改良ってやつと言えるのかな? ヴァッサ麦も元々はそうやって生まれたらしいからね。

 

ここに置いてある農作業器具は島の物より便利で複雑なやつもある。

鍬で一から耕すのは流石にやってらんなかったからね……ちょっとズルした。

まだ1年ちょっとだから実が生ってない木々も多い。収穫はもう少し先の話になりそうだ。

 

それで色々麦以外の作物も勉強したんだけど……まさかクーケンフルーツの栽培に塩分が必要だとは思わなかった。道理で他の土地じゃ育たないわけだね、普通じゃありえない組み合わせだもん。

 

他の作物についても品質には自信がある――工房に残ってた農業関連の資料をフル活用させてもらったんだから。これに関してはクラウディアやジェナより詳しいと思ってるよ。

まあ、セリさんっていう超絶スペシャリストはいるわけだけど……。

 

ちなみに種について……当初はセリさんにかなりイヤな顔をされちゃった。

オーリムに自然を取り戻す為にこっちで活動されてたって事らしいからね。クリント王国の技術で種を作るなんて事は、そりゃあすぐに受け入れられるわけがない。

 

そんなわけで現在はセリさんの監査を受けつつの調合だ。

幸いそれなりに気を遣ってはいたから、以前の分も含めて飲み込んでもらえたけどね。

 

「私が錬金術に関わる事になるなんて」って言葉は――なんだかあの夏を思い出す。

 

あのでかぷには……暫く新しい住民が現れなかった森のクレーター修復跡に突如現れた。

最初は討伐も考えたけど、どういうわけか敵意らしい敵意が感じられなくて。

そのままあたしについてきて、ここに住み着いた感じだ。

魔物除けや害虫退治なんかもしてくれて、今じゃ立派なここの管理……者? の一体である。

 

 

 

「それじゃあ……パティさんはタオと一緒にクーケンフルーツの採取をお願いしていいかな? 出来るだけ重ねずに並べる感じで。潰れやすいけど、その辺はタオに聞いてもらったらいいよ。 ボオスは甘露の実(ピーチ)をいい? それも取り扱い注意だから。大体分かんでしょ?」

 

「了解だよ……じゃあパティ、やってみようか」

 

「はっはい! なんだか緊張しますね……初めての、共同作業

 

「ただの作物採取だから大丈夫さ」

 

違う点だと思うわよ、タオ。

 

甘露の実(希少食材)の栽培とはな。やはり錬金術は活用すると恐ろしい事になる」

 

「ちゃんと線引きはしてるわよ? 市場に出回らないように物流はクラウディアが直接管理してるし、品質面で野生種より良品なのも自覚はあるから、外から受粉させても内から花粉は飛ばさないようにしてるよ。種も普通じゃ発芽しないし」

 

「……ライザとは思えん慎重さだ。あの人の教育の賜物か」

 

「あたしも……それだけ学んだって事よ」

 

2年前に錬金術の危険性については散々説明されてるんだから、それを捨て置くような事は絶対にしない。自然の在り方を変えるような事にならないように。

これを守ってたからセリさんもOKを出してくれたわけだしね。今の発芽条件はセリさんの「木精」の力を篭めてもらう事にしてある。

 

この範疇で収まらないような営業はしない。これはクラウディアにもお願いした事だ。

 

「じゃ、よろしくね。あたしは王玉(リンゴ)を採って来るから」

 

「市場での超高級品が当たり前のように聞こえたが?」

 

実際生っているんだからしょうがない――特にリンゴの栽培は必須だったんだもん。

 

 

 

 

 

 

銀時計で時間を確認――小一時間は経ったかな。

今でも日の高さで時間は分かるけど、お店をするようになってから時計で確認する事が増えたね。

 

普段ならあたし1人だけど、今日は他に3人もいるから単純な収穫量は4倍近い。

明日の話もあるしホントに助かったね。

 

「ふう、これだけあれば明日は十分足りるかな。皆ありがとね」

 

「なんというか……壮観ですね。こう言うと失礼かと思いますが……私達貴族でも気軽に手が出せないような品物が大半を占めるなんて」

 

「言動はちゃらんぽらんだけど錬金術の腕前は天才的だからね、ライザは。加えてクラウディアの目も入っているなら低品質のわけがないし」

 

「ちゃらんぽらんって何よ。前みたいにうに投げたり虫入れたりなんて事はとうに引退したわよ」

 

「最初からせんのが普通と気付け。しかし……人が来る事が少ないとはいえ警備はいいのか?」

 

「あのでかぷにがいるし、人や魔物除けの香は焚いてあるから元々ここを知ってる人でもないと入ってこれないよ。アイツら用に設置されてた感応設備も人向けに調整してあるからね」

 

ついでにラムローストくん2号も外に出してある。どれだけ攻撃してもケロリとしてるオオイタチなんて、正体を知らない人には恐怖でしかない。

 

感応設備は元々フィルフサ用だったわけだけど、閾値を変えれば人でも感知可能だ。

ある程度時間がかかっちゃうけど何もしないよりはマシのはず。今のとこ作動してないけどね。

あんな風に……あれ?

 

「ありゃ? 反応してる……あたしの魔力が近くにある状態なら作動しないはずなんだけど」

 

今頃工房の設備も反応してるんだろうな。クラウディアが飛んできかねない――湖を凍らせて。

 

それにしても……はぐれの魔物か、誰かここを知ってる人が近くにいるのかな?

それなりに強いエレメント持ちの知り合い? 一応私有地だって看板は立ててあるんだけど。

 

 

 

「……へえ、随分と良い景色じゃない?」

 

 

 

聞いた事のない……大人の男性かな。森の奥から声が聞こえてきた。

念の為にセレスティアシーカー(ガチ装備)を握る――これを人には向けたくないけど念には念をだ。

 

「タオ、パティさんをこっちに。ボオスも後ろに居て」

 

特にパティさんを荒事に巻き込むわけにはいかない。

何事もなく済んでくれるといいんだけど。

 

「……おう、結構警戒されちゃってる?」

 

現れたのは――全身軽めの皮鎧に大きな帽子、そして口元を隠すマスク。

見た事がない人だ。この辺の人じゃなさそうだね。

 

「……どちら様でしょうか? ここは私有地なので立ち入りはご遠慮頂いているんですが」

 

「そいつは悪いね。連れがここを知ってるって事で通らせてもらったんだけど」

 

連れが……知っている? 誰だ?

 

クリフさん、先に行かないでくださいよ……おっ? ライザじゃねえか!」

 

こっちは聞き覚えのある……大体2年ぶりに聞く声。

見えてきたのは――大剣を背負った青年剣士。ロン毛とは言わないけど軽く長めの赤髪。

 

て事は。

 

「……レント、なの?」

 

「おう! 久しぶりだな――ちゃんと帰って来たぜ? 随分髪伸ばしたんだな。一瞬迷っちまった」

 

「レント、久しぶりだよ。この辺に来てたのかい?」

 

「……タオか? でっかくなったじゃねえか! 男らしくなってて安心したぜ」

 

「お前は大して変わらんな。以前より装いが重装備になったようだが」

 

「ボオスもか。お前も変わんねえな、学び舎の長期休みってやつか? そっちの女の子は知らねえな……タオの嫁さん候補か?」

 

「よっよっよよよめでもっ、つっ、つまでもないでしゅ! タオさんにぃ、家庭教師をっ、していただいているものですっ!」

 

「お、おう……なんか悪かったな」

 

これは毎回大変そうだ……さてと。

 

「それで……こちらの人は?」

 

「ん? ああ、一緒に旅してるクリフォードさんだ。途中で知り合ってな、成り行きで一緒に動いてる感じだ。盗賊じみた事すんのはカンベンしてもらいてえんだけどな」

 

「トレジャーハントだって言ってるじゃない? レントがいると食べられるものが分かるってね――お嬢ちゃんが例のライザちゃん? へえ、結構戦闘慣れしてるみたいじゃないの」

 

 

 

「――試されますか?」

 

 

 

ブオッ!!

 

 

軽く魔力で威圧する――絡んでくるなら話は別だ。売られたケンカは買う……この場合は逆?

魔法の前にまずはアイテム(対人音爆弾)で無力化させてもらう事になるけど。

 

「……いや、遠慮しとくわ。ただじゃ済まなさそうじゃん」

 

ここと島を守る事には躊躇しないと決めてるからね。仮に格上だろうが逃げなんてあり得ない。

だけどレントもいるんだし、戦闘になる事はなさそうだ――シーカーを下ろそう。

 

「ここを通るだけっていうなら……失礼しました。クーケン島に行かれるんですか?」

 

「……お前、本当にライザか? さっきの流れもそうだったけどよ、ヒヤッとしたぜ」

 

「皆驚くよね。僕もだったし」

 

「元が()()だったからな。当然だろう」

 

「後で全員錬金術の実験体になりたい? 暴徒鎮圧フラムの威力試験の」

 

「ら、ライザさん、その辺が余計に印象を助長していますよ? 冒険譚が誇張されてないのはよく分かりましたけど……い、今もちょっと冷や汗が

 

「随分と思い切りのいい性格みたいねぇ。まあレントも積もる話があるってんなら、ここで話しててもいいんじゃない?」

 

取り敢えず根が悪い人じゃなさそうだ、反省。でもコッチの都合もある。

 

「ごめんなさい。今から島に作物を運ばなきゃいけないので」

 

「この畑のやつか……大分広くなったな。元はアンペルさんの畑だろ?」

 

「……なかなかに珍しいものが」

 

「口外は避けてください。ここの管理にはかなり気を遣ってるので」

 

「トレジャーハンターとしての血が騒ぐけど……その杖の錆になりたくないし? 口は縛っておこうじゃん」

 

一応は守ってくれるみたいだ。何かあったらレントに全責任をぶん投げよう。

ただまあ……あたしの杖の錆になるくらいなら御の字なんだよなあ。

某店長に現場を目撃されたら、瞬間凍結の上に粉砕される覚悟をしてもらわなきゃいけない。

 

それじゃあ。

 

「島に行くんだったら……レントが舟を漕いでくれない? それが一番速そうだし」

 

「構わねえよ。それにしてもタオとボオスがいるって事は……日付は間違えてねえって事だな」

 

「日付?」

 

「なんだよ、ライザが決めた約束だろ? ――明日で合ってんだろ?」

 

「え゛っ……マジ?

 

たしかに2年前の夏だった事はちゃんと覚えてる。けど、まだひと月くらい先だと思ってた。

具体的な日付まで覚えてなかったや……最近忙しかったしなあ。

 

ふと、腰からぶら下げていた銀時計の蓋を開ける――げっ。

上蓋の裏には……明日の日付と「D o n ' t f o r g e t(忘れたらペナルティ) !」の文字。

時計の方ばっか見ててこっちを見てなかったらしい。

 

つまり……アレ? 明日の「感謝祭」って「約束の日を作ったあたし」に対するって事なの?

 

 

 

……うん、期限前だからセーフだね!! レントとクラウディアには黙っとこう。

 

 

 

「僕達もソレがあったから、今年は絶対に休みの初日前に戻ろうって話してたんだよ? 明日の定期便じゃ乗れるかどうか分かんなかったからさ」

 

「それを発起人たるお前が忘れているあたり……やはり抜けているな」

 

「かなり前からわざわざ調整して日取りを空けていらっしゃいましたけど、そういう事でしたか」

 

「わ、忘れちゃいないわよ!? 数日ズレてただけで!」

 

じゃあ3人ともそれに合わせて帰ってきてくれたのか。

別に2年きっかりじゃなくてもいいんじゃない? って思うけど――守ってくれた事は嬉しい。

 

しかしまあ。

 

「今の状況だと……大人組を探しに出るのはちょっと大変そうだなあ。お店もあるし」

 

「やっぱ噂に聞いた「エルリック菓子工房」ってライザの店なのか。どうせクラウディア辺りが手伝ってんだとは思ってたけどよ」

 

「味は良く、種類は豊富で、尚且つ手頃な価格……こんな嬢ちゃんの店だったとはねえ」

 

「あたしがオーナーではありますけど、実質の経営はバレンツ商会の一人娘がしてますよ」

 

「えっ……あの、氷の女王様直々? あの島に、居んの? 虎穴ってレベルじゃなさそうじゃない? ――竜の尾でも踏む気分になってきた」

 

クラウディア、あなた王都で何をやらかしたの? あたしの想像を更に超えてない?

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「あ、おかえりなさいライザ。感応装置が反応していたからちょっと心配だったよ。パティさん達もありがとうござ……レント君!?」

 

「おう、久しぶりだなクラウディア。大人びた感じがするぜ」

 

「……うお、本当にいる? ちょっと寒気がしてきた」

 

店の中は明日の営業に向けて少し模様替えの雰囲気だ。

回転率を上げないといけないから座席は少なめに、人が入れるスペースは広めに。

後は……クレープの鉄板も配置中だね。

 

「レント君もライザを手伝ってくれたんだね、ありがとう……こちらの方は、どこかで?

 

「何もしない! 何もしないから!」

 

一瞬クラウディアの気配が変わった――今のはちょっとヤバめだった。

クリフォードさんも明らかに狼狽してるなあ。まあ、ある意味安心できるんだけどさ。

さてと、まずはこっちの報告をしておこう。

 

「皆に手伝ってもらったお陰で予定より多めの種類の作物を集められたから、クレープに挟むトッピングの枠も広げられるんじゃないかな」

 

「う~んと……そうだね、結構選んでもらえる形に出来そうかな。形だけ整えて下準備をしておいてもらうよ。ジェナさん、セリさん、少しいいですか! ――ごめんね皆、また後で!」

 

そう言ってクラウディアは店の中に駆けていった。ホントに忙しい。

ならあたしが働きゃいいとも思うけど……寧ろ邪魔になりかねない。適材適所ってね。

 

「……心臓が、凍るかと思ったじゃん?」

 

「ぜってーにクラウディアを怒らせんのはカンベンしてください。ライザとは「ヤバい」の方向性が全然違うんで――俺だろうが手加減なしっすよ、多分」

 

ざっつらいと(間違いない)

 

「去年の夏だったっけ? 王都で一瞬だけ発生した謎の猛吹雪」

 

「ああ。クラウディアが王都の菓子店で働いていた際に、無謀にも馬鹿な事をしでかした奴がいたそうだな……死んではいないはずだが」

 

「……アレ、そういうお話だったんですか。まさか知っている方の仕業だったとは。今ので納得がいきましたけど」

 

事情はともかく……だね。

クラウディアは今も堂々とエセリアルトーンを使っているから、魔法の威力は半端じゃない。

――でもやりすぎだとはあたしも思う。いや、シーカーを使ってるあたしが言えないか。

 

さて。

 

「それじゃあ、皆ありがとね。この後はどうする? 時間があるっていうなら……特に大したものは置いてないけど2階で話してもらっててもいいよ?」

 

「ううん。パティに島を案内しようと思うし、僕も親に顔を見せて来ようと思うから。ひょっとしたらまた後で来るかもだけど……いいかい?」

 

「いいわよ。ここの人には話しておくから、あたしの名前を出したら大丈夫」

 

「お世話になります」

 

「俺も父さんの所に行ってくる。まあ……俺の場合は戻っては来んだろうがな」

 

「モリッツさん親バカだもんねえ」

 

「否定できんのがなんともだな。ランバーも逞しくなっているといいんだが」

 

元々ボオスはそれを予想してたもんね。ランバーはレント化が進んでるわよ?

 

「俺もクリフさんに島を案内してくるぜ」

 

「せっかくここに戻ったんだから、ザムエルさんにも顔を見せてやんなさいよ」

 

「……あれから、どうなった?」

 

「何回かあたしの世話にもなってるけど――ちょっとは落ち着いた、かな?」

 

「……そうか、すまねえな。じゃあ一発シめてくるぜ」

 

「なんか……ここの島民ヤバくない?」

 

比較的ヤバめのメンツが、たまたま一か所に揃ってるだけなんですけどね。

そも……本当にヤバイ側の人達は、まだここには1人もいないんだから。




というわけで畑とでかぷに、クリフォードの登場です。彼は不憫役です。
クリフォードに関しても口調が安定しません……。

連載初期から錬金術の危険性は説かれているので、ライザもしっかり学習しています。
そして段々作者の中で、クラウディアが強キャラから凶キャラと化しつつあります。

では819日目の夕方へ。
次回も楽しんで頂けたら嬉しいです。
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