ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
ほぼオリジナルエピソードになりました。
オリエピを書いている方が圧倒的に楽しいですね。
クラウディアは清楚な印象ですが、私の中ではかなりのおてんば枠です。
アニメ第1話先行を見た限り、アニメ版は弓装備?
誤字報告ありがとうございます! 見返してはいるのですが……。
今回アンケートをお願いしています。読みやすいかどうかです。
読み直していると自分でどうにも読みにくいと感じたので、
本話は意図的に句読点(特に「、」)を減らしています。
ご感想をお聞かせください。
今回もよろしくお願いします。
「これはまた、随分な状態だね」
ソレを見てさすがに驚いた風のアルさん。
その対面には座ってるあたしと、アルさんとは初対面のクラウディアだ。
「はい……その、ライザの素材集めを見ていたらやってみたくなってしまって、つい……」
「ごめんクラウディア。あたしも考えとくべきだった」
「ライザのせいじゃないよ! 私が考え無しにやってしまっただけで……」
「島ではなかなか見ないタイプとは聞いていたけど、こういう方向だったとは」
あたしたちの間に置かれているソレは。
軽く曲がって、軽く潰れて、擦った跡があるフルートだった。
何でこんな事になったかというと。
「やっほー、遊びに来たよ!」
「いらっしゃいライザ。今日は来てくれてありがとね」
数日前、レントとタオも居た3人でお邪魔した際にクラウディアから今度は2人で会えないかって事で、また会う約束をしたんだ。なんでも見せたいものがあるって。
今日はその約束を果たしに来たってわけ。
約束なんかなくても来るけどね!
「前にもご馳走になったけど、クラウディアの出してくれるお茶とお菓子ホントにおいしいね」
「そう? お茶はいい葉かもしれないけど、そのクッキーを焼いたの私だよ?」
なんとこのおいしいクッキー、クラウディアのお手製!?
すごいって思うのと……すっごく負けた気分になる。なんていうかその、同性として。
「すごいね! あたしは料理のレパートリーが少ないからまだまだ練習中で……お菓子なんて作ろうとした事もないよ」
「私にとってはライザたちの方がすごいよ。あれからもみんな頑張ってるんだよね?」
時たま訓練してるレントを見かけるらしいクラウディア。あれは今に始まった事じゃないよ?
「まああたしたち3人ともやりたい事の方針が決まって、それにどっぷり浸かってる感はあるかな?」
「ライザは錬金術で、レント君が武術、タオ君が古文書の解読かぁ。すごいよね。私はお父さんに付いて回っているだけだし……」
「そんな事ないよ。クラウディアはルベルトさんと一緒に色んな所を回ってさ、商いのお手伝いしてたんでしょ? クラウディアと会う前まではあたしサボってばっかだったけど家の農業手伝ってただけだし、タオもおんなじようなもの。レントは何してたのかも知らないし」
レントは自分の家にあたしたちを出来るだけ近づかせない。
理由は明白――ザムエルさんだ。あれは仕方がない。
だからレントも家にはほとんどいなくて、見かけてたのは大体港で釣りをしている姿だね。
あたしの家も島では比較的大きな麦農場で、商売してる事には違いないけどあたし自身が直接やり取りしてるわけじゃないし。
アルさんの工房にいて思うんだ。お客さん一人一人の要望に応えるのってホントに大変な事で、それを解決していくには相当な実力がいるって。
「私はお飾りだよ? 直接のやり取りは全部お父さんがやってるからね。勉強はしているけど……今は本当に付いてるだけなんだよ。隣の芝生は青いっていうのかな、私はみんなみたいに冒険をしてみたい」
「あたしたちみたいな、冒険?」
「うん、誰かについて回るんじゃなくて。自分の足で、自分の行きたい場所に行ってみたいんだ」
そっか。クラウディアもあたしたちに似たものがあるんだ。
違いはクラウディアもしたい事があるけど、他にやるべき事があってそれを優先しているって事。
要は、あたしが真面目に農業をやってるようなもんだ……うわぁ超大変だ。
とは言ってもなあ。ルベルトさんの話がもちろんあるんだから、はいそうですかと連れ回すわけにはいかないよね。
「う~ん。それじゃあ、あたしたちがクラウディアを守れるくらいに強くなったらルベルトさんに話してみようか」
「ホント!? 約束だよっライザ!」
「う、うぅん」
けっこうグイグイ来るね!? 島の外の子ってみんなこんな感じなの?
クラウディアはいつまでもこの島にいるわけじゃないんだから急がなきゃなぁ。
そんな感じでお話を続けて、今日の本題の一つだ。
クラウディアが箱――あの時のケースだね、を抱えて持ってきた。
「見てもらいたい事があって」
ガチャッとケースの留め具を外してふたを開ける。
中に入っていたのは楽器。笛だよね? 名前はたしか、ええと。
「フルート、だっけ?」
「そうだよ。ずっと前から練習してるんだ」
濃い青色の細長い筒に金色の金具が付いている感じだ。見た目だけで高そうだね。
「練習はしているんだけどお父さんたちにも隠してるんだ。その……恥ずかしくて」
「恥ずかしがる事ないと思うんだけど? って事はあの時森にいたのは」
「うん。練習のために馬車を離れていたら迷子になっちゃって。あの時は本当にありがとう」
ルベルトさんが言ってた「時々一人で出歩く」ってこの事だったんだね。
「それで今日、ライザに見てもらいたいって言ってたのは……私の演奏を聞いてもらいたくて」
「あたしに? なんというか、あたし音楽は全然だから大した感想とか言えないよ?」
「ううん、そういうことじゃないの。今まで人前で吹いた事がほとんどなかったから。今も自信がなくて怖いんだけど……ライザの前でなら大丈夫と思って」
「そっか。それじゃあ、聞かせてもらっていいかな?」
「うん。こちらこそお願いします……それじゃあ、いくね」
一息ついてクラウディアが目をつむり――フルートが音を奏で始めた。
音楽の良し悪しっていうのはあたしにはわからないけど、心地いい音。
一生懸命練習してきたんだなっていうのは分かるんだ。
周りの空気もすごくおだやかな感じだ。
だから他の事を考えてしまうあたしがイヤになる――なんで筒からこんなキレイな音が?
一曲吹き終えてフルートを胸に抱え、クラウディアが目を開けた。
拍手拍手!
「すごいよクラウディア。とってもきれいで心地いい音だった」
「本当? ありがとう。勇気を出してよかった」
「やっぱり恥ずかしがる必要ないと思うんだけどなぁ」
まあそこはあたしがどうこういう事じゃないよね。
「時間はかかると思うけど頑張ってみるよ。今日はありがとうね。ライザはこの後予定ある?」
「あたし? いつもみたいに素材採取をしてから錬金術の練習かな?」
昨日アルさんに、早速目標となりそうな素材を見せてもらったしね。
「それなら……よかったら私も付き合わせてもらっていいかな?」
「採取に? 知ってると思うけど地味だよ? 見てて楽しいものじゃないと思うけど」
「ううん。普段ライザたちがやってる事を少しでも見てみたいんだ」
そういう事なら――という事でクラウディアを連れて素材採取に行きますか。
さすがに対岸に連れていくわけにはいかないから島の中よね。
ボーデン地区や旧市街地は見慣れてるだろうしラーゼン地区に行きますか。うにとか七色葡萄とかを集めるとしましょ。
クラウディアはフルートをケースに仕舞って……持ってくの? 行った先で吹いてみるのかな。
という事でラーゼン地区に向けて2人で歩き出した。
「なんていうか、空気がすごくきれいだよね」
「ただ田舎なだけだって。他の街ってどんな感じなの?」
「場所によって結構違うけど、クーケン島は自然が残ってる感じがするよ。王都にも農場はあるんだけど側は商業施設があるし、農場も働いてる人がそんなにいなかったかな」
「場所はあるのに働いている人がいないの?」
「うん。食べ物は外から仕入れている事が多くって、あんまり農業はしてないの。その中で今王都で人気なのがリュコの実――つまりクーケンフルーツだよ。名前が変わっちゃってるからどこで作られてるのか突き止めるのが大変で……お父さんが今回のお話を聞いた時はすぐに動いたんだ」
どういうわけか知らないけど、名前が変わっちゃってるんだ。
話を聞く限り他の街でクーケンフルーツは作られていないらしくって、作れないか試した人もいたそうだけど全くダメだったんだって。行商の人が少量運んでる感じかな?
あたしにとってはどこでも作れるただの甘いトマトでしかないんだけど、分かんないもんね。
ラーゼン地区を歩きつつ周辺の建物の説明もしてみた。
あたしの家を「とっても素敵だね」って言ってくれたけど、あたしの部屋は屋根裏だからね?
いやまあ広いからいいんだけど。
まずは家の裏手。あたしたちがそろって初めて対岸に出た浜に繋がる道で七色葡萄の採取だ。
クラウディアが言うにはブドウって良く出回ってるのは紫色だけのと、黄緑色だけのものなんだって。目に楽しくないわよね。
それから北西の端。望郷岬に連れてきて、あそこがタオの家だよって教える。
今日タオは不在かな?
そして。
「そぉうりゃ!」
ドコッ!
杖で思いっきり樹をぶっ叩き、落ちてきたうにを採取する。
頭に降ってこないように気を付けないと。
ちなみに今日は鎌も斧も持ってきてない。アトリエに寄ってないからね。
「丈夫だね!」
ぶっ叩かれても実を付ける樹か、叩いても曲がらないあたしの杖か、うにを頭に受けても平気なあたしか。
クラウディアがちょっと驚いた感じだ。
「元々作業用の道具って役割もあったからね。まあこれは改造してもらってるけど」
一応杖の事っていう体で話を進めよう。
「元のあたしの手製補強杖でも、このくらいは大丈夫だったんじゃないかな?」
って言うと……クラウディアはおもむろにケースからフルートを取り出した。
――景色も良いし、ここで吹いてくれるのかな?
そう思ってたあたしの考えとは裏腹に、クラウディアはむ~んとフルートを見つめて。
「クラウディア?」
右手に持ったまま、そばの草むらに寄っていく。
そして――振りかぶった。え、マジか!?
「ちょっ!?」
「えいっ!」
ただの草だけならよかった……まだよかったのに。
ガキッ!
草むらの中に隠れていた岩とフルートがごっつんこして、聞こえちゃいけない音が……。
一連のクラウディアの行動に固まるあたしと、さっきの音と手の感触に固まるクラウディアと、岩との衝突で止まったクラウディアの右腕。
恐る恐る草むらからフルートを抜くと……ああぁ。
「……ラ、ライザぁ」
見るも無残、とまではいかないけど楽器としては致命的よね……。
ところどころ傷ついて、ぶつかったところが軽く曲がって潰れたフルートがお目見えした。
「……ごめん。もうちょっと早く止めてれば」
「う、ううん。全然ライザが悪いんじゃないんだけど、ど、どうしよう……」
楽器に関してはトンチンカンだ。今のあたしじゃ錬金術で直せるとも思えないし。
となると。
「プロに聞くしかないかぁ……」
「まあ楽器は採取道具じゃないからね。気をつけようね」
という事で、アルさんの工房に持ち込んだのであった。まただよ。
「そういう事なんですけど……アルさん、直せるかな?」
「うん。勿論出来るよ? それが仕事だしね」
「本当ですか!?」
フルートを両手に乗せ観察して事も無げに直せるというアルさん、さっすが。
クラウディアは嬉しさと驚きがごちゃ混ぜになってるよ。
「楽器も道具には違いないからね」
「ありがとうございます。アル……エルリックさん!」
「アルでもエルリックでも呼びやすい方で呼んでくれたらいいよ。それでクラウディアさんとしては、このフルートを元の状態に戻せばいいのかな?」
「「さん」なんて要らないです。クラウディアと呼んでください。そのつもりでしたけど、それ以外にも出来るんですか?」
なんとなく含みを持たせたアルさんの質問。
ああ、これはアレだ。魔改造への誘いだ……。
「うん。えっと……一応の確認なんだけどクラウディア。このフルートで魔法使えたりしない?」
へっ?
「あっはい、旋律に乗せる形で使えるみたいです。実戦に使った事はないんですけど」
ふええ!? 使えるクラウディアもクラウディアだけど、何でアルさん分かったの?
「勘だよ」
絶対ウソでしょ!
「まあまあライザ落ち着いて。ライザの魔力を測った事があるのは覚えているでしょ? エレメントは分からなくても、魔力の残滓があるかどうか位は僕でも分かるよ」
「あたしは分からなかったんですが?」
「要努力だね」
あはは、と笑うアルさん。ぐぬぬ。
「それで確認を取ったのは……一つ試してみたい事があって」
「試し、ですか?」
「うん。ライザの杖に僕の手が入っているのは知っているかな?」
「はい。改造してもらったとは聞きました」
「僕もライザとはやり方が違うんだけど……錬金術が使えるんだ」
思わず口を塞ぐクラウディア。全く考えていないよね、そんなこと。
「言っちゃってよかったんですか?」
「クラウディアは掟に関係ある人じゃないし、ライザの錬金術も知っているんだろう? なら隠す必要なんてこれっぽっちもないさ。それで試しっていうのは、ライザの杖と同じようにそのフルートを別素材で置き換えて錬成しようと思ってね」
「ええっと。その、錬金術で別の素材から作るって事ですか?」
「そうなるね。だから元のとは別物になる。この試しに許可を貰えるならお代は無しでいいよ」
自分で実験したい代わりに、修理代はタダ。等価交換ってやつかな?
「私としてはとってもありがたいお話なんですけど……よろしいんですか?」
「うん。結構大事な試しになると思っているからね。僕にもライザにも」
「えっ? あたしにもですか?」
うなずくアルさん。
「使おうと思っている素材は昨日ライザに見せたスタルチウムもどきだ。これを元のフルートを形作っている金属部分……まあ大半だね。それと置換するなり混ぜるなりで錬成する」
アルさんがフルートの金属部分にトントンと触れながら話を続ける。
「だけどクラウディアが魔法を使えるんだったら、僕の単なる錬成だけじゃなくってエレメントの要素も考えた方がいいと思うんだ」
「それって……まさかアルさんの錬成とあたしの調合を混ぜるって事!?」
また変な事を言い出したなあこの人は!
仮に成功したらアンペルさんたちも想像してない、とんでも錬金術になる気がする……。
「ライザの錬金術と僕の錬金術でエレメントの要素を調整した物が作れれば、レントの剣やタオのハンマー、そしてライザの杖も使い勝手のいい形に出来るんじゃないかと思ってね。勿論良い形にならなかったならフルートは元の形で作り直させてもらうよ」
これが島の人にはない、アルさんがアルさんたる所以なのよね。
出来るんじゃないかっていう発想と行動力。
アルさんの力になろうっていうなら、あたしにも出来なきゃ。
それにあたしたちの装備にも応用が利くなら万々歳だしね!
「わかりました。あたしもやります! なんたってクラウディアの大切なフルートをいいものにするためだし!」
「ありがとうライザ! アルさんもありがとうございます! よろしくお願いします!」
「まいどあり」って笑顔で答えるアルさんは、あたしたちを連れてあたしのアトリエに移動した。
実はDLCではフルートで採取してるんですよね……。
なおクラウディアは王都出身ではないのですが、無印当時は他の街の設定が
皆無だったため、王都にいることが多いという事にしています。
武器はもちろん調合で作れるんですが、武器というものをほぼ知らないライザは
それをまだ理解していません。なのでこんな流れにしてみました。
次はフルート修理、調合と錬成の混ぜこぜゴリ押しです。
前書きの通り、読みやすさはいかがだったでしょうか?
アンケートのご協力よろしくお願いします。
次回もよろしければ、ご覧いただければ嬉しいです。
句読点の数はどのくらいがいいでしょうか?(本話基準)
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多すぎる
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ちょうどいい(本話程度)
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少なすぎる