ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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いつかの紹介状は招待状になりました。
ロミィが本気を出すとこうなっていたんだろうなあという。

状況をご想像しながらお読みいただけたら幸いです。

今回もよろしくお願いします。


122. 約束の日② 乗り切れ お菓子感謝祭!

「ロミィから聞いていたが、随分と沢山種類があるな――欲しいのはどれだ? ご馳走しよう」

 

「ああ~~!!?? またメルルちゃんばっかり……わたしも奢ってよう!! パイはある!?」

 

「ロロナさん……一昨日ステルクさんのお金でどれだけお酒飲んだか覚えてないんですか?」

 

「お母さんがご迷惑をおかけします……頭が痛い。なんで服を脱ぎ出すんだろう……」

 

「ルルアちゃんが謝る事じゃないよ? ロロナ先生のコレはもう治しようがないから……」

 

「ヒドイ!! トトリちゃんまで!?」

 

「ほれ弟子1号から3号に一応玄孫(やしゃご)弟子。とっととたかっておけ、後ろが(つか)えているんだ。私はラーゼンプリンアラモードというのを貰おう。ステルケンブルク、支払いは任せたぞ」

 

「何故お前の分まで私が払う前提なんだ? あとその呼び方はやめてくれ」

 

「これ、錬金術製の素材なのかな? すっごいなあ、とっても綺麗! プラフタは何食べる? あたしはやっぱりソフィナンシェ!」

 

「すこぶる洗練されていますね。土いもはありませんか……私は王玉カスタードを頂きましょう」

 

「ありがとうございます。後でご感想お聞かせ願いますか? この辺りはノライモが多いもので……土いものデザート、参考にさせていただきます」

 

「この品質でこのお値段の販売……これを自前で作れたら、学校のオヤツにも出せたりするのかなあ。子供達の舌が肥え過ぎちゃうか……」

 

「すごく丁寧な下処理に均一な調理ですよね。見た目もとっても整ってるし……そりゃあ流行る。村で出来るかな。マルローネさんは何を頂きますか? 私はチーズケーキ類から攻めようかと」

 

「全部美味しそうだし、端から順々に全部じゃない?」

 

「そうですね! ――ロミィちゃん! 取り敢えずこっち側から3種類ずつイートインいいかな?」

 

「は~い! お買い上げありがとうございま~す! マジかぁ……ジェナちゃん! テーブル一つ確保出来る!? ピッキング要員も! あと会計出来る子もう一人いない!?」

 

「すぐに準備します。プランBだった学び舎テラスの運用も必要そうですね。お父さんに運ばせましょう」

 

「私があちらへ案内しようか……了解した。皆様、外にもイートスペースを開設しますので商品をお持ちの方はよろしければこちらへ! ――ピーターさんへの伝達は任せてくれ」

 

「これが……こちらの世界の趣向品。やはり外に出てくるもんじゃのう――このぱふぇとやらは? あやつに聞いたものには確か無かったな?」

 

「……おいリラ。あれはオーレン族ではないのか?」

 

「そうポンポンと同胞に会えるものか。なんにせよ今は前が見えない。このパンケーキの山を腹に収める事が第一優先だ。せっかくの出来立てが冷めてしまう」

 

「それも……そうか。そうだな、私もせっかく用意してもらったこの木桶プリンを頂くとしよう。実に斬新な見た目だ、プリンをこのサイズにしてしまうとは」

 

「がっはっは! もう20枚以上食ったその上でこの量たあ豪胆だぜ、流石リラちゃんだ!」

 

「あの娘もキロちゃんに似た雰囲気が……キロちゃんはおらんのかのう……」

 

「繁盛しているようで大変結構! これで島に富を落としてくれれば言う事なしだ!」

 

「ここで大声で言う事ではないぞ父さん。ランバーも気にかけてやってくれ、父さんには遠慮が必要だ。さて次は……」

 

「はいっボオスさん! ――ここでのお仕事ぶり、結構馴染んでますね?」

 

「勘弁してくれ、唯の臨時だ……しかし本当にこれほどの人数を捌けるとは。商会のトップとはああいうものなのか」

 

「あれが女王様の本気……一体何種類の魔法を重ね掛けしてるんじゃない?」

 

「すっごいわね、あの可愛らしかったお店がここまで人でいっぱいになるなんて! この島がデザートで満たされる……あたしの目に狂いはなかったわ。今回はまずクレープからかしら」

 

「はぅわ~! マナもないのにこんなにキレイで美味しそうなお菓子が多分恐らく絶対錬金術で……! イザナちゃんイザナちゃん! これは私の素晴らしく偉大な先輩になるお方が!!」

 

「はいはいレスナちゃん、あっちのお姉さんを見てる限り純粋な調理としてもヤバいって。今は錬金術より味わう事を楽しもうよ、普段は飴玉食べてばっかだし……ヴァレリアは?」

 

「ん? まずはそこの丸いのかな――これで1人分なんだよね? でも……ハイディ、これをフロッケのお土産にするとあの子多分遠慮しちゃうよね?」

 

「お土産の話は同意するけど、これ8人分ね? なんでアンタは太らないんだろうねえ……これ、鴉のやつとか寄ってきたりしない?」

 

「ありがとうエルマー。貴方にこうしてお世話してもらえるなんてお母さん嬉しいわ」

 

「仕事だから。ヨンナとバーバラばあちゃんは何食べる?」

 

「筋肉を育てるにはタンパク質が必要らしいからね。ソイドーナツをいいかしら?」

 

「私はクッキーをお願いするよ。あの素朴な味が忘れられなくてねえ」

 

「クレープでお待ちの方、こちらメニューになります。ピーチは甘露の実の事ですね……あっはい18番目に焼いていきますので――クラウディア! これ生地の残量は大丈夫なのかい!?」

 

「大丈夫ですタオさん! 今ライザさんも魔法でフル稼働してますから! クラウディアさん、これトッピングの補充だそうです!」

 

「ありがとうございますパティさん! クーケンフルーツミルフィーユの方お待たせ致しました! タオ君はオーダーを上から順々に貼っていってもらえる!? ジェナさんは第2イートスペース側の指揮に回って! ライザ! クレープの生地の補充をお願い!! あと燃料!!」

 

「ライザ居るかぁ! アイスの追加だ!!」

 

「寸胴2ついくよ! 3つ目はあともうちょい! おっちゃんは超あんがと!! 燃料はぁ……!!!」

 

「あと3分もあれば出来上がるよ。ほらレント坊、持って行っておくれ」

 

「坊はカンベンしてください……2つ一気に持ってくぜ!」

 

「あっ、レント! ポッケに強力ミックスオイル詰め込ませて! あと蒼炎の種火も!」

 

「そんなもん適当に突っ込むんじゃねえよ! 俺を燃やす気か!」

 

 

 

 

 

 

10時に開店して、もうお昼も過ぎて、今は……14時は回ってるはず。

 

 

 

だけど――祭りという名の戦場は激しさを増していた。

 

 

 

全っ然人が掃けない! いい事なんだけどさ! これが想定内だったらあたしゃビックリだよ!

レントやタオ達に表に出てもらう予定はなかったんだけど、そんな事を言ってられる状況じゃなくなってきた。姉さんも店内誘導専任だ。

 

スタッフさん達の個々の役割は決まってるしそこから動かす余裕もない。

ならば……誰でも出来そうで誰かがやってくれないと困るようなポジションに、レントやタオ達を置けるというのはとても助かる事なのだ。

 

ボオスは全く問題ないし、タオも記憶力が良いから大丈夫。パティさんは最初はちょっと気圧されてたけど慣れてくれたみたいで、伝達役としてお店を回してくれてる。今や大事なお役目だ。

 

レントは持ち運べる量があたしの倍。つまり時間は半分で済むし、こっちも調合の手を休めなくて済む。だからバックヤードどころか完全に表側の仕事に移動してもらう事になった。

 

アンペルさんとリラさんは……なんで食べるペースが全く落ちてなさそうなのかな?

昨日のチーズケーキで100年なら、あと何年寿命が延びてる事やら。

 

もうクラウディアなんて……顔が3つに腕が6本あるような速度で動いてるよ。

アレでオーダーを間違えず、生地を焦がさずにクレープを作り上げ、方々に指示を出してるのは凄まじいとしか言いようがない――例のヒートアップバングル(テンション上がるヤツ)付けてないよね?

 

勿論あたしもヒマしてるわけではなく、厨房のボードに書かれた在庫状況を見ながら不足分の材料の調合でひたすら大釜を混ぜ続けてるところ。こりゃ夜の筋肉痛は覚悟だなあ……。

キチンとしたお昼休憩が取れるわけもなく、お菓子の切れ端をお昼代わりにフル稼働中だ。

時折クラウディアから強化魔法(バフ)が飛んでくるしね……。

 

 

 

ただ、見ててすごいと思うのが――スタッフさん含め全員士気が全然落ちてない。

なんか皆ハイになってない!? ちょっと不安なんだけど! あたしが言っちゃいけないけどさ!!

よっし3つ目の生地も完了! これもレントに持って行ってもらうとして……。

 

「アイスの小分けをしておいた方がよさそうだね……ライザ、生クリームの補充をしないとマズそうだよ。ホイップの手が止まっちまう」

 

「……ひぇっ、結構減ってる。了解ですバジーリアさん、そっちはよろしくお願いしますね! んじゃ――出番だよシーカー!」

 

シーカーの風車部分……ここに魔力を集中させると、かなり高速で回転する。便利!

これをアルさんが作った遠心分離機にセットしてぶん回せば、一気に生クリームとバターが出来るのである。流石のアルさんもこの使われ方は予想してなかったでしょうね。

ただ……回転速度で乳脂肪分が変わっちゃうから結構気を遣ったりする。最早魔法の修業ものだ。

人件費削減も込みであたしオンリーの仕事――さあ!

 

 

ガチャン!

ギュゥィィィィイイイイイイイイイイイイイイインン!!!!

 

 

「魔力を、絞り出せえぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

17時、加えて21分。

 

『ありがとうございました!!!』

 

最後のお客さまが退店されて。

エルリック菓子工房は感謝祭戦争の勝鬨……をあげる元気はなかったけど、乗り切った。

スタッフさんは皆やりきった感で活力に溢れて――タフだわ。

流石クラウディアが連れてきただけの事はあるよね。皆、歴戦の戦士である。

 

「――ああぁ、なんとかやり遂げたね……」

 

「なっ、クラウディア!?」

 

「ちょっクラウディア!? ああっと、終礼より先に在庫確認と掃除をしちゃいましょう。こっちは大丈夫なので皆さんよろしくお願いします! ロミィさんもそっちをお願いしていいかな?」

 

カーテンを閉めたところで……クラウディアがガクッといきそうになってアガーテ姉さんと一緒に受け止める。バフが切れた反動が来たかな。

 

流石にこの客足は予想してなかったらしく、お玉とヘラの使い過ぎで今も手と腕がプルプルしてるような状態だ。身嗜みに厳しいクラウディアだけど……それでも髪の毛が一部跳ねちゃってる。

クレープ生地が服に飛んでないのは流石と言えるけど。

 

「よくあれだけ捌き切ったものだ。クラウディア、コレを飲むと良い。せめてもの差し入れだ」

 

「ゴールドハートか。真の戦士たる今のクラウディアには相応しいな、私が注いでやろう」

 

「……なんだか今、サラッと超高級品のお薬の名前が聞こえましたけど?」

 

「今更だよパティ。先生なんだから一般的な高級品は何でも揃ってるさ」

 

「王都に出てよく分かったが……表向きに知られていないだけで、錬金術の代物はかなり出回っているものだったな。やはり実際に見てみなければ分からないか」

 

「そういう意味じゃあ……今日来てた客ん中に、俺じゃ軽くあしらわれそうな集団がいたぜ。まだまだ世界を見て回んなきゃなあ」

 

「ありゃあ騎士だぜレントちゃん。気配が単なる兵士や冒険者とは違う、なにか背負ったものがある男の気配だったじゃん……連れてた嬢ちゃん達もヤバかったが」

 

「あのオッサンはただのクソ真面目騎士バカよ……とっとと引っ付けって言ってんのにさ。一番ヤバかったのがその後ろに居たオネーサン(ダメ人間)だったのは伝えとくわ。んじゃ、ロミィさんはあっちを手伝ってくるね~」

 

エリキシル剤じゃなくても身体に良い代物はあるらしい。見た目はリンゴ入りジュースかな?

アンペルさんお手製なら良く効きそうだ――明日はあたし達がヤバいかもしれない。

 

あたしは厨房にいたから実際に目にしてないけど、すっごい魔力や気配を隠してる人達もいたね。

何人かは錬金術士の人っぽかったけど……なんというか格が凄かった。

やっぱり世の中広いなあ、あたしじゃまだまだだ――頑張んなきゃね。

 

「……ぷはぁ。ありがとうございますリラさん、アンペルさん。皆さんも今日は本当にお疲れさまでした。ありがとうございました!」

 

クラウディアが復帰した――これで明日もフル稼働は確定だね……。

 

「一番頑張ったのはクラウディアだよ。でも……そうだね、あたしからも。今日はありがとうございました!!」

 

いつものメンバーだけでも回す事は出来ただろうけど、対応出来るお客さんの数はずっと少なかっただろうし、スタッフさんの負荷も多くなってた。

今日これだけの成果を上げる事が出来たのは間違いなくバイトの皆のお陰だ。

 

「どういたしまして、さ。ライザから真面目にお礼を言われると変な気分だよ」

 

「だな。前のライザなら「サンキュ」とか「おつかれ!」くらいで済ましそうだ」

 

「当たり前に礼を言うようになっただけマシになった。まあ、今日の原因は俺にもあるからな」

 

「この2年分の糖分不足を今日一日で補填できた。こちらこそ感謝だな」

 

「そうだな。やはり美味い物を食べるにはここが一番らしい。御馳走様だ」

 

「辺境の島だったとしても……バレンツ商会の直営店だとこれくらいの能力がないとやっていけないんですね。大変勉強になりました」

 

「いやあお嬢ちゃん……多分それ、基準にしない方がいいんじゃあ?」

 

 

 

あと……もう一つ、報告しないとね。

お店の壁にずっと立って――店内を見守ってくれていた存在へ。

 

 

 

「……アルさん、どうでしたか? キロさんも見てましたか?」

 

昨日リラさんに運んでもらった鎧――オーガヘッド。

普段は作業場に置いてあるけど、今日のお店の繁盛を見てもらおうと思ってここに設置した。

ここがアルさんの工房だっていう一番の象徴だし、表舞台に出さないとね。

 

ただ……何人かの人が拝んでたような気がするのは何なんだろう?

 

結局、今日会う事は出来なかった。

改めて銀時計で日付を確認する。今日が約束の日だっていうなら……うん。

 

「クラウディア。後でちょっと相談いい?」

 

「長期休暇だよね? 今回の祝日分だけ待ってもらっていいかな――こちらで呼んで来てもらったのに種類がないのは申し訳ないから……作れる分しか営業しないって約束なのにごめんね」

 

「ううん、とんでもないよ。あたしのお店なのに責任者不在とかね……」

 

「大丈夫だよ! その時の事を考えるのが私がここに居る理由なんだから!」

 

笑顔のクラウディア――流石話が早いね。

 

 

 

探しに行こう、あの2人を。

 

 

 

「お、ライザも島を出んのか? 付いてくっか?」

 

「私達の旅に同行しても構わんぞ? 門を目的にした旅だ、探しやすいかもしれん」

 

レントとアンペルさんからありがたい提案があった。

 

――けど。

 

「ううん。これはあたしとの約束だから――自分でやるよ」

 

これは自分でやる。そう決めてたから。

まだもう少し先の話になるだろうけれど、絶対に見つけてみせる!

 

「待っててくださいね――アルさん! キロさん!」

 

 

 

 

 

 

「準備は?」

 

「僕の方はいいけど……これホントに大丈夫かなあ?」

 

「大丈夫だって。描いたらあっちの座標は把握できるようになったから――後は貴方次第だね」

 

「こんな……ここまで適当に極めて難しい錬成をするのは初めてだよ。やれやれ」

 

「グダグダ言わずにさっさとやる。もうライザが準備をしているかもだよ」

 

「はいはい……じゃあ、いくよ!!」

 

「ん!!」

 

 

 

パンッ!!!




リアルのお菓子店の人ごみの凄まじさはこんなもんじゃなさそうですね。
錬金術士の皆様はみんな若いままです。多分アストリッドの薬が出回ってます。
ちょっと口調が怪しい……。

なんとか忙しい日を乗り越えました。そして……?


次が本作最終回になります。
最後も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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