ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
ライザ作品が少ないのって描写が大変なせいもあったりする?
アンケートにご協力いただきありがとうございました。
12話の時くらいの数でよいという方が多かったですので
以降の投稿もおおよそ同じくらいにしていきます。
現時点で21話まで予約投稿していますので、そこまで修正致します。
そこで改めてこんなもんか?と確認させてもらえればと思います。
今回もよろしくお願いします。
「ここがライザのアトリエなんだね」
「アルさんの作業場のスペースを増や……分けてもらってるんだけどね」
「それでもすごいよ。自分のお店を持っているなんて!」
クラウディアは褒めてくれるけど……スペース作ったのも、釜作ったのも、アルさんなんです。
あたしゃ何もやってないよ!
「僕は釜の周囲に錬成陣を描くから、ライザは調合の準備をしてもらっていいかな? 素材は必要なら僕の手持ちを使ってもらっていいから。あとお昼をお願いしていいかい?」
「分かりました!」
元のフルートを起点にスタルチウムもどきを使ったフルートまでの調合を考えなきゃ。
クラウディアのためだ。なかなかに難題そうだけどやってみせようじゃない!
お昼ご飯については一応料理ができるあたしと、料理のレパートリーをたくさん知ってるクラウディアのおかげでいつもよりちょっと変わった料理が作れたよ。
いつもって言ってもまだ1週間だし、半分以上アルさんが作ってくれてるんですけどね……。
アルさんが錬成陣をサラサラ描いていく。あたしも調合に必要な素材を考えよう。
まずスタルチウムの素材っていう「彗星岩」を見せてもらったんだけど。
「……ええぇ。なぁにこれ?」
発火しないように油の中に漬けられていた、青白く光る石。火山で採取したらしい。
おかしなものがあるもんだね。それを使おうとするあたしら錬金術士もどうかと思うけど。
これが含んでるエレメントは火と風だね。2種類持ちは初めてかな?
当然スタルチウムもどきが持っているのも火と風だね。
本当のスタルチウムは何属性なんだろう?
インゴットは火、ブロンズアイゼンは氷だけど法則性はないよねえ。
今のフルートは主にインゴット製だけど風属性……うん。考えるだけムダだね。
クラウディアの魔法は氷属性らしいけど、氷属性のフルートと相性良いかわかんないし。
そもそも特定の属性を狙った調合なんて今のあたしにゃムリ。
ぶっつけ本番だけどフルートを調合しつつ、スタルチウムもどきをリンケージ調合でのスタルチウムに作り直そう。別々に作ってたら時間かかっちゃうからいっぺんに。
ん~と。インゴットからブロンズアイゼン、それにこの彗星石を入れたとして……。
要るのは燃料系かなぁ? 混ぜないと分かんないけどミックスオイルを準備しとこうかな。
そんな事を考えつつ、OKをもらってたアルさんの私物素材も見せてもらう。
見た事ない物が大半だね。あたしも自分で見つけられるようにならなきゃ。
そう思いつつ眺めてた中で、気になる素材を2つ見つけた。
「アルさん。コレ使わせてもらってもいいですか?」
「へえ。それが必要になるんだね」
1つ目は葉っぱから花が咲いている不思議な枝、「若木の枝葉」。
アルさん曰く「変異種」らしくって、別の土地では薬の材料になってるらしい。
問題は2つ目の「パールクリスタル」。絶対高いよねコレ。
貝の白玉、真珠ってらしいものが魔法を帯びたもの。つまり魔力を帯びた宝石。
コレが無くても作ること自体は多分出来る。けど、なんか足りない気がするんだよなあ。
なんで必要かって言われても具体的には説明できないね。感覚としか言いようがないや。
「ダメ……ですか?」
「まさか。必要なら入れちゃわなきゃ。蒐集のための物じゃないからね」
さらりとOKを出して何個か持ってきてくれた。ありがとうアルさん。
さぁ! ならこの中からいいやつを選ばないとね!
ちなみにクラウディアと聞き取り、もとい談笑していたアルさんは錬成陣を描き終わってた。
前のよりおっきいしずっと複雑だ。それをチョークだけで描いてるんだからホント器用。
まだ中身が完成してないのに、ここまで構築式描いちゃっていいのかな?
まあアルさんなら手合わせ錬成でその場で式を作れる、んだよね?
あたしが心配できるもんでもないか。よし! これでいこう!
「それじゃあ手筈はいいかな? まずライザがリンケージ調合でエレメントを含めた錬金術を行使してもらって、素材が纏まったところで僕がフルートに錬成するよ。ライザは作業が終わったら釜から離れてね」
「分かりました!」
「よろしくお願いします、アルさん。ライザ、ありがとう」
ウインクをクラウディアに返し、預かったフルートを釜の中に入れた――さあ、始まりだ!
まず他の調合用の素材となじませるために、インゴットを入れてバランスをとる。
そこから1ステップ進めるためのブロンズアイゼン。これで次の段階へいけるはず。
ここからは完全に未知の世界だ。落ち着いて……でも大胆に。
さらにブロンズアイゼンを投入して完全にブロンズアイゼン主体の素材に。
そこに分けてもらった若木の枝葉を細かくした物を少しずつ、ゆっくり混ぜながら。
なんとなく魔法の力が強まったタイミングでスタルチウムもどきを投入。
でも、これはまだ混ざっちゃダメだから急いで作り直さなきゃいけない。
うん。追加するのは燃料系でよさそうだ! ミックスオイルをドボン!
うん? これ雷属性なの? どっから出てきた? まあいいや!
そこに分けてもらった2つ目の宝石……ええい、ままよ!
パールクリスタルを釜の中にそっと投入した。
なんか氷属性を受け付ける枠? を感じるね。少しならまだいけそうかな?
だけど素材が……。
「どうしたんだい、ライザ?」
「その……アルさん。氷のエレメントの強そうな水とかって持ってたりしないですか?」
普通の水でもまかなえそうだけど、これ以上はバランスが保てない。
エレメントも素材としてもバラバラになっちゃう気がする。
アルさんはエレメントが感じられないらしいけど、この人なら正解を引いてくれる自信がある。
あたしの一言を聞いて、アルさんはすぐに戸棚からフラスコに入った緑色に輝く液体を持ってきてくれた。なんか神秘的な見た目だ。
「これは使えそうかい?」
「……っいけます! ふちの方から少しずつ入れてもらっていいですか?」
神秘的な感じの宝石みたいな液体。強い氷のエレメントを宿したソレをアルさんは躊躇なく、あたしのお願いした通りに釜の中に含ませてくれていった。
もう少しかき混ぜて……っよし! いける! ここだ!
「アルさん、できました!」
「離れていて。絶対陣の中には入らないように」
混ぜてたヘラを持って釜の前から飛び退くあたし。
ずっと見守ってくれていたクラウディアに並んで、釜の前に立つアルさんを見守る側に。
アルさんは釜の中をちょっと見て。釜を触って――熱いですよそれ!?
触ったのは一瞬。そこから描いてあった錬成陣にサラサラと描き加えて。
陣に両手で触れる。
バチバチバチッ!!
隣から息を呑む音が聞こえた――そりゃそうだ。クラウディアは初めてだもんね。
シュウ~って音を立てる釜にアルさんが近づいて。
中身を確認したら……笑顔であたしたちを手招きしてくれた。って事は!
「見てごらん」
あたしとクラウディアで釜を覗き込む。
そこには――形は同じだったけど、純白に変わったキズ一つないフルートが!
いぇい!
「やった! 成功ですねアルさん!」
「お疲れ様だったねライザ、クラウディアも。後は試してみないとだけど」
「2人とも本当にありがとう! 大切にします!」
白くなったフルート――
クラウディアはあたしたちに深く腰を折った。
「こちらこそ試しに付き合ってくれてありがとう。僕にとっても大きな一歩だったからね」
「あたしにもですよ? ……最後に出してもらった緑のお水、アレなんだったんですか?」
「アレかい? 翡翠の
エリキシル。勉強したぞ? え~っとなんだ。神秘の力を強く宿した、霊薬……霊薬!?
また高級品使った!?
「えっちょっそんな貴重なものを出してもらったんですか!?」
「ライザ落ち着いて。ここからはちょっと遠いし魔物も強いから今はお願いできないけど、湧いている場所は知っているんだ。いつか補充をお願いするよ」
必ず補充させていただきます!!
「さて。ちゃんと音が出るかどうかだけど……あぁ人前の演奏は苦手ってお話だったね」
「いえ、あっはい。そうなんですけど大丈夫です! アルさんなら聞いてもらって。というより、聞いてもらってもいいですか?」
「勿論だよ。聞かせてもらえるかい?」
「はい!」
というわけで、新しいフルートでの演奏お披露目になった。
音は……うん。音楽に詳しくないあたしでも分かる。とっても澄んだ音。
響くっていうのかな。今朝聞いた時より心に染みわたるような……少し寒くなるような。
というか。
「……ねえアルさん」
「なんだいライザ?」
「このお部屋、冷えてきてません?」
「床が少し凍り始めているね。滑ってしまうから止めた方がいいかな?」
「そうじゃなくってですね!?」
物理的に寒くなる演奏を味わったのであった。夏真っ盛りの今には丁度いいのかも。
「ごめんなさい……」
「大丈夫だよクラウディア。あたしん時は岩砕いて水柱作ったから」
「今のフルートと相性が良かったみたいだね」
楽しそうに演奏してたクラウディアだったけど、つららが天井から伸び始めた時点でさすがに止めた。このカッコじゃあたし凍っちゃってたよ?
もともと使ってたフルートは風属性。イノセントスノウも雷風属性だからかな? すごかった。
でもスタルチウムの雷属性がそのまま乗ったわけじゃないんだろうなあ。理解は遠いや。
「これで形状作製の錬成も成功。ライザのリンケージ調合ありきでも錬成陣を使える事が分かった。色々出来そうだよ」
「工房が凍り付いた事には突っ込まないんですね?」
「旋律に乗せる魔法って時点で、ライザの魔法とは方向性が違うのは分かっていたからね」
「空気を少し冷やすくらいだと思ってた私の魔法にあんな力が……」
「店売りの楽器であの規模の魔法が演奏の度に発動していたら大変だよね」
どっかズレてる気がするのはあたしだけ?
ともあれ。アルさんの言う通りあたしの錬金術と、アルさんの錬金術をミックス出来る事が分かったんだ。これであたしもやっとアルさんの力になれる気がする。
ついでにレントやタオの武器も新調してあげようかな? もちろん有料で。
「これでご注文の品は納品出来たね」
「はい! 本当にありがとうございました!」
「採取には使わないようにね?」
「「気を付けます……」」
あたしとクラウディアの声が重なったところでオチが付いちゃった。
スタルチウム製だからそうそうキズは付かないと思うけどね。
お礼にクラウディアが晩ご飯をご馳走してくれると言ってくれたから、一回帰ってから戻ってくる事にしたよ。アルさんは用事があるらしくって「君達で楽しんでおいで」との事。
夜もお仕事なのかなぁ。
小妖精の森。
生息する魔物は青ぷに、オオイタチ、花の精。
一部大型の魔物はいるものの、他は稀に流星の古城から流れてくる魔物を警戒する程度の森。
古城にそこまで気に留める魔物が居るわけではない。
そういった意味で、植生に溢れたこの森は素材集めに適した場所と言える。
そんな森に似つかわしくない生物が何処からか紛れ込んでいた。
白い身体に赤色の筋。太い四肢に背中から生えた宝石。そして頭からそのまま伸びた一本の角。
ぷにもイタチも妖精も、感じたことのない気配に姿を隠す。
我が物顔で周辺を歩き回るソレ。
まるでなにかを探すように、そんな雰囲気を漂わせている魔物かどうかも分からないソレに。
「何がこの森に入ってきたかと思ったけど……これがフィルフサ、ね」
近づく。
気は抜かずとも警戒しすぎる事もなく、淡々と分析するように見回していく。
「調べた限り門は城にも火山にも無かった。ならやっぱり「悪魔の野」なんて呼ばれる辺り、塔がある北西方面が怪しいのかな」
異物を目にするソレ。
WAISHOU。SHINSHOKU。
そんな事を考えていた刹那。
――それが間違いだった。
バキッ
ソレを象徴するかの如く鋭く大きく聳え立っていた角が、根元からへし折れた。
RIKAIHUNOU。RIKAIHUNOU。
「……奇妙なまでに「理解」しやすい。何でだろうね? まあキミに直接恨みはないんだけど、お世話になっている人達を害させるつもりはない。だから」
HASON、HASON、TEISATSUKONNAN。
SOKUJIKIKAN。SOKUJ
「ここで終わりだ」
その言葉と電撃のような音が、ソレの最期。
「感応装置が反応するあたり、それなりの魔力持ちか。今後の警戒にも使えそう……城が反応しちゃったか。一度2人に話を聞いてみないといけないかな」
何事も無かったかのように。
仕掛けていた罠の使い勝手を確認する矮小な存在によって。
この夏、最初に世界に侵攻した異形は。静かに速やかに「分解」された。
今回はこんな風にアイテムを作りましたが、今後常にこの方法って事はないです。
アルばかりに頼っていられませんしね。
原作もそうですけど調合中のライザは賑やかです。
部屋が凍った件は、某さす兄の妹さんをイメージしてます。
武器だけ比較すると、唯一戦闘員じゃないのに現時点でぶっちぎりの火力です。
さあヤツが出てきました。
第三者視点で書いているのは先の分まで含めてここのみです。
多分もうないと思います。
次回もよろしければ、ご覧いただければ嬉しいです。