ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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前話から一年経過して。

現在アルの身体は17歳相当。冒険初めのライザと同じ頃ですね。
この頃は彼もヤンチャをしていたのです。

今回もよろしくお願いします。


130. 7年前    違和感満ちる異世界生活

「縦揺れと横揺れは最初から混在。体感震度は3、問題はマグニチュードだよなあ」

 

この地域では時折地震が発生する……という表現が正しいのか分からない。

揺れが発生しているのは間違いない。不思議なのは発生の仕方と規模だ。

 

縦揺れ(初期微動)横揺れ(主要動)も同時に発生する。まるで真下が震源地であるかのように。

そして震動範囲が極めて狭い。旧市街以外で体感する住民があまりいないほどに。

震度に対する地震の規模があまりにもあべこべだ。これもこちらでの「普通」なのか?

 

現在のクーケン島民にとって、地震がある事自体は常識の範疇らしい。

気になるのは()()()()()()の話らしいとの事。つまり大地震が近いのか?

これまでの記録と照合した限りでは、どうにも天候との関連性が見て取れる。悪天候とか。

 

メカニズムを解明したいところだけど、その前に各家屋へ対策を打つべきなんだろうか?

だけど……そうなると完全に島のルール違反だ。現時点では解明を優先すべきかな。

 

さてと、それはそれとしてシュタウト家と話をする準備を進めなきゃ。

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「……成程。こういう経路であれば排水も楽に、かつ短時間で行う事が出来る。取水場からの分岐も効率的だし他の田畑への反復も出来るから、使わせてもらう水も減らせそうだね」

 

「工事も狭い範囲に収まりますし、難しいものでもないと思います。やってみる価値はあるかと」

 

「その()()()()()()()をあたし達は長年考え付かなかったんだけどねえ。やっぱりアルフォンス君の家系は学者だったのかね?」

 

「いやあ、どうだったんでしょう。常識を知らないからこそ思い付く事もあるだけかと。ライザみたいなものですよ」

 

「あの子も、もう少し麦や土達に寄り添ってくれると嬉しいんだが……」

 

 

 

やはりシュタウト家は他家と知識量が違う。昔から色々試されている家系らしい。

カールさん自身、ブルネン家の許可のもとに島外の農学知識を学ばれているとの事だ。

ライザの学習意欲はカールさんからの遺伝と言えそうだね。

 

知らなかったけど、ブルネン家にはそれなりの数の島外の書物が保管されているらしい。

一度見てみたいけど、なかなか切っ掛けが難しいなあ。ボオス君に警戒されているし……。

 

今回カールさんから頂いたご依頼は、ヴァッサ麦の水田の灌漑(かんがい)だ。

 

そこまで大きな島ではないクーケン島。本来ならば飲用水などの確保は死活問題になる。

だけど実際には困っていない。ブルネン家があるトレッペの高台の水源があるからだ。

そこからボーデン地区に流れ、各区域に分岐し、最終的に湖に流れ込む。それが島の水の流れ。

 

問題なのはラーゼン地区の土地の高さ。盆地の様な丘陵地帯で全体的にボーデン地区より高いから、貯水池や大型水路があっても農耕地まで運ぶ手間は楽じゃない。

だから風車を使って水田まで汲み上げられている。必然的に風が必要で供給は不安定だ――本来ならば。

 

実際にはどういうわけか取水の為の細かな水路がしっかり地下に張り巡らされており、湧き水のように地表に現れている。つまり本来は風車すら不要でメンテナンスを気にしなくていい。

聞いた話、大昔には噴水も機能していたとの事だ。やはり飾りというわけじゃなかった。

つまりはボーデン地区の下にも別途水路が設けられている事になる。クーケン島の地盤は非常に硬いらしく、島の技術じゃ掘削もままならないはずなのに。

 

加えて……現在の住民で正しく風車の建て方を知っている人物は、僕の知る範囲では居ない。

そもそもポンプの存在を知っている行商人すら居ない。この周辺は滑車がメインらしい。

なら、噴水をどう機能させていたというのか。余程の水圧の水の流れが湖底にあると?

 

 

 

元々は高度な技術がこの島にも存在した。だけど現島民には知られていない。

この島の「掟」はそういう意図のものなのか……?

 

 

 

頭を戻そう。

取水はともかく、排水は各農家の対応に委ねられる事になる。

そこまで大雨が降った事はないけれど、いざ降ってしまうと水路の本数の都合上排水が間に合わなくなりかねない。

 

麦は完全自給自足だから収穫不可能なんて事になったら生活は大打撃だ。

1年間クーケンフルーツを食べ続けるなんて事になるかもしれない。それでも育つらしくて、栄養価も高いクーケンフルーツがまた凄まじいんだけど……。

 

で、その辺りの懸念についてカールさんから相談を受けて、現在に至る。

シュタウト家との関わりが増えたのは、去年バジーリアさんの鍋を作って以来だ。

 

ライザが鍛造の音を経験し、それを気に入ったのか「これもたたいて!!」と自分の家の農機具をいくつも()()()()来た――本当の話だとは1ミリも思っていない。

当然ライザから逃げる事は出来ず、とはいえ手を付ける以上は劣化させられない。

という事で打ち直しをする感じになってしまった。まだ先の予定だったのに。

 

農業の経験値が全く違うカールさんはすぐにその違いに気付くし、ミオさんとバジーリアさんはクーケン島内における情報の発信元のお一人。加えてエレナさんからも情報提供が入った。

 

結果、「使える物を作れる」という話が予想以上に広まってしまった。見通しを外したよなあ。

 

という事で、その時は当然のごとくボオス君からお説教を受ける事になった。

「あのバカをうにの木に縛り付けておくべきでしたね」との決着になったけど。ごめんねライザ。

 

 

 

「うん、これなら麦達も喜ぶだろう。こちらで暫く様子見をして、良さそうなら他家でもやってもらえばいいからね。これは僕からの依頼だから、僕の方で上役には話をするよ」

 

「ありがとうございます。フェイズさんには僕からお話をしておきますので」

 

「……一人で対岸に行く事もあるって話、本当なのかい? エレナから()()とは聞いているけど、身体は大事にしなきゃいけないよ」

 

「勿論ですよ、皆さんに助けて頂いた身ですから。無謀はご法度ですし、表向きには秘密を維持しますのでよろしくお願いします。特にライザにバレると大変な事になりそうですから」

 

「全くだね。うちの子がいなけりゃ、日が出てる時に行く事もまだ出来ているだろうに」

 

そしてここ最近、当然表向き秘密ではあるけれど対岸に一人で行く事が可能になった。

名目は「島周辺の魔物の調査」。危険度や対処法などを見える化・整理する事が目的だ。

 

とはいえ掟破りまっしぐらの行動。大々的に日中やるわけにはいかない。

僕がやっている事をライザが知ってしまえば、来たがるのは目に見えている。あの子は大の掟嫌いだからね。

 

なので夜間にこそっと対岸に渡り、日が昇るまでには工房に帰っている。

その情報をブルネン家と護り手の皆さんに共有し、護衛に役立てようとしている所だ。

 

まあ……僕にとっては魔物のいる「場所」にこそ目的があるのだけれど。

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「……やっぱり意図的に消されていると考えるのが自然だよなあ。攻め込んだ他の国の仕業か? あるいは自分達で痕跡を消したのか?」

 

島民から「流星の古城」と呼ばれる遺跡。流星というのは城全体に落ちていた巨大な熱いまだら石の事だったらしい。セキネツ鉱でも十分だけど、この世界にはとんでもない石があるものだね。

 

当初「砦」じゃないかと考えていたけど、これはたしかに「城」だ。

遠目に見たよりかなり大きい。東側に結構奥行きがある形の城だったらしい。

城の中には居住区画や購買所があった痕跡もあった。更には礼拝堂らしき場所も。

つまり「ここに建てた方が良い都合」があったわけだ。今や魔物の巣だけどね。

 

気になるのは……どう見ても戦場になったとみられる痕跡だらけだという事。

 

クリント王国が何故滅んだのかはまだ知らない。

普通に考えれば他国との戦争という事になる。つまり相手はロテスヴァッサ王国なのか。

 

ただ一見した感じ、相手が人間だったと思えないんだよなあ。

攻める上で意味がなさそうな場所が破壊されていたり、一方で象徴になりそうな石像は全く手付かず。敵国だったら真っ先に壊しそうなものだけど。つまり魔物が大量発生した?

竜と思わしき像もあった。大体想像通りの姿だ。ならクリント王国は竜信仰の国だったのかな。

 

そして一番の目的であった「書籍」は、これが意外なほど下層に大量に残っていた。

だけど中身を見て、理解より疑問が増える一方だ。

 

 

 

クリント王国に関する「固有名詞」、日誌や在庫管理などの「記録」、近況などの「歴史」を記したものがほぼ存在しない。

 

 

 

多分だけど、大体が参考書に該当する書物だけ。お陰で分かりにくい事この上ない。

こちらの理解不足もまだまだあるだろうけれど、違和感が拭えない。主に魔法と魔物関連だけ。

一々存在していたものを焚書したとは思えない。それに関わる物を持ち込まないようにしたか、別の場所に移したか。そんな所なんだろうか。

 

残念ながらシンやアメストリスは勿論の事、僕の様な謎の存在に関する記述もない。

あちらに関する手がかりは、この三年の間欠片も得られず。今頃どうなっているんだろう。

 

でも、興味深い単語はいくつか見つけられた。

 

一つは「竜使い」を示すと思われる単語。同じ部屋にこれに関する本が何冊もあった。

魔物使い的な存在だったのだろうか? こっちにはすごい職業があるんだなあ。

竜の実在自体も夢があるけど、まさかそれを使役できるような環境だったとは。

 

そしてもう一つ、意味は分からない表音文字。だけどデカデカと石碑に刻まれていたソレ。

 

「…………ふぃ、る……ふ……さ?」

 

特別隠し事ではないという事なんだろう。同じ石碑に「竜」の文字もある。

当時の竜使いの英雄の名か? 国の名前すら消されているのに?

今の知識じゃ解読には限界がある。文字は記憶しておいて、別途解読を進めよう。

 

さて、元同志……じゃないんだよね? 最初は流石に血印がないか確認する羽目になった方々。

このデザインがこちらでの()()なら、僕が作ったもの(オーガヘッド)は相当に目立ちそうだ。父さんの趣味だし。

「動く鎧」の皆様、失礼するよ。また後日。

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

ぷにっ!!

 

 

ビュオン!

 

 

「あぶなっ!? はあっ!!」

 

 

ぼよん

 

 

「……悪魔の野の名は伊達じゃないって事? これは骨が折れそうだ」

 

 

 

東側の探索を一通り終えて、掟で立ち入る事を明確に禁じられている西のエリア。

フェイズさんにも事前に警告を受けていたけれど……すみません! 研究者の(さが)です!

何かあろうものなら、錬金術をフル活用してでもここを封鎖しないといけない。

 

悪魔の野に通じる道は至って普通だった。看板すらない何の変哲もない石橋を渡るだけ。

 

アーチ状に並んでいた岩のトンネルを抜けた先には、綺麗な遺跡が残っていた。

今まで見た中で最も原形を留めているかもしれない。

 

 

 

そんな場所を調べようとして――()()()()()()()()()と遭遇した。こんなの居るの!?

 

 

ビュオウ!!

 

 

「なんでこの見た目で氷属性っぽい攻撃なのさ! であっ!!」

 

 

ぼよん

 

 

ぷにぷに~

 

 

柔らかいのに硬い、信じられない柔軟性。打撃攻撃の相性は最悪だ。

おまけに時間と共に周りの金色ぷにも寄って来る。時間を掛ければ更に不利でジリ貧だ。

 

――今まで攻撃には使ってこなかったけど、躊躇してる場合じゃない!

 

 

パンッ!

 

バチバチバチッ!! ドウッ!!!

 

 

ぷにっ!?

 

 

地面から巨大な(もり)を錬成して、輝くでかぷにの体を貫通させる。

このくらい速度と質量を込めないとダメか。慢心していたつもりはなかったんだけど、素手じゃ限界がありそうだね。武器を作らないと。

 

さあこれで――

 

 

ぷぅぅうにぃぃいいいいいい!!!(# ゚Д゚)

 

 

「質量保存則の無視ってレベルじゃないでしょ!? どうなってるんだよ!!」

 

原形を取り戻した輝くでか金ぷにが、怒り顔で体積5倍くらいに膨れ上がった。風船!?

質量はもっと増えてたりする? デカくなった生き物のやって来る事といえば――

 

 

ぷにっ!!

 

 

ドッ!

 

 

「踏み潰しだよねっ!!」

 

 

バカァン!!

 

 

さっきまで僕がいた場所に巨大化したぷにが落下し、遺跡の石床が砕かれる。

こんな攻撃をくらったら今の身体でもただじゃすまない。狙うは速攻。

錬成材料は豊富に生まれた――少佐、力借りますよ!!

 

 

パンッ!

 

 

「せえのっ!」

 

 

バチッ! バチッ! バチッ! バチッ! バチッ!

 

 

ドォン! ドォン! ドォン! ドォン! ドォオォン!

 

 

「……はぁ。多分剣を使った攻撃もいなされるだろうから、魔法ってのを使う事が前提になるのか? 今回みたいな質量攻撃を使う手段が魔法にはあるんだろうか」

 

少佐お得意の岩石パンチの連続攻撃で、漸くでか金ぷには霧散した。

これは立ち入りを制限されるわけだ。一般人や並の護り手で太刀打ちできるはずがない。

ブリッグズ兵並みの練度と連携、装備がないと安定しなさそうだね。

 

認識を改める必要がある。

対岸周辺の魔物が最下級の強さだったのは事実だったけど、森、坑道、街道、火山、城、メイプルデルタと探索をして。確かに何処も島周辺よりは強くて、それでも一対多だろうが錬金術を使わなくても無理なく戦えていた。

 

「強くてもこのくらいなんだろうか」、と思っていた矢先にあんな存在だ。初撃が不意打ちの質量攻撃だったら、確実に腕を持っていかれていた。警戒も鍛錬も装備も不足、慢心。これは戒めだ。

 

島の近辺にこんな危険な場所があるとは思わなかった。

ホムンクルスほどじゃないけど、話に聞いた人形兵並みの脅威あり。もっと鍛えないといけない。

 

リスクは大きかったけど、リターンも大きかったね。

さてボコボコにしてしまった遺跡を修復して――

 

「……まさか?」

 

知っている感覚、だけどこちらに来て大半は感じられなかった感覚。

最近感じられていたんだろうけど、気づいていなかった感覚。戦闘で気を張ったからか。

 

手合わせ錬成で遺跡を修復するのを止め、ポーチに入れていたチョークを使って錬成陣を描く。

ただし、基づく理論は錬金術じゃなくて――

 

 

バチッ!

 

 

「……ここでだと錬丹術を使えるのか。つまりおかしいのは……島?」

 

この世界における「龍脈()の流れ」が、正しくどう呼称されるのかは知らない。

魔力の流れなのか、エレメントの流れなのか、更に違うものなのか。

とにかく僕も認知自体は可能で、クーケン島は流れがおかしいのか、または「無い」事になる。

 

この世界にそんなものが存在し得るのか?

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「これは……ますますきな臭い。此処といい城といい、この周辺で何が起きたって言うんだ?」

 

悪魔の野から更に北へ。謎の塔へ至っているだろう道。

 

――どうみても戦場跡。バリケードがあるって事は籠城戦だったのか? ならあの塔は戦時拠点?

 

相当古い物だろうに、クーケン島で使用されていた銑鉄の剣より質のいい鋼鉄の剣。

製鉄技術の度合いは不明だけど、太さが均一なバリケードの有刺鉄線。

しかもその棘は棘鉄線を別途結んで作った物じゃない。線から「生えている」。

 

これはアメストリスでも工業的には生産が面倒なレベル。錬金術の領域だ。

 

他にも鍛造の割には大きすぎて、鋳造の割には綺麗すぎる巨大な剣と矢。矢は城にもあったか。

僕の知識では錬成以外に製造方法がすぐには思いつかない。加えてこのおかしなサイズはなんだ?

 

「つまり……錬金術が、この世界にもあるのか?」

 

僕らの使う錬金術とは違う技術なのは分かる――何故なら錬成痕がない。非常に綺麗だ。

だけどクーケン島の文明を基準に考えた場合、あの規模の城を構成する資材の準備も、目の前の武器たちも、この先にあるだろう謎の塔の建築も現実的には不可能。やろうとしたとしても途方もない時間と莫大な人的資源をかける事になる。

 

 

 

間違いなく、この地域には過去に高度な文明を持つ何かが存在した。名は「クリント王国」。

但し文字による痕跡を可能な限り隠し、実態がどんなものだったのかを表の歴史から消した。

 

クセルクセスのように、表に出せない理由で滅んだとでもいうのだろうか。

 

 

 

「この先は……無理か。色々混じり過ぎてしまっている。崖沿いなら可能そうだけど……」

 

塔へ至るだろう道は、地割れと化している巨大な亀裂で寸断されていた。

その先にも戦場跡は続いている。戦闘の後に出来たものという事か。

 

無理矢理行く事も不可能ではないだろうけど……今は止めよう。ここの魔物も比較的強い。

さっき油断して、準備を改めると決めたばかりだ。あの塔に何がいるか想像もできない。

 

でも、あそこに何かの答えがある気がする。

 

 

 

――そんな、ちょっと先の話を決めた的な事をこの時は考えていたんです、はい。

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

スンスン

 

 

「……ねえ、アルお兄ちゃん?」

 

「な、なんでしょうか?」

 

「最近どこに行ってるの? ここを空けてることが多いよね? ――夜も」

 

「ぶ、ブルネン家、が、多い、かなぁ……? 夜は大体、あそこになります、です」

 

「ふぅ~ん……アイツの家に行くだけで、そんなかぎ慣れない臭いがしてくるんだ?」

 

 

 

まずい拙い不味いマズいマズイ!!!

ライザにバレるのはマズ過ぎる! なんで島の外の臭いなんてものに気付くの!?

勘が良すぎる! よりにもよってかなり遠征した明けのタイミングに来るだなんて。

 

 

 

「あのバカ、アルお兄ちゃんに何させてんのよ……ケガなんかさせたら一生ゆるさないんだから」

 

「だ、大丈夫だよ、ライザ。そういう危ない事はしない約束になっているからさ。ほら、指とかも綺麗でしょう?」

 

ブルネン家の冤罪を回避しないと、島の最高戦力の一角(島が誇るガキ大将の本気)が動く事になりかねない。島内の全てのうにが消える。ケガの心配をされているなら、その手前の段階でもない事を示さないと。

 

「たしかに、きれい……すぎる。道具屋のお仕事とは違うの?」

 

まさかの綺麗()()!? だって怪我しないんだよこの身体! 普段からこの指だよ!

 

「そうだね? ほっほら、最近ライザの家の畑にも関わっていたりとかしているでしょう? あれでどのくらい増産する見込みなのか、その辺の報告とかをですね?」

 

「……あー、そういえばお父さんがこの前「麦を元気にしてもらった」ってうれしそうに言ってたっけ。今年の夏は去年よりもまた忙しくなるのかあ。アルお兄ちゃんもダメだよ? お父さんとお母さんが元気になり過ぎると、あたしがアルお兄ちゃんの所に来れなくなるんだから。ああいう時は抜け出すのぜったいにお母さんにバレるし」

 

「ははは、分かったよ。ライザもサボるのは程々にしておくれよ? 僕がライザの代わりに麦を刈る事になりそうだから」

 

「むぅ、それは……ほんまつてんとう? だっけ。はぁい」

 

あっぶな。その辺の話が無かったら言い訳のネタが尽きていたかもしれない。

しばらく派手な冒険は控えよう。僕の事よりこの子達の方が優先なのだから。

幸い当面の資金になりそうな素材の調達は終わったタイミングだったし。

 

 

 

にしても、ライザが僕の話を素直に聞いてくれる子で本当に助かる。店にある物は少々危険だし。

方々からお話を伺うレベルの出来事をこの工房で起こす事は殆どない。無意識なのかな。

 

好奇心旺盛、普通を普通と思わない感覚、その場に留まらず新しい物を探すアクティビティ。

研究者というよりは「探究者」、それがライザを一言で表せる言葉だろう。

 

今のライザは島の外を、世界を知らない。だからこの程度(ガキ大将)で済んでいる。

 

だけど彼女が(世界)を知った時、一体彼女は何に一番関心を抱くんだろうね?




アルが本編開始時にナメプしていなかった理由がコレです。
ここから自分の体質を有効活用(某巫女曰く「悪用」)して鍛錬バカと化していきます。
ライザの目のハイライトが消えかけているように見えますが、本人は多分普段通りです。

次はまた一年経過して6年前。三話構成です。
原作では特に語られていないかと思いますが、本作ではとあるタイミングに該当します。
次回も楽しんで頂けたら嬉しいです。
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