ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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ついに今晩アニメ放送開始!ですね。
このペースなので、あっという間にアニメに置いていかれる……事もない?
1クールなら終わりのタイミングは近いのかもです。

アニメのあの躍動感には勝負にならないですね。

新しい物事に触れるって結構勇気が必要ですよね。
閉鎖的なクーケン島なら尚更なのでしょう。

これで第二章は完結です。
自分で言うのもなんですが、長めのわりに盛り上がりに欠けます。
無印ライザ世界の錬金術の立ち位置を確認するためのお話です。

今回もよろしくお願いします。


14. 42日目   錬金術って怖いもの?

「色々頑張ってるつもりだけどよ。周りの評価は相変わらずなんだよな」

 

久々に集まったあたしの部屋。今日はクラウディアもご招待。

そんな集まりはレントのボヤキから始まった。

 

「あたしは働いてるような体だけど……2人はやってる事自体は変わらない、かあ」

 

「大人たちの頭の固さは分かっていたんだけどね」

 

「……そんな。みんな頑張ってるのに」

 

「ここはそういうとこなのよクラウディア。新しいものを受け入れない。クラウディアたちが来るってことでさえちょっとした騒ぎになるくらいにね」

 

そう。例外はホントに少ない。

アルさんさえ最初は追い出されようとしてたくらいに排他的。

アルさんが受け入れられたのは、島のためにとっても役に立つとはっきり判断されたから。

 

サイテーよね。

ホントに何でここまで外のものを嫌がるんだろう。全然分かんないよ。

 

「あたしもアルさんの手伝いっていう形が隠れ蓑になってるだけで、「錬金術やってます~」なんて話したら2人とおんなじよ。だから堂々と錬金術士を名乗っているアンペルさんたちに変な目線を向けられるのは許せないんだけど」

 

「俺も同じだぜ。世話になってるリラさんを……あいつら薄気味悪いみたいに見やがる」

 

「そうだね。どうにかしたいと僕も思うよ」

 

だけど、どうやって。

そんな考えがグルグルしてるあたしたちに、案をくれたのはクラウディア。

 

 

 

「それじゃあ島の外に新しく家を建てちゃえばいいんじゃない?」

 

 

 

――うん?

 

「家って……建築するって事か? さすがに簡単じゃねえと思うが」

 

「一からは大変だと思うけど……一つ、直せば住めそうな場所があるよ?」

 

「島の外にかい? そんな所って」

 

「……あっ」

 

そっか、あそこか。

 

「対岸の森の――イタチの魔物に遭った場所の建物。あそこなら修復出来るんじゃないかな?」

 

「なるほどな。森の中だけどリラさんたちにとっちゃなんて事ねえはずだし」

 

「遺跡調査が本業なんだから、島の外に拠点があった方が2人も生活しやすいかもだね」

 

あっちでの休憩所にでもしようと思ってたところだし、実現できそうではある。けど、ん~。

 

「建築に必要な資材が集められるかなぁ?」

 

「ライザが錬金術で作っちゃえばいいんだよ」

 

「あたしが? あ、でも、うん。出来なくはないのかな?」

 

今までのアイテムとか、昨日なんかはクラウディアのフルートだったけど、インゴットみたいな素材も作れたんだ。出来るはずよね。

 

初めてアルさんの錬金術を見た時はタルフラムの木材を綺麗に整えたくらいだったんだから。

()()()事には違いない。いけそうだ。クラウディアは発想が柔軟だね。

 

「ナイスアイデアだよ、クラウディア! じゃあ早速あの廃墟を見に行くとしましょうか」

 

島の大人の固い頭を変えようってのは時間のムダ。なんにせよすぐにはムリだ。

ならアンペルさんたちが過ごしやすい環境を、ね。

 

実の話、単純火力だけなら一番強いかもしれないクラウディアだけど……ルベルトさんの許可なしに森へ連れ出すのはダメだから、今回は待っててもらう事にした。

あたしもアルさんに予定を伝えておかなきゃ。

 

 

 

「森の廃墟……ああ。あそこかい?」

 

「あそこを直してあたしたちの隠れ家兼アンペルさんたちの拠点にしてもらおうかなって。といっても、あたしの隠れ家はここですけどね」

 

森へ行くついでにアルさんにこのアイデアを少し話してみた。

いつもみたいに微笑んでくれてるけど……ちょっと固い。なんか悩んでる?

 

「……うん。住んでもらうなら勿論お2人には予め話しておかないとだけど、いいんじゃないかな? 森に魔物がいると言ってもお2人なら問題なさそうだしね」

 

魔物の事を考えてくれてたんだね。まあそうか。

 

「それで資材とかはライザが作る感じかな?」

 

「はい、クラウディアがアイデアをくれて。石とか木材は調合した事ないですけどやってみようと思います」

 

そこまで言ったところで、アルさんがまた悩んでる感じ。

他にも何かあるかな?

 

「沢山の資材を作った都度舟に積んで、加えてあの森を抜けるのは大変じゃないかな?」

 

――あっ。

 

「そ、そこは、気合で……」

 

前途多難ね……。

ちなみにアルさんならどうするか、参考までに聞いてみると。

 

「土製で良いなら、家一軒くらいはその場で建てられるよ?」

 

という、あたしには何の参考にもならない答えが返ってきた。規格外なの忘れてたわ。

 

 

 

 

 

 

さて、レントとタオを連れてあの広場の廃墟まで来てみた。

あたしとタオは結構久しぶり。レントは訓練で来る事があるみたい。

こそっと抜け出してるのかな?

 

「ん~。見た感じ、土台の石材、骨格の木材、壁用の土ってとこかなぁ?」

 

「出来そうか?」

 

「多分、ね。単なる素材を建築用に使いやすくするだけならなんとかなるんじゃないかな」

 

レシピはないけど、機能を持たせたアイテムじゃないからそう難しくはないはず。

 

「本当にすごいんだね、錬金術って」

 

「それが分からない大人たちが信じられないわよね。あ~でも他にも考える事があって」

 

「なんだ?」

 

「運び方」

 

「あぁ……たしかにな」

 

そう。

アルさんには気合って返したけど、旧市街から資材を港に運んでここまで持ってくるのはすごく大変――なんで思いつかなかったのか。

ここで調合できれば一番手っ取り早いけど、釜がないしなぁ。あたしの釜をここまで持ってくるのは全部の資材を運ぶよりも大変かもしれない。

 

となると。

 

「まあ船着き場はそこの桟橋を直せば使えるだろうよ。だけど島ん中を運ぶのは」

 

「うん、レントが言いたい事はわかるよ。だから一か所相談だね」

 

「相談? 誰にだい?」

 

「あたしたちが勝手に当事者にしてる人たちよ」

 

 

 

 

 

 

「私達の拠点を、あの森にか?」

 

旧市街に戻って、クラウディアも連れてアンペルさんの借家にお邪魔した。

あたしたちからこんな話が出るとは思ってなかったみたいで、アンペルさんも驚いた感じだ。

 

「ふぅむ。まあ遺跡探索の調査は島の外の方が主体だからな。あの森に拠点が増えるのはこちらとしても悪い話ではない」

 

「寧ろ有益だろう。移動する時間も不要だしアンペルの野宿の文句に付き合う必要もなくなる」

 

「僕としては……相談しに行きにくくなるのはちょっとあるんですけど」

 

まあアンペルさんは野宿タイプじゃないよね。リラさんは寝なくても平気そうだけど。

タオ、あきらめなさい。

 

「というわけだ。あの住居を私達の拠点とさせてもらうのに特別反対する理由はないが。それに何か思う所があったか?」

 

「……元々あたしたちの島の外での拠点として考えてたんだ。だけど今朝グチり合ってた時に、島の大人たちの2人に対する態度にムカついちゃって」

 

「ならいっその事お2人に住んでもらえば? って話になったんです」

 

クラウディアの締めの言葉のあと、2人ともまゆをひそめるかと思ったけど……意外にも無反応。

 

「私達は周囲の評価など気にしない。奇異の目で見られるのは別に今回が初めてではないからな」

 

とはリラさんの言。クーケン島だけじゃなくって、他の土地でもそういう扱いなの?

 

「元々私達は流れ者だ。小さな町で外から来た人間に不審の目を向けるのは不思議な事ではない。この国での錬金術も王都や大きな街ならある程度知られているが、このクーケン島のように殆ど知られていないなんて事もザラだ――ああ、1人例外がいたか」

 

外から来た人たちへの評価ってどこでもそんな感じなのかな。

だけどアンペルさんは、こう話を続けてくれた。

 

「まあそう言ってはいるが、お前達の申し出は嬉しく思うぞ。それで今日はその提案に来てくれたのか?」

 

よかった。ここで不要って話になったらせっかく作ってもただの休憩所になっちゃうもんね。

ただ本題は今からだ。

 

「それはそうなんだけど問題があって。修復に使う資材はあたしが錬金術で作ろうと思ってるんだけど……錬金釜があるのはここのすぐそばのアルさんの工房。だから資材をあそこまで運ぶのがすごく大変なんだ。あたしの錬金釜はかなりおっきいし重いしで、資材を運ぶよりももっと大変だと思うの。だから」

 

「私の錬金釜をあちらへ運び、そこで調合したい、という所か」

 

あたしが言い切る前にアンペルさんが言葉を繋いでくれた。

さて。

 

「ふむ……まあ拠点をあちらに移すのであれば、今であろうが後であろうが動かす事には変わらんか。現実的でもあるしな」

 

「レントを働かせばいい。良い訓練になる。お前の釜は私が運んでいたのだしな」

 

「いくらなんでもキツいっすよリラさん!」

 

ボケか本気か――本気なんだろなあ。リラさんの提案が出たけどアンペルさんはどう?

 

「分かった。私の錬金釜をあちらに移そうではないか。森の拠点の修復が終わるまではライザに貸す事としよう」

 

おーよかった! これで現実的になったね!

 

「ありがとうアンペルさん! 頑張っていい家を作るからね!」

 

「なに、こちらとしても利のある話だ。そこまで礼を言われることでもない。ただ一つ聞き逃せない事があってな?」

 

「ん? なに?」

 

「ライザの錬金釜だ。私の釜より大きく重いと言ったな? 場合によっては私がライザから借りる場合もあるだろうし、どんなシロモノか気になってな」

 

ああそうか……あの釜、下手すりゃ家一軒買える代物なんだった!

ちょっと感覚がおかしくなってるかもしれない。

だってお母さんたちを説得してる間に作れちゃったんだよ?

 

 

 

という事で実物を見るべく、アンペルさんとリラさんを連れてアルさんの工房へやってきた。

クラウディアたちはそれぞれ用事があるらしくって借家で解散だ。

レントの用事なんて訓練だけでしょうに。

 

「お邪魔するぞ、アル君」

 

「アンペルさんにリラさん、いらっしゃい。今日はどんなご入用で?」

 

「今日は買い物では無いんだ。ライザが持っているという釜を見せてもらおうと思ってな」

 

アンペルさんたちの後ろであたしは両手を合わせ、目を瞑って首をコクコク縦に振る――察して貰えた。

 

「あーそういう事ですか……ライザ。君のアトリエなんだし案内してあげなよ。僕はちょっとアガーテさんの所に用事があるから」

 

至極当たり前みたいな返しだけど、逃げたよねコレ! よく考えたら3人もか!

いやまあ何かあった時の店番って話はあるし、アンペルさん連れてきちゃったのあたしだし、面倒事になりそうなの確実だしでそりゃそうなんだけどさ!

 

爽やかな笑顔で自分のお店を後にするアルさん。これは予想外だよ。見捨てられた……。

 

「さあライザ。お前のアトリエを見せてくれ」

 

「うん……」

 

賢く生きる。これが大人になるってやつか。タオはあたしより大人なんだね――何の虫にしよう?

そして後にリラさんに「あんな喧しい声が出せたんだな」と言わしめた、アンペルさんの。

 

「なんだこの釜はぁーーー!!!」

 

という色んな感情が混じった魂の叫び? がアトリエもといアルさんの工房に響いたのだった。

 

 

 

 

 

 

準備も要るって事で釜の運び出しは明日になった。

逃げた4人も工房に戻ってきて「あの釜を! 私にも!」というアンペルさんをアルさんがなだめつつ、いい時間だからあたしたちも解散だ。

 

「明日から頑張ろうね!」って気合の入ったクラウディアの声を挨拶にあたしも家路につく。

あの広場へ直接出向くんだったらクラウディアが来るのもまだ問題ないよね?

 

だけど、ここでこういう話を聞いちゃうんだよなぁ。

 

「……ふん。あの流れ者どもも同じだ。錬金術などという怪しげな(まじな)いなど。遺跡の調査などと言っているが所詮盗掘者の類だろう」

 

なかなかにムカつく話をしてくれてんじゃない。

 

「ボオスにランバー。あんたたちがあの2人の一体何を知ってるっていうのよ」

 

「……ライザか。お前が聞いたであろう通り、あの2人の流れ者は信用ならんという話だ」

 

ボオスがめんどくさそうに、いら立ってるように……だけど説明してくる。

 

「お前は知っているか? あの2人が夜な夜な遺跡探索とやらを行っているのを。時には対岸へ出ているとも聞く。遺跡に関わる事も俺達にとっては避けるべき掟。それを流れ者だからといって踏み荒らしていい謂れはない。それにエルリックさんの店にも世話になっているらしいな? 客が怖がっていたという話も耳にしている」

 

外から来た人たちに、わけもわからない掟を押し付けるなっつーの。

 

「あの2人が島に滞在しているのは元々遺跡の調査自体が目的でしょ? 島もそれを認めてあんたの家が借家を用意したんでしょうが。夜に遺跡調査するなって話してあんの? それに誰かがあの2人を怖がってるっていう事に2人が責任を持てって? なんで買い物一つにそこまで気遣ってもらわなきゃいけないのよ」

 

「常識の話だライザ。夜に見慣れん者が、人が寄り付かん場所をうろついている状況を考えろ。不審な事極まりない。それにあの2人、周りに合わせるという事もしようとせん。服装程度変える頭はあるだろうにあの怪しげな格好だ。女の方には睨まれるとすら聞くしな」

 

ぐぬぬ。相変わらずいちいちうっさいやつね。

 

たしかに知らない人がうちの畑をうろついてたら不審者だ。

だけどあの2人が遺跡調査のために滞在してる事なんて、この小さな島じゃ周知の事実。

知っていればなんて事ないじゃない。

まああの2人のカッコは目立つし、リラさんの放ってる雰囲気はわからなくもないけど。

 

「加えて極めつけはお前が学んでいるという錬金術だ。中で何をしているのか知らんが……妙な音だの匂いだの、いちいち周囲を不安にさせなければ気が済まないのか?」

 

「前にも言ったじゃない。錬金術はアルさんも頼りにしてるものだって」

 

「俺もある程度は調べた。エレメントについては知らんが……複数の素材を混ぜて全く別の物を作り出す。そういう呪いだろう?」

 

……意外だ。ボオスが錬金術を調べたなんて。

 

「知ってるなら、なんで」

 

「お前はおかしいと思わないのか? 全く別の物を作り出すという時点で既に如何わしい。それに、そんな技術が表向きに国中に広まっているというなら父さんが知らないはずがない。俺が書庫を調べて漸くだ。真っ当な技術だというなら、何故島の外ですら知られていないんだ?」

 

「それ、は……」

 

あたしも知らない。島の外での錬金術がどういったものなのか。

この地方では一般的ではないらしい。クラウディアもほぼ知らない技術だったみたいだし。

 

「お前も分かっていないんだろう? エルリックさんは博識だ。錬金術をご存じなのかもしれんが、特別ソレを周囲に広めようとしているか? 全く錬金術を知らん俺達島の人間で、面白いなどという理由で首を突っ込んでいるのはお前ら3人だけなんだよ。俺達より幼い子供ですら得体の知れないものに近づかず、真面目に家業や勉学に励んでいるのにな?」

 

「そんな。錬金術は得体のしれないものじゃ……」

 

「現に島の人間は不気味に思っているんだ。お前も自分の都合だけ見るのではなく、周りがどう思っているかを考えてみたらどうなんだ」

 

……話を聞いた事ないけど。島の人たちにとって錬金術は。

 

「ライザ。お前たちがやっていることはこどm」

 

「一度自分の行動を見直してみろ。話は終わりだ、いくぞランバー」

 

「はいっ!」

 

そうして、ボオスたちは去っていった。

 

言い返せなかった。くやしい。不甲斐ない。

でも……あたしたちがやってる事って、そこまでみんなに怖がられるものなの?

 

 

 

「そうかい。ボオス君がそんな事を」

 

工房を出たばかりなのに戻ってきちゃった。

どうしても錬金術が使える人の意見が欲しかったんだ。

 

「アルさん……あたしたちがしようとしてる事はそんなに怖がられるものなのかな? 間違ってるのかな?」

 

「ライザ」

 

泣きそうな声色が口から出てたあたしを、アルさんが優しい声で包んでくれた。

 

「間違いなんかじゃないさ。僕が保証するよ」

 

「だけど……」

 

どうしても不安がぬぐえないんだよ。

 

「よく聞いてね、ライザ」

 

そう言って、アルさんが説明の構えに入る。

 

「まず錬金術は誰にでも使える技術じゃないのはライザも知っているね?」

 

「うん。アンペルさんは素質が要るって言ってたし」

 

「そう。そして現にライザもアンペルさんも、僕の錬金術は使えない。逆も然りだね」

 

指を立てて話を続けていく。

 

「初めてライザがアンペルさんの錬金術を知った時、どう感じたかい?」

 

「えっと、タルフラムを見た時だから――何が何だか分からなかった、かな」

 

「じゃあ、僕が錬金術を使えるって知った時は?」

 

「……すっごく驚いた」

 

「最初の時は色んな事があってそのくらいで済んだけど、僕の時はそれなりに付き合いがあるライザでさえ驚いたでしょ? しかもアンペルさんの錬金術とは原理が違う。理解出来ないものだったと思うよ」

 

うん。リンケージ調合はわかったけど、アルさんの錬成陣はいまだに理解出来てない。

 

「ライザの場合は好奇心が勝って驚き程度で済んだ。ライザは魔法も使えるしね。だけどそうじゃない人達にとっては自分達では使えない、理解できない、わけの分からない不気味なモノとして映ってしまう場合もある。長い間変化を求めてこなかったこの島では尚の事なんだよ」

 

「じゃあ、やっぱりあたしたちのやってる事って」

 

「いいや? 最初に言ったけど間違っているわけじゃないさ。問題は使い方と知ってもらう方法だよ。最初から「錬金術はこうなんです」じゃなくて「こういった事も錬金術で出来るんです」の方が知らない人には受け入れやすい。身近な出来事から徐々にね。昔の僕の様にやり方次第なのさ」

 

そうだ。昔のアルさんも島で受け入れられていた人じゃなかった。

少しずつ島に貢献をして、信用を得て、今の地位を築き上げてきたんだ。

 

「それから錬金術の取り扱いだけど……大っぴらに広める物じゃないとは僕も思うね」

 

「なんでですか? みんなに知られれば、もっとみんなの生活を便利にできるのに」

 

「ライザのように「人のために」、と思える人だけじゃないのさ。錬金術はとても応用が利く。だから悪い事、まあ極端な話……戦争なんかにも使えてしまうんだ。ライザも作れるフラムみたいな爆薬はあっさり量産出来てしまうし、もっと人を害する為の強力な道具を作る事もその気になれば出来てしまう」

 

アルさんの表情は真剣。つまり冗談じゃなくて十分にありえるって事。

得体の知れない、戦争にも使えてしまうほどの技術、か。

今のあたしはそこまで使えないけど、そこまでたどり着けてしまう人もいるんだ。

 

「そんな技術が広まったら世界中が大混乱になるし、極端な格差が出ちゃう。錬金術士には大きな権力を持たさせられるだろうね。だからこそ錬金術は秘匿すべき技術なんだよ。僕の記憶の中で「錬金術師」は国に管理される存在だったはずだ」

 

数少ないアルさんが覚えている過去――たしか「アメストリス」って言ってたっけ?

聞いた事ない国だけど、そこではそんな扱いなんだ。

 

「だから皆に理解を強要するものじゃないとは僕も思うよ。だけど、こういう事にも錬金術は使えるんだって事は伝えていいと思う。それを積み重ねて皆からの理解を得ていけばいいんじゃないかな」

 

まあアンペルさんたちの服装についてはそうかもね、とアルさんは笑った。

 

 

 

そっか。

 

あたしは興味が勝って「錬金術はすごいもの!」くらいにしか思ってなかった。

でも島の人たちにとっての錬金術は……全く知らない、得体の知れない、魔物も倒せるナニカ。

だから疑い、不安、恐怖があるんだ。

 

ならもっと身近なところから錬金術を知ってもらえれば、わかってくれるかもしれない。

あたしが考えるべきは伝え方だったんだ。

今朝捨て置いちゃったけど、頭の固い大人を変える……これの別アプローチだね。

周りを変える前にあたしからやり方を変える。

 

 

 

「そっか。あたしが島のみんなへの伝え方を考えれば、もっと受け入れてもらいやすいかもしれないんだ」

 

うん。あたしの。あたしたちのやっている事は、間違ってるわけじゃない。

ただやり方は考えてかなきゃね。

 

「……うん。なんか分かったと思います。アルさん、意見をくれてありがとうございました!」

 

「僕としてもライザの錬金術は当てにしているんだからね? 頑張っておくれよ」

 

「もちろんです!」

 

うん。そうだよ。

まずは身近なところから錬金術を知ってもらおう。

そうすれば、きっとみんなも錬金術が不気味なものじゃないと分かってくれるはずだね。

 

ボオスに言われた時はあたしも悩んじゃったけど、もう大丈夫。

あたしはあたしのやりたい事を信じてこれからも取り組んでいこう。

 

まずは隠れ家の修復だ!

よし! 今日は帰って明日に備えるぞ!

 

 

 

 

 

 

「彼は頭が良いから、近く強大な力として使える事には気付くだろうなあ。だけど警戒が強過ぎると思わなくもない。ライザを心配しているのか……島民の考えがあまりにも排他に寄っているのは代々の掟の作用か――そも、そのための掟か。きっかけは何なんだ?」




本作のボオスは島民の大多数の代弁者、みたいなポジのため、
原作と比べると少し大人びた感を出そうとしてます。
魔法も錬金術も触れた事がない一般人代表ですね。

アンペルは果たしてちゃんと代金を払うのでしょうか?
そしてアルはどこまで知ってるんでしょうねえ?

次は新章、廃墟の修復からです。原作と比べ、とあるキャラが活躍します。
次回も楽しんでいただければ嬉しいです。
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