ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
今回もよろしくお願いします。
「何のお話だったんですか? お父さんも居たんですよね?」
「島で作っているものを外で売って、お金に出来ないかってお話だね。具体的にはこれからなんだけど」
「島のものって……ウチの麦みたいな? 今でもやってるような」
「改めてって感じかな? その時はライザの家も関わる事になるよ。そうなると流石に家を手伝ってもらわないといけないかもね」
「ええぇー……土が喜ぶとか麦たちのお腹が空いたとかのアレを? 収穫期に刈るのを手伝うだけでもおっくう……」
「まあまあそう言わずに。ライザがここまで大きくなれたのはその麦達のお陰なんだから」
「もうちょっとでも楽しそうなものならまだ興味も持てるのに……」
農業というのは地道な作業がものをいう。結果が出るのに最速でも数カ月はかかる。
早いうちに成果を知りたがるライザには気長すぎるのかもしれないね。
「興味と言えば、ライザは魔法の練習をしようと思わないのかい?」
「興味がないわけじゃないですけど、そもそも何から手を付けたらいいかが分かんなくて。お母さんには聞けないですし、普段杖はしまわれてるし……アルさんが魔法を使えたらなあ」
「僕に魔法の素質はないみたいからね。出来るなら僕も使ってみたいとは思うよ」
この分野はいまだに理解が不十分といえる。
せいぜい基本教育に毛が生えた程度でしかないだろう。
エレメントについて、イメージの方向性は立った。
僕らの世界における「エネルギー」という概念、これは極論を言えば仕事に変換できる力、熱、原子の振動だ。得られる結果は違うけれど、その大本には例外なく等価交換の法則が適用される。
だからこそ、僕達「錬金術師」や「錬丹術師」は地殻変動の応力や気の流れとしているエネルギーを原子間の結合の分解、再結合に用いる「錬成」という形で使用する事が出来る。
エレメントは、それに更に方向性を持たせたもの。根源は「魔力」と「精霊」なる別ファクター。
精霊という存在は概念じゃなくて実在しているらしく、でも生物とは全く違う存在。意志ある力。
そんな彼らによって制御されている。故に等価交換の法則に支配されていない。
これによって、僕らの世界では極めて難しい物理現象・化学反応をあっさり起こす事が出来る。
僕達の錬金術が「理論と具体性」に依存するなら、こちらの錬金術は「エレメントへの親和と創造性」に大きく左右される。特に精霊達にとって理解しやすいかどうかなんだろう。
勿論錬金術の理論を解する事も必要だけれど、それ以上に素材の持つ「特性」と「関連性」を感じ取れる才能の方が大事らしい。
リンケージ調合――素材の持つ
術者のイメージを、具体的な機構を無視して結果に結びつけられる。もはや僕らにとっての魔法。
ハッキリ言ってとんでもない。熱力学や等価交換の法則を鼻で笑える超理論だ。
一方で魔法は……個人の感覚や体質に依存する事も多いらしく、理論が一律じゃない。
それが僕の魔法への不理解を余計に促してしまっている。
「精霊術」という分野も存在するらしく、単なるエレメントとも魔法とも違う体系。
完璧に理解できる日は遥か未来の事だろう。
こんな風に理屈で考えてしまう僕では、感覚派だろうライザに魔法を教える事はまず不可能だ。
正直、僕が教えてもらいたいくらいなのに。
「そうだ!」
「うん?」
考え事をしてしまって、ライザの反応を見ていなかった。
とんでもない提案をし出さなきゃいいんだけど……。
「あたしが先生をやってみますから、アルさんも練習してみましょうよ! 魔法!!」
とんでもないお話でもなかった。
ありがたい提案だ。
何せこのクーケン島で魔法を使える事が明らかな一人がライザ。
だから教えてもらうなら、ライザから話を聞くのが一番自然な流れになる。
「興味はあるけど……いいのかい? せっかくの晴れの日だし、お出かけの格好もしているのに」
「晴れの日でお出かけ日和だからやるんじゃないですか! じゃあ杖を取って来なくちゃなんで、港じゃなくてまずはあたしの家ですね……お母さんだけ引き付けてもらっていいです?」
「あはは、了解したよ」
彼女と一緒にいると僕も悪戯をやっている気分になる。
根は真面目なレントとタオがライザに付き合えているのも、多分こんな感じなんだろう。
♢♢♢
元々港に行くつもりだったのに、いつのまにやら旧市街に戻って来てしまった。
現在は浜辺。少し岩を越えて、周辺から見づらくなっている場所だ。
想像があっているなら……ライザが溺れたのはこの近辺の筈。大丈夫なんだろうか。
「いよっし! ここなら早々バレませんね!」
全然大丈夫らしい――タフな精神だなあ。真冬の寒中水泳の効果は抜群だったみたいだ。
「じゃあ早速! とその前になんですけど、アルさんって魔法を使おうとした経験自体はあるんですか?」
「杖を振った事はあるよ。だけど何も起こらなかったかな」
クーケン島内で魔法の杖も持っている家は少ないし、行商人も取り扱わない。
だからまともに魔法に触れるまでにはかなり時間がかかった。
あえて触れたというならば、漂着してすぐの頃にエレメント判別の杖を握った事だろうか。
その時ですら何の変化も生じなかったわけだけど。
ロミィさんから聞いた話でも、クーケン島に存在する杖はどれも「家庭用」。
そもそも本格的な魔法は無理じゃない? との事だ。当然だよね、対魔物装備は不要だし。
ちなみに初めて魔法を見せてくれたのはミオさんである――身体強化魔法だったらしい。
一般人の枠を出ないだろうミオさんが、うにの木を殴り揺らして実を落としたのには唖然とした。ライザ、君のお母さんは間違いなくミオさんだよ。
「レントも最初はそんな感じでしたよ? レントの場合は剣を振るわないとイメージがちっとも湧かないって、魔法の形じゃエレメントは使えないらしいんですけど」
「僕も同じ感じなのかな? 全然イメージが出来なくて」
「そうなんですか? なんだか意外。じゃあまずはあたしが見せますね!」
ライザの魔法は初めて見る。レントを吹っ飛ばす事があるとだけ聞いているけれど。
ただ……その杖大丈夫なのかい? 大分先端がぐらついているけど。
「ぅぅううううおりゃああぁああ!」
ブォン!!
ポン
シャイニングぷにに特攻でも仕掛けるのかと言わんばかりの気合の声で杖が振るわれた結果。
2センチくらいの光弾が杖の先からフヨっと出て来て、シャボン玉みたいに軽く飛んで行って、水面に触れて、軽くパチャンと水を揺らす音と共に消えた。
――えっ?
「あははは……やっぱ気合い入れても変わんないなあ」
「今のでレントを吹っ飛ばせる感じかい?」
「アルさんもその話知ってました? 結構差が出ちゃうんですよ。何も考えずに魔法を使おうとしたらこのくらいで、レントを桟橋から落とす! とか考えてると、わりと威力が出たりします」
ライザにとっての魔法の先生はミオさんしかいない。
そのミオさんが教えてなければ、使い方は直感頼みになってくる。
規模はともかくレントもエレメントを使えるようだけど、魔法という形ではない様子。
タオは多分魔法を正しく使えて、理屈も理解している感じかな? 故にライザの教師役には合わないんだろう。僕の教師役には合うかもだけど。
単に「こんな魔法を使う!」というイメージではダメらしい。
いや、欲しい結果を想像すると違うんだろうか? とにかく。
「危ないからやめようね? そのくらい差があるのか……今のは火のエレメント?」
「それがどうも違うっぽいんですよね」
知っている限り、エレメントは火、雷、氷、風の4種。一番近そうなのは火っぽいけれど?
「タオなんかは分かりやすく火の手が上がりますし、レントも剣に雷が流れた感じになるんですよ。だけどあたしのは……なんというか、タオが言うには「混じってる」らしくて」
「複数の属性が、という事かい?」
「多分そうですね。あたしって結構珍しい体質らしくって、宿ってるエレメント量が4種全部同じらしいんですよ。それが関係してるのかはわかんないんですけど」
なかなかにすごい話じゃない? それ。
身体に宿るエレメントの量が遺伝子的な何かに依存しているとして、4属性とも等量なんていうのは天文学的な確率になる。そうでないならまさに奇跡の産物。
それが具体的にどう影響を及ぼしているのかは分からないけれど、珍しいと言われるのは納得だ。
「タオはどう使っている感じなんだい? というか、タオに教わってみたら?」
「タオは教えてもらう以前に魔法を見ても分かんないんですよ……なんでハンマーから魔刃が飛ぶか、アルさんなら分かりますか?」
全くわかりません。普通の魔法ですらわからないのに、鎚から刃って何? って感じだよね。
タオの魔法はしっかり攻勢魔法なのか。正直意外なチョイスだ。
「聞いたこともあるんですけど、学び舎の宿題を超えるレベルで頭がパンクして……タオもめんどくさがって教えてくれなくなりました」
「理解の方法は人それぞれだろうからね。ライザの場合、放つ時は火とか風とか考えているの?」
「考えると余計にダメなんですよ。その辺もあたしなりに色々試した結果、「難しく考えずに魔法出ろ!」って事になって。それがさっきのです」
能動的にエレメントを切り替えられる時点で僕には理解不能な感覚だけど、ライザ達的には制御可能らしい。だけど感覚派なライザだ、やはり理屈を込めちゃうと逆にダメだと。
僕達の錬金術とはアプローチが全く違う。これはかなり独特。
僕が魔法を使えないのはエレメント云々より単純な思考回路の問題かもしれない。
となると……割と役に立ちそうなのは?
「ねえライザ。ライザが好きなものとか頭にすぐに思い浮かぶものとかあるかい?」
「好きなものですか? ……空とか、星とかは好きかな? 首飾りもそうですから」
「なら、そういうのを飛ばすイメージをしてみたら?」
こちらの錬金術の要素は結果のイメージ、形のイメージ。
本来であれば恒星の要素は「火」と「風」。だけどこんな考え方は僕らの様な人間だけだ。
普通であれば「光」を想像する。これはライザが苦手とする属性の考えに当てはまらない。
好きなものなら頭の中にも描きやすい。魔法でも案外いけるんじゃないだろうか。
「星を、飛ばす……星を……星で……レントを吹っ飛ばす」
脳内イメージのレントが中々ひどい目に遭っている……。
魔法の威力が上がったらレントへの被害が増加してしまうんじゃあ?
やらかしたかもしれない。
「やってみます! うりゃあ!!」
ポン!
何となく……さっきより明るく、まっすぐ進んだかな? いいのかもしれない。
だけど今後スカートでやってもらうのは止めた方が良いね。この精神でも色々と罪悪感が湧く。
「ちょっとは……変わった? どうなんでしょう」
「まあそんなにすぐには変わらないさ。練習あるのみじゃないかい? ただレントに使うのは止めてあげようね?」
「レントに使うのが一番想像しやすんですけど……」
ライザは魔物を見た事がない。なかなか攻撃対象というのは難しいのかな。
そんなこんなで延々と魔法を放ち続けて。
「…………やっば。酔って、きた……」
魔力切れらしい。エレメントに干渉するのに魔力を使うみたいだから、そのせいだろう。
僕には分からない感覚だけど、人が一日で生み出せる魔力には当然のように制限があって。
体力と同じように切れてしまうと気分が悪くなるとの事。早めに止めるべきだった。
誰かの前でリバースしてしまうのは精神的ショックも大きそうだ。
「休まないと。少し眠るといいよ、頑張り過ぎてしまっているから」
「すみ、ま、せん……ちょっと、そう――」
トスッ
意識があると余計に気分が悪くなる――ごめんねライザ。
さて、一旦工房で休んでもらおうかな。そこの岩を飛び越えればすぐだ。
♢♢♢
「で、こんな事になってると。相変わらずこの子は何と言うか……これが地なんだからすごいわ」
「腹芸をするライザなんて想像できませんよ。そもそもする必要がありませんし」
「いやあ……それは違うと思うかなあ……」
お店の看板が「OPEN」になっていたから、ライザが満足したのかなと店に入ったら。
まさかの工房ベンチで一張羅でグースカ寝ている小娘が一人。アンタもう16よね?
経緯を聞いた限り自分から寝に来たわけではないみたいだけど、それでもここまで無警戒とは。
まあ警戒する要素は無いんだけどさ。ライザの場合は寧ろバッチ来い? 許せん。
アル君もアル君だ、相変わらず私の言っている意味が分かっていない。
この子は結構腹芸をしてるんだよ? あなたの前限定だけど。
何故様々な事を知っていて、あっという間に新しい事を覚えていくのに……こういった方面に限っては理解が明後日を向くんだろう。好意に無自覚という事は無いと思うけれど。
「ロミィさんからご覧になって、ライザの魔法っていかがですか?」
「完全に自己流みたいだから、今の時点ではいいとも悪いとも言えないかな。ただ単一属性魔法が使えないってのは珍しいと思うよ。何かしら特徴を持つものだから」
4種のエレメントの属性に当てはまらない魔法がないわけでもない。
身近なところでは身体能力強化。極めて珍しいのには時空属性なんてのもある。
但しこれらはエレメントを自身の魔力体質に染める形で変換し、出力しているようなもの。
正しく属性というわけではなく、本人の体質を魔力で強化しているに過ぎない。
一方でライザの魔法は、魔力放出じゃなくてエレメント依存の筈なのに「単なる光の玉」。
何処にでもありそうに見えて、実は相当に特異な現象。私もこの子以外に見た事がない。
まさか仮想属性として話がないわけでもない……いや、流石にそれはないか。
「今からどうされますか? 朝のお話の続きでも大丈夫ですけれど」
「流石にアル君のお店にライザを放置していく真似はさせられないよ。こうやって二人で話す時間が持てるだけでもロミィさんには十分ですから。おうちデートですよ」
「特に何もない場所ですけれど、それでよろしければ。ライザも毎日退屈じゃないのかなあ」
「それもないと思うかな……」
無自覚なんでしょうけど、アル君成分を吸いに来てるんだと思うよ? 今日は特に。
そうでなきゃ、普段ラフにキャミソール&ホットパンツで過ごしてるこの娘がいきなり御めかしするわけがない。アル君に近づく女の影を本能で感じ取ってる――兄を奪われてたまるかと。
「まあ結果的に時間は取れたんだから……ついでにする話でもないけれど、アル君から相談をもらっていた話をしておきましょうか」
「何か耳に入られたんですか?」
「うん。結構前から王国各地を流れている錬金術士がいるみたいだね。普通はアトリエを構えているのが錬金術士ってものだから、流れ続けてるっていうのはかなり珍しいと思う」
私が持ってくる話が他の形で島に入ってくるなんて事は基本的にない。
だからアル君も私の話には大体強い興味を向けてくれる。
その中でも特に興味を持っているらしいのが「錬金術」。
科学分野に強い彼だから、個人の魔力要素や素材特性に大きく依存する錬金術は異質で興味深いらしい。誰でも同じ結果を出せるのが科学だものね。
彼から相談を受けて以来、他国も回って錬金術士にはそれなりに顔が利くようになった。
流れの錬金術士がいないわけでもなかったけど、やっぱりどこかに拠点はあって、何らかの目的で旅をしている途中。そんな感じだ。
そんな中、この噂の錬金術士は他とは在り方が異なる。
男女の二人組。まあ片方は用心棒的な存在なんだろうけど、なんと釜を持ち歩いているという話。
つまりは本当に何処にもアトリエを構えていない可能性が高い。
逗留していた町でアトリエを開くわけでもなく、何かの目的を達成したのか、ある日突然いなくなってしまうという。
何かしら特徴はあるみたいだけれど……認識阻害のアイテムでも使っているのか、目にしない時間が長くなるとあっという間に忘れてしまうらしい。
「彼らが今何処に居るのか、目的が何なのかは分からなかったよ。ただまあ余程の理由がない限りここには来ないんじゃないかな? 何せ島の外に情報が流れていないから」
「いえ、十分過ぎますよ。本当にありがとうございます。そういった方々がいると分かっただけでも随分な収穫ですから」
「……最初からそうだったけど、アル君は錬金術を直接見たい感じ? 時間が掛かってもいいなら、一人くらいは錬金術士をこっちに連れて来れるかもだけど」
「興味があるのは間違いないですけど……そこまでして頂くほどじゃありませんよ、純粋に興味の産物ですから。知れる時に知れればいいと思っています」
彼は誠実だ。私と話をする時は下心がないのを知っているし、内心遠慮しているのも感じられる。
故に――嘘を吐いている時は非常に分かりやすい。
一つは錬金術に関する興味。
科学に繋がるいくつかの分野を紹介したつもりだけど、錬金術だけは興味の持ち方が全然違う。
遠慮しがちな彼が、私に依頼をする線引きが他の分野と比べて圧倒的に緩くなる。
錬金術の何が彼をそこまで惹きつけているかは分からないけれど、本当なら今のも渡りに船の提案の筈なんだよね。最近は自制が強くなってきているけど。
そしてもう一つ、自分自身の事。
記憶を喪失しているのは事実ではある、けど全部を失っているわけじゃない。
名前を憶えている時点でその通りなんだけど――確実に別の常識を保有している。
殆どを失っているんじゃない。殆どを覚えていて、重要な部分だけ抜け落ちているのかな。
普段なら私が説明するまでもなく、話が出た時点で推論を立ててほぼ答えに辿りつく。
だけど「錬金術」「魔法」「エレメント」の三分野だけはこちらの話を完全に聞きに回る。
部分的な欠落でもない。彼の常識の中にこの三つが最初から存在していないんだと思う。
これだけ頭の回る人なんだから、前提知識が全く違うなんて事じゃない限りはこんな状況になりえないでしょう。
ここまでを考えると、いよいよ彼が本当に「とある存在」の一人なんじゃないかという疑いが。
この世界とは全く違う常識と体質と能力を持っている人々。
各々違いはあるけれど、比較的共通する癖は「とある品物の名を聞いた事のない別名で呼ぶ」事。
似たような品物が元の世界にあるんだろう。特に多いのが「うに」と「くり」が真逆とか。
そういった人達に話を聞いた限り、魔力やエレメントに依存しない、この世界には存在しないスキルを保有していたかのような口ぶりである事が多い。殆どの人は過去話で現在はできないんだと。
だけど一部には実際に「謎のスキル」としか言いようがない特殊能力を保有している人がいた。
異常に丈夫な身体、馬鹿力、理解不能な魔法らしき類、極めて発達した五感などなど。
更にその一部には「なにかに誘われて来た」という人がいた。
私達が「世界の管理者」と呼ぶ存在に、何らかの使命を背負わされているんでしょうね。
今の所、アル君は「謎のスキル」らしきものを表に出していない。
極めて頭が良いのがスキル……いや、あれは地だよね。正直スキル扱いでもいいと思うけど。
でもバーのミラさんが言うには、甘露の実を「ピーチ」という聞いた事のない果物で例えたとの事。私が様々な国を巡っても他に見た事が遂に無かった金の虹彩が疑いに拍車をかける。
アル君が謎スキル持ちの界渡りなら、全能を発揮すればクーケン島どころか国、大陸中に知られている存在であってもおかしくはない。スキル無しでも天才の枠組みには間違いなく入るのだし。
だとして今の所はまあ、他の界渡りの人達みたいに慎重に行動している可能性が高いかな。
そんな力を表に出してしまえば、面倒な存在も引き寄せてしまうのは確実なんだから。
アル君が界渡りか否かはまだいいのだ――問題は「使命持ち」であるかどうか。
もし使命持ちだった場合、使命を果たせば彼はこの世界を去ってしまう可能性がある。
世界から存在が消え、文字通り二度と会えなくなる。痕跡すら失われるかもしれない。
それが……たまらなく怖い。
やめやめ。決めたでしょう? 私の意志で彼をどうこうする事はしないと。
彼が特別だったとして、一方で私は大多数の一つでしかないのは変わらない。
だけどせめてもの抵抗として、情報提供の制限はさせてね。私は貴方を「
選ぶわけでも選ばせるわけでもなく、選ばれた時だけ。
どんな結果だったとしても、私は彼にとっての「ロミィ・フォーゲル」であり続ける。
連載当初からは考えられないロミィの取り扱い。キロを超える暴れっぷりです。
次の季節は冬。舞台は島の外。これで終わりやないんかいという。
ライザらしく本作は夏頃に終わる予定です。
次回も楽しんで頂けたら嬉しいです。