ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
原作2、3でいろいろ明らかになっているらしいですが、
今作ではそのあたりの設定が反映されていませんのでご留意ください。
毎度誤字報告お手数おかけします……。
勉強になりますね。過去分も合わせてまとめて修正しておりますのでお待ちを。
なお作者のイメージの下、意図的な接続詞抜けや「い」抜き言葉を
採用している(特にライザ)所がありますのでご了承ください。
ご報告を頂いておきながら、勝手で申し訳ありません。
アニメOPだけ見たんですが、公式の推し方に笑いました。
今回もよろしくお願いいたします。
レントの足が止まった――警戒の声とともに。
「……? どうしたの?」
「わかんねえか? よく聞いてみろ」
何かの気配? 魔物? ……いや違う。それ以前の問題だ。
「静かすぎる?」
「ああ。いくらなんでも鳥のさえずり一つ聞こえやしねえのは変だ」
「なんだかわからないけど……イヤな感じがするよ」
「虫の鳴き声も聞こえないね? 外敵から身を守るために隠れるって聞いた事はあるけど……」
森全体が……何かを警戒してる?
クラウディアの言う通りなら、よろしくない何かがこの森に入ってきてるって事。
どこからか入ってきたなら北の火山か、竜が住むっていうお城から?
あるいは街道から……候補がありすぎるね。
「多分、森の奥からだな」
「行くつもりなの!? リラさんからも言われてるじゃないか、危険には近づくなって!」
「ああ分かってる。姿だけ確認したらすぐに撤退だ。このままじゃあ森に何が居るのか分からねえままだ。ここを拠点に出来ねえし2人にも説明しづれえからな」
「分かった、あたしも行く。クラウディアは中で待っていてくれるかな? ちゃんと戻ってくるからさ」
「うん……気を付けてね、みんな」
「僕が行かないって選択肢はないんだよね……」
「待っててもいいわよ。その場合はクラウディアをお願いね」
「……はぁ~まったく。こんな時だけ逃げ道用意しないでよね」
あたしとレントとタオ。島の3人で森の奥に向かう。タオ、強くなったね。
最初の冒険から半月。何度もこの森には入ってるけど、最奥には行った事がない。
大きなたくさんのランタン草が生えた樹を通り過ぎ、昔の遺跡の間を通って更に進む。
音爆弾持ってくるの忘れたなあ。気を付けないと。
「本当に魔物すら居やがらねえ」
「野生の勘ってやつなのかもね」
「姿だけ見たらすぐ逃げようね……」
もうすぐ……多分ここが最奥よね。キノコのたくさん生えたおっきな切り株。
その前に……居た。
「なによ……アレ」
「わかんねえ。が、ヤバイ気配しかしねえ。なんだあの図体」
「背中のは……魔石? ゴーレムじゃないよね? 魔石を宿した魔物なんて」
あたしたちが見た事ある魔物で、一番大きなのはタオが言ってた街道の大きなワイバーン。
次は坑道奥の大型ゴーレム。
だけど、目の前のアレはその数倍はある……太い四つ足の、白っぽい甲殻の怪物。
「見るモンは見た。撤退するぞ」
レントの声を皮切りにあたしも撤退しようとした、その時。
――目が、合った。
あたしたちみたいに黒目があるわけじゃない。
青い筋の走った白めの身体に、虫みたいな黄色一色だけの目。
だけど間違いなく――見られた、気付かれた。背筋が凍って力が抜けた。
……動けない! 腰が抜けた!? なんでこんな時に!
「ライザ!? ……ッチ、こっちに向かってきやがった!」
「どうするんだよ!」
「ライザを引きずってでも逃げろ! どのくらい稼げるか分かんねえけど殿は俺がやる!」
なんで動かないのよ!? 立てないのよ!?
このままじゃレントが!
「見たまんまのトロさである事を願うぜ……ずあっ!!」
レント渾身の一振り。リラさんに鍛えてもらった力いっぱいの一撃で。
ベキンッ!!
レントの剣が――折れた。あまりにもあっけなく。
アッチはうっすらと痕が残ったくらい。
「んなぁ!? コイツ、硬えなんてもんじゃねえぞ!」
刃がほとんど残ってない柄だけ握って、飛び退きつつなおも対峙するレント。
なんとかあたしを立たせようとするタオ――タオより大柄なのがこんなに恨めしいなんて!
「くそったれ! そりゃこっち来やがるよなぁ! タオ! 急げ! 引きずってけ!」
「ダメだよレント! 置いていけるわけないだろ!」
いやだよ。そんなのイヤだ。
アイツが突進してくる。
レントが、大変な事になっちゃう。
渾身の力を振り絞って。
あたしが出来る唯一の事――叫んだ。呼んだ。一番信頼してる人。
「ア゛ル゛ざぁーーーーーーーーーーんっっ!!!!!」
「ごめん――遅くなったね」
バチッて音と、場に合わない穏やかな声。
それがあたしの後ろから頭上を越えてレントの隣へ。
「アルさん!?」
「レント。時間を稼いでくれたんだね? ありがとう。おかげで間に合ったよ」
アイツの突進は止まっていた。いや止められてる。
四つ足が全部地面に拘束されてる。錬成したんだ、一瞬で。
「後は僕がやるよ。タオは落ち着いてライザを立たせてあげて」
「は、はいっ」
アイツと対峙しつつこっちを向いて、声色は変えずタオに語りかけるアルさん。
安心のおかげかな? 脚に力が戻って立つ事ができたよ。
だけど……その時。
見ちゃった――見てしまった。
アイツに振り向く瞬間のアルさん。無感情で、なのにその目には――怒り。
こわい。
「さてと。何も考えずにここへ来たのか、それとも後詰か――まあなんでもいい」
――八つ当たりも込みで、ご退場願うよ。
アイツの頭に手を触れて。
メキッ! て音が鳴って一気にヒビが……。
驚いたようなアイツの様子なんかどうでもいいように、アルさんの右の回し蹴りが入る。
ベキャッ!
およそ生き物からしていいものじゃない音とともに――アイツの角がへし折れた。
「マジかよ……」
レントが呆然としてる。タオも。
あたしもおんなじ顔してるんでしょうね。
「色は違うけど種族的には同じ。少しは前のより強靭なのか」
次は背中の魔石みたいなのに跳んで。
バキンッ!
手刀で砕いた。
何が起こっていると言わんばかりのアイツに、アルさんの声色はただただ冷たい。
「知性は同レベル、か。もう少し危険察知力を持つべきだったね」
アルさんはなにを言ってるの? ――なにを知ってるの?
そんなあたしの頭の中とは違って、アルさんの中ではもう完結しているらしい。
「まあなんにせよ」
初めてあたしたちが見た時の錬成。リラさんにしたみたいに身体の前で両手をパンと合わせ。
「さよならだ」
両手をアイツの身体に当てた。
バチバチバチバチバチバチバチバチッ!!
アイツの全身は……ひび割れ、崩れて――動かなくなった。
「ホントに遅くなってごめんよ。レントのおかげだ」
「いえっ。俺なんてアイツの前で構えていただけで……」
「タオも。ライザを守ろうとしてくれたんだね」
「ぼっ僕なんてただ必死だっただけで……」
あたしよりアイツ側にいたレントとタオに話しかけるアルさん。
もういつもの雰囲気のアルさんだ。
そのアルさんが、あたしの傍に歩いてきた。
「大丈夫だったかい? ライザ」
「う、うん。ケガとかは、してない、です」
「そっか。間に合ってよかった」
本当に心の底から安心したようなアルさんの顔。その顔を見てあたしも安心できた。
だけど落ち着いてくると疑問だらけだ。
「えっと……アルさん。聞いてもいいかな?」
「色々聞きたい事はあるだろうけど、まずは皆の拠点に戻ろう。クラウディアも待ってくれているんだろう?」
そうだ。クラウディアが待ってくれてるんだし、まずは拠点に戻んなきゃ。
アルさん先導で森の中を戻ってくるあたしたち。
アイツの身体のうち、角と背中の石はアルさんが回収した。残りはバラバラに消えていった。
森の中へ少しだけどぷにやイタチの姿が戻ってきてる。謎の魔物はあの1体だけだったみたいね。
「ライザ! それにアルさんも!?」
「遅くなってごめんね。クラウディア」
隠れ家の前でクラウディアが待っててくれてたよ。心配してくれてたんだね。
「無事でよかったよ。なんだか森の生き物たちの音も戻ってきたみたいだし」
「俺たちだけじゃヤバかったけどな……」
「何があったの?」
「僕から説明するよ。まずは皆の隠れ家に入ろうか」
アルさんに促されて、まずは隠れ家に入る事にした。
「色々聞きたい事はあると思うけど。まずアレがなんなのか、かな?」
「うん。アレは一体何だったの?」
「ボロかったとはいえ、俺の剣が折れるなんて」
まずは一番気になる部分――アレの正体からね。
まだ動転してるのかな? 言葉遣いが変えられない。
「僕も確証があるわけじゃないんだ。後で確認は取るけど――アレはこの世界の生物じゃないよ」
「この世界じゃ……ない?」
「そう。君達が知っている中でだと……例えば精霊かな? この世界に居るけど住んでいるのは違う世界っていうのは聞いた事がないかな?」
「あたしたちがいる
詳しくないけど、4つのエレメントそれぞれを司る「大精霊」っていうのがいるらしくって。
時たま現れる事があるらしいんだけど、住んでる世界は違うらしい。
「うん。その精霊達と違う世界だけどここでもない世界。そこに住んでいる魔物ってところかな」
「……僕たちの世界以外にそんな世界があるだなんて」
「僕も行った事があるわけじゃないんだ、あくまで予想に過ぎない。けど、アレが元々この世界に住まう生き物だとは思えないからね」
さすがに確信はないみたいだけど、あり得そうな話だよね。
「別の世界があるのはいいとして……アルさんはなんでアレがその世界の魔物だと思ったの?」
「――アレがここに現れたのは初めてじゃないんだ。僕もアレに遭ったのは2回目だよ。その時に今回みたいに素材を回収して調べた結果、この世界の魔物にしては魔力を持ちすぎているって事は分かってね」
「だから知ってた風だったんだ……」
「1回アレとやり合って、やっぱ勝ってんすね」
「負けていたら大ケガをしていたか……今ここにいないだろうね」
明らかに知ってた感じだったし、
それにしても、あんなのがいるなんて……。
「えっと、僕もいいかな? アルさんは何でアレがあそこに居たって分かったんですか?」
「元々警戒用に森に強力な魔物が現れた際に感知できるよう罠を張ってあったんだよ。森と僕の工房に一か所ずつ設置して、アレみたいなのが近寄った際には分かるようにしておいた。ただ、前回遭遇した時からそう時間が経っていなかったから……君達がここにいる事を知っていたのに工房を留守にしてしまった。結果、君達をこんな目に遭わせてしまった――申し訳ない」
後悔してるような表情のアルさんだったけど、元をたどればあたしたちの勝手な行動のせい。
なのにアルさんが頭をあたしたちに下げた。下げさせてしまった――これはダメだ!
「頭あげてよアルさん! アルさんがいなかったらあたしたち今頃どうなってたか分からないし、森に入ったのだってあたしたちの見通しが甘すぎただけ! なにも悪くないし謝る事なんてこれっぽっちもないよ!!」
あたし泣きそうになってるなぁ。もう泣いてるかな。
「謝るのはあたしたちの方で、アルさんにはお礼しかできないんだよ。お願いだから……」
あ~もう。かっこわるい。情けなさが噴き出してくる。
「そうだぜアルさん! 森に入ったのは俺たちが勝手にやった事だ! リラさんにも重々言われてたのに警戒足らずで踏み込んじまった。アルさんが来なかったら今頃俺は……」
「僕もだよ……怖かったけど行ける、逃げられるって思っちゃったし。結局何もできなくて」
「アルさん。何があったか私は分からないですけど、みんなアルさんに感謝してるんですよ?」
クラウディアがあたしたちの言葉をまとめてくれた。
「……また、女の子を泣かせたな」
小声でなにかアルさんがつぶやいたみたいだけど、聞き取れなかった。
だけど、やっと頭を上げてくれた。
「分かったよ。じゃあ――ありがとう、だね」
涙でぐちゃぐちゃだろうあたしの顔を、アルさんがハンカチで拭ってくれた。
「はいっ! ありがとう、ですよっ!」
やっと雰囲気が明るくなった。
この人には暗い顔を、悲しい顔をして欲しくないんだ。
あたしたちのせいっていうなら、なおさらの事。
「それでアルさん。この後どうするかってあるんすか?」
「取り敢えず今日は島に帰ろう。皆送っていくよ。確認は明日にするつもりだから」
「確認って……何をどう確認するんですか?」
タオの疑問はもっともね。
多分アレ……異世界の魔物の事。でも、ソレの何をどうやって?
「明日の朝、僕の工房に来てくれるかな?」
もちろんみんなうなずいて、桟橋から島に戻る事になった。
オールを引っ掛ける部分がキズだらけになってる。よっぽど急いでくれたんだよね。
その後はレント以外のみんなの家まで送ってくれた。レントは嫌がるもんね。
あたしたちは明日、何を知るんだろう……?
ようやく原作ライザのストーリーが動き始めました。
アルはエド以上の激情家だと思ってます。理性はありますけどね。
最低でもこのくらいの戦闘力はあるんだな、くらいにお考え下さい。
設置の罠はご都合です。
徐々に原作、本作の背景が明らかになってきます。
次も楽しんでいただければ嬉しいです。