ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
そしてこの辺りから作者が悪ノリを始めたようです。
誤字報告ありがとうございます。
通算で十何回は見てるはずなんですけどね……。
今回もよろしくお願いします。
朝5時。
農家が多いクーケン島の朝は、クラウディアにとっては早いらしい。
もうじき本格的な夏が来る時期だからこの時間でも十分に明るい。
農作業をするわけじゃないけど、あたしもこの時間には起きるのが日常だ。
でも……今日は今までと違う心持ちかな。
昨日の魔物。気になっちゃってなかなか眠れなかった。
朝9時。
アルさんの工房に到着。
クラウディアはもう到着してた。住まいが近いからか、あたしみたいに待てなかったのか。
「おはようライザ」
「おはようだよ、ライザ」
「うん。アルさんもクラウディアもおはよう」
「レントとタオもすぐに来ると思うから。お菓子でも食べて待っていようか」
「ありがとうございます!」
結構甘いものが好きらしいアルさんと、お菓子に一家言あるみたいなクラウディア。
この辺は考えが合うみたいね。
ちょっとしてタオ、続いてレントも到着だ。
「おはよう。お待たせしちゃったかな」
「俺もワリイ。クソ親父と揉めちまってよ」
ザムエルさんは相変わらず、だね。
さてと。
「それでアルさん。昨日言ってた確認っていうのは」
「うん。アレに詳しそうな人に話を聞こうと思ってね」
詳しそうな人?
島の住人はありえない……となるとまさか。
「アンペルさん達の所に行こうか」
アルさんの工房のすぐそば、アンペルさんの家にみんなで向かう。
あの2人が何を知ってるんだろう?
「ごめんください」
アルさんがノックをする。
「アルか。開いているぞ」
「お邪魔します」
OKをもらってあたしたちは家の中に入った。
「全員揃っているのか。あちらの拠点が完成した報告、と思うが……それだけではないのか?」
「ええ。お二人に見て頂きたい物がありまして」
そう言って、アルさんは持っていた袋から昨日の魔物の素材を作業台にばらまいた。
アンペルさんたちの表情が一気に強張って、空気が張りつめた。知ってるんだ。
「……これを、一体どこで?」
「昨晩にライザ達が小妖精の森の奥地、森奥の踊り場で遭遇した魔物から回収した物です」
「奴らがあの森にだと?」
「やはりお二人はアレがなんなのかご存じなんですね」
「……ああ、知っている。まさかここで奴らに関わるなど思っていなかったがな」
確定しちゃった。それも直接関係したこともあるっぽい。
「今の話を聞く限り、レント達は奴らと戦闘になったという事か?」
「戦いっていうか、あたしは腰が抜けちゃって何も出来なくて。レントの剣も折れちゃって、タオにかばってもらって……最後は助けに来てくれたアルさんに倒してもらいました」
「そうか……」と考え込むリラさん。
単純なアルさんの戦闘力についてか、それとも。
「形がなんであれ、お前達――よく無事に戻った」
リラさんが口にしたのは誉め言葉? だった。失礼だけど、正直意外だ。
怒られるって思ったよ。
「奴らはこの辺の魔物など歯牙にもかけん。アルが討伐したとはいえ、それまでよく持たせた」
それだけリラさんにとっても警戒すべき存在って事なんだよね。
明らかにあたしたちの知ってる魔物とは違う、別の世界からの……そういえば。
「アンペルさんたちはアレが何か知ってるんだよね? 教えて……もらえないかな?」
「すまんが、それについては迂闊に話せない事と思っていて――」
「
アルさんがその一言を口にしたとたん、二人が……動揺した?
「間違っていないようですね」
「……一体、何処でその言葉を知った?」
「とある文献で。異世界の魔物、で合ってますね?」
「……ああそうだ。そして、奴らをこの世界から駆逐する事が私達の旅の目的の一つでもある」
「アレを……全滅? って事はその、フィルフサっていうのは」
リラさんが「はぁ」と息を吐く。
「そうだライザ。ここだけではない。世界の何処かに忽然と現れる。ある程度法則はあるがな」
あんなのが世界中に、それも突然現れるなんて……。
「アンペルさん、ライザ達も既に当事者です。御存知の事を話していただけませんか?」
「……近いうちに必ず話す事を約束しよう。だが少し時間をくれないか。ライザ達が森に拠点を構えてくれたおかげで私達もあちらの警戒に集中できる。何故現れたのかだけはハッキリさせておきたくてな」
単に知ってるだけじゃなかった。まさか旅の目的がアレの退治だったなんて。
もっと知りたいとは思うけど、知ってもあたしたちが出来ることなんて大した事ないだろうし。
アンペルさんたちの調査を待つのが一番かな。
「分かったよ。でも、いつか必ず教えてね」
「ああ約束しよう。私達もお前達を危険な目に遭わせたくはないからな」
「ところで一つ確認したいのだが」
リラさんがアルさんに質問。
「アルがフィルフサを倒したと言ったな。どうやったんだ?」
「角と背中の魔石は蹴りと手刀で割りました。結構丈夫な装備なもので。ですが……全身は錬金術で「分解」しました」
「なんだと!?」
とっても驚いてるアンペルさんの声。
あたしもびっくりだ。物を生み出す錬金術で……「分解」?
「僕の知る、とある人が使っていた戦術です。僕の錬金術は「理解」「分解」「再構築」の3つから成り立ちます。なら、その過程を「分解」で止めてしまえば」
「身体がその構成を保てなくなる……と。防御など何の役にも立たん、相手にとっては最悪の攻撃手段といえるか。錬成陣の要らない君なら尚更、なのだな」
「あまり使いたい手段ではありませんけどね。僕も頭に血が上ってしまったもので」
「いや、そのお陰でライザ達は無事だった。アルの判断は間違っていない。だが使い方を誤らないで欲しい」
「勿論です。必要な時は容赦なく殴ってください」
今まで物を生み出すのが錬金術だと思ってたけど、アルさんの錬金術には「分解」の過程がある。
それに加えてアルさんは錬成陣を必要としない。ただ手を合わせるだけでいい。
なら破壊にも使えるんだ。以前話してくれた、戦争の力としてってのを考えちゃうわね。
というより、アルさんの過去って一体? 島に来た時はまだ子どもだったのに。
「他にもいくつか確認を取りたい事はありますけど……ライザ達の隠れ家も完成したという事ですし、まずは引っ越しをしましょうか」
「ああ、そうだな。せっかく構えてもらった拠点だ、早速活用させてもらう事にしよう」
「それとだ。結果的に無事であったとはいえ、心得不足だったレントには特別指導だ。気張れ」
「うえっ!?」
アレ――フィルフサが異世界の魔物で、この世界に突然来る事。
アンペルさんたちの旅の目的の一つがフィルフサの退治。
文字通り「破壊」に使えるアルさんの錬金術。
いろいろ分かった事があるけど、あたしはこの中で何をすべきなんだろう?
そんな事をボヤッと考えながらアンペルさんたちの荷物を舟に運んだ。
そういえばレントの剣、作ってあげなきゃね。
お昼前には終わって、アンペルさんもアガーテ姉さんと話して引き払いを完了させたみたい。
アンペルさんが言うには、クーケン島にフィルフサが出る可能性は限りなく低いって事らしい。さっき言ってた法則ってやつなのかな。
「私達はまず周辺にフィルフサが現れていないか調べる事にする。足跡が残っていれば辿れるやもしれん」
「分かったよ。必要な事があったら遠慮なく言ってね?」
「レントは特別メニューだ。まずは脅威に対する感覚を身体に叩き込む」
「……ウィッス!」
もうなんか、あんた
家で相変わらず古書を調べるっていうタオと、家に戻るクラウディア、工房とアトリエに戻るアルさんとあたしで島に戻る事にした。
――そんな、舟の上での出来事。
「ねえライザ。私も……みんなと一緒に連れて行ってもらえないかな?」
クラウディアからのお願い。フルート直した時にも言ってたっけ。
「そのフィルフサっていうのをみんなが見に行った時。私、不安もあったけど何よりみんなの力になれなかった事が悔しくて……」
「それはあたしたちも同じだよ? 見に行ってはみたけど、何もできなかったし」
「僕としては進んで危険に飛び込むつもりのクラウディアに驚きなんだけど」
「タオは知らないかもしれないけど、クラウディアって結構アクティブよ? 昨日までの現場監督モードみたいにね」
「アレは忘れてくれるかな……」
クラウディアの中では思い出したくない事らしい。
アレを忘れる? もう身体に刻まれてるよ。
「タオ君も怖がってはいたけど一緒に見に行ったよね? 拠点に残っていいって言われても」
「……そこを突かれると痛いけど、ライザとレントを放っておけなかったのはそうかな」
「それと同じだよ。私もみんなを待っているだけじゃ不安だった。だから一緒に行動させてもらいたいんだ。ライザとアルさんが作ってくれたフルートで、私の魔法も戦いに使えそうだと思っているし」
あの……作業場とアトリエを真冬にしかけたやつね。
たしかに魔物を氷漬けに出来そうだよね。あたしたちごと。
ただ、でも、なあ。
「あたしとしてはクラウディアを危ない目に遭わせたくないんだけど……それに知ってるだろうけど、あたしたちのやってる事は島でいい目を向けられてない。だからこその隠れ家だしね。あたしはアルさんのお手伝いって形で甘く見てもらってる所があるけど、対岸に渡るのは島の掟破り。クラウディアも変な目で見られるかもしれないんだよ?」
「ライザはもう危ない目に遭ってるじゃない。それに言い方はあるけど私たちは余所者だから今更だよ? もちろんお父さんのお仕事の邪魔はしちゃダメだけど、モリッツさんは私の事くらいで今回の件を取り下げる人じゃないと思ってるし、私も周りの目なんて気にしないよ。だから……」
う~ん、思ったより押しが強いなあ。決意が固いね。
どうしたものやら。
悩んでたら、アルさんがまじめな表情でクラウディアに話し始めた。
「クラウディア、一つずつ確認だ。先ずライザについては対岸に出る事は御両親の許可を取っている。加えて僕も訓練をつけた。レントは事情もあって寧ろ島の外に居たいタイプで親父さんも気にしていない。タオは進んで島を出たいわけじゃないけど、今後タオの知識は必要になってくるだろうし、いざという時に冷静な判断が出来る。10年以上前から3人一緒だから、まあご両親もなんだかんだで甘めに見ている部分があるね」
「僕の知識って……じゃあアルさん、フィルフサって言葉は」
「想像に任せるよ」
どこまで知ってるんだろう? 万能にもほどがある気がするんだけど。
「だけどクラウディア、君はルベルトさんの仕事に付いて此処にいる。何度かお話の機会があったんだけど、君を溺愛していると言っていいよ。だからモリッツさんが気にするんじゃなくて……クラウディアがケガをしたならルベルトさんが手を引くと思う。君自身ルベルトさんの邪魔はダメだと言った。それは君も望むところじゃないだろう?」
「それは……」
アルさんの静かな言葉にクラウディアが口ごもる。思い当たる節はあるって事ね。
「それにクラウディアは戦闘経験がない。旋律に乗せる魔法っていうのは僕も手解きが出来ない。まあこの辺りは追々でもいいけど、まずはルベルトさんに御了承頂く事が大前提だよ。ライザの様にね」
あれはムダに試練だったわね。親と話すのにあそこまで緊張するなんて。
アルさんの言う事はごもっともだ。
いいってわけじゃないけど、あたしたちは悪ガキ3人組なんて呼ばれてる立場だもん。
あのフィルフサってのと関わってくのに、今更掟破りだのバチ当たりだの気にしないね。
だけど、クラウディアはルベルトさんのお仕事のためにここに来たんだから。
そのルベルトさんに了解を取らないとクラウディアは連れ出せない。
……冒険どころか、最悪島から離れていっちゃう。
「そう、ですよね。お父さんを説得しないと。でも……」
どうやって。そこが難しいのよねぇクラウディアの場合。
元よりルベルトさんに溺愛されてるクラウディア。危険があるうちは承知してもらえない。
あたしと違って島の外に出る一応の正当な理由があるわけでもない。掟も関係ないけど。
最低でもクラウディアに危険がないか、あたしたちで守れることは示さなきゃ、かなぁ。
でも、どうやって……ああ~考えがループしちゃう。
「そこで、だ」
「「へっ?」」
「えっ?」
アルさんがそこで切り出す――何か名案が?
でもアルさんはクラウディアを危険にさらすような事に前向きじゃないはずじゃあ。
「お店、開いてみるつもりはないかい?」
ちょっとイタズラじみた、アルさんの笑顔。
……まぁたこの人は一体何を思い付いたんだろう。
さあ敵が見えてきました。
アルは国家錬金術師相当の知能ですから……翻訳くらいは、ねぇ?
そして原作には沿いつつ、徐々にオリ要素が増えていきます。
既プレイの方はもうお察しかもですが。
次回からはクラウディア加入作戦に入ります。
次も楽しんでいただければ嬉しいです。