ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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クラウディアを仲間にするべくてんやわんやのライザ達です。
そこに、一部の方々はご存知であろうある要素を加えてみました。
しばらく戦闘回がないので、描写がなくて助かります。

いつも誤字報告ありがとうございます。作者の視力が足りない。

昨晩やっとアニメを見れました。
試験管の謎が解決されてしまった……。

今回もよろしくお願いします。


18. 47~50日目① 地道な下積みと進む工房魔改造

「おはよう! バーバラさん!」

 

「おはようライザ。今日も元気だねえ」

 

「昨日お話ししてたお薬、作ってみたんだ」

 

「もう出来たのかい? 大したものなんだねえ「れんきんじゅつ」っていうのは」

 

朝からあたしは島を走り回っていた。

 

先日アルさんから教えてもらった方法――少しずつ錬金術を知ってもらうためにね。

だけどそれだけじゃなくって、あたし自身の評価を上げるためでもある。

 

昨日の、あんなやり取りを聞いたら、ねえ。

 

 

 

 

 

 

「お店、開いてみるつもりはないかい?」

 

「私が、ですか?」

 

アルさんの突然の提案。

クラウディアがお店を持つ? 何のお店を何のために?

 

「クラウディアはお菓子を作れるよね?」

 

「えっと……はい。ですけどお店に出せるようなものじゃあ」

 

「勿論そこは練習になるね。でもお菓子を作る事が出来るのは、僕らの中ではクラウディアだけの特技だ。加えてクーケン島にはお菓子を専門に作っているお店がない。材料の仕入れが難しいからね。じゃあその材料を仕入れられたら?」

 

……まさか。

 

「僕らが自力で外から素材を集めて」

 

「あたしが錬金術で使いやすい材料に調合する?」

 

タオとあたしが言葉を繋げる。

「そう」、とアルさん。ええぇ。

 

「お菓子作りの材料を島の内外に求める。クーケン島にお菓子作りに合った果物が少ない事はルベルトさんならご存じさ。なら島の外からの調達になるのは必然。そしてクラウディアは商家の跡継ぎだろう? 自分で材料を仕入れて、商品を作って、価格を決めて販売する。そんな商いの勉強をクラウディアがする事はルベルトさんにとっても喜ばしい事じゃないかな?」

 

「一番量が要りそうな小麦粉は……ヴァッサ麦はあたしん家から融通できるし」

 

「クーケンフルーツも作ってたよね? 島外の人たちにはウケるんじゃない? ミルクは僕の家からも出せるかも」

 

なんとまあ。よくそんな事思いつくなあ。

 

「ただし、クラウディアを危険から守れる事は示さなきゃいけない。それ以前にライザとルベルトさんの繋がりは最初の1回と、娘と仲のいい同年代の地元民くらいのもの。だからライザの知名度を上げなきゃいけない――良い方向でね」

 

うっ。ここで今までの島の評価かぁ。

 

「どん底からのスタートだね」

 

「タオ。他人事じゃないわよ?」

 

「でも他にも問題が……まず売り物に出来るか分かりませんし、場所だって」

 

「島の人が知っているお菓子の品目は少ないんだ。当然練習はしてもらう事にはなるけど物珍しさもあるから大丈夫だと思うよ。場所は僕の工房を使えばいい」

 

はい?

いやそれって。

 

「アルさん、また魔改造?」

 

「ひどいなあ。有効活用と言っておくれよ?」

 

あははと笑うアルさん。普通じゃありえない事ってわかってます?

おかしいなぁ、あたし常識人ポジションだっけ?

どんどんあの工房が不思議なナニカになっていく……。

 

「という事で。クラウディアにはしっかり練習してもらって、お菓子作りに目覚めたって(てい)をルベルトさんに示す必要がある。そして一緒に行動するライザ達は、愛娘を任せるに値する人物である事を、ね。認めてもらえたら正式にライザ達と島の外でも一緒に居られる。どうかな?」

 

 

 

 

 

 

「よっし! 次はロルフさんの木材だね」

 

アルさんの提案に飛びついたあたしは、島での評判を上げるためにみんなのお願いを()()って形で受けて、錬金術で解決していく事にした。

昨日島に帰ってから色々回ってみたけど、結構お手伝いが助かる事は数があって、錬金術で解決できる場合がわりとあんだよね。

島で唯一のお医者さんをしてるエドワードさんの依頼なんて、手持ちの素材で足りたくらいだ。

 

今まで戦いに備えたアイテムとか調合のための素材なんかが多かったけど、隠れ家修復で木材とか作ったからかな? 簡単な材料ならすぐにレシピが思いつくしね。

 

クラウディアは今頃お屋敷でお菓子作りの猛練習中のはずだ。

昨日クタクタになって帰ってきたレントも話を聞いて、こっちにいる間はザムエルさんを抑えてくれるって。大変だろうなぁ。

タオはシンシアさんの学び舎のお手伝いや、新聞づくりをしてるピーターさんに話題提供をしてくれてる。頭脳労働と雑学をたくさん知ってるタオにもってこいってわけね。

 

で。アルさんはというと。

 

 

 

「また広くなってるよねぇ……間違いなく」

 

幸い工房の隣の空き家とはスペースあるけど。バレないのかなぁコレ?

 

アトリエと作業場の密度が明らかに薄くなってる。

あたしの時よりもスペースの拡張度合いが大きい気がするね。

さらにお菓子を作るための窯――オーブンって言うらしいけど、それの準備をしてくれてる。

あたしの釜みたいに煮込む感じじゃなくて焼いたり蒸したりって感じだね。

 

ちなみにこれに合わせて煙突が建ってた。なんかもう、うん。どうとでもなれ。

 

まあそんな感じで、あたしたちみんなでクラウディアを迎えるべく走り回る日々だ。

評価が良かったのは「魚のエサ」。なんでもちょっと不漁気味らしくって、タオに魚の性質――あたしは知らなかったけど、鼻が利くらしいから水の中で匂いが広がるような物を作って、漁師さんたちに渡したら結構好評だったんだ。

 

ただ、アルさんは不漁気味って事を気にしてた。

「今年はそういう年なのか、それとも……」ってブツブツ言ってたし。

珍しい光景だったね。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなを続けていて3日目の夕方、クラウディアからの伝言をアルさんが伝えてくれた。

――明日ルベルトさんに話を切り出すって。

 

「明日、かぁ」

 

「クラウディアとライザ達のこの3日間、ルベルトさんにはどう映ってるかな?」

 

「アルさんはどう思います?」

 

「はいそうですか、とはいかないだろうね。クラウディアの覚悟とライザ達の実力は確認されると思うよ」

 

「あたしの実力かぁ。何を聞かれるのかな」

 

「錬金術を確認されるか、あるいは魔物の対処か。多分両方だろうね。そして……信用かな」

 

依頼として何かを作るのと魔物との戦闘、かな?

 

この辺りの魔物なら、フィルフサや大型じゃなければ大丈夫だと思いたい。

現在レントは店売りの剣を買って使っている。あたしたちのなけなしのお小遣いだ。

今はさすがに調合の時間ないもんね。その内タオのハンマーと併せて新調してあげましょ。

まだあたしだけじゃ武器の調合は無理なんだよなあ……。

 

それはともかく大店(おおだな)のトップとして活動してるルベルトさんに、しょせん片田舎の小僧っ子でしかないあたしたちを信用してもらうってのはかなりの高難度になりそう。

 

「まあ考えても明日にならなきゃ分からないさ。しっかり休んで備えておくといいよ」

 

「はい! それじゃあ今日はこれで!」

 

場所を貸す立場として明日はアルさんも来てくれる。それだけで安心感が全然違うよね。

 

最近は料理の練習も兼ねてあたしも家の夕食を手伝っている。

娘の料理が食べられるのは嬉しいものだね、って言ってくれるお父さん。

島のみんなの評価もこんな感じに、少しは変わってくれてるといいなあ。

 

 

 

 

 

 

翌朝9時に、アルさんと一緒にクラウディアのお屋敷に。

もうお話は始まってるはずだけど……。

 

 

コンコンコン

 

 

「御免下さい。エルリックと申しますが」

 

アルさんがノックとともに扉に声をかける。

中からコツコツと近づいてくる足音。クラウディアかな。

 

「アルさん、ライザ。お待ちしてました」

 

「お邪魔するよ、クラウディア」

 

「おはようクラウディア。それで、ルベルトさんは?」

 

「ここにいるよ。ライザリン・シュタウト君」

 

出迎えてくれたクラウディアと、通路のわきの執務室から出てきたルベルトさんが視界に入った――悪い雰囲気ではないみたいね。

 

「バレンツさん。いつもご贔屓にして頂きありがとうございます」

 

「こちらもだよ、エルリック君にはお世話になっている。君のお陰で色々揃えさせて貰っているし、王都でも入手が難しそうな物も手に出来た。これからも良い取引をお願いしたい」

 

「願ってもない事ですよ。引き続き宜しくお願い致します」

 

あたしは知らなかったけど……この2人って結構会ってるのかな?

少なくともいい関係を築いてる事は間違いないみたい。当たり前か。アルさんだし。

 

「先程クラウから話は聞いたよ。まさかパティシエに興味を持つとは思っていなかったが」

 

「私が場所を提供するという事も?」

 

「ああ、正直驚くばかりだ。認めるかは別にして……良いのかね?」

 

「ええ。使っていないオーブンがありますから道具屋としては使ってやりたい思いがありますし、私自身甘い物に目がないもので試食させてもらえないかという下心もありますよ」

 

ははは、ってサラッと嘘をつくアルさん。

使ってないんじゃなくて新品ですよね? 今回のために昨日一日で作りましたよね?

 

「君もその口かい? 甘い物もそうだが、新しい食べ物というのも良いものだ」

 

「えっと、じゃあ」

 

あたしがルベルトさんに確認を取る。

 

「クラウがパティシエ見習いの真似をする分には構わない。仕入れや市場調査、価格設定など商いを営む我々としてはいい経験になるものと思っているよ」

 

「それじゃあ!」

 

「しかし、だ」

 

あちゃあ。声を挟んだけど止められちゃった。

パティシエっていうのはお菓子作りする人でいいんだよね?

 

「仕入れ元を設けるわけではなく、自分で仕入れるというのは了承しかねる。クーケン島に魔物はいないが、対岸の土地が危険な場所である事は君も身を以って知っているはずだ。それに我々商売を行う者達が分業としているのは、一人で出来る事に限界があるから。時間は有限だからね」

 

全部自分でやってるようじゃ、そもそも作る時間も営業も出来ないっていうルベルトさん。

 

まあそうなんだよねぇ。まともに商売してるわけじゃないけどあたしもレシピ検討、素材採取、調合、相談って形の市場調査だけで大変だし。

本当に商いをしてるルベルトさんの事だ、クラウディアが適当な商売をする事を許すわけがない。赤字経営じゃうちの農場だって続けられないもんね。

……まあ全部ひとりでやってる人が隣にいるわけだけど。

 

「お父さん、こんな機会は滅多にないと思うんだ。新しい土地で(いち)から市場調査、価格設定を考えられて土地も貸していただける。そして仕入れの大変さも自分でちゃんと体験して――私たちがクーケン島に来たのだってそうでしょう?」

 

「クラウが真剣に商いに向き合ってくれているのは私も嬉しい。だが初めてこの島に来た日を忘れたのか? フォルマ―さん達がいなかったら、シュタウト君達がいなかったら、エルリック君が音爆弾を持たせてくれていなかったら……今頃どうなっていたか」

 

「それは……」

 

フォルマーさんて聞くと誰か分からないわね。

あたしもシュタウトと呼ばれるのはむず痒い。お父さんたちが呼びかけられてる気分だ。

 

さてあたしからも切り出そう。

 

「それなんですけど……ルベルトさん」

 

「何かね?」

 

「あたしたちでクラウディアを守らせてもらえないですか?」

 

「君達……君を含めた3人でかね? 気持ちはありがたいし、仲良くしてくれている事には感謝している。だがこれ以上君達にも面倒をかけさせるつもりはない。君達もやる事があるのだろう?」

 

目的と手段が逆になってるからなんか変な感じだね。

それは置いといて。

 

「あたしが島で何をしているかはご存じですか?」

 

「錬金術で島の皆さんの手伝いをしているとは聞いているよ。都でも珍しいフォルマ―さんのような錬金術士が、まさかクーケン島にいるとはね」

 

あたしはそのアンペルさんに教わってる駆け出しで、さらに規格外が隣にいるんですけどね!

ただあたしたちの3日間の努力は何とか実を結んだみたい。ルベルトさんの耳に届いたんだ。

 

マイナスの評判じゃない形で――付け焼刃だけど、ちゃんと成果になってよかった!

 

「錬金術にはいろいろな素材が必要なんです。だからいろんな場所で素材採取する事になります。その時にはもちろん魔物とも戦う事になりますから、あたしも訓練してる身です。レントとタオも自分たちの目的のために鍛えてます」

 

タオは好きで鍛えてないけど、まあいいや。

 

「あたしの採取に2人も付き合ってくれてます。だけどクラウディアに必要なお菓子の材料っていうのは、あたしにはわからないです――最低でも一回は来てもらわないと。だからクラウディアにも現場には来てもらうけど、あたしたちが護衛するって事でどうですか?」

 

「ライザ、私は友達に護衛なんて……」

 

あ~そこ突っ込んじゃダメだってクラウディア。

ただ、ルベルトさんは考え始めてくれた。

 

「……君達に魔物から身を守るだけの力があると? 自分の身だけ守る事に比べ、他人も守る事がどれだけ難しいかは分かっていると思うが」

 

「あたしたちもあの時の事があって、同じ事にならないようにって努めてます。錬金術もアンペルさんに教えてもらって身を守るための道具も作れるようになりました」

 

現在の最高峰はあなたの娘のフルートです。

 

「訓練には私も指導に入っていますし、あの時の音爆弾も持たせています。何時もというわけにはいきませんが、私も商売人の端くれですから少しはクラウディアさんに教えられる事もあるでしょう。それに……」

 

アルさんも援護に入ってくれる。だけど、これを考えてなかったなあ。

 

 

 

「――お二人がこの島に滞在される時間は有限。ならば出来る事にも限界があります。最初から黒字経営は難しいですからまずは通しで経験してもらう、という事ならいいのでは」

 

 

 

クラウディアが属してるバレンツ商会の人たちはクーケンフルーツの販路確保がここにいる目的。

それが決まったら、島を離れちゃうんだ……。

 

「エルリック君は護り手の経験もあるんだったね? 確かにこの島にいる期間だけで全てを満足に為すのは難しいか。ふむ……シュタウト君」

 

「はっはい!」

 

ルベルトさんがあたしに向き直った。悪い流れではないはず。

 

「娘をお願いする立場ではあるが……どうしても確認させてもらいたいんだ。君達にクラウを守る力があるか見極めさせてもらいたい。クラウが君達に迷惑をかけても大丈夫かの確認ともいえる」

 

よっし! 第一段階かつ一番高い壁を通った!! ――でも冷静に冷静に。

 

「えっと、具体的には?」

 

「君は錬金術士として活動しているんだったね? ならその錬金術の腕前、そして君達3人がクラウをお願いできるかに足るかを見せてもらいたい」

 

アルさんの予想のまんまだなあ。これ誘導してるよね?

 

 

 

という事で、なんかアルさんの手の平の上を転がってただけの気もするけど、クラウディアを冒険に連れていくための挑戦権は勝ち取れた。

課題は近いうちに決めてもらえるとの事だ。もう錬金術の課題は決めてあるらしい。

 

クラウディアはそのままお屋敷に残って、いつもの3人でアトリエにて成果報告だ。

 

「そんじゃ後はライザと俺たち次第って事か」

 

「そうね、錬金術はあたしだけの話だし。2人は単純な戦闘力になるか頭脳労働をするか、ね」

 

「ルベルトさんから貰う頭脳労働の課題なんて通過できる気がしないんだけど?」

 

せっかく勝ち取った権利なんだから絶対に活かさなきゃ。

二回目なんて、多分ないんだから。




というわけで原作の本筋と違う展開が入ってきました。
無印ライザにはDLCで「クラウディアのアトリエ」というのがあり、
その設定みたいなのを元ネタに今作に組み込んでおります。
それでもわりと原作沿いの流れに出来てよかったです。

次は第一試験への取り組みです。
次回も楽しんでいただければ嬉しいです。
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