ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
達成度の評価点って手段がどうこうっていうより、いかにうまく見せるかですよね。
派手であるほど意識が向きます。
前話で記載の通り、リアルに寄せたせいで世界観が微妙な感じに……。
誤字報告ありがとうございます。お世話になってます!
今回もよろしくお願いします。
「亀裂をふさぐ為の素材、持ってきました!」
翌日。お昼よりは少し前。
あたしはクラウディアのお屋敷を訪ねて早速ルベルトさんに面会した。
「ほう。もうかね?」
「はい。あとは実際に使ってみてって事になりますけど」
「いいだろう。思っていたよりずっと早いし、改良の余地ありなら試してもらってもいい」
話が分かる人でよかったよ。一回きりだったらさすがに不安だもんね。
ルベルトさんとクラウディアに続いて、あたしも地下室に入らせてもらう。
「それで何を使うのかね?」
「コレです!」
取り出したのは……青かったぷに玉に砂やら木の実やらを調合しまくった結果、黒っぽくなったぷに玉みたいなもの。黒いぷにっていないよね?
「これは?」
「錬金術で作った素材ですよ。さぁてと」
詳しい説明はせず、亀裂のあった場所へ。
だって……なんでこうなってんのかあたしにも分かんないんだもん。やぶ蛇になりそうだ。
「この玉に中和剤を混ぜて……っと」
赤中和剤をコレに混ぜるとどんどん硬くなる。
だから混ぜ始めて、固まりきる前にグイッと亀裂に押し込む! ふんっ!!
塗りつけるようにしっかりと黒ぷに玉を押し込んで、ちょっと様子を見る。
水に浸かってるから見た目では分からないけど、手をかざした感じじゃ止まったよね?
「これで大丈夫だと思います」
「ふむ」
ルベルトさんも水に浸かりながら、亀裂があった場所に手をかざす。ちゃんと靴は脱いでる。
そして。
「……確かに亀裂は塞がったようだ。後は排水せねば分からんか」
「それなんですけど――」
「失礼致します。遅くなりました」
ここでアルさんが登場だ。
「先に行ってておくれ」って事だったから、あたしも完成形を見てないんだよね。
「やあエルリック君。君が排水の手配をしてくれたのかね?」
「ええ。上に運び入れさせてもらいましたので、こちらへ」
そう言ったアルさんに続いて地下室から出ると、階段の前には。
「……アルさん、これなに?」
「手押しポンプだよ? クーケン島では見た事ないなあと思って」
「ぽんぷ? 初めて聞く名前と見た目だが」
「これは……取っ手、なんですか?」
昨日ハンマーで叩いてたインゴットが組み合わさって、太い鉄製の筒になってた。よく叩いて筒にできたもんだ。
上部には長い取っ手っぽいのが付いてて、筒の下と上部の側面には青くて長い管が繋いである。
それが台座に取り付けられてた。
この管の青い色、なんかよく見た覚えが?
「実際に見て頂いた方が早いと思いますので少々お待ちを。桶をお借りしますね」
そう言ってアルさんは――下側から伸びた管を地下室に持っていき、水を汲んで戻ってきた。
側面に付いていた管はお屋敷の外へ持っていく。
あたしもクラウディアも、ルベルトさんでさえ何をしてるのかわからないみたいね。
「まず下準備として、こちらの下部の管を水で満たしておきます」
戻ってきたアルさんが、地下室から汲んできた水を筒の中に注いでいく。
筒の中にも何か付いてるっぽいわね。
入れた水は筒の下部の管を通って……管の中が水でいっぱいになったのかな?
「水で管を満たしたら、取っ手を上下に動かします。上から筒の中をご覧になっていてください」
「わかった」
そしてアルさんが、1メートルくらいある取っ手を言葉の通り上下に動かし始める。
すると。
ジャッコッジャッコッ!
「……ほう、これは」
それを見て聞いたルベルトさんが突然地下室に駆けていく。
あたしも筒の中を覗いてみた――下から水が上がってきてる?
あたしもルベルトさんのように地下室へ駆け降りる。
すると。
「水が……減ってきてる」
壁が濡れてる跡が元の水面の高さだよね? どんどん下がってきてる!
錬金術でも魔法でもない。単なる工夫でこんな事ができるんだ……。
「随分と便利な物だね」
「ルベルトさんでも見た事がないんですか?」
「そうだね。色々な街を見て回って来たけど水汲みはこのクーケン島と同じ、滑車を使った桶が大半だったと思うよ。これだけ離れた場所から水を汲み上げられるなんて……」
クラウディアが解説してくれる。サラッと作ってたけど、わりととんでも道具なんじゃ?
上に戻って取っ手を動かし続けるアルさんに、「逆側も見てごらん」と言ってもらったのでお屋敷の外、もう一方の管の先を確認だ。
管の先は排水溝の中に置かれていて、そこから水が流れてきていた。
「面白い物だね。どういう原理なのかが分からない」
なんかもう、あたしのやった事が忘れられてる気しかしないんだけど?
そのまま十数分アルさんは取っ手を動かし続け、排水作業を続けた。
途中であたしとルベルトさんも試しにやらせてもらったけど――それなりに重いね。
でも動かせない程度じゃないかな。
女のあたしでも出来るんだから、レントあたりならしばらくは続けられそうだ。
しばらくして筒からゴボゴボと音がして、アルさんはあたしに話しかけた。
「ライザ。下の管の先っぽ、口を押さえてここに持ってきて貰っていいかい?」
「分かりました!」
あたしが下り、ルベルトさんとクラウディアも付いてくる。
そこには。
「――素晴らしい成果だ」
木桶で汲んでは捨てを繰り返していたら、結構時間がかかってただろうねえ。
大変さが簡単に思い浮かぶ目の前で、地下室の水はほぼ無くなっていた。
言われた通りに管の口を押さえて上に戻ってきたあたし。
その口を鉄の筒の穴に差し込んだところで。
「いかかでしたか?」
さも当たり前といった感じでアルさんがルベルトさんに話しかけた。
「シュタウト君の穴塞ぎがキチンと機能していた事も中々だったが……エルリック君の道具には驚くばかりだよ。どういう仕組みか伺っても良いかね?」
「勿論ですよ。ペンと用紙か何かを頂いても?」
そう言って、ルベルトさんから紙を受け取ったアルさんがサラサラと絵を描いていく。
さっすが錬成陣をフリーハンドで描くだけはある。すっごく上手だ。
さて、説明してもらったけど……異世界言語が混じってたからかいつまんで。
取っ手の先、筒の中には蓋みたいなものが付いているらしい。
これが筒の中に入ってる水に触れた状態で取っ手を下げると、蓋が上がると同時になぜか水も上がってくるんだって。
で、水が側面の穴まで上がってきたら、その側面から水が流れていく。これはまあ普通だね。
取っ手を上げた時は蓋に弁が付いてるらしくって、水を下に押し込むことなく蓋だけ下がる。
これを繰り返して、水を吸い出したらしい。
文字にしてみたけど難しいなあ。ほとんどアルさんの言葉まんまだ。
それとこの青い管だけど……間違いないや。青ぷにだよね?
「ご期待には添えられましたでしょうか?」
「期待以上だよ、感謝する。それと相談だが……その器具を買い取らせてもらえんかね?」
「大変ありがたいお言葉ですが、今はまだ量産が難しいものでして。まず島で活用したいと考えておりますので。型が取れればといった所ですか」
「……う~む、そうか。1万コール位であれば即金で支払うが」
すっごい大金がさらっと出た!
「まずは島での利用を優先させていただきたく。申し訳ありません」
「分かったよ。原理を教えて貰っただけでも大収穫なんだ、これ以上は強欲が過ぎるね」
サラッと断った! あたしならよろこんで飛びついてるけど!
ルベルトさんも知らない原理の道具を、話を聞いてからすぐ考え付いてたんだよね?
頭の中どうなってるんだろう。元々知ってたって事はない、よね?
ほぼ島に来たあとの記憶……でも、「クーケン島では見た事ないなあ」?
というかコレを忘れちゃいけないよ。本来の目的が飛びそうになってんじゃん。
「えっと。それで、あたしの課題の方は……」
「あぁすまないね。水漏れが無くなっていた事は確認できた。君の錬金術士としての腕前は確かに見せてもらったよ」
「やった! ありがとうございます!」
「それとエルリック君には、先ほどの話とは別に正式に報酬を準備させてもらう」
「謹んでお受け致します。今後ともご贔屓に」
「……いずれの土地に、類似品でもあっただろうか」
という事で。
あたしの課題……なんかもう
あとはクラウディアを守るための力。魔物との戦いになるのかな?
「ライザ! ありがとう!」
「ううん。正式に依頼をもらってそれを納品しただけだよ。報酬は信用って事、ですよね?」
「その通り。よかったねライザ。これでクラウディアを連れ出す為の道へ一歩前進だ」
「あたしは驚いてばっかでしたけどね……あの青い管。アレってやっぱりぷにですよね?」
「ぷにの素材は結構便利なんだ。ホントは樹液からラテックスを採取出来ればよかったんだけど、この辺りには見つからなくてね。流石に管へは錬成させてもらったよ」
「アルさんも本当にありがとうございました。あんなに短時間で道具を作っていただいて」
「いえいえ。報酬はキチンと頂いているし、アレは島でも活用できると思っているから」
今までアルさんがしてきた事は、多分こういった事の連続だったんだろうな。
――だから島の大人たちにすら認められるほどの存在になった。
閉鎖的・排他的・保守的なこの島で外の人が認められるって事は、それだけ大変なんだから。
あたしも頑張らなきゃね。
「後はクラウディアを守れるって事を証明出来れば、正式に連れ出せるだろうさ。3人で頑張りなよ? 手伝いは僕もしてあげるから」
「いろいろありがとうございました。アルさん」
「どういたしまして。以前も言った通り、今のうちに色々経験してもらうべく勝手に世話を焼いているに過ぎないからね。それと……クラウディアはライザ達とは別にお店を開く事になるんだから、そちらも頑張ってね。僕もそれ目当てのお客さんが増える事を期待しているから」
「ふふ、頑張ります! もちろん試食もしてもらいますね」
「楽しみにしてるよ」
という事で、あたし個人の課題は達成できた。
あとはあたし
どういった方法で試験するのかわかんないけど、ちゃんと訓練しとかないとね。
「じゃあ、うまくいったんだな」
「よかったよ。工房からすごい音がしてたから、久々に
「あたしの錬金術が完全に霞んだわね……」
「やっぱあの人はちげえんだなあ。俺たちから話を聞いて作るまでたった1日……しかも錬金術は使ってないんだろ?」
「そ。錬金術は便利なものだけど頼りすぎちゃいけないって。そればかり頼ってるとアイデアが思いつかないって言ってたね」
あたしの部屋で今日の結果を2人に伝えた。
アルさんのとんでも技術はともかく、あたしの錬金術も認めてもらえたんだ。
島の人たちに錬金術を知ってもらうために、お手伝いはこれからも続けていくけど次のステップに向けて準備もしないと。
「んで、次の課題なんだけど……多分魔物と戦う事になると思うかな。単に戦うんじゃなくて、あたしたちそれぞれの持ち味ってのを見られるんじゃない?」
「持ち味?」
「ライザならアイテムと魔法、レントは剣を使った攻防、僕は後方からの援護、て事かあ」
「それなんだけど――タオ、あんたのハンマーはあたしの方で調合してみるよ。ホントはレントのも考えてたけど、もう買っちゃったしね」
「助かるけど、いいのかい?」
「これからも3人……じゃないや。4人で冒険を続けるなら作業用ハンマーじゃキツいでしょ? アレで魔力ぶっ放せてる時点ですごいと思うけど。あたしの杖はアルさんの魔改造、レントのは店売りだけど新品でちゃんとした武器。クラウディアのは戦闘に使った事ないけど、あたしとアルさんの合作だからね」
ついでに素材も別物。威力は「夏場に現れた冬」という形で身をもって体感済みだ。
「そんな事してたのか?」
「アルさんにとっても試しって事でね。あたしの調合とアルさんの錬成を混ぜてみたのよ」
「それで出来ちゃうあたりすごいよね。それじゃあお願いするよ」
というわけで明日ハンマーを預かって、手持ちのブロンズアイゼンで調合してみましょ。
スタルチウムは材料の彗星岩がないもんね。火山まで行くのはさすがに早いかぁ。
道も知らなきゃ魔物も知らない。北にあるって事は、例のメイプルデルタに近いって事だし。
あとは……あたしの調合だけで作れるかなあ。用途の決まったアイテムじゃないから難しそう。
せめて完成形のイメージは持っときたいよね。
アルさんの協力があれば確実だけど、あたしたちの冒険用にって事なら代金は用意しなきゃ。
あたしの杖とクラウディアの笛は実質タダにしてもらってるけど……あのぽんぷ? が即金1万コールでしょ? あれだけで我がシュタウト家はどれだけ生活できるんだろう……。
それに見合うだけのお仕事をアルさんにお願いしてるんだから、手伝いとか力になるとかじゃなくてちゃんとした形でお返ししたいところだ。
まあいろいろ考えつつ、一回相談かなあ。まずはタオのハンマー調合に挑戦としましょ。
次の課題に間に合わさなきゃね!
第一課題を通過しました。
排水器具がなかった場合はバケツリレー待ったなしですよね?
その時は頑張れレント。
噴水がある以上、ポンプくらいありそうなものですけどね。
どこかに水栓の描写があったりする……?
ご存じない方は、某ジ〇リのト〇ロに出てくるポンプを想像ください。
とまあ島に無かった色んな物を作って、生活を豊かにしている
アルなのですが……それが必ずしも良いわけではないですし、
とある1人に依存した閉鎖空間では歪みの素になるとも言えます。
そしてライザにも、とある疑問が。
次はハンマー調合、そして再び彼の登場です。
次回も楽しんでいただければ嬉しいです。