ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
彼のセリフを書くと、一回が長くなりがちです(後でもっと長くなります)
便利がすべてってわけじゃないのがライザ世界の特徴ですね。
誤字報告ありがとうございます。なんか前話は妙に多かったようで……。
第12話でご協力いただいた「文章の読みやすさ」について
予告通り再アンケートを実施致します。
よろしければご投票お願いします。
今回もよろしくお願いします。
「ぬぅぁあああ~~~!!!」
「流石にまだ2人でやった方がいいんじゃないかな……?」
翌朝。
アルさんの工房兼あたしのアトリエで、シンシアさんからの宿題に取り組んでいる時のような声を上げて……あたしは頭を抱えていた。
タオから預かったハンマーを元に、まず一人で調合できないか試したんだけど。
うん。ハンマーにはなった――ただの銅製のハンマーに。
タオの魔力の使い方が異常なんだよ! 前々から思ってたけどさ!
どうしても魔力刃を放つハンマーがイメージできなくて、ただのハンマーになっちゃう。
それっぽくしようとするとエレメントや魔力の流れ、品質の面で全然ダメになるイメージなのだ。
これ以上ブロンズアイゼンを入れちゃうと、元のハンマーよりそっちの方がメインになっちゃうからハンマーですらなくなるよ? その時は単なる金属のカタマリだ。
あたしは自前の杖だからまだ良し、レントは剣だから分かりやすい、クラウディアのフルートは旋律に乗せる形だからいい音をイメージすればいい。
けど「刃が出るハンマー」はダメだ。あたしの理解を超えてる。
アンペルさんが前に言ってた「リビルド」ってのも試そうかと思ったけど、形を変えない調合ってかなり難しいのよね……。
「武器は命に係わる物なんだからキチンと手を入れた方がいい。ライザの努力と
「ううぅ。スミマセン、お願いします」
「僕一人で出来る物でもないんだからさ。それに僕にとっても勉強になるからね」
というわけで、形状作製はアルさんにバトンタッチ。
ブロンズアイゼンの調合のされ方自体はいいから、タオに合った魔力の流れ方と形状に錬成し直してもらった……2分で。
ダメだ。あたしの常識がなくなりそう。
本当にアルさん魔法使えないんだよね? エレメントを識別できないんだよね?
魔力自体は感じられるっていうけど、それでここまでやれる?
一応試し振りって事で、外であたしが試しに使ってみた。刃じゃないけど魔力は飛んだ。
「皆によろしくね」ってアルさんの言葉を背に受けて、タオにハンマーを渡すべくラーゼン地区へ向かおうとした……んだけど。
はぁ。またか。
「ブルネン家の男ってのは、いちいち人に突っかかってるくらいにはヒマらしいわね」
今回はクラウディアもいるのかぁ。巻き込みたくないんだけど。
「これは忠言というやつだ。クラウディア嬢に……付き合う相手は選べとな」
「ボオス! てめえ!」
あ~そういうネタで攻めてきてるわけ。
「商売人のモリッツさんは別として、少なくとも何一つクラウディアにとってタメになる目新しいものを示せないあんたよりはあたしたちの方がマシだと思うけど? 同年代はちょうどここにいるメンツで全員だけど、あんたたちの方がいいとでも? ルベルトさんからクラウディアとあたしたちの関係は聞いてるよね?」
「ああ、聞いている。クラウディア嬢をお前らの騒動に巻き込むべく、だろう? 店を開くという話も聞くが、いつまで居るか分からん間に何が出来る。俺には……お前らの遊びにクラウディア嬢を巻き込むべく手段を設けたようにしか見えないんだが」
なかなか耳ざといわね。
「しかも、バレンツ氏に取り入る前期間は不自然なまでに島民の話を聞きに回って錬金術を売り込んでいたらしいな。俺と話した後くらいからか? 俺の考えが正しかった事くらいは理解したらしいな」
「そうね、堅物しかいない島だって事を忘れてたわよ。んで? あんたの言う得体の知れない錬金術によってルベルトさんのお屋敷の水漏れは修繕され、漁師さんたちの不漁問題は解決して、その有用性ってのは示せてきてるんだけど。あんたは未だに怖さが勝ってるって事?」
「得体が知れんとしか言っていないが? それに以前も言ったはずだ――なぜ世界的に認知されていないのか、とな。屋敷の話は今日聞いた所だ、後手に回ったのは認めよう。だが小規模ならともかく……魚を集めただと? その場凌ぎで他所から魚を集めて、後から全く居ないなんて事にならなければいいがな。ライザ、お前も気付いているだろう? そこまで自然を曲げられる
……こいつムカつくけど、やっぱり考えてるわね。
的は射てんのよね。否定する理由に「あたしたちだから」ってのがあるから気に食わないけど。
「別になんでもかんでも錬金術でってつもりはないよ。魚の件についてはアガーテ姉さんや漁師さんから相談を受けてやった事で、錬金術こそ使ってるけど手間かければ他の方法でも作れるし。島の顔役を務めるとか言ってるあんたらが、漁師さんたちが飢えるのを見てるのがお好みとは知らなかったわ。それとも他になんか解決する手持ってんでしょうね?」
「ライザ、その辺りにしておこうよ……ボオス君、忠告というなら感謝するけど、私は私の意志でみんなと一緒にいます。むしろ最初はみんなの方から危ないかもって言ってもらってた。それでも私は一緒にいたいと思ったんだよ。お店の事も……実地の経験が出来る事がどれだけ有意義かは、貴方ならわかるでしょう?」
「そうだぞボオス! テメエの勝手な妄想でクラウディアの邪魔すんじゃねえよ!」
いつしかあたしの事でヒートアップしてたわね。毎度の事だけど。
さて軌道修正はされたけど……どう出てくるんだか。
「成程、クラウディア嬢。いや……
こいつ! クラウディアに対して!
「ボオスッ! あんたねえ!」
「何が違う!!」
あたしの怒りの叫びをかき消す勢いでボオスも叫んできた。
「俺は以前から為すべき事を為せと言っている。ライザ、お前はエルリックさんの力になると言ったな? その為の錬金術というならまだ目を瞑ろう。だが錬金術の危険性は今言ったな? 島民の悩みを、危険性を孕む錬金術で解決する事とどう繋がる? お前は自分が手にした力を見せびらかしたいだけだ!」
カチンとくる。見せびらかしたいって? ブルネン家のあんたが言うか。
「レント、お前は武勇を示すだの北の塔に行って島民を見返すなどと言っていたな。そんな事をして島民がお前にどんな目を向けると思う? ただの掟破りの極致だ! 自分の身内をどうにかした方が余程一目置かれる。タオ、お前もだ。文字の解読を趣味にやる程度なら構わん。が、嫌々ライザ達に付き合い続けるんじゃない。お前は正しく家の仕事を手伝っていたはずだ」
一気にまくし立ててくる。結構聞き耳立ててるわねコイツ。
「そしてクラウディア、お前も島の掟は知っているはずだ。外の人間に「絶対に守れ」とは言わん。だがお前のやる事に島の人間を巻きこむな。今のこいつらが対岸に行けるのはエルリックさんの手伝いである事が条件だ。島に関わっている間はお前やバレンツ氏の判断で許可する事じゃない。お前の行動がこいつらの騒ぎを助長する事に気付いていないのか?」
あんたこそクラウディアに命令してんじゃないわよ。何様だ。
「さてあの流れ者2人は最近森に拠点を移したと聞くが……夜な夜な島を抜け出すお前達を護り手が目撃している。その拠点に行っているんだろう? どれだけ迷惑を振り撒く気だ? 掟破り共」
さっきから聞いてりゃ、掟掟ってうっさいわね。
「掟を守る事がそんなに大事なの? 島にこもってる事がそんなに大切なの? 変化を求めず周りから取り残される事がそんなにうれしいわけ? あんたは何のための掟なのか分かってんでしょうね? ホント頭のかったい大人たちと変わんない」
「それは違うぞライザ。
結局わかりもしないものに、とりあえず従ってるだけじゃない。
「あんたこそランバーとしかつるめないくせによく言うわよ。この島にも遺跡があるそのクリント王国はなぜ滅んだのかしらね。で? 悪魔? 竜? 見たって記録は残ってるの? あんたんちにあるだろう書物にでも? 結果だけ見て自分に都合いいように解釈してるだけでしょ、あんた」
あんたは盲目と従ってるだけ。失伝してるっつーならなんで調べようとしないかなあ。
「ここからはあたしの話だけど。お母さんたちの許可は取ってるし、対岸に行く際はアルさんのための採取はしてる。アンペルさんは錬金術の師匠なんだから聞きに行く事くらいあるわよ。武術の稽古だってそこのランバー相手より護り手のみんなより、戦闘経験豊富なリラさんに教わった方がずっとタメになると思うけど?」
「こいつは剣の稽古相手という以外に、俺がブルネン家にいない間父さんを護衛させるべく常に俺に付かせている。お前らみたいなガキの馴れ合いじゃあない。あと戦闘経験豊富といったか? ならこれ以上ザムエルに騒ぎを起こさせるなよ? ……なあ、お強いレントさんよ」
あ。これはいけない。
「……ッボオスてめえ! 黙って聞いてりゃつけあがりやがって!」
「だったらなんだ? そのガントレットで殴りにかかるか? ――あの父親にしてこの子ありだな、レント。つけあがるだと? いつまでも遊んでやがるお前らと一緒にするな!」
あ~あ~乗っちゃったよレント。
ザムエルさんとリラさん両方を出されると我慢ならないかぁ、コレあたしで止められるかな。
「ちっ……時間使わせやがって。俺が暇だと言ったか? 農作業もせずエルリックさんの手伝いでもなく、真昼間からハンマーを持って街中をうろつくお前には分からんだろうな、ライザ……島の顔役となるべく日々修練に取り組む苦労など。どうせお前達との遊びの差などすぐに分かる、精々ガキみたくはしゃいでいろ。いくぞ」
「はいっボオスさん!」
は~まったく。ようやく話し切り上げたよ。
レントもムチャクチャ拳握って青筋立ってるけどリラさんの教えが効いてるのか我慢してるね。
今のあたしの状況だけでグチグチ言われても困るんだけど? ハンマー持ってんのは事実だけど。
そんな事はどうでもいい。それよりも。
「……ごめんねクラウディア。好き放題言わせちゃって」
「大丈夫だよライザ。ボオス君なりの自論はあるんだろうけど、私が決めた事だから。それにしても……なんというか彼、私たちの事をよく知っているね?」
「だからヒマしてるっつってんだよ。単に俺らの評判落とすために色々嗅ぎまわってんのさ」
「予想があながちズレてない所には驚いたけどね。昔から結構勘がいいとこはあるから」
そうなんだよねぇ。
タオとは方向が違うけど、頭が回るやつではある。無茶苦茶な事は言ってこない。
なら島の外に目を向ける事の大切さに気付くはずなんだけど。
「同年代って事もあるんだろうけど、やっぱり昔からのお知り合いなの?」
「こんな小せえ島だからな。イヤでも同じ括りにされるさ」
「……それだけ、なの、かな」
クラウディアは小声だったけど……まあ分かるわよね。
商家の娘さんなんだから人を見る目はあたしたちよりあるだろうし、そういった関係にも気づいちゃうんだろうな。
「そのうち、ね。あ、そうそうタオ。これ預かってたハンマーね」
「ああうん、ありがとう。片打ちから両打にしたんだね。方向を気にしなくていいや」
「ライザだけでやったのか?」
「最初はそのつもりだったけど、タオの魔力の使い方が分かんなくてさ。結局アルさんの手を借りる事になっちゃった。まだまだ知らなきゃいけない事が多いよ」
「つまり俺の剣だけアルさんの手が入ってないヤツかよ。どっか疎外感ってやつだぜ」
「タイミング悪かったんだから仕方ないでしょ。だからあたしもタオもお金出したじゃない」
小遣いの大半が消えたんだからね? 下手に折ったら承知しないんだから。
「別にダメだなんて言わねえよ。ただ振るってみたかっただけだ」
「ま、火山に行けるようになるまではお預けかな」
「なんでなんだい?」
「クラウディアのフルートに使った素材は火山で採取したものらしいから」
「つまりは、アルさんは火山にも行った事があるわけだ。この辺一帯は制覇してそうだな」
ひょっとして、あの塔にも行った事があったりして?
全然あり得そうよね。
それはそれとして、気になる事が一つ。
ボオスのあの言い方――「差がすぐにわかる」って。
アイツの場合はどうこうしろとか、いつまでやってるんだとかは毎回だ。だけど今回の言い方はなんか引っかかる。
何か知ってるわね。近いうちに起こるか、起こすかは知らないけど。めんどくさいやつめ。
「さ、タオはそのハンマーの試しをしないとね。あたしの時も魔法の威力が跳ね上がったからその辺は体験して貰っとかないと」
「あの時のコーリングスターは驚いたね。あれだと小突かれるどころじゃなさそうだよ」
「というわけで対岸に行くとして……そういえばみんなはここで何してたの?」
「朝から対岸に行ってリラさんの訓練だ。あぁフィルフサってやつは今も見て回ってるってよ」
「僕は朝のヤギの世話が終わったからさ。フレッサさんの所に本がないか見に行ったついでに、ライザの様子を見ておこうと思って」
「私は港の行商の人たちが取り扱ってるものを見に行こうとしていたところだよ」
んで、ボオスに絡まれたと。狙ってたんじゃないでしょうね、あの掟バカ。
という事で各々の予定のために解散する事にしたよ。
ちなみに改造したハンマーを振るったタオの魔力刃は地面を抉り、それなりの太さがある樹を寸断し、岩に切れ込みが入った。ヤバいものを作ってしまった気がする。
「すごいね! 単なる杭打ちハンマーから変わるだけでずいぶんと威力が上がるもんだよ」
そう言って、浜にいたぷにや小妖精を一撃で仕留めていく戦闘モードのタオ。
今のあたしたち3人の中で火力は一番あるかもしれない。
そんな事よりも、タオの将来に影響を与えちゃってないか心配すべきかなぁ。
ボオスが絡むとセリフがどうにも長くなります。話の応酬になりますからね。
書いてる作者としては視点の整理にもなったりしてます。
無印ライザは……この辺の時期はもやもやしますね。
抜け出すまでもう少しです。
前書きの通りアンケートを実施致しますので宜しくお願い致します。
次は久々の冒険回です。イベントいっこすっ飛ばします――だって地味なんですもん。
次回も楽しんでいただければ嬉しいです。
句読点の数はどのくらいがいいでしょうか?(12話以降基準)
-
多すぎる
-
ちょうどいい(本話程度)
-
少なすぎる