ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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代表になるって大変ですよね。
しかも周囲に超優秀な人間がいて、それがルール違反すれすれの行為を
提案してきたとしたら。
やっぱり彼を書くときはなぜか筆が乗ります。

ここからですね。全体的にもオリジナル感が乗ってくるのは。

誤字報告ありがとうございます。誤字はともかく脱字が何故出るのか……。

今回もよろしくお願いします。


28. 65, 66日目① 大きな魚の誘い方

「……よっし! こんなもんかな」

 

「すごいねライザ! たった1日で出来ちゃうなんて」

 

クラウディアは褒めてくれてるけど、いつの間にかさらっと豪華なホールケーキを作れるようになってるクラウディアもすごいと思うよ?

 

昨日アンペルさんから調香成分表をもらってからいろいろぐちゃぐちゃ(主に七色葡萄)やった結果、独特の香りがするものが仕上がったよ。

くさいってことはないけど、なんとなくグラつく香りだ。魔物はこんなのが好きなの?

服に匂いが移ってないかちょっと心配になるね。

 

「アルさんは漁師さんたちとお話に行ってるって事だし、あたしも報告がてら行ってくるよ」

 

「お昼準備しておくね?」

 

「うん! 楽しみにしてる!」

 

ああ、クラウディアの女性スキルに磨きがかかっていく。追いつけるかなあ。

 

 

 

「ああライザ、お疲れ様。こっちに来たって事は?」

 

「はい。とりあえずですけど形になったと思います」

 

港でアルさん、アガーテ姉さん、漁師さんたちで話をしてるところだった。タイミング良さそうだね。

 

「アル君から話は聞いたが、効果はありそうなのか?」

 

「試してないからやってみないとだけどね。いけると思うよ」

 

「ふん。そんなものは必要ない」

 

話がまとまりそうってところで……はあ。

またか。狙ってないなら間が悪すぎるなんてもんじゃない。

 

「何か御用? ボオス」

 

「勿論ブルネン家として今後の方針を伝えるためだ。お前は黙っていろ」

 

前より当たりがキツイ。こういう方向に持ち直したか。

あたしが口を出すとどう考えても悪化しそうだ。仕方がない、黙るか。

 

「ボオス。ブルネン家の方針とは……モリッツさんはどう考えられている?」

 

「単純な話だ。湖で魚が獲れないなら魚がいる場所、外海で獲るまで。船はこちらで用意する。それで解決できる話だ。本当にいるのかどうかも分からん魔物の対応に、怪しい錬金術を使うなど以ての外だ」

 

相変わらず錬金術を毛嫌いしているわね。

その錬金術に助けられているくせにもう忘れた?

 

「ボオス君。外洋は湖の中にいるだろう魔物よりもずっと数が多いだろう。エリプス湖よりも魚がいるのは間違いないだろうけど……それ以上に危険すぎると思う」

 

「エルリックさん。湖に魔物がいるという確たる証拠がない以上、誘き寄せるなんて事をすれば余計な魔物を外から湖に引き寄せるのでは? それに魔物を集めるなどという得体の知れない物を、俺が居るこの島で使わせるつもりはない。これは元々俺達が持ち得る手段で解決すべき問題です」

 

アルさんが苦虫を噛み潰したような表情をしてる。的は射てるらしい。

 

たしかにあたしやアルさん、アンペルさんがいなかったらその方法で対応することになるけどさ?

アルさんが何かの道具を考えるには時間がかかるかもだし。なにより頼りっぱなし。

すぐに使えるのはあたしの手と、ボオスの手だ。

博打かもしれないけどあたしたちで対応できるか、確実だけど危険な方法か。

 

「貴方もここで過ごして既に10年。この島のやり方はご存じの筈と思いましたが?」

 

「勿論だよ。だけど僕は、使える物は使う主義である事も知っているだろう?」

 

「ええ、現に俺もその力と意思にこの身を救われている。ですが……」

 

それでも、納得するには足りないらしい。

 

「貴方のする事は島の在り方を逸脱し過ぎている。貴方の知識はこの島の物ではない。あの竜も掟の通り存在した……正しく危険は知らされていたんだ。ならば掟を守り、妙な物などに頼らず、島で出来る事で対応すべき。それが可笑しな事だとでも?」

 

口調がキツくなってきた。

流石のボオスもアルさんに対してはある程度敬意を払っていた、はずよね?

まさか、まだ自分で成果を上げる事にこだわってる?

 

「話は終わりだ、どう言われようが船は出す。漁師達にも話してある。これは決定事項だ」

 

「……そうか。君の考えは分かった。でもこちらも打てる手は打たせてもらうよ」

 

「……貴方は、ソイツらとは違うと。そう思っていたんですけどね」

 

そう言ってボオスは港を去っていった。

これは止められる雰囲気じゃない。どうあがいてもこじれる未来しか見えないね。

 

「マズいね、これじゃあ明日には船が出る。やるなら明朝には決行しないと」

 

「……まさかアル君にあんな口を利くとは。命を救われた事を忘れたわけではないだろうに」

 

「彼にも立場がありますよ。ブルネン家として打てる手は打つ。それに水を差すような僕の行動は許容出来るものではないでしょう。僕がやる事の大半が島のルール違反なのは事実ですし」

 

加えてあたしたちはアルさん側にいる。怒りの火に燃料をくべているようなもんか。

 

「ごめんなさいアルさん。あたしたちが関わってなきゃ……こんなことにはなってないと思う」

 

「君が気にする事じゃないよライザ。これは僕と彼の問題だから」

 

イヤな予感がする。

 

前の竜討伐みたいに、今のボオスはなにがあろうが外洋への出航を強行するんでしょうね。

その時に、魔物に襲われる気がしてならないよ。

 

船の上だとあたしたちも戦いの経験がないし、そもそも相手は水の中。

護衛みたいなマネも難しいかなあ。あたしたちが守っているのは基本戦える人だけなんだし。

魔物に遭った事すらない人を守りながら、なんて大それた事は考えるべきじゃないね。

でも……う~ん。

 

 

 

「それじゃあ明日には?」

 

「うん。漁船が外洋に出る事になる……となると、安易に誘魔香を使うわけにはいかないね」

 

工房に戻ったあたしとアルさんをクラウディアが待ってくれていた。

準備してもらったお昼をいただきながら、港での出来事を話したんだけど。

 

「……やっぱり使うのはダメですか?」

 

「湖を航行している船がいる状況で魔物を誘うわけにはいかないよ。彼の言った通りで僕らは実際に魔物を目にしたわけじゃないし、居たとしてもどの程度誘われるか分からない。真っ直ぐ香りに誘われてくれればいいけど、目に付いた船を襲う可能性もある。不確定すぎるんだ」

 

せっかく誘き出せそうだったのに、ボオスのやつ!

魚が獲れないのが大問題なのはわかるけどさ、こっちの言い分も聞きなさいよね。

でも魔物を倒すために島の人を危険な目には遭わせられない。本末転倒になっちゃう。

 

一緒に船には……乗せてもらえないだろうなあ。今のボオスじゃアルさんですら拒否しそうだ。

今から誘魔香を使っても、明日までに特定の場所に誘えるどうか……ああぁ~~もう!

 

何も起こらない事を願うしかないの?

 

 

ガチャッ

 

 

「お邪魔するぞ」

 

八方ふさがりな考えだったあたしの耳に、昨日も聞いた声が入り口から響く。

 

「アンペルさん、いらっしゃい。リラさんも」

 

「ああ。邪魔をするぞアル」

 

島で会うのは竜を倒した日以来だね。

なにか用事があったのかな?

 

「何かご用事が?」

 

「特別どうという事でもないのだがな? ライザが誘魔香を作れたかと思ったところだ」

 

「そうでもないだろう。まあ私達は気にするタマでもないが」

 

「……なにかあったんですか?」

 

「「出禁」だそうだぞ? 初めてかもしれんな」

 

出禁!?

 

「対岸の遺跡を調べるのも良いが、やはり密集しているのはこの島だからな。フィルフサやクリント王国の情報を得るならこちらの調査も進めたい。そう思った所で……一ヶ所調べていない所を思い出してな」

 

「島の崖の側面とか?」

 

「それはないんじゃないかな? ライザ」

 

「そうだな。崖の探索程度、大した問題ではない」

 

リラさんそっち!?

 

「……ああ、あそこですか」

 

「アル君は見た事があるかね?」

 

「いえ、僕もありませんね。流石に私有地には入り込みませんよ」

 

アルさんは思いあたったみたい。私有地で遺跡って……あっ!

 

「ブルネン家の敷地!?」

 

「その通り。あそこだけはまだ立ち入った事がなかったのでな。そこでモリッツ氏に話を持ち掛けた結果、島の出禁を食らったというわけだ」

 

「随分な怒り様だったな。私達に踏み入られる事が相当に気に入らんらしい」

 

たしかにあたしたちも入った事ないし、ボオスやランバーが話を漏らした事もないか。

誰からも聞いた事ないし――そもそも遺跡があるんだ?

 

「相談した事がなかったので分からないですが、モリッツさんが拒否されたという事は……()()()()()と思うのが自然ですか」

 

「いくら我々が不審者だの流れ者だのと言っても、ストレートに相談して出禁とは思っていなかったからな。外の人間を入れたくないのか、それとも……という所だ」

 

「お屋敷には何度も招待して頂きましたけど、お庭の門の方はお話にもあがらなかったかな」

 

だてに17年過ごしてきてないけど……まったく聞かないよね、あそこに何があるかなんて。

昔はトレッペの高台にもよく行ってたけど、あの門が開いてるの見た事あったっけ?

 

「で、その帰り道にお菓子があればという期待もあってな。誘魔香は完成はしたか?」

 

「え、ああうん。形にはなったよ、はいコレ。でも使うタイミングが無くなっちゃって」

 

作り損になっちゃったかなあ。それよりも出禁もなんとかすべきなのか。

う~ん。

 

「ふむ。しっかり出来ているな、いい腕だ。しかし機会が無くなったというのは?」

 

「明日、ボオス君たちの家の船で外洋まで漁に出るんだそうです」

 

「今から僕達が湖に出る事も警戒されてしまっている有様でして。どう使おうかと」

 

港はブルネン家の人たちが準備を進めてるところだし、たぶん船の出発まで港は使えないよね。

あたしの家の裏手は……いま舟あったっけ?

アルさんならサクッと作れちゃうだろうけど。

 

「成程……なら、私達が一芝居打とうじゃないか」

 

「アンペルさん?」

 

「悪い癖が出た。面倒な事になりそうだ」

 

「いいじゃないかリラ。たまの事だ、精々演じ切ってやろう。私達は舟が使えるしな」

 

……?

一体何をするつもりなのかな?

 

 

 

 

 

 

「うまくいくのかなあ……」

 

「2人は大丈夫さ。僕らこそ上手くやらないとね」

 

「しっかしまあ、ずいぶんな事をやろうってもんだよなあ」

 

「ムチャクチャだよね。まあボオスが勝手な事しなきゃこんな事しなくて済んだんだけどさ」

 

「島の人たちの為にも頑張らないと、だね!」

 

あの後アンペルさんに誘魔香を渡して、翌早朝。

帰ってきたレントとタオにも話して、今日やる事の説明をしたんだけど。

 

まさか、こんな手段があるなんてね。

 

「さて……漁船が出るね」

 

「ボオスのやつ、船長気取りかよ」

 

「実際ブルネン家が持ってる船だからね。まあだから何ができるって話だけどさ」

 

「2人ともいつも通りだね。緊張していないようで安心したよ」

 

今回の要はレントとタオの2人。

なぜなら普段から重い武器を使ってる――要は力があるからだ。

レントの代わりはムリだけど、タオの代わりならあたしでもいけそうな気はするかな?

 

それにしてもホント、船首で仁王立ち。カッコつけてるつもりかしらね。

 

「こっちも始めようか。2人とも、()()()()()()()ね?」

 

「しっかりと!」

 

「ここに。自分で使うの初めてなんだよね」

 

持ってはいたけど、実際にあたしたちが使うのってクラウディアと遇った日以来?

 

「じゃあ行ってくるぜ。タオは急がなくていいからな?」

 

「普通に漕いでもレントとは差が出ちゃうよ。近すぎないようにしてよ?」

 

案の定サクッと錬成された2隻の軽い舟に、レントとタオがそれぞれ乗って沖に出る。

もうこの程度、ツッコむまでもない。

 

さあ、作戦開始だ!

 

 

 

 

 

 

「フン。あいつらもここまでやれば動けんらしいな。所詮その程度だ」

 

「港で揃って指くわえて見てましたよ。いい気味です!」

 

エリプス湖を南に進む船の上。普段なら乗り切れないような人数の漁師と装備に加えて。

責任者として俺と、補助としてランバーが乗っている。

 

「でも良かったんですか? あいつらはともかく、エルリックさんも動くという話でしたけど……」

 

「あの人は優秀だが……手段を選ばなさ過ぎる。島の住人の生活が懸かった時は特にな。勿論ありがたい話だし、それで俺達も助かっているのは事実。結果的に解決するんだろうが……掟もルールもあったものじゃない。それでは島の人間が自立出来ん。最たるものがアイツらだ」

 

アルフォンス・エルリック。

10年前、島に現れた滅多にいない漂流者。

 

漂流者など、他に知られている限りでは医者のエドワード氏くらいか。

2人揃って優秀といえる。医者の需要は言わずもがなだが。

 

――島ではありえなかった道具をどんどん作り出す。

 

初めのうちは掟に従い、誰も使おうとしなかった。子供の作った玩具に何が出来ると。

だが偶然にソレを使う機会が複数回……その有用性が表に出てしまった。

島民はそれに魅了された。頼るようになった。今ではそれありきになりつつある。

俺ですらあの人が使う道具の便利さと、発想の柔軟さには舌を巻く。

 

 

まるで、この世界の住人ではないような。

 

 

それではダメだ。

クーケン島は長年掟に従い、そして生き残ってきた。

ブルネン家は水源を見つけ、それを切っ掛けに島を率いてきた。

最低限使う分にはいいだろう。だが依存してはダメだ。

各々が為すべき事を為す。そうやってブルネン家は島の先頭に立ってきた。

便利な物に甘えて頼りすぎてしまえば、どんどん人として弱くなってしまう。

中には、最低限為さなければならない事すらしない者達が出てくる――アイツらのように。

 

「何もかも他に頼るようになってきている。アイツらなど、更に別の流れ者に懐く始末だ。皆それぞれ為すべき役割がある、俺も、お前も、アイツらもな。そうしてこれまで生きてきたんだ」

 

そう。アイツらもだ。

 

「俺はブルネン家の跡継ぎとして島を率いるために様々な事を学んできた。そして、その成果を出す事が俺が為すべき事で、それを支えるのがお前の為すべき事だ。それを忘れるな」

 

「もちろんです。ボオスさん!」

 

そうだ。

これまで通りの役目を各々が果たせばいい。

俺も、俺が為すべき事を。島を率いる者として。

アイツらの様に目先の好奇心などに囚われたりなどしない!

偶然出遭ったやつらから、単なる興味を広げて島に貢献するだと?

 

ふざけるな!!

俺が……島のためにどれだけ己を削ってきたか!

 

竜の件で功を焦ったのは事実。よりにもよってアイツらに助けられるなど。

冷静に事を進めなければならない。

海の魔物は比較的大型の魚。調べた限り、この大きさの船ならば沈められる事はまずない。

海上から背びれが見えるというなら、八方に見張りを置いて注意を促すまでの事。

 

錬金術など無くとも、常識を超える知識が無くとも、(俺達)は生きていけると証明してみせる!

 

 

 

頭が熱くなる思考が続いていた。

それは……一人の漁師の呟きで、突然途絶えた。

 

「……おい。ありゃなんだ?」

 

「あんなところに……誰か朝から舟を出したか?」

 

「いや、誰も漁には出ていないはずだ」

 

漁師どもが騒ぎ出した。こんな沖合に舟だと?

 

「ボオスさん、あれ!」

 

あれは……。




さてライザ達がやろうとしている事、
そしてボオス達が見たものとは?

超オリジナル展開です。
だって原作のままだとアル要らないんですもん。
発想不足が暴発した結果、次の話に繋がります。ファンタジー万歳。

ただこういう話を考えるのは楽しいです。

次も楽しんでいただければ嬉しいです。
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