ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師 作:もふもふたぬきねこ
特には語らず。
作者のテンションがおかしくなると
こんな感じの話が出来るんだなと思っていただければ。
誤字報告ありがとうございます。チェック方法変えた方がいいのかなあ……。
今回もよろしくお願いします。
「やあ諸君。今日は実にいい釣り日和だな」
「貴様ら……こんな所で何をやっている?」
「アンペルが言ったろう? 釣りだ」
「そんな事を聞いているのではない!」
あの流れ者共、何故こんな所にいる。
男が竿を垂らして、女が日傘をさしていやがる。
「島の掟というやつは、湖の内ならば適用されるのかな?」
「何をやらかすか分からん得体の知れん者が、島の人間すらそうは来ない場所に居れば警戒するのが当たり前だろうが」
「なら問題ない。ただの釣りだ」
いちいち癪に障る反応をする……!
「そういう君達は、島の人間でも中々来ないという場所に何をしに来たのかね?」
「ふん、俺たちも漁業だ。貴様らと違って島民の生活を守る為だがな」
「私達も食料を獲っているだけだ。同じだろう」
この女……見た目と噂の通り話の通じるやつじゃないな。
どうでもいい。とっとと外海へ進むとしよう。
「この先に進むつもりかね?」
「ああその通りだ。お前達も釣れていないようだからな?」
「そうだな、さっぱりだ。アンペルがヘタクソでな」
「ヒドイ言われようだな。こんな環境では仕方がないだろう?」
男の方が水面に何かを投げた。餌か?
「こんな――物騒な場所ではな」
ポチョン
ドォォォォウン!
ヴォオォォォォォォーーーッ!
デカいサメの魔物が水面から飛び上がりやがった!?
「ひえぁあ!? まものっ、魔物だあぁ!!」
「黙れランバー! ちっ、この辺りに魔物が入り込んでいるだと!」
背びれなど見えなかったぞ! どういう事だ!
「おいボオス! どうするんだ!?」
「一匹だけじゃないぞ……! 食われちまう!」
くそったれ! 何匹居やがる!
「水中の状態を判断しかねていてな? 私達も身動きが取れなかったのだ。目立つ物が来るまでな」
「お前達のおかげで、案の定水中に魔物が居た事を確認できた。礼を言う」
「白々しい事を! 貴様らが外から誘き寄せたんだろうが! ライザが作った物でも使ったか!」
「そんな事をしても何の得にもならんさ。私達がするのは魚がいないという事実と魔物が湖内にいるという事の確認。そして」
日傘を置きやがった。あの女、何を持って。
「魔物を確認したら、
腕に炎が灯った――魔法か!
「ピンを抜いて……位置はあそこか。揺れるぞアンペル。フンッ」
ブォオン!!
何を投げ……なんだあの飛距離は!!??
数百メートルでは済まん。あの怪力女! なんて馬鹿力してやがる!!
一体何が狙い……なんだあの舟は? いつの間に?
「舟の底が抜けずに何よりだ。さて、後は引き継ぐとしよう」
ドォプン!
ッキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!
……甲高いこの音は!
「音爆弾!?」
「おい魔物が、背びれが島の方向に泳いでいくぞ!」
さっきの音で魔物を釣っただと? そんな事が!
それにあの舟に乗っているのは……あの赤髪。
「……レントォ!!」
「うっへぇ、リラさんの遠投ヤバすぎだろ」
あの域に至るのに、あとどれだけの鍛錬がいるやらだな。
だができないって思ってちゃあ一生出来ねえからな。それに向かって訓練あるのみだぜ!
に、しても。
「ボオスの奴、ざまあないぜ。魔物はちゃんと湖にいましたってな」
それにしてもすげえもんだな。
サメってやつは音に反応すんのか。魚に耳があるなんてな、知らない事だらけだぜ。
さてと、だ。気合い入れるぜ。
ちゃんとこっちに来やがった。アルさんの予想通りってな。
「島は北……あっちか。ピンを抜いちまって……クラウディアの強化も合わせてガントレットなしの全力投球! いっくぜーー!」
次頼むぜ、タオ!
「うらぁっ!!」
ブォン!
ボチョン
ッキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!
「リラさんは無茶苦茶だなあ。レントもそれに近付いてきてるのがすごいけど」
リラさんの腕っぷしもそうだけど、あそこまでピンポイントに投げられるなんてね。
双眼鏡で見なかったら信じなかったけど、実際見ても信じられないや。
レントもレントだよ。クラウディアに強化してもらってるったって、限度があるんじゃない?
落下点もそれなりにこの舟に近いところみたいだし。
湖の出口からここまで2キロはあるよね? 二人そろってどんな遠投なのさ……。
サメってのは振動を鼻で感知できるんだっけ。あれだけ甲高い音が鳴ったら飛んでくるよね。
それにしても。
「アルさんもアンペルさんも、とんでもない作戦を考えるよなあ」
いるかどうか分からないなら――確実に場所がわかる状況から討伐してしまえばいい。
昨日の夜からアンペルさんたちが誘魔香を使って、自分たちを囮にサメを一か所に集める。
島じゃボオスたちに邪魔されるから、沖から音爆弾で誘導して浜に着いた所でライザたちが討伐。
僕じゃまず考え付かない。これも柔軟な発想ってやつなのかな? ちょっと違う気がするや。
「……ああぁ、こっちに魔物が来てるよ」
背びれがこっちに向かってくる。誘ったんだから当然だけどさ。
落下点から舟まで距離はあるけど、舟の上で一人――襲われたらシャレにならないよ!
とっとと浜へ繋ごう!
「でも……コレ、どのくらい飛ぶのかなあ?」
僕じゃ遠投は難しいって準備してもらったけど――精霊の力を付与して貰えるなんてね。
リラさん、そんなことができたんだね。世の中色んな人がいるもんだ。
ハンマーに宿る赤いオーラ。あの時の竜みたいだ。
音爆弾も衝撃に強いっていう特別製。御膳立てはしてもらったんだからやらなきゃね!
ティーバッティングって言ってたっけ? なんであれ、全力で振るうだけさ!
ピン抜きよし! 方角よし! 舟揺れないでよ!
「あとは頼むよライザ! せぇぇぇぇぇのっ!! 縛術・影縫い!!!」
ガッキーーーーーーーーーーーーーーン!!!!
「タオ君すごいんだね!」
「いやおかしいでしょアレ!? 下手したらリラさん並みに飛んでない!?」
「下準備したとはいえ、ぶっつけ本番で真っ直ぐここに飛ばせるのは才能だねえ」
タオに遠投してもらうのは無理があるから、お得意のハンマーで
タオにはクラウディアの魔法を、ハンマー自体にはリラさんの協力で精霊の力を付与。
音爆弾はいつかのぷに素材で全体を覆ってよく飛ぶように。信管とやらも特別製。
あとはハンマーを振る高さに音爆弾をセットできれば準備万端。タオの舟はちょっと大きめだ。
といっても、これは。
「これは……こっちの音爆弾は不要そうだね。節約になったよ」
「もう一回こっちから繋ぐ予定だったのに……」
「タオ君のファインプレーってやつだね!」
なんでだろう、あたしだけノリが違う気がする。おかしいのあたし?
っと、音爆弾が飛んできた!
落下の場所は浜から50メートルくらい? ほぼピッタリだね。
「飛距離は目測で1300メートルくらいかな? 今度僕もやらせてもらおう」
「私もやってみたいです!」
「フルートをバットに使わないでね?」
「あーなんなのこの2人!?」
バシャァァァン!!
ッキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!
ああ、久々に聞いたわねこの音。
アルさん曰く、サメってものすごく音に敏感で鳴った方向どころか位置すら正確に分かるらしい。
さらに、水の中は地上の数倍音が速く伝わるんだとか。
耳の良いサメが甲高い音を出す音爆弾を水の中で聞いたら、そりゃあ怒り狂って飛んでくる。
元々はアンペルさんたちが囮になって、そのままリラさんが浜に繋いだロープを引いて魔物を連れてくる予定だった。
だけど、リラさんの。
「レントとタオの修業に丁度いい」
という微妙な理由でこの作戦になったのよね。よく形になったもんだよ。
「さて……3匹かな。背ビレの色を見る限り大顎鮫みたいだね」
「あのサメ、流星の古城でも見ましたけど……魚なのにどこにでもいるんですね」
「エラ呼吸じゃないんだよね。魔物に進化したからなのかな?」
違和感の正体は古城で見た事があるからだったね。そのうち別の場所でもエンカしそうだ。
さて緊張感が薄すぎる気しかしないけど、まあアルさんがいる時点で負ける未来が想像できない。
正直魔物はご愁傷さまだ。
さて仕上げといきましょうか。
ベルトに差してあった誘魔香を浜に振りかける。鼻も良いらしい。何でもありね、サメって。
ザザザッ!
ヴォォォォォォォーーーッ!
3匹とも浜の砂に潜りながら上がってきた!
「遠投組が各々頑張ってくれた事だし、僕らも一人一体ずつでいこうか」
「やる気十分です!」
「ああぁ、クラウディアが戦いに染まっていくよ……」
嬉々として魔物とのタイマンに備えるクラウディア、いつも通り自然体のアルさん。
至って普通……だと思いたい構えをとるあたし。
それぞれの戦いが始まる……!
と、思ったんだけど。
「よっこいしょ」
アルさんの手合わせ錬成で地面から突き出た岩に一匹が串刺しに――なる間もなく消滅し。
「凍麗の舞!」
クラウディアの舞で一匹が氷漬けに――アレ、全体攻撃じゃなかったっけ?
「コーリングスター!!」
あたしの光弾で一匹をボコボコに……
ヴォアォォォォォォーーーッ!
「ちょっと! なんでなのよ!?」
「戦って知っているだろう? 魔法とはいえ、打撃に近い攻撃はサメには効きにくいよ。皮膚にアンモニアを含んでいるんだったかな」
「使うならジャベリンの方がよさそうだね?」
あのノリだったのに2人の方が冷静だし!
ああもう! 今回いいとこ全然ないじゃない!
その後は素直にエクリプスジャベリンを使って討伐しました。アイテムは封印だよ!
あんまり攻撃アイテムって見られない方がいいらしいから。本来島には必要ないしね。
「まさか本当に……この湖に3匹も魔物がいたとはな」
「ライザのアイテムのおかげですよ。流石にこれ以上はいないでしょう」
「元々滅多に魔物が現れない湖だからな。この数十年で複数体の侵入など数える程度だろう。あの2人にもその魔物寄せのアイテムを?」
「薄めての散布をお願いしたんですが……アンペルさんの調整は流石ですね。外海からは引き込まずに湖の魔物だけ釣ったんですから」
あたしには効果の度合いがわかんなかった。初めてだし品質にも左右されちゃうしね。
それをアンペルさんはきっちり調整したらしい。さっすがアイテムのプロだ。
「サメは匂いと音に敏感ですから、居る事さえ分かれば音爆弾と誘魔香でここまで誘えます。沖合に行った後ならボオス君達への危険も抑えられますし、万が一でもリラさんがいれば対処して頂けますから」
「まあ、あの方がサメ程度に後れを取るとは全く思えないな。素手で圧倒しそうだ」
アガーテ姉さんにだけは、あたしたちが動くって話はしてある――証人役としてお願いした。
とはいえ魔物と戦闘する所には呼べないから、終わったらすぐに来れる場所で待っててもらった。
アルさんが倒した分は消滅しちゃったけどね……。
しかしまあ、アルさんもホイホイそれっぽい話をよく作るもんよね。
実の話、ボオスがどう動いてもやる事は変わんなかった。タイミングの話だけだもんね。
「まあこれで魚を食い荒らしていた魔物も討伐された。じき湖にも魚が戻ってくるだろう。今回も君の世話になったな、アル君」
「僕は誘き出された魔物を討伐しただけです。立役者は誘魔香を作ったライザと、ここまで誘導してくれた2人、強化してくれたクラウディア、そして昨晩から動いてくださったアンペルさん達ですよ。ああ、クラウディアには夜食もお願いしたね」
「……やれやれ、悪ガキ3人組と呼ばれるお前達にこうも感謝する日が何度も来るとはな。ありがとうライザ。竜の事といい、頼りになったものだ」
「むず痒いって、アガーテ姉さん」
役立とうとして頑張ってるわけだけど、いざ褒められると照れちゃうよ。
まだフィルフサの事もあるし、これでいいってわけじゃないけど。偶にはこういうのもいいよね。
「さて、どうやらボオス達の船も戻ってくるようだ。あっちで何があったか分からないが、思い止まってくれたらしいな。私はあちらと話をつけてくる事にしよう。モリッツさんにも今回の件は報告しておくよ」
「その際にはアンペルさん達の尽力があった事を伝えてください。出禁になったらしいですから」
「分かった。あの人は恩を仇で返す人ではないからな。まあそもそもブルネン家にそんな権限は無いはずなんだが」
そう言って、アガーテ姉さんは港に向かって歩いていった。
しっかしこんなにもキレイに作戦が進むなんてね。
アンペルさんがおふざけとはいえ「なに、軽く漁船に魔物をけしかけてやろうと思ってな?」なんて言った時にはどうなるかと思ったよ。
「取り敢えず、湖の魔物についてはこれで完了かな」
「大成功、ですね!」
「アンペルさんたちの出禁も解消されるだろうし、一番いい形に終わりましたね」
とはいえ、ボオスの邪魔をした事には違いないんだよなあ。
それとは別にもう一つ気になる事が。
「でもアルさん、とりあえずって?」
「……話したと思うけど「水流が変わった」ってやつだよ。エリプス湖の水流を制御なり修正する様な真似は僕には思いつかない。何が原因なのか分からないんだ」
「海だと……水の流れに暖流とか寒流っていうのがあるんでしたっけ」
「よく知っているねクラウディア。海流ってのは風に因るものと、クラウディアのいう温度や塩分に因るものがあるんだ。部分的にズレてしまうって事は海ならあり得て規模が大きいから周辺でも騒ぎになるね。でもエリプス湖は比較的きれいな円形に海との出入り口は一つだけ。変わるのは外海の塩分濃度や温度と風だけど、ここまで影響が出るものか……」
クラウディアを褒めつつさらっと難しそうな話をそらんじるアルさん。
一体なにで勉強してるのやら。
「体感したわけじゃないですけど、そんなに変わってるんですか?」
「魚が全く来なくなるとかあからさまに舟が流されるとか、そんなのは無いとおもうよ。ただ本当に理由がわからなくてね……ありえないなんて事はありえない、か」
すごい変化ってわけじゃないみたいだけど、すごく珍しい現象って事かな?
錬金術で水をかき回せたりしないかなあ……無理よね。
「……あれ? タオ君たち、何やってるのかな?」
「鍛錬の延長
「いやあ元気が有り余ってるね。アンペルさんが酔ってなければいいけど」
バッシャバッシャバッシャバッシャ!!
「うわああああああああぁぁぁぁ!!」
「急げタオ! 抜かれちまったらやべえぞ!」
「とっとと漕げ2人とも! 私に抜かれるようなら逆立ちで火山を登らせるぞ!」
「うぷっ……リラ、待て、まってくれ……ゆらしすぎだ」
リラさんの言ってる事、冗談じゃないんだろうな。
レント、タオ。強くなんなさいな。
「ほう。上手くいったか」
「ええ、みんなのお陰です。リラさんもありがとうございました」
「精霊に頼んだのと、爆弾を投げただけだ。クラウディア、飯は美味かったぞ」
「お粗末さまでした。リラさんは精霊と通じ合えるんですね?」
「投げただけって距離じゃなかったですよね?」
「私の体質でな。舟の上だったから少々不安定だった。本当はレントの頭を狙ったんだが」
「1500メートルはありましたよね? というか俺の頭に爆弾投げようとしないでくださいよ!」
「冗談だ」
「はぁっ……はぁっ……げっほっ。ぜんっぜん、冗談に聞こえないっ……」
「……あぁあ、じめんの上はいい。ゆれないとは、これほど幸せなことだったのだな……」
なんとかギリギリ、リラさんから逃げ切ったレントとタオ。
レントはまだ余裕がありそうだったけど、タオは文字通り死にもの狂いだったわね。
そして一番の被害者はアンペルさんだ。今も一人だけ別の世界に旅立ってる。
「今回の件でお2人の島への出禁は解かれるかと。高台の遺跡調査は難しいでしょうが」
「別に出禁はどうでもよかったのだがな。なったところで必要なら見つからんように動くだけだ」
「まあ私達にとって潜入は珍しい事では無いか。リラ、今度王都に行ったらアスラ・ドーナツを腹いっぱい食べさせてやるから楽しみにな」
あ、復活した。
「あんな食べ物や砂糖の塊ですらないものを食わせる気か。いつも通り一人で食え」
「リラさんが嫌がるドーナツって一体……」
「……ああ、落ち着いてきた。聞いた事があるね、とにかく甘いらしいよ」
「俺にとってもキツそうな一品だな」
「私も聞いた事はあったかも? 島周辺の素材で作れるかなあ?」
いつか工房に出てくるのかな、そのアスラ・ドーナツ。
興味はあるけど、どこか不穏なものを感じるのはなんでだろう?
ああ、漁船も戻ってきたね。
「他に魔物がいたらたまらんという事でな、あの場で転回して戻ってきたのだ」
「やはり帆船はダメだな。この距離なら漕いだ方が早い」
「海の上ではとても便利なんですけどね。湖内では活かしきれないですか」
リラさんの場合、漕ぐどころか泳いだ方が早そうだ。
さて、あたしたちも様子を見に行きますかね。
アルがいるからこそ存在する音爆弾。
それを使ってオリエピを作った結果、こうなりました。
何気にこの話から徐々にオリエピ、オリ設定の数が多くなってました。
転機はもうじきです。
次は今回の事件の顛末編です。
次回も楽しんて頂ければ嬉しいです。