ライザのアトリエ 不思議な工房と秘密の多い錬金術師   作:もふもふたぬきねこ

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ついにメインキャラクターが全員揃います。

この辺からオリジナル要素やら設定がかなり出てきます。
公式続編と話がつながらない部分があるかと思いますが、
予めご了承ください。続編が出る事を前提にしていなかったんです……。

今回もよろしくお願いします。


34. 67日目③  運命の交差点

「ボオスの、お友達?」

 

不意に背後の方から女の子の声がしてあたしたちみんなが振り返る。

――気が緩んでたのかもしれないけど一切気配がしなかった。

 

背丈はあたしよりちょっと低いくらい?

銀色の前髪で目元がちょっと隠れちゃってるけど、間違いなくかわいいと分かる顔。

オーレン族は基本みんな美人なのかな? なんとなく儚げな雰囲気の人だね。

 

おっと、とりあえず返事しよう。

 

「えっと、まあそんなとこです。あなたは?」

 

「フィルフサに追われていたボオスを保護した。ここは私の活動拠点だから」

 

活動拠点って……ここでフィルフサと戦い続けてるってこと?

同じオーレン族なんだろうリラさんが前に出た。

 

「少年を助けてくれて感謝する。私はリラ・ディザイアス。シヴドルの白牙氏族(はくがしぞく)の者だ」

 

「……久方振りの客人に、懐かしき同胞まで。私はグリムドルの霊祈氏族(れいきしぞく)、キロ・シャイナス。勇猛無比と称えられる一族に会えて光栄だよ」

 

キロさん、だね。覚えた。リラさんの一族を知ってるみたいだ。

 

「霊祈氏族という事は、ここを守護されていた神官の方々か。あの時からずっとここに残って戦いを?」

 

「そう。いつかはフィルフサに脅かされない日が来ると信じて。私達なら誰でもやっている事でしょう?」

 

「……我々は数十年前に敗走した。今はあちらの世界との繋がりを塞ごうとしているだけの臆病者だ。貴女は一人でも戦い続けているというのに」

 

「信じるもの、目指すものが違うだけだよ。貴女は貴女の信念に基づいて今を生きている。それでいいんだと思うしそれを尊重する」

 

あたしより小柄な体格に可憐な容姿。なのに、おそらくは数百年間たった一人で戦い続けている。

キロさん、すごい心の強さだ。

ボオスはその言葉に口をきつく結んでる。なにか話を聞いてたのかな。

 

「話に割り入ってすまない。私はアンペル、リラと共に門を封じるべく旅をしている者だ。ここについてと……フィルフサについて知っている事があれば教えて貰えないだろうか?」

 

「……その装いは錬金術士? 不思議なものだね。まさかオーレン族の貴女が錬金術士と旅をしているなんて。この人は変わり者といった所かな。貴方はどこまで知っているの?」

 

「私ははぐれ者と思ってもらえると嬉しい。リラから、ここは聖域であり本来は水源地である事は聞いている。フィルフサはこの世界に住まう魔物であり、どういうわけか大地を汚染する。そして、理由は知らないが水に弱い。そんなところだ」

 

門を作って資源を奪って。

多分水を失うことにも関わってる錬金術。やっぱりいい印象じゃないよね……。

 

「間違ってはいないから付け加える形になるね。まずこの土地の水源を奪ったのはクリント王国の者達で間違いないけど、方法は分かっていない。聞いた話では「渦巻く白と輝く青」に水を盗られたらしい」

 

「……うずまく、しろ……?」

 

ボオス?

 

「初めて聞く話だな。どんなものかは分からないが……それも古式秘具なのか?」

 

「古式秘具……錬金術って本当にそんなことまで?」

 

「独特の魔力。貴女も錬金術士? こんな子と同じ者達がやった事とは思いたくないのだけれど、クリント王国もあれから変わったという事なのかな」

 

しまった。思わず口に出ちゃった。

 

「あぁえっと……あたしが錬金術士なのは合ってるんですけど、クリント王国は何百年も前に滅んじゃってます」

 

「だから俺たちはクリント王国の出身ってわけじゃねえっすよ」

 

「ここに攻め入った時か、はたまた別の場所からか分からないが……奴らは大侵攻で国力を吐き出し自滅したよ。キロ」

 

「……そう。あれだけ色々持ち出しておいて、勝手に滅んじゃったんだ」

 

自業自得、か。

リラさんたちにとっては奪うだけ奪って、自分たちの土地を滅茶苦茶にされたうえで勝手に滅んだ国。憎くないはずがない、かあ。

 

「フィルフサの方だけど、元々この世界でも隔離されたかのような全く別の環境で生きていた。今はここがそういう環境になってしまっているけれどね。その在り方は虫に近い」

 

「む、虫ですか……」

 

嫌がるとこ、今はそこじゃないよタオ。

 

「虫のように真社会性を形成している。各々に役割があってその役割を果たす事に生涯を捧げる。そして――全ては女王のため」

 

「女王、ですか?」

 

「クラウディア達には話した事がなかったな。斥候や空読みの様に、司令塔としての役割を果たすフィルフサがいる。それが「女王」だ」

 

「私達の間では「(むしば)みの女王」と呼ばれていた、とても大きなフィルフサだよ。今は道を塞いであるけど……ここから北に位置している、精霊の祭壇として建てた大石塔に居たことがある。もう女王の城と化してるね。いまだにフィルフサも北から来るから、まだそこにいるのかもしれない」

 

バケモノの上にバケモノがいたよ。少なくとも斥候よりは大きい?

 

「ですが真社会性という事は……女王さえ滅ぼしてしまえば」

 

「おそらくここフィルフサの群れは瓦解すると思っているよ……貴方は、一体?」

 

「え? ああ、僕はアルフォンス・エルリックといいます。約10年前にこの子達の住む島に流れ着いた者です」

 

「ご丁寧に……いやそうではなくて――貴方は何者? 他の子達やアンペル、私達オーレン族とも明らかに存在の類が違う」

 

「アルはどうも異世界の出身らしいのだが……キロは分かるのか?」

 

「……霊祈氏族の私だから分かるのだろうけど、異質。けど、異世界出身? ならば何故?」

 

キロさんがアルさんを見て首を傾げてるわね。なんとなく小動物感があるよ。

秘密の多い人だけど過去を知ってるあたしはある程度飲み込める。

でも一体何が?

 

「エルリックさんがこの世界の方じゃないというのが寧ろしっくりくるんだが?」

 

「ちなみにラーゼン地区よりも田舎の生まれだそうよ。青空の下で授業受けたって」

 

「マジかよ」

 

「どんな人生を送ったらああまで博識になれるんだろうね?」

 

「すごい天才、かつすごい努力をされたんじゃないかな」

 

「宜しければ、キロさんから見た僕を教えてもらえないですか?」

 

「自分の事を把握していないの? なら取り敢えず一つずつ話そうか」

 

話してくれるみたい。みんな居直った。

 

 

 

「まず、貴方のエレメントが異質」

 

「エレメントが異質、ですか?」

 

「貴方……アルでいいかな? アル自身には本来エレメントが宿っていないんだと思う。それは異世界の出身だというなら法則が違うんだろうからまだ分からなくもない。でもアルにはエレメント……というより加護? とでも言えばいいのかな。それがある。エレメントを持っているんじゃなくて、エレメントに覆われている。しかも基本4属性ではない――光属性の加護」

 

「話にしか聞かない光の属性が本当に存在するのか?」

 

光の属性?

火、雷、氷、風以外に聞いたことないけど、混ざった感じかな?

 

「すまないが、光の属性というのは?」

 

「アンペル……も知らない? 一般に知られている4属性の上位に、根源を司る光と闇の2属性がある。これは私達生き物や物体を個別に構成する属性じゃなくて世界そのもの、概念、法則を構成する属性。だから光と闇のエレメントが一個体に宿る事は本来有り得ない。だから……異世界人というなら尚更、アルは偶然ではなく故意に光属性の加護らしき何かを与えられている事になる。霊祈氏族の私達でも、光の精霊には滅多に会えなかったんだけどね」

 

「……という事は、僕は門に落ちたんじゃなくて」

 

「あの竜みたいになにかに召喚された、ってことですか?」

 

アルさんを、誰が、なんのために……?

 

「加護を与えるなんて最上級の神官が命を賭すほどの願いか、それこそ大精霊様から直接干渉されない限りはありえない。けど大精霊様は世界や自然に干渉する事はあっても動物や個人に干渉するとはほとんど聞かないね。私達も謁見するなんて事は簡単な話じゃなかった。しかも光だなんて……アルを喚んだのは(いにしえ)のオーレン族の生き残り?」

 

「つまり僕が魔法が使えないながらも魔力を感知出来たり、ライザの錬金術に干渉できたのは」

 

「在り方はともかくエレメントはあったが該当する魔法が無かったから、という事になりそうだな。干渉に関しては情報不足と言わざるを得ない」

 

アルさんの錬成には魔力うんぬんの話は関係がない。アルさんも認識が出来ないって言ってた。

でも目に見えないだけであって、いじくる事は出来てたってことかな。

あたしの杖を魔法の面から正しく改良できてたのはそういうわけだったんだ。

 

あたしたちとは違う感覚だけど大体わかってると。調合と錬成が別法則なのはそのままだね。

あの錬金釜の性能もその影響があったりするのかもね。

 

「まずこれが一つ目だね。次だけど……アルの魂の在り方。人間なら両親から生まれていると思うから自身の魂と両親の魂の欠片の3つで構成されるのが普通。さらに先祖の魂を持っている事もあるにはある。でもアルにはあり得ない数の魂が宿っているというか……なんなんだろう? アル自身の魂はちゃんとあるのだと思うのだけど」

 

「具体的にどの程度の数なんだ?」

 

「10や100じゃない。凄まじいとしか言いようがないよ、リラ。人の形を保っているのが不思議だね。アルの世界ではこれも普通なの?」

 

「……普通じゃないと思いますけど、心当たりはありますね」

 

いろいろおかしい話なんだけど、それに心当たりがあるアルさんはどうなっているのやら。

歩んできた人生の一部は知ってるものの……その時に何かあったの?

 

「まあこれはアル自身が知っているならいい。害はなさそうだし。ただ……加えておかしいと思うんだけどアルの魂が削がれているように見える」

 

「っ、キロさんそれって!」

 

「落ち着いて。ええと……?」

 

まただ。おちつけあたし。

 

「ああえっと、すみません。ライザっていいます」

 

「ライザだね。取り敢えず落ち着いて? 今すぐアルがどうなるって話じゃないから。削がれていると言ったけど減っているとか奪われたっていうより、「分けられている」って表現が伝わりやすい? 部分的に綺麗に魂の一部が切り取られているような状態だね。こんなの私も初めて見る」

 

「それって……それでも大きな問題にならないんですか?」

 

「まあ、勿論全部が揃っている状態よりはわずかに弱くなるんだろうけど、このくらいなら死ぬとか寿命が縮むとかはないと思うよ。それにアルの場合は保有してる魂の量が莫大だから影響は微々たるものじゃないかな」

 

「それでもゾッとする話だぜ」

 

「ふむ。これについてもアル君は心当たりがあるのかな?」

 

「これは分からないですね。特別違和感というのも無いんですけど」

 

いいってわけじゃないけど、よかった。ホッとしたよ。

 

「で、3つ目に」

 

「まだあるんですか!?」

 

「これが最後だよライザ。アルの身体について。外と内の活性が一致しない。確認するけど、アルがこちらに来た前後で身体の状態は同じだった?」

 

「やっぱり。そこがおかしかったんですよね――若返ってますよ。僕がこちらに来る前は20歳でしたけど、ここに来た時は多分14歳前後の身体です」

 

「じゃあ……今のアルさんの身体は24歳で」

 

「心は30歳なんですね! ずいぶん落ち着いてるなって思ってました」

 

「……あと12年で、同じ境地に辿り着けるのか? あの意志の強さに」

 

「6年で身体の方もだぜボオス。休み無しで修業し続けてようやくって気がするレベルだ」

 

「確かにな。お前達より年上とはいえ私からすれば遥かに若い。それであの戦闘力だ」

 

「錬金術もだな、やれやれ……。これでも昔はそれなりの腕前だったと自認していたんだが、20歳の時点で今の錬成の腕前に近いわけだ。自信を無くすぞ」

 

昨日聞いた話で、旅をするには幼すぎると思っていたけど6年のブランクがあるならまだ納得できなくもないかな? それでも10歳前後だろうけど。

 

でも……一つ疑問。

 

「アルさん。なんで1()4()()って、そんなにピンポイントなんですか?」

 

「僕が島に流れ着いた時、()()()()()()()って話は聞いているだろう?」

 

「……じゃあ、まさか」

 

「14歳の時、僕はまさにあの状態だったって事だよ」

 

あたしが知ってる限り、ある程度月日が経ってもまともに歩けるような状態じゃなかった。

旅の最中かその前後か、そこまでは分からないけど――そこまで過酷な状態だったんだ。

 

「「れんせい」? アルの世界にも錬金術があるの?」

 

「こちらの世界……あーライザ達の世界の錬金術とはまた違うんですけどね。なので僕も錬金術師にはなります」

 

「ここで見る事は出来る? 加護が影響しているか確認をしたいのだけど」

 

「わかりました。ちょっと待ってくださいね……いけるか」

 

アルさんが地面に触れる。念のための理解かな。

 

「エルリックさんはそういう意味でもあちら側の人だったか。案の定だったが」

 

「今から分かると思うけどあたしのとは次元が違うわよ?」

 

「もう……何があっても驚かん。疲れてきた」

 

ついにボオスが匙を投げた。

あたしたちからちょっと離れたアルさんは――手合わせ錬成、両手を合わせて地面に手を付いた。

 

 

バチバチバチバチバチバチッ!!

 

 

「ふおぉぉぉぉ……」

 

キロさんがキロさんっぽくない声を出している。見た目相応ともいえるかな?

驚かんといってたボオスは引きつってた。どうだ見たか。

電撃の中、地面から生えてきたのは。

 

「……なぜにこれを?」

 

「う~ん、なんとなくかな? 結構愛着があるんだよ」

 

工房の作業場、あたしのアトリエとクラウディアの窯によって位置が転々としてる大きな鎧。名前はたしかオーガヘッドだっけ?

ただ出来た鎧は鉄製の銀色じゃない。なんとまあすごい色。

 

「如何にロテスヴァッサと地質が違うかが分かるな。これは一体何で出来ているんだ?」

 

黄色いような、オレンジ色のような、紫色のような、不思議な色をしてる。

 

「フィルフサの魔石です。この一帯の大地に染みているようですね。それが汚染の原因なのか」

 

「そっか。アルさんはあたしたちを助けてくれた時に「分解」までしてたんでしたっけ」

 

つまり「理解」も出来てるわけだ。再構築するとこうなると。

 

「キロ、どうだ……キロ?」

 

「……はっ!? インパクトが大きすぎた。錬成自体もすごいんだけど、まさかフィルフサの魔石を材料に出来るなんて」

 

かわいい。リラさんと同じくらいの歳だと思うけど小動物感が強いよねキロさんって。

 

「私はアレで土壁に突進する羽目になったからな。それで加護の干渉はどうだ?」

 

「ん。機能してるね。アルを守るというよりは――補助? アルの頭から両手先にかけて加護が集中して纏った感じ。何か実感ある?」

 

「ええ。ここはライザ達の世界とは流れている気の流れ、とでも言えばいいでしょうか。それが異なっているのと……フィルフサの魔石も僕の世界とは構成物が全く異なる。だから本来「理解」には相当に時間がかかるはずなんですけど、初めてフィルフサに触れた際知っていたかのように理解出来ましたから。これは加護に因るものでしたか」

 

キロさん風に言うなら、アルさんには異世界の法則が流れているからあたしたちの世界の法則も普通じゃないってことよね。さらにフィルフサは別の世界の魔物だ。あたしたちの世界とも違う。

なのに理解――勉強とすればいいかな? この過程をすっ飛ばして宿題で満点をとってると。

 

「アルさんが理解できる形に変換されてる……ってことでいいんですか?」

 

「バッチリだよライザ。それでも相当特異なモノではあるけどね」

 

「あれ? でもあっさり理解できたっつうこと言ってませんでした?」

 

「お前のような筋肉脳と同じと思うか?」

 

「ボオス言い方!」

 

「それで伝わっているあたり、タオ君もわかっているんだよね?」

 

「クラウディア、止め刺さないであげて?」

 

悪意は全く無いんでしょうけど相変わらずたまに刺さる言葉を……。

あぁ、レントが崩れ落ちてる。

地頭が違い過ぎるんだから加護がどうだのあったとしてもあたしらじゃムリってことだ。

 

「加護がアルの錬成をきちんと認識して作用している事は分かった。なら、この加護を与えた存在はアルの錬金術をそれなりに理解している可能性があるかな」

 

「……()()を、知っている?」

 

「アルさんの錬成って……ホントは錬成陣を使うものですけどその仕組みを理解してるってことですか?」

 

「それもそうなんだけど……僕みたいに錬成陣無しで錬金術を行使できる人間は特定の条件を満たしてなきゃいけないんだ。これは知識とか才能とかとはちょっと違うものなんだけど……僕を召喚した誰かさんはその条件を満たしているのかもね」

 

あたしたちの世界でも分かってない召喚術を使えるうえに、アルさんの世界の錬金術すら理解してるとか――神様かなんかなのかしら?

 

「さて、アルの解説とフィルフサの説明も終わったね。リラ達はボオスを迎えに来たんでしょう? ここにライザ達は長居しない方がいいと思うから戻った方がいいよ。身体を悪くする。ボオスもここに来たのは本意じゃなかったみたいだし」

 

「キロは……これからどうするんだ?」

 

「今まで通りだよ、リラ。ここに来るフィルフサを倒し続け、いつしか水が戻り、聖地が元に戻る事を信じて。結局クリント王国の者達が去り、滅んだ後も水は戻らなかったのだから……その古式秘具? とやらとは関係なしに水は失われたんでしょう。なら新たな水源が現れる事を信じるよ」

 

「……すまない、キロ」

 

「責めてないしやっかんでもいないよボオス。ただ無事に帰って「違うんだ!」……?」

 

「ボオス?」

 

いきなりどうしたの?

 

「謝るべきところはそこじゃないんだ。()()()()()()()()、俺はそれを……知っている」

 

なんですって!?

 

「っ! どういうことよ、ボオス!」

 

「……ライザ。島の水の歴史とブルネン家、そして俺がその古式秘具とやらを知っていた事を並べてみろ」

 

なんなのよいきなり……。まあいい、整理しよう。

 

もともと島には水源が別にあったけど、枯れてしまって水路を溜め池代わりに使ってた。

島にある噴水らしきものは最初の水源の名残なんじゃないかって言われてるね。

でもずっと前に、ブルネン家が新しい水源を見つけた――これが今の島の水源のほぼ全てだ。

 

それと、ボオスが古式秘具らしきものを知ってることに何が……?

 

 

待て。

 

 

「ちょっと待ってよ……まさかブルネン家が見つけた水源が?」

 

「地面から湧いてるもんじゃなかったのかよ!?」

 

全く想像してなかった。そんなまさか。

 

「ブルネン家当主の代々が「水生みの離れ」と呼んでいる所に、青と白色の球体が安置されている。その球体からは――今も()()()()()()()()んだ!」

 

「……それじゃあ、僕らの島の」

 

「クーケン島を流れている水は……」

 

「俺達ブルネン家が見つけたのは……他でもない、ここから奪った水だという事だ!

 

……そんな。

 

あたしたちの生活を支えてる水が。

キロさんと、リラさんの世界から、奪った水?

なんてヒドイって他人事に思ってた、クリント王国の錬金術による、水?

そんな。それじゃあ、あたしは。

 

 

――他所の世界を滅ぼした道具で手に入れたもので、のうのうと生きてきたの?

 

 

「「ライザ」」

 

「!!」

 

アルさん? クラウディア?

 

「ライザのせいじゃないんだよ?」

 

「僕が言う事じゃないけどね。自分の、自分達の、島の人達のせいなんて思っちゃいけないよ」

 

「だけど!」

 

全部そうじゃないですか! あたしたちがいなければ、こんな……。

 

「ライザ達が考えるべきなのは、昔の過ちの振り返りじゃなくてこれからどうするか、さ」

 

「アルの言う通りだよ。ボオスやライザ達が気に病む必要はない。貴方達には何の咎もないし、今その水はボオス達の故郷を潤して、そして貴方達が生まれたんでしょう? ならそれは喜ばしい事だよ。ボオス、自分の家のせいなんて思っちゃダメだよ?」

 

「キロ……俺は……なんて」

 

「その気持ちだけでも嬉しい。少なくともクリント王国の者達とは違うと実感できるのだからね。貴方もここに来た時に話してくれたでしょう? 貴方の目の届く範囲だけでも守る為にって。水はその在り方の延長だよ」

 

「私も同じだ。お前達を責めるつもりなど毛頭ない。それに今お前達は私達を手伝おうと……助けようとしてくれているだろう?」

 

「リラさん、俺……」

 

「……ありがとうございます」

 

「……当のリラ達が割り切っているというのに、クリント王国の錬金術の善悪を割り切れん自分に腹が立つ。なんと矮小なのだろうな、私は」

 

「お前は昔から何もかも背負い過ぎなんだ。死にかけの私を助け、業の清算として門を封じてきた。それでいいのだろう」

 

「……すこし、休憩しよう? ライザ」

 

ダメだ。いろいろな物が噴き出しそうになってる。

 

ちょっと、時間が欲しい。




一気にいろんな情報が開示されました。
今後アルには、主に「光の加護」なる謎の特性が付きまといます。
アルが何者なのか、なぜこの世界にいるのかもある程度判明しました。
記憶喪失というのはこっちに来た前後の経緯が一切不明だったためです。
前日にライザもそう思っていましたね。

キロに関しては無印時点でほぼ情報がなかったため、
大半がオリジナル設定です。精霊を扱える事や出身地は公式ですね。

原作でも山場といえるところに来ました。
それに沿いつつもこの作品なりの解釈で話を続けていきます。

次も引き続きオーリム編です。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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